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标题: 皆さん日本語の小説とか読んでますか(1) [打印本页]

作者: youdariyu    时间: 2006-4-26 16:29
标题: 皆さん日本語の小説とか読んでますか(1)
  中国江蘇省で日本語を教えている大阪人です。

私が教えている生徒さん達に「なにか日本語の小説を読んでいますか?」と聞くと
イエスと答える人は一人もいませんね(苦笑)
日本の映画やテレビは人気があるのに日本の小説は人気ゼロ。

どうして読まないのですかと尋ねると、「面倒だから」「難しい」「面白くないから」
と答える。読んでないのにどうして面白くないってわかるんだ(笑)

確かに日本語の小説は外国人には読み難い。中国語は漢字で構成されているから
辞書で言葉の意味を調べるのも簡単ですが、日本語の場合、その言葉の辞書形
がわからないと辞書を調べられない。

日本語を勉強する外国人の人は大変だなあといつも思います(ちなみに韓国語も
同じように辞書が調べ難い言葉です。同じ理由で)

でもやっぱり読んでほしいですね。私は数年前にチョンヤオ(字が入力し難いですね。
「環珠格格」の作者さんです。私は尊敬してます)の小説を原書で読んでその
面白さに感服すると同時にたくさんの中国語の単語を覚えました。

小説を読んでほしいなという話その(1)でした。

HPのURLを書くと広告みたいに思われて、削除されてしまうようですね。
メールアドレスだけなら没問題かな?

youdariyu@yahoo.com.cn
作者: ethena    时间: 2006-4-26 16:36
日本語の小説は読んでますよ。言語的にも、知識上もよく勉強になります。が、自分買うのがちょっと高いと思い、日本人の友人に買ってもらうようにせがんだりしたことあります...(笑)
作者: youdariyu    时间: 2006-4-26 16:45
日本の本は本当に高いですね。私は時々計算するんですよ。
一冊1500円の新書が300ページあったとする。
すると1ページが5円、1ページにセリフがどれだけあるか。
そんな事考えると、無駄に字数を費やしている本が多いように
思えて、結局中古の本しか買えなくなるんです(苦笑)

私のお勧めは星新一というSF作家の短編集です。表現が
平易なのに内容が濃くてストーリーが面白い。過激な描写
もないので老若男女に進められます。
でも中国では手に入りませんね(嘆息)
作者: houhiiya    时间: 2006-4-26 16:49
youdariyu様へ

こんにちは、

日本の映画やテレビが大好きです、「情書」、「星の金貨」などのを見ました、国内で外語を身につけるため、日本の映画やテレビなどをよく見るほうがいいです。
作者: youdariyu    时间: 2006-4-26 17:44
houhiiyaさんこんにちは。
ラブレター(情書)はムードのある作品ですね。星の金貨についてはまだ未見です。

日本人(および全ての中国人以外の外国人)が中国語を勉強する時に助かるのは
中国の映画やテレビの多くが、字幕付という事です。
これが無ければ私の中国語のレベルはまだまだ幼稚園だったでしょう、今は小学生程
度です(苦笑)

ちなみに「などのを見ました」は「などを見ました」としたほうが良いです。
「などの。。。」と言った場合は、先に述べた事柄の種類を表す名詞をつけな
ければなりません。
たとえば「情書や、星の金貨などの作品を見ました」です。

houhiiyaさん、加油!、あっ中国語は使用禁止なんですね。




作者: youdariyu    时间: 2006-4-27 17:28
江蘇省に住む大阪人です。

では、外国語の本を読んで会話能力が上達するかといえば、実際は No です。

私がこよなく愛する孟庭葦の「手語」という歌は、交通事故で頭を怪我して会話が
できなくなった実在の女性の話。彼女は相手の話している事はわかるけれど自分
から話す事ができない。
つまり人間の脳は、話す、読む、書く、それぞれ使ってる部分が別なんですね。

だから読む能力が上達してもそれが直接会話能力の上達にはつながらないという
事です。

でも、実際の話、外国語の本を一冊自力で読み通す事には意味があります。
なんといっても単語の発音を覚えるのがメリット。だから私は中国語の文字なら
今はほとんど発音することができます。
四声はよく忘れますが(苦笑)、辞書を調べる時、部首や画数から調べるの
ではなくピンインで調べる事ができるので、とても便利。

日本語の小説を読もう(2)でした。

youdariyu@yahoo.com.cn
作者: mizuiro    时间: 2006-4-27 22:36
youdariyuさん、初めまして。
今までロムってばかりで初カキコのmizuiroと申します。

実は、毎日まめにyoudariyuさんのこのスレッドをチェックしに来ています(笑)。
機会があればいつか書き込みたいと思っていました。
私はyoudariyuさんのこのスレッドに非常に興味を持っております。
紹介された本をぜひ読んでみたいです。

本をたくさん読むと表現力も高められると思っています。
私は日本語の小説の読書は少ないです。
感動したり、印象に残ったり、美しい作品がありましたら、ぜひともお勧めください。
このような作品に接することができることは私の一生の幸せだと思います。

琼瑶さんの本がお好きでしょうか。
私は学生時代で彼女の本をたくさん読みました。
毎回、すごく泣きました。
琼瑶さんの作品は女の子の涙を誘うのです。

亜亜の歌もいいですね。
あの温かさを感じられる歌声、シンプルな歌詞、心が穏やかになれます。
作者: youdariyu    时间: 2006-4-28 09:55
mizuiroさん、こんにちは。

とても流暢な日本語を書いていらっしゃるので、途中までは日本人の方だと思って
ました(^^)

私が最初に読んだ琼瑶先生の本は「新月格格」です。毎日1時間以上かかる通勤の
電車の中で暇なので、「どうせ理解できないけど、せめて字だけ眺めていよう」と
試しにぱらぱらめくってみたら、これがまあ面白い面白い。

しょっぱな(最初、という意味です)から引き込まれる感動的な展開、主人公だけで
なく登場人物の一人一人が個性豊かで、わくわくしながら読みふけったものです。

「表意文字」というのは便利ですね。日本人なら難しい漢字でもある程度想像しながら
読む事ができます。「表音文字」の部分が強い日本語は外国人の学習者にはさぞ不便
でしょう。謝ります(笑)

生まれて初めて、ほとんど辞書を使わずに外国語の小説を読みきったという達成感は
とても良いものでした。

ちなみに私が一番好きな作品は「心有千千結」です。あまりに良かったので日本語に
翻訳して日本人の知り合いに見せたら、誰もがやはり面白いと言ってくれました。

でも琼瑶先生の小説は詩がたくさん出てきますね。これは本当に難しいです。中国人
の友人に意味を尋ねたら、友達もやっぱり「わからない」だって(苦笑)

ですから詩は、ほとんど雰囲気だけで訳した「なんちゃって翻訳」です。(要するに
いいかげんな翻訳、という意味です(^^))

これからもよろしくお願いします。琼瑶先生の作品と亜亜の話を書き出すときりがあり
ませんが。

youdariyu@yahoo.com.cn
作者: orangedays    时间: 2006-4-28 13:02
私は「お母さんの恋人」という日本の小説の読むことがありました。もう何年間前のことだけれど、今までも感動してます。おもしろいというかちょっとでも悲しい話だと感じてます。少年と塾美女先生の微妙な恋っていう話で、実は本当の恋なのかは人によると思ってます。残念なのはこの作家の作品を買いたくても、作家の名がなかなか思え出せない。

ですから、youdariyuさんがもしこの本が知れば、作家の名を教えてください。ありがとうね。
作者: jinjin    时间: 2006-4-28 13:26
この本ですか?
http://www.chiho.cc/e-apparatus/Works/lover.html
作者は伊井直行
作者: mizuiro    时间: 2006-4-28 15:22
引用第7楼youdariyu2006-04-28 09:55发表的“”:
mizuiroさん、こんにちは。

とても流暢な日本語を書いていらっしゃるので、途中までは日本人の方だと思って
ました(^^)

.......
youdariyuさん、コメントをいただきありがとうございます。
私も『心有千千結』が好きです。
「心似双丝网,中有千千结」、この結びを一つずつ全部緩めると、人間にはもう悩みがない、ってとてもすてきな発想だと思います。

ごめんなさい。
なんか脱線したような気がします。。。(><)
日本語の小説の話題に戻りましょう。

恋愛小説と推理小説を読みたいのですが、
日本で有名な恋愛小説の作家と推理小説の作家は誰でしょうか。
ご存知であれば、教えていただけませんか。
作者: youdariyu    时间: 2006-4-28 17:35
mizuiroさん、こんにちは。

さてさて困りました、実は日本の恋愛小説と推理小説は私の苦手分野なのです(苦笑)

もっぱら、スパイ小説マニアだったもので・・・

琼瑶先生の「秋歌」は泣けたんですが、日本の小説で泣けたものって何があったでし
ょう。。。頑張って思い出したらお知らせします。
作者: aokira    时间: 2006-4-28 22:52
横から入ってすいません。
私は推理小説好きなので、mizuiroさんが日本の推理小説に関心をもってくれて嬉しいです。

私の一番のおすすめは島田荘司『異邦の騎士』です。記憶を失った青年が、だんだん日常の生活を取り戻していくのですが、その中で事件に巻き込まれていきます。最後は絶対、「あっ」と言いますよ ^^

北村薫『スキップ』は・・典型的な推理小説ではありませんが、結構感動します。女子高生だった主人公が、目を覚ましてみると、40代、結婚して娘もいる主婦になっていた---。そんな中で自分を取り戻していく、というお話しです。これは時の流れをテーマにした三部作(他の二つは『ターン』『リセット』)ですが、個人的にはスキップが一番好きです。

あと、若竹七海『スクランブル』もいいですね。90年代半ば、30代になった昔の女子高生たちが80年代の女子高時代を回想する形で物語が進んでいく作品です。

恋愛系の小説だと、山本文緒唯川 恵江国香織 でしょうか。
山本文緒は “もうひとりの自分”に出会う『ブルーもしくはブルー』がおすすめ。ほか、『パイナップルの彼方』『落花流水』なども面白かったですね。
(そういえば、4年位前に上海に行ったとき、山本文緒の『恋愛中毒』の中国語版が売られており、私は中国語が読めないのに、思わず買ってしまいました・・。中国語がよめるyoudariyuさんが羨ましい^^;)

ほか、推理小説なら 東野圭吾、真保裕一、宮部みゆき、恩田陸 らが有名です。
(というか、島田荘司や若竹七海より、こちらの4人のほうが有名です・・)
東野圭吾はちょっと前にドラマになった「白夜行」の原作者。『トキオ』『秘密』『分身』『同級生』『容疑者Xの献身』『天空の蜂』etcが印象に残っています。

宮部みゆきですと、『火車』『誰か』『理由』『魔術はささやく』『レベル7』『模倣犯』などかな(長いのが多いですが、面白いです)。

推理小説とはちょっと違うけれど、浅田次郎も面白いですよ。作品で言うと、『地下鉄に乗って』『椿山課長の七日間』etc。泣ける作品が沢山あります。『蒼穹の昴』という、清朝末期の中国を舞台にした小説もあります(文庫4冊なので長いですが)。

   *   *   *

日本の小説は、やはり現代日本社会を前提にしているので(女子高が舞台だったり、
バブル崩壊の社会背景を前提にしていたり、色々ありますので・・)
外国の人が読むのは結構難しいのかな、と思っていましたが、
興味があったら是非読んでみてください。

中国からは買えないかもしれませんが、インターネット書店のアマゾン(http://www.amazon.co.jp)で、
著者や本の名前をいれて検索すると、あらすじや出版社がわかります。

なお、確かに日本の小説は普通1500~2000円くらいしますが、刊行から数年たつと「文庫本」という小さいサイズになって再登場します。文庫本だと、500~800円くらいです。

(長々と失礼しました・・)
作者: ralph    时间: 2006-4-29 09:24
社会人になって、日本語専門のひとでも日本の小説を読まなくなるでしょう。

私の大学時代は本日ほど視聴物が普及していないので、日本の小説を楽しく読んでいました。

ただし、日本語版より、中国語に訳したものが多かったです。

去年、一度深セン市にある、もともとソ連の空母「ミンスク号」に登りました。大学で日本人作家が
書いた「ミンスク号、出撃」という軍事物語を読んだときのことを思い出し、感無量でした。

また昔、日本の20世紀のベストセラー「失楽園」を読みました。中年になった人物が人生を惑わす
ことから、性愛に逃げてしまう行為にすこし理解していました。
作者: mizuiro    时间: 2006-4-29 10:26
引用第11楼youdariyu2006-04-28 17:35发表的“”:
mizuiroさん、こんにちは。

さてさて困りました、実は日本の恋愛小説と推理小説は私の苦手分野なのです(苦笑)

もっぱら、スパイ小説マニアだったもので・・・
.......
親切なyoudariyuさんを困らせてしまってごめんなさいね。
スパイ小説マニアなんですね。
また何かお心当たりがありましたらよろしくお願いします。
作者: mizuiro    时间: 2006-4-29 10:30
引用第12楼aokira2006-04-28 22:52发表的“”:
横から入ってすいません。
私は推理小説好きなので、mizuiroさんが日本の推理小説に関心をもってくれて嬉しいです。

私の一番のおすすめは島田荘司『異邦の騎士』です。記憶を失った青年が、だんだん日常の生活を取り戻していくのですが、その中で事件に巻き込まれていきます。最後は絶対、「あっ」と言いますよ ^^

.......
aokiraさん

非常に詳しいご紹介ありがとうございます。
大変参考になりました!

aokiraさん一押しの作品『異邦の騎士』はぜひ読んでみたいです。
私は日本の推理小説が好きになったきっかけは松本清張の『点と線』という本です。
とても面白くて最後まで楽しめました。
『模倣犯』はドラマにもなったような気がします。

内容は後ほどアマゾンで詳しく調べさせていただき好みのを友人に頼みます。
いろいろ本当にありがとうございました。
これからもよろしくお願いします。
作者: youdariyu    时间: 2006-4-29 15:54
aokiraさん、こんにちは。横入り大歓迎です。

私の好きな作家は筒井康隆(SF)、山本周五郎(時代劇)吉川英治、司馬遼太郎(以上、歴史小説)
それに琼瑶先生です。aokiraさんの紹介された本を私も読んでみたいですが、中国にいると日本
の本は入手できませんね(涙)

琼瑶先生の本が好きだと言うと、「あれは女性が読む本」だという反応が返ってきます。
「いや、私は男だからこそ、美しくて、聡明で、ひたむきで、誠実で、ユーモアに溢れたヒロイン
 (女主人公)に魅力を覚えるんだ」といつも答えます。

琼瑶先生の作品のヒロインは私の理想の女性像です。それに亜亜。

作者: aokira    时间: 2006-4-30 00:02
引用第13楼ralph2006-04-29 09:24发表的“”:
社会人になって、日本語専門のひとでも日本の小説を読まなくなるでしょう。

私の大学時代は本日ほど視聴物が普及していないので、日本の小説を楽しく読んでいました。

ただし、日本語版より、中国語に訳したものが多かったです。
.......

そうですね。私も一番よく読んだのは中学・高校の頃で、社会人になると、めっきり読む時間が減りました。
中国人も日本人もその辺りは同じでしょうね。
やはり忙しいですし、それに、短くなった読書の時間の中でも、小説だけでなく、ノンフィクションなどを読む割合が増えましたし。
あと、個人的にはインターネットも大きいですね。ネットをやる時間が増えると、小説を読む時間が減りますから。。
作者: aokira    时间: 2006-4-30 00:26
引用第16楼youdariyu2006-04-29 15:54发表的“”:
aokiraさん、こんにちは。横入り大歓迎です。

私の好きな作家は筒井康隆(SF)、山本周五郎(時代劇)吉川英治、司馬遼太郎(以上、歴史小説)
それに琼瑶先生です。aokiraさんの紹介された本を私も読んでみたいですが、中国にいると日本
の本は入手できませんね(涙)
.......

youdariyuさん、はじめまして。
私は神奈川県在住の日本人です。

吉川英治といえば三国志ですね。私も好きです(とはいえ、そこから直接、今の中国への関心につながったわけではありませんが)。横山光輝のマンガも、光栄のゲームもやりましたが、やはり吉川英治の三国志が一番。そういえば最近は北方謙三も三国志を小説にしているようですね(大部なので、読んでませんが)。

筒井康隆といえば、中学からの友達が、昔よく読んでいたのを思い出します。そういえば深田恭子主演の「富豪刑事」は筒井康隆が原作でしたか。

琼瑶先生というお名前は、初めて聞きました。一度読んでみたいと思いますが、・・今、googleで検索してみたら、日本語のホームページはありませんでした。。。日本語版は刊行されていないのでしょうかねぇ。

アマゾン・ジャパンはクレジットカードで決済すれば、国際配送料がかかるもの、海外にも発送してくれるようです
http://www.amazon.co.jp/exec/obi ... 91522#international)。

ただ、私は日本在住なので試したことがなく、すんなり届くかどうかは・・・よくわかりません
(中国は一応共産圏ですからね。。。)
作者: youdariyu    时间: 2006-4-30 12:32
aokiraさん、こんにちは。
琼瑶先生の作品は日本では2,3冊しか出版されていません。私の拙訳でよければ
メールでお送りしましょうか。
物語の最初のほうだけですけれど。
作者: sonkokuka    时间: 2006-5-5 13:34
日本の本は好きなんだけど手に入れにくくて。。。。。。
小説よりは「中国とのカルチャキャップ」、「鬼の上司、26の帝王学」見ましたけど、面白かったんです。
勉強にもなりました。
小説といったら、「けりたい背中」を見ましたけど、読み終わった後、いったい何を言いたいかよく分からなかったんだけど…
作者: youdariyu    时间: 2006-5-5 17:21
中国と日本のカルチャーギャップをテーマにした本は多いですね。
スレッドのテーマからは外れますが、私が日本に行く中国人の学生さんや会社員の
人にいつも言うのは
1. 魚を食べるときに口から直接骨を吐かない。「じゃあ日本人はどうするんですか?」
  と返事が返って来るけれど日本人の好きな海の魚は骨が少ないんですよね
2. 行列に横入りしてはいけない(中国でも都市部の人は大丈夫ですが、田舎
  の人ってまだ結構こんな人が多いです。バスや電車に乗る時順番を守りません)
3. 特に目上の人に「あなた」と呼びかけない。「じゃあ名前を知らない人にどう呼び
  かけるんですか」と聞かれますが、そういう場合は「失礼ですが」と言って相手の
  注意をひいてから話しかけます。
4. 静かなレストランでは、やはり自分も静かに話しましょう。中国人はレストランは、に
  ぎやかであればある程良いみたいな意識があるようです。でも日本では場所によりけ
  り。

以上、2の「横入り」以外は純粋に習慣の問題ですね。でもこんな些細な事で人に与え
るイメージが大きく変わってしまうんですから、厄介です。
私は中国に来た最初の頃、きれいな若い女性が口からぺっぺと魚の骨を吐き出しているの
を見て目を疑いました。
こういうのを日本語では「100年の恋も醒めてしまう」といいます。恋してたわけではあ
りませんが(苦笑)


  
作者: youdariyu    时间: 2006-5-8 12:23
junshengfengさん、こんにちは。

「電車男」は私も見ました。私も昔はあの主人公に少し似たパソコンオタクだったので
親近感を持ちました(^^;、私の育った大阪の、日本橋という所にはあんなのが、たくさん
います。
ダさい(土気って言うんでしょうか、中国語では)格好でニキビだらけ、傍へ寄ると妙に
汗臭い、みたいな。

「電車男」は元々、ある掲示板に書かれた投稿をネタにして創られた物語のようです
ね。
作者: wheatdl    时间: 2006-5-8 16:36
 私は小説を読んでいますが、大方はドラマを見てから知ったんです。脚本としての原作もっと面白いかなあと思って、そういう小説を読み始めます。東野圭吾さんの「秘密」とか、去年のすごく感動させたドラマ「1リットルの涙」とか、「世界の中で、愛を叫ぶ」とかお勧めいたします。

 でも、日本の小説は本当に高いですね。私は古本屋で文庫本のみ買います。

 話題が外れますが、中国で日本の連ドラをほとんど放送されないんですね(日本連ドラの費用が高いから)。この間、中国中央テレビ8チャンネルで放送された「白い巨塔」が面白いと思って、皆さんぜひ見てください。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-8 18:01
wheatdlさん、こんにちは。

本当に日本の本は高いので、せっかく買ってもハズレた(期待外れの)時は引き裂いてガソリンぶっかけて燃やし
たくなりますね。
私も日本に居た頃はもっぱら図書館で借りるか、「ブックオフ(日本で一番大きい古本のチェーン店)」の100円
の本ばかり買ってました(^^)、これならたとえカス(価値の無いゴミの意味)でも許せますから精神の安定には良い
です。

それから、日本の連ドラ(だけではないでしょうけれど)はこれから中国で見る機会が増えるかもわかりません
よ。
NHK(日本放送協会)が「両国の相互理解の為」という目的で、たしか900本程度のテレビ番組を無償で中国
に贈ったそうです。いつ放送されるかは知りませんが、なるべく早い事を願っています。

できれば日本語音声で中国語字幕ってのがいいんですけど、それは無理でしょうね(苦笑)

「白い巨塔」は私が幼い頃に一度テレビ放映されました。だからもう*0年前の原作ですが、リメイク版も
見ごたえがありますね。全然古さを感じさせない。
あそこで描かれる医師の社会の閉鎖性というのが未だ変わってないからでしょうか。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-8 19:00
作品を紹介します。星新一の「殺し屋ですのよ」という短いSF。

主人公のところへ、ある日謎の女が現われる。
その女は「私は殺し屋です。あなたの殺したい人を、絶対に見つからない方法で殺して
あげましょう」と言う。
実は主人公には殺したいほど憎い相手がいたのだ。というより、その相手は汚い方法で
彼や多くの人を騙して金持ちになった人物。殺したいと思っているのは彼だけではない。

「報酬は後でもかまわない」という女の言葉に、彼は殺しを頼むことになった。

幾日かたった頃、新聞にその相手の死が報じられた。原因は心臓麻痺だという。

どうやってあんなに上手に殺すことができた?という不思議がる彼に対して女は何も
言わない。とにかく目的は果たしたのだから彼は約束通り、報酬を女に与えた。

さあ、この女はいったいどうやって完全犯罪ができたのでしょう?

続きはまた今度(過両、三天説、(^^))
作者: youdariyu    时间: 2006-5-9 13:23
星新一の「殺し屋ですのよ」続き。

どうして女は完全犯罪ができたか?
実は女は、その死んだ男が通っていた病院の看護婦で、男が心臓病で
もうほとんど余命が無いことを知っていただけなのでした。

ちゃんちゃん(^^)、単純過ぎましたか。

ちなみに現在は看護婦とは呼ばず、男女一緒に看護師と呼びます。男女
雇用機会均等法の影響ですね。
作者: icedcoffee    时间: 2006-5-9 13:30
引用第0楼youdariyu2006-04-26 16:29发表的“皆さん日本語の小説とか読んでますか(1)”:
  中国江蘇省で日本語を教えている大阪人です。

私が教えている生徒さん達に「なにか日本語の小説を読んでいますか?」と聞くと
イエスと答える人は一人もいませんね(苦笑)
日本の映画やテレビは人気があるのに日本の小説は人気ゼロ。
.......

大阪やん~

最近読んだのは『蹴りたい背中』、あの早稲田の子が書いた小説。。。。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-9 13:50
冷コーさん、はじめまして。(大阪ではアイスコーヒーの事を冷コーと呼びます)

「蹴りたい背中」って恋愛小説なんやね。プロレスかK-1の話かと思てた(以上大阪弁モード)

解説を見ると
「高校に入ったばかりの「にな川」と「ハツ」はクラスの余り者同士。やがてハツはあるアイドルに夢中の、
にな川の存在が気になってゆく。いびつな友情? 臆病な恋? 不器用さゆえに孤独な二人の関係を描く文
芸賞受賞第一作」
となってますね。
作者: icedcoffee    时间: 2006-5-9 14:45
引用第29楼youdariyu2006-05-09 13:50发表的“”:
冷コーさん、はじめまして。(大阪ではアイスコーヒーの事を冷コーと呼びます)

「蹴りたい背中」って恋愛小説なんやね。プロレスかK-1の話かと思てた(以上大阪弁モード)

解説を見ると
.......

おっしゃる通りっす!

^^ ってか大阪人おもしれー さすが東京と雰囲気違うね☆

学校の大阪人も確かにおもしろい人ばっか

大阪っつったらすぐこうだクミさんのことを思い出すが、あっ 彼女は京都だっけ?^^;

今度はそっちで本場のたこ焼きを食べてみたいっすね。

正直~冷コーは初めて聞きました 以前はマックとマクドのことしか知らなかったです。

どうも勉強になりまスた!

ちなみに、僕は東京で大学を通ってます。いわゆる東京六大のキリって学校です。

今日ゼミがあるので、今から学校に行かないとやばいっす。

また今度話しましょう! もしMSNが使っていらっしゃるなら、メッセージで僕にメアドをお教えください

でわ!!
作者: youdariyu    时间: 2006-5-9 15:21
冷コーさん、こんにちは(^^)

日本人も一種類ではありません。中国の様にいろんな民族がいるんですよ。私は大阪民族(笑)

大阪民族の特徴その1 東京と違って、言葉はダサい(土気)ほうが好まれる。「マクド」もできるだけ泥臭く
           発音しましょう。

大阪民族の特徴その2 女性にモテるのはかっこいい男よりも「面白い男」(大阪弁で言うと「おもろいやつ」)。
           藩長江なんて、もし大阪で生まれてれば女性に一番人気が有った筈。
           ちなみに江蘇省南通市の私の生徒さん達(女性)は、「金の無い木村卓也」と「大富
           豪の藩長江」どっちを選ぶ?と尋ねると「藩長江、ブス過ぎる!」と全員答えます。
           私は大好きなんですが。

大阪民族の特徴その3 話の最後で必ずオチをつけなければいけない(「オチをつける」は[最后的打诨结尾语]
           でいいのかな?)
          笑えない話は、価値が無い。ギャグ(冗談)の言えない者は人間扱いされない。

大学の勉強頑張ってください。それから大阪へタコ焼きを食べに来てくださいね。またお話しましょう。
P.S
今MSNのパスワード忘れて使えないんです(苦笑)
作者: wheatdl    时间: 2006-5-9 15:25
TO youdariyu:

こんにちは。

今仕事をサボって回復いたします。

>本当に日本の本は高いので、せっかく買ってもハズレた(期待外れの)時は引き裂いてガソリンぶっかけて燃やし
>たくなりますね。
だって高いだもん。 せっかく買ってきて、それに箱で国内に運んでいて、こういうこと絶対だめ。一つだけ用があるんだ。不眠の時に読んでみます~~~

>NHK(日本放送協会)が「両国の相互理解の為」という目的で、たしか900本程度のテレビ番組を無償で中国
>に贈ったそうです。いつ放送されるかは知りませんが、なるべく早い事を願っています。
900本もあるか?でも多分半分は中国で適当できないため、放送禁止になっちゃうと思う。

>できれば日本語音声で中国語字幕ってのがいいんですけど、それは無理でしょうね(苦笑)
そうですね。やはり字幕放送がいいと思いますが、そうすると中国の声優は仕事ないでしょう。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-9 15:55
wheatdlさん、お仕事ご苦労さま。

NHKはほとんど国営企業に近いので比較的、中国の審査基準に照らしても安全な番組が多い
と思いますよ。
あっ、でも「政治討論会」は絶対不可かな、今の日本のアホな外務大臣は隣国を怒らすよう
な事ばっかり言ってますから。
また反日暴動が起きたら大変(笑)

中国の声優さん、「周星馳」本人の広東語版も良いけど、北京語版担当の声優さんの、ちょっ
と甲高い声も悪くないです。時々、他の人が周星馳の声をしてるとつまらなくて見ないくらい。
一度木村拓也の吹き替えをあの周星馳の声で聞いてみたい。





作者: wheatdl    时间: 2006-5-9 16:13
TO:youdariyuさん(←前回は「さん」が漏れたから、ゴメン。)

仕事本当につまらないです。僕の仕事は日本向けのソフト開発です。

僕は北京語版の「周星馳」が大好きです。広東語はちっとも分かりません。
中国の方言はやはり外国語みたいです。例えば、上海の方言とか、広東の方言とか。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-10 13:17
wheatdさん、こんにちは。

私は、たとえ理解できなくても、やはり本人の声で、字幕付で映画を見たいと思う方です。
中国に住んでいると、テレビの香港映画はほとんど北京語の吹き替えになっているので、
イメージが違って感情移入できません。周潤発とか張国栄とか。

ソフトの開発大変ですね。私が子供の頃、こんなSF小説がありました。

一つのビルくらいの大きさの巨大なコンピュータが自分の意志を持って人間に反抗するという
話。
でも今考えれば当時のコンピュータは真空管とトランジスタで出来ていて、おまけに使う記録
装置は紙テープ(wheatdさんはそんな時代知らないでしょ)、CPUのクロック速度なんて
オモチャみたいなもの。

今の携帯電話のほうがよっぽど性能が良い。携帯電話が賢くなり過ぎて自分の意志を持っ
たら面白いけど(笑)
作者: ryu_shicho    时间: 2006-5-10 13:55
へえ~

ちょっと江蘇で暮らしとったくらいで、私は国際人だがぁみてゃーな顔して、おみゃさんちょーすいとらん?
作者: youdariyu    时间: 2006-5-10 14:43
新聞によれば、中国で一番読まれている日本の小説家は渡辺純一だとか。
渡辺純一に人気が有るというより、「失楽園」が読まれている、と言ったほうが
いいのかも。
この小説は映画化された際に黒木瞳さんという女優がヒロインでした。私は何故か\
この女優さんが苦手なんです。もちろん美人だし、演技も上手だし、善良な役
も合っている。別に嫌いというわけではないけれど、でも何故かこの人の作品は
あまり見る気がしないんですね。

人気のある作家のもう一人は村上春樹。「ノルウェーの森」は題名だけなら多くの
人が知ってるようです。

でも困った。日本語の小説のスレッド作った私がこの二人の作家の本を読んで
ない、話がでけまへんがな(「話ができません」の大阪弁)(^^;
作者: bobogocn    时间: 2006-5-10 15:02
うぶめをよみました。結構こもしろかったです。その後、うぶめのなつという映画もみました。
僕は赤川次郎の小説が好きで、それ以外もいろいろな小説も読んでみました。
横山さんの三国志も読みましたよ。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-10 15:34
bobogocnさん、はじめまして。
「姑獲鳥の夏」は京極夏彦が原作のホラーミステリーですね。
私はこの作家の作品を読んだ事がないんですが、一度だけ映画を見ました。
それが本当にツマらない映画で腹が立ったんです
きっと原作は面白いんでしょうね。面白くない映画を先に見てしまった為に
その原作も読む気がなくなってしまう。よくある「不幸な出会い」です。

横山光輝で三国志を知ったという人は多いですね。
私は愚直で無能(?)な諸葛瑾が好きです。

弟の諸葛孔明は超天才なのに、兄の彼は、ただバカ正直さだけで生きて
いる(笑)

でもこんな奴が貴重なんです。
作者: aokira    时间: 2006-5-10 20:41
「蹴りたい背中」は 綿矢りさ の芥川賞受賞作ですねぇ。・・が、私も読んでいません。。
綿矢りさ は 女子高生のころ「インストール」という作品でデビューし、話題をさらったので、そちらは読んだことがあります。つまらなくはなかったですが、確かに淡々とした印象はありますね。

まぁ良くも悪くも、今風のある種の女子高生の淡々としたテイスト・・・ あまり熱さず、かといってギャル系でもない女子高生の感覚ってこうなのかなぁ、という感じでした。。

小説は文芸エンターテイメント(娯楽)ですから、面白ければいいと思うのですが、・・・概して芥川賞作品というのは、淡々と物語が展開して・・・なんだったのかよくわからない印象があります。。。
直木賞を受賞した作家の作品の方が好きですね。

・・・私の好みがミステリー系、人物やストーリーの起伏に富んだ作品であるというだけかもしれませんが。

「蹴りたい背中」
http://media.excite.co.jp/book/news/topics/073/
作者: aokira    时间: 2006-5-10 21:02
引用第38楼bobogocn2006-05-10 15:02发表的“”:
うぶめをよみました。結構こもしろかったです。その後、うぶめのなつという映画もみました。
僕は赤川次郎の小説が好きで、それ以外もいろいろな小説も読んでみました。
横山さんの三国志も読みましたよ。

おー、京極夏彦を読んだって、すごいですね。
確かにあの京極堂の世界観、テイストを受け入れられる人にはとても面白いでしょうが、決して読みやすい小説ではないでしょうから。

私も結構好きで、初期の頃(作品でいうと『姑獲鳥の夏(うぶめのなつ)』『鉄鼠の檻(てっそのおり)』 - 『魍魎の匣(もうりょうのはこ)』)は読んでいました。

ただ・・・いかんせん、長い!
『姑獲鳥の夏』はまだしも、その後800頁、はてはあの分厚さで上下刊の長さと、どんどん長くなっていき、・・・読むのに疲れてしまいました^^;。そして妖怪とかそういうのが特に好きなわけではなかったので、その後は読まなくなってしまいましたが・・・久しぶりに読んでみたい気もしますね。

でもやっぱし長すぎて挫折するかも^^;
作者: aokira    时间: 2006-5-10 21:13
wheatdlさん:
はじめまして。実は私もwheatdlさんと同じ仕事をしています。。本当にこの仕事は大変ですよねぇ。。。


youdariyuさん:

> でも今考えれば当時のコンピュータは真空管とトランジスタで出来ていて、おまけに使う記録
> 装置は紙テープ(wheatdさんはそんな時代知らないでしょ)、CPUのクロック速度なんてオモチャみたいなもの。

・・失礼ですがおいくつくらいなのでしょうか?(もっとお若い印象をもっておりました)
私も本で読んで知ってはいますが、紙テープ時代のコンピュータを見たという人は初めてです。。。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-10 21:44
aokiraさん、こんにちは。
知ってますか、男に歳を尋ねるのは失礼なんですよ(爆笑)
私が生まれたのは「日本はもう戦後ではない」と言われた年です。南極に残された犬の
タローとジローが発見された年。検索して探してください(^^)

私が子供の頃、エイトマン http://www.avexmode.jp/animation/eight/
という漫画が放送されていて、その漫画の中で紙テープが出てきたんです。

「動物のデータを全てコンピュータに保存してクローンを作るのだ」という天才科学者の
話でしたが、データの媒体は紙テープ(さん孔テープとか言ったかな)が30センチ程。

いったい何ビットのデータなんだあ(笑)
作者: mizuiro    时间: 2006-5-10 22:28
引用第24楼wheatdl2006-05-08 16:36发表的“”:
 私は小説を読んでいますが、大方はドラマを見てから知ったんです。脚本としての原作もっと面白いかなあと思って、そういう小説を読み始めます。東野圭吾さんの「秘密」とか、去年のすごく感動させたドラマ「1リットルの涙」とか、「世界の中で、愛を叫ぶ」とかお勧めいたします。

 でも、日本の小説は本当に高いですね。私は古本屋で文庫本のみ買います。

 話題が外れますが、中国で日本の連ドラをほとんど放送されないんですね(日本連ドラの費用が高いから)。この間、中国中央テレビ8チャンネルで放送された「白い巨塔」が面白いと思って、皆さんぜひ見てください。
「1リットルの涙」って日記ですか。
それともドラマの脚本だけでしょうか。
私はあのドラマを見てあやの日記を本当に読みたいです。
ご存知であれば、教えてください~
作者: wheatdl    时间: 2006-5-11 10:53
TO mizuiroさん  
 こんにちは。「1リットルの涙」の原作は読んだことはありません。買いたいのに、なかなか出張のチャンスがなくて・・・。 でも僕ドラマを見た後、もっと原作を読みたいですね。

TO aokira さん 
 はじめまして。aokira さんはどこで仕事?隣かもし知れないなあ。僕はIDの通り、大連で仕事します。

TO youdariyuさん 
 こんにちは。さっき「エイトマン」のHP見ました。1963(昭和38)年放送されたものですね。なかなか年上ですね・・・

ちなみに、お尋ねしますが、「クイ(Q)ちゃん」というムービーは小説がありますか?
作者: youdariyu    时间: 2006-5-11 14:05
wheatdlさん、こんにちは。

「クイ(Q)ちゃん」ですか?、残念ながらその名前の映画は記憶がありません。

アニメの「オバケのQ太郎」http://www21.ocn.ne.jp/~kobataka/manga/obaq.html
の事じゃないですよね。「頭のてっぺん(頂上)に毛が三本」、中国で有名な「三毛」みたいな
ヘアスタイルのオバケです。

ちなみに私が見たエイトマンは、たぶん再放送です(^^:
作者: wheatdl    时间: 2006-5-11 15:14
TO youdariyuさん
 Q太郎じゃないです。盲導犬の物語です。

>ちなみに私が見たエイトマンは、たぶん再放送です(^^:
再放送か、よかった・・・

去年大阪に出張したときに、予定のホテルがなかなか見つからなくて、ちょうど隣におじいちゃんがいて、道を尋ねてみると、関西弁で回答してくれて何にも分からなくなってしまった。でもはやり大阪人が熱心ですね。僕をホテルまで連れていった。その後、僕は大阪のおじいちゃんが弱くて・・・(実は日本語が下手ですね・・・)
作者: youdariyu    时间: 2006-5-11 15:48
「1リットルの涙」。脊髄小脳変性症という病気で死んでしまう女の子の話ですね。

私の母は5年前膵臓癌で亡くなりました。癌が発見された時はすでに手遅れで、手術すら
出来ず日々次第に弱っていく母を見るのは辛いものでした。

愛する人が死んでしまうという時、どうして自分が代わってやれないか、どうして
自分の命を相手に与える事ができないのかと、誰もが神様の不公平を恨みます。

私は子供の頃は医者になりたかったのですが、なにぶんアホだったので目的は果たせず、
もし、なれたとしても医者でも治せない病気があまりに多すぎることに挫折ばかり味わって
いたでしょうね。

最近見つけたこのフラッシュ
http://shinbest.exblog.jp/ 「ありがとうって言いそびれたヤツいる?」は
は感動できますよ。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-11 16:05
wheatdlさん、こんにちは。

盲導犬クイールについてはこのHPを参照してください http://www.bunshun.co.jp/quill/index.html

大阪のおじいちゃん、こんな感じで話しましたか
「あんたどこ行きはんの?えっ?それやったらえろー遠いで、よっしゃ、わしが聞いたるさかい、ちょっと
 待ってなはりや、あんたどっから来はったん?えっ中国?ほんまになんぎなこっちゃなあ...」
でも親切なおじいちゃんに会えて良かったですね(^^)
作者: longxing01    时间: 2006-5-11 16:59
youdariyu様

急にお邪魔しまして申し訳ナインですが、日本語専用カフェでyoudariyuさんに書かれた
文字が大体呼んでいました。僕も「1リトッルの涙」っての映画を見まして、すっごく感動されした。
人間ってさ、どんなに困難があってもその倒されない心と信念が重要だとみられます。

そろそろ退勤時間ですから、これから4649お願いいたします。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-11 17:57
longxing01 さんはじめまして。

中国では有名かどうか知りませんが、中島敦という作家がいます。

この人がこんな事を書いています「何もしないなら人生は長すぎる、何かをするには人生は短すぎる」

限られた人生ですが、何もできないと考えずに、戦い続けたいものです。

退社時間は5時なんですか、早くていいですね(^^)
作者: mizuiro    时间: 2006-5-11 21:03
引用第45楼wheatdl2006-05-11 10:53发表的“”:
TO mizuiroさん  
 こんにちは。「1リットルの涙」の原作は読んだことはありません。買いたいのに、なかなか出張のチャンスがなくて・・・。 でも僕ドラマを見た後、もっと原作を読みたいですね。
wheatdlさん、早速のご返事ありがとうございます。
「1リットルの涙」はドラマの原作なのか、あやさんの日記なのか、
まだ分からないのですね。
私はドラマの原作というより、あやさんがつけた日記を読みたいです。
また調べてみます。
ありがとうございました~
作者: uoytihs_uuyr    时间: 2006-5-11 21:56
残念やねん。

落語なんか、外国人的見地からすれば、いっこもわかりまへん。

でもね、落語や漫才とかの質の高い日本芸術を身近に体感できることは、我によってこと上もない喜びなだっせね。
作者: xiaomai    时间: 2006-5-11 22:09
youdariyuさん、はじめまして




友達の紹介でこのスレッドを読んだ。まずみんな(もちろん中国人)の日本語に驚いた。自分の方はもっともっと頑張らなくちゃと実感

私一番好きな小説は東野圭吾の『秘密』。大学時代、その映画をはじめてみた。思いがけなかった結局におもわず涙。三年後大学院の図書館で偶然その小説を発見、一気に読み終わって、映画より一層素晴らしいという感じ。あと2、3回も読んで、やっぱり好きでたまらない。つい先日も、学生さんに見せたばかり。すごくいい評判!

ほかに、松本清張の原作によって作ったドラマ『Mの悲劇』『黒革の手帳』も大好き。原作はまだ読んでいないけど、きっとすばらしい作だと思う。

『ノルウェーの森』の中国語訳は数年前読んだことある。今その日本語版。特に好きとかという感じがなく、何でそんなに人気があるのか全然わからない。多分わたしにはその中の深みなんかわからないから

一応これで。これからもよろしく!
作者: aokira    时间: 2006-5-11 22:28
↓これは出版社のサイトですが、副題に「難病と闘い続ける少女亜也の日記」とあるので、木藤亜也さんご本人の日記なんじゃないでしょうか。

『1リットルの涙 難病と闘い続ける少女亜也の日記』(幻冬舎)
http://www.gentosha.co.jp/search/book.php?ID=201391

尚、亜也さんが友人と交わした手紙を集めた『ラストレター「1リットルの涙」亜也の58通の手紙』(http://www.gentosha.co.jp/search/book.php?ID=201577)や、亜也さんのお母さんが思いを綴った『いのちのハードル 「1リットルの涙」母の手記』(http://www.gentosha.co.jp/search/book.php?ID=201392)という本もありました。
作者: aokira    时间: 2006-5-11 23:38
引用第43楼youdariyu2006-05-10 21:44发表的“”:
aokiraさん、こんにちは。
知ってますか、男に歳を尋ねるのは失礼なんですよ(爆笑)
私が生まれたのは「日本はもう戦後ではない」と言われた年です。南極に残された犬の
タローとジローが発見された年。検索して探してください(^^)

.......

失礼しました
タローとジローって、確か 映画「南極物語」の元の話ですよね。幼かった頃、その映画をみた記憶があります。あれはつくば万博へ行くバスの中だったか、それとも東京ディズニーランドにいくバスの中だったか、・・とにかく、観光バスの中のテレビで見ました^^;

先日、電車の中で 去年開通した「つくばエクスプレス」の広告をみている女子高生がいて・・・その広告にはつくばエクスプレスの路線図が出ていたのですが「万博記念公園駅?万博って何?大阪?」とか話していました。
考えてみればつくば万博をやっていた頃(85年)、彼女たちは生まれていないのですねぇ。。私もそんなに若くないようです。。。
作者: mizuiro    时间: 2006-5-12 13:59
引用第55楼aokira2006-05-11 22:28发表的“”:
↓これは出版社のサイトですが、副題に「難病と闘い続ける少女亜也の日記」とあるので、木藤亜也さんご本人の日記なんじゃないでしょうか。

『1リットルの涙 難病と闘い続ける少女亜也の日記』(幻冬舎)
http://www.gentosha.co.jp/search/book.php?ID=201391

.......
aokiraさん、わざわざ調べていただいてありがとうございます。
とても助かりました。
購入する予定です。
ありがとうございました~
作者: wheatdl    时间: 2006-5-12 14:06
引用第52楼mizuiro2006-05-11 21:03发表的“”:

wheatdlさん、早速のご返事ありがとうございます。
「1リットルの涙」はドラマの原作なのか、あやさんの日記なのか、
まだ分からないのですね。
私はドラマの原作というより、あやさんがつけた日記を読みたいです。
.......

TO mizuiroさん
こんにちは。
「1リットルの涙」の原作はあやさんの日記です。ドラマの最後の字幕のところよく見えますよ。
日本しか買えないみたいです。

ちなみに、中国で日本版の雑誌や小説などが買えますか?
作者: youdariyu    时间: 2006-5-12 14:20
uoytihs_uuyrさん、はじめまして。

外国人が理解するには難しい落語も少なくありませんが、素直に笑える落語もたくさんありますよ。
例えば「寿限無」という落語があります。これは子供に名前をつける時、縁起の良い名前なら
何でもつけてしまおうと、とても長い名前をつけてしまった話。

子供の名前は「寿限無、寿限無、5劫のすりきれ、海砂利水魚、水行末、雲行末、風行末食う寝るところに
住むところ、やぶら小路ぶら小路、パイポ、パイポ、パイポのシューリンガン、シューリンガンのグーリンダイ 
グーリンダイのポンポコピーのポンポコナーの長久命の長助」

朝、親が子供を起こそうと何度か名前を呼ぶと、あっという間に日が暮れてしまう。馬鹿馬鹿しいんですが、そこが
落語の面白さ。この話などは簡単に他の言語でも演じることができそうです。

比較的新しい作品では「ぜんざい公社」というのがあります。「ぜんざい」というのは小豆を甘く煮た「おやつ(点心)」のような庶民的な食べ物。
ある日、これが国営の専売になり、「ぜんざい」を一杯食べる為だけに複雑な書類と審査が必要になる。
役所の非能率性とサービスの悪さを皮肉った話ですが、これも中国の人なら特に笑えるでしょう(^^)
作者: youdariyu    时间: 2006-5-12 14:53
xiaomaiさん、はじめまして。
東野圭吾の『秘密』は人格が入れ替わってしまう話なんですね。映画も小説も見ていないので
私にはこれだけしかわかりません。「最後の思いがけない結末が感動的」と聞くと、どうしても
読みたくなるんですが、中国では原作が入手困難(日本から送ってもらったら、超高い(涙))

中国語訳は出版されていませんか(笑)、今度新華書店で調べてみよう。

この「人格が入れ替わる」話は昔からたくさん作られていますね。立場を変えて見ると、
それまで見えなかったものが見えてくる。それぞれの立場を深く理解できるようになる。

立場を変えて見るという事が現実にはとても難しいから、こんな話が作られるのでしょうね。
作者: mizuiro    时间: 2006-5-12 15:53
引用第58楼wheatdl2006-05-12 14:06发表的“”:


TO mizuiroさん
こんにちは。
「1リットルの涙」の原作はあやさんの日記です。ドラマの最後の字幕のところよく見えますよ。
.......
wheatdlさん、こんにちは。
上海の外文書店では日本語版の小説、漫画などが買えます。
ただ、日本で買うより15%ぐらい高いです。(ヒドイ!)
本もそんなに新しくないようです。
私はいつも日本にいる友人に買ってもらっています。
作者: uoytihs_uuyr    时间: 2006-5-12 15:53
引用第59楼youdariyu2006-05-12 14:20发表的“”:
uoytihs_uuyrさん、はじめまして。

外国人が理解するには難しい落語も少なくありませんが、素直に笑える落語もたくさんありますよ。
例えば「寿限無」という落語があります。これは子供に名前をつける時、縁起の良い名前なら
何でもつけてしまおうと、とても長い名前をつけてしまった話。
.......
あ~うける~!(笑)

こんにちは、RYUUでござおてん。

ご解釈おおきに。では、youdariyuさんは日本のお笑い芸人でどちらさんが一位やっ思っておるか?

久しぶりに日本語番組を見えまへん、やから今の人気芸人はロンドンブーツ1号2号(関西出身?)しかしりまへん。

(落語、漫才を学ぶなら、関西人の先生に教わるに越したことはないやろう!?そりゃほんまにだっか?)やっぱ、関東文化に比べて、関西の方は日本にとって欠くことがでけへん存在だっせね~!

(PS:大阪人的見地からすれば、我の関西弁...どうかな? )
作者: youdariyu    时间: 2006-5-12 17:28
山本周五郎の小説、「さぶ」を紹介します。

江戸時代。物語の主人公は「栄二」と「さぶ」の二人。バカ正直で愚図のさぶと、賢くて美男の栄二。
(栄二は「金城武」、さぶは「とても気の弱い藩長江」をイメージしてください(^^))

さぶは頭も要領も悪くて、いつも叱られてばかり。さぶを慰める栄二。

  ================
本文から。

「だめだ、おら(私)ほんとにとんま(バカ)でぐず(慢呑呑)で、自分でも続けられ
 やしねえ(続けられない)、もうたくさんだ」さぶは喉をつまらせた

.....

「女なんてそんなもんだ」と栄二が言った。「撫でた手でつねる(拧)し、つねった手で撫でるような
 事をする。そしてどっちもすぐに忘れちまうんだ(忘れてしまうんだ)」

.....

 「おれも正直に云おう」と栄二が深く息を吸いこんで、大きく吐きだしてから云った、「おめえ(お前)はな、
さぶ、おれにとっては厄介者どころか、いつも気持を支えてくれる大事な友達なんだ、正直に云うから怒らねえ
でくれよ、おめえはみんなからぐずと云われ、ぬけてるなどとも云われながら、辛抱づよく、黙って、石につい
た苔みてえに、しっかりと自分の仕事にとりついてきた、おらあ(俺は)その姿を見るたびに、心の中で自分に
云いきかせたもんだ、これが本当の職人根性ってもんだ、ってな」

 =======================

二人は親友だった。そして、いつかは自分達の店を持とうとまじめに頑張っていた時、栄二は高価な品物を
盗んだと言われ、「無実の罪」を着せられてしまう。
自分はそんな罪は犯していないと、いくら栄二が訴えても誰も耳を貸そうとしない。挙句の果てに栄二は袋
叩き(衆人囲打一人)にあって牢屋に入れられてしまう。\
栄二は激しく世間を憎む。
   ===========================
本文から。
栄二の着物から湯気がたちはじめ、体にあたたかみが感じられると、全身の筋肉や骨のふしぶし(各個関節)
が、熱をもったように痛みだした。ちくしょう綿文(架空の店の名前)のやつら、あの火消し人足(消防員)、
それから岡っ引(昔の警官)め、みんなぶち殺してくれるぞ。たとえ三十年五十年かかっても、必ずみんな
ぶち殺してやるぞ、と栄二は体じゅうの痛みにかけて誓うように、心の中で思った。

 ==================================

取調べに対しても、ふてくされる(闹情绪)だけの栄二はやがて「島流し」(流放到孤岛)になる。

【続く】











 
作者: youdariyu    时间: 2006-5-12 18:07
uoytihs_uuyrさん、まいどです(大阪の商売人がよく使う挨拶。毎度有り難うございますの省略形)
大阪弁がお上手ですね(^^)

日本の前首相である森さんが以前こんな事を言いました。

「大阪人には尊法精神が無い、大阪は痰壷だ(痰盂)」

痰壷かどうかはともかく、少なくとも大阪人に尊法精神が希薄なのは確かです。赤信号でも平気で
無視する。産業も停滞気味。
唯一テレビや芸能の「お笑い」分野では大阪はナンバーワンです。それしか無いともいえます(^^;

私の考える大阪の芸人の第一位はやっぱり落語家の桂米朝さん。この方の面白さを中国の
人に、いつか伝えたいけれど難しいですね。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-12 18:34
aokira さんこんにちは。

大阪の万国博覧会、1970年ですね。私は3回行きました(^^)。今度は上海が会場になるみたいですね。

1970年のあの頃は誰もが想像していました。21世紀になればマッハ(马赫)3の超音速機がぶーん(擬態語)と
飛んで、月まで簡単にどーん(擬態語)と行けて、100階建てくらいの高層ビルが、にょきにょき(擬態語)建って
いると。

ところが実際に21世紀になっても、それほど変わりませんでしたね。逆に環境問題のように悪化した面も多い。

でも今考えると、マッハ3で飛べても、月まで観光に行けても、100階のアパートに住めても、それが幸せな
んだろうかと思います。嗚呼(ため息、ああ)こんな事言うのは歳をとった証拠ですね(苦笑)
作者: sefirosu    时间: 2006-5-13 12:04
今読んでいるのは日経掲載中の≪世界を創った男 チンギス・ハン≫です。
今は、その妻ーーボスクル族出身のボルテがメルキト族の襲撃で捕らえられてしまったところまで読みました。戦場を駆けぬくかのチンギス・ハンもこんな悲惨な時期があったなあって感嘆中です。
それで、ちょっと気になる新堂の新作≪毒虫VS溝鼠≫を買おうかなって考え中
誰か読んだ人はいませんか
ほんとうに宣伝通りに『ページをめぐる手は休まることを知らない』なんですか
作者: youdariyu    时间: 2006-5-13 13:51
sefirosu さんこんにちは。

ジンギスカンについて、日本では井上靖の小説「蒼き狼」が有名です。ジンギスカンは偉大なる覇王
ですが、征服の過程でかなり残酷な事をしていますね。幼少期にさんざん迫害を受けて、それがトラ
ウマ(後遺症が残る精神的苦痛。中国語ではどう表現するんでしょう)になったのが理由だと言われて
います。愛妻ボルテの事件も彼に大きな苦痛を与えたでしょう。

「毒虫VS溝鼠」はこんな紹介文が載ってますね。
「あらゆる嫌がらせからブラックな脅しまで、人気シリーズならではの仕掛けが満載の痛快クライムノベル。
 あの「溝鼠」が戻ってきた! 復讐代行業を営む鷹場と、「毒虫」の通称で通る別れさせ屋・大黒とのバ\
 トルが描き出す、極彩色の地獄の世界。」
面白そうですが、読んだ人の感想は見つけられませんでした。「濃い(とても個性的、精力的という意味)」
男二人の戦いというと「十面埋伏」の金城武と劉徳華を想像してしまいます(^^)
作者: youdariyu    时间: 2006-5-13 14:48
琼瑶の小説「心有千千結」日本語拙訳です。
中国語の原作を、お持ちの方は較べてください。自然な日本語にするとこんな感じになります。
途中間違いが有りましたら私の能力不足です(^^;

「心有千千結」

第1章

午後の日差しが長い病院の廊下を照らしていた。江雨薇は不安な気持ちを鎮めようとことさらしっかりとした大きな足どりで階段を上り廊下を進み、やがて212号室のドアの前で立ち止まった。
「面会謝絶」の札がかけられたドアの中からなにやら怒鳴り声が聞こえる。彼女はしばらくじっと佇んでいたがやがて肩まである髪を整えナース帽をかぶりなおした。
この病室の患者はいったいどんな厄介者なのかしら。付き添い看護婦を3年やってきていろいろな患者にでくわしそのあしらい方も覚えた。彼女の「雇用主」であるたいていの患者にはもう臆すこともない。けれど今回だけはあのよく出来た婦長の大変な困りようが気になる。彼女は助けを請うように江雨薇に言ったのだ。

「江雨薇、212号室の耿おじいちゃんたった三日で付き添い看護婦をとうとう  11人もクビにしちゃったわ、もうたのみの綱はあなただけよ」

三日で11人!江雨薇はおもわず首を振った。耿克毅。きっとこの老人は顎で人を使うようなひどく傲慢な爺いに違いないわ。金持ちの習性ね。でもなんにしろここで逃げ出すわけには行かない。江雨薇、なんで貴女はよりによってこんな因果を職業を選んじゃったのかしらね。

ため息をつくと彼女はしっかりと前を向き顎を心もちつきだした。そうして勇気とパワーを取り入れるかのように。深呼吸を一回、なんとか自然な笑みが浮かんできた。あたしが12人目ってわけね。どうなることやら。笑みを保ちつつドアをノックした。返ってきたのは荒っぽい怒鳴り声。

「どこのくそったれか知らんがさっさと入れ!」

たいした歓迎だわ。江雨薇はおもわず苦笑した。ドアを開けて室内へ入ると一人の老人が車イスに座りこちらを背にして窓のほうを向いている。彼女の目にとびこんだのは老人のくしゃくしゃの白髪頭。老人のそばでは着飾った人妻らしき若い女が困り果てはれものにさわるように付き添っている。新しい看護婦の出現に彼女はようやくのお役御免と安心したかすぐさま老人にその事を告げた。老人は口をひらいた。

「なにもんだと」

人をすくませ威圧する声。江雨薇はかまわず微笑んだまま答えた。

「あなたの12番目がまいりましたわ」

いきなり老人は車イスごと身体を彼女のほうに向け彼女をにらみつけた。それは江雨薇がこれまで出会った事のない鋭いまなざしだった。相手を射すくめる眼光から凍てつくような冷たさが感じられた。その表情は今にも雷を落とさんばかりに険しい。

「なんだと」

老人は大声で怒鳴った。

「あなたの12番目と申し上げたのですわ」

江雨薇は明瞭に答えた。老人のものすごいけんまくにもひるむどころか彼女は却っておかしさを覚え始めていた。まあ本当、まさに怪物おじいちゃんね。
笑みが彼女の顔全体に広がっていった。

「聞くところによればあなたはたった三日で11人の付き添い看護婦を取り替え たそうですね。私でちょうど12人。もし私も追っ払ったらちょうどまとめて1ダース達成ですわ」

彼女は答えそして笑った。老人はあっけにとられたように頑固そうな太い眉を寄せ、厳しい目つきでうさんくそうに彼女を睨んだ。

「ふん」

老人は吼えた。

「お前はわしに追い出されると決めてるみたいだな」

「そうですわね」

彼女はうなづいた。

「私はあなたの言いなりになる気はありませんから」

「はっ!おい聞いたか!」

老人は傍らの若い女に唸った。

「この看護婦はいきなりわしを脅かしやがる」

女は江雨薇をじろりと一瞥すると媚びるように老人にすり寄った。

「パパ、いやならこんなのまた取り替えちゃえばいいのよ」

江雨薇もそれこそ願ったりだ。

「わかりました、それじゃ13番目の犠牲者を呼んできますわ」

「待て!」

老人が大声で叫んだ。出ていこうとした江雨薇は振り返った。老人がにらみつけている。

「わしの面倒見させられるのはとんでもない不運ってわけか」\

老人は尋ねた。

「ええ。少なくとも先の11人はそう申してますわ」

江雨薇は笑みを崩さずあっけらかんと答えた。老人は頭をかしげ横目で江雨薇を見た。そしてにわかに悪ガキのようないたずらっぽい笑みを口の端に浮かべた。

「よしわかった。12番目、お前はわしを一目見て見放したくなったらしいな。 そうさ楽じゃないぞ。だが13番目はいらん。その不運な犠牲者はお前の役だ」\

江雨薇の眉がかすかに動いたがやはり笑んだまま答えた。

「お決めになりましたの」

「そうだ」老人は怒ったように言った。

「ではそうするよりありませんわね」

江雨薇は肩をすぼめて仕方がないという顔をした。

「但しいつでも追っ払っていただいてかまいませんわ。それに私も」

江雨薇はそっと含み笑いをした。

「始めにお断りしておきますがあなたのわがままに耐えられなくなったら いつでも辞めさせていただきますから」

「なんてこった」

老人はうめいた。

「まだ脅かしやがる」

「脅かしじゃありませんわ」

彼女はひそみ笑いした。

「言いなりになる気はないと申し上げましたわね。後悔するなら今のうちです わ」

「後悔だと」

老人は目を剥き鼻息も荒くわめいた。

「わしに後悔なんぞない。たとえなんであれ自分で決めた事に後悔はせんぞ。わ しから逃げようなんて了見は起こすんじゃない、今からお前はわしだけの看護婦だ。わかったか」

「はいはい。どうやらそうするしかないようですわね」

江雨薇が老人に近寄り口をとがらすと小さなえくぼが現れた。

「仕事もよっぽど考えて選ばないといけませんわね。じゃあおじいちゃんもしも私の間違いでなければこれから歩行の訓練ですけどよろしうございますかしら?」

言うが早いか彼女は壁にかけてあった老人の杖を持った。

「では早速まいりましょうか」

老人はすが目で彼女を見やるとだんだんと狡猾な表情が消えていった。突然顔をあげると笑い出した。それがあまりに唐突だったので横にいた若い女は跳び上がった。女はあわてて老人に尋ねた。

「なにがおかしいのパパ、どうしちゃったの?」

老人は笑い続け、その視線は女を押しのけて江雨薇に注がれた。

「この耿克毅、お前のようなのに出会ったのも一生に一度の不覚だな、12番、入ってきたとたんわしに命令するとは。さからっても無駄なようだ」

老人は車椅子の手すりを叩いた。

「その調子でしっかりわしの世話をつとめあげるんだぞ」

江雨薇も笑みを返した。やれやれどうやら13番は頼まなくていいようね。それにしても先が思いやられちゃうわ、彼女はため息をついた。だが彼女はその時まだ老人がいかに慎重に彼女を観察してるかに気づかなかった。彼女はなぜか頬が赤くなり妙に胸さわぎするのを感じた。

「よし」

老人は真顔に戻ると彼女を上から下までまるで商品を値踏みするように眺めた。そしてようやく得心したのかこう尋ねた。

「他に名前があるなら言ってみろ、12番」

「ございますわ」

彼女は微笑んだ。

「江雨薇と申します。雨に咲く薔薇です」

「江雨薇か」

老人は噛みしめるようにつぶやいた。

「悪くない名前じゃな、だがしおらし過ぎる。似あっとらん」

老人は眉じりを上げるとくるりと向きを変え若い女に冷淡に告げた。

「美珂、お前は帰れ。もう用はない」

女は肩の荷が降りたようにほっとため息をついたがすぐに愛想笑いを浮かべた。

「じゃあ明日は培華と一緒に来るわね」

「もういい、もういい!」

老人は追い払うように手を振った。

「お前らには来ていらん。わしにはすでに看護婦もいるしな。心配はいらん。わしは当分死なんし御機嫌とりもたくさんだ」

「パパったら!」

人妻はすこぶる不満のようすでじろりと江雨薇をにらんだ。

「どうしてそんなこと言うの、あたし達はただ・・」

「お前らの考えはわかっとる!」

老人は女の言葉をさえぎったがすぐ柔和な顔に戻った。

「よいよい、お前は2時間もわしの近くで針のむしろに座ったんだからもう十分だ。これ以上我慢せんでいい。さあ帰んなさい」

女は唇を噛んだ。江雨薇は彼女の目に浮かんだかすかな恨みの光を見逃さなかった。この時はじめて江雨薇は彼女をまじまじ観察した。
パーマのかかった短い髪、濃く塗られた眉、美しいと言ってよい瞳、均整のとれた身体、誂えられた旗袍(チーパオ)はピンク地に淡いブルーの縁取りがしつらえられ、女は全身から裕福さを漂わせていた。しかしその裕福の正体は傲慢と卑俗。金持ちの娘という看板をまるで鼻からぶら下げているかのよう。
 江雨薇は老人と女の間にかすかな葛藤があるのを敏感に感じとった。三年間、付き添い看護婦をやってきて様々な人間に出会った。わかったのは人と人の奇妙で複雑な関係においてなにがあっても不思議ではないということだ。

「わかったわ」

女はハンドバッグを手にすると憤然と鎌首をもたげてその大きな目で冷たく江雨薇を見据えた。

「じゃあ後はよろしくお願いしますわね江さん、父をおまかせしますから間違っても粗相のないように」

「安心しろ」

老人は横から口を出した。

「この子なら毒を盛ったりせんだろうからな」

女は一瞬唖然として何か言いかけたが遂に無言で部屋を出ていった。江雨薇はドアを閉めると自らの雇用主に向き直った。

「娘さんに冷たすぎるんじゃありませんか」

彼女は素直に述べた。

「娘だと」

老人は鼻で笑った。

「おかげさまでそんなもんはおらんよ。美珂は息子の嫁だ。わしが死ぬのが待ちきれんらしい」

江雨薇はまっすぐ老人を見つめた。

「あなたは誰にでもそんな憎まれ口をきかれるんですか」

老人は厳しい目で見返した。

「どうしてだ」

彼は反問した。

「わしを責めるのか」

「私が?」

江雨薇は含み笑いした。

「私はあなたに雇われただけですわ、責める権利なんてありません」

「もうとっくに責めてやがる」

老人は言い放った。

「お前の顔も態度も全部わしを非難しておる。こんな爺は嫌いだろうが」

「私は付き添い看護婦としての職務を全うするだけです。御主人様を好きか嫌いかは関係ありません」

「お利口な答えだな」

老人はふんと鼻をならすとますます眼光を鋭くして彼女の目をのぞきこんだ。

「わしは気が短いんだ、いい加減むかついてきたぞ」

「私をクビにするならまだ間に合いますわよ」

「いいや」

老人はゆっくり首を振った。

「そんなことは考えるな。わしはもう決めたんだ。さあ」

老人はいらつくように大声で言った。

「なにをぼやぼやしとる、仕事をはじめろ、わしを立ち上がらせるんだ、一生こんな車椅子の上なんてまっぴらだ」

江雨薇は進み出るとステッキを老人に手渡した。立ち上がるのを助けようと彼女が老人と視線をあわした時彼女はふっと当惑を感じた。なぜならその酷薄な老人の目の奥に意外なぬくもりを見たからだ。だが彼女がそれをたしかめようとした時そのぬくもりは再び氷のような冷酷さへ変わっていた。

「もっと肩をこっちへ近づけんか」

老人は命令した。彼女はさらにそばへ寄り老人に肩を貸した。苦労して立ち上がり杖に力をこめて老人はようやく身体を動かし、そして大声で呪いの言葉を吐いた。江雨薇は老人の腕を支えながらそのあまりのか細さに驚いていた。もしやこの老人の体力は今まさに失われようとしているのでは。それなのにこの眼差しから感じられる生命力の強さはどうだろう。

「ぼさっとするな」

老人は特に彼女に聞かせるためでもなくしゃがれ声でつぶやいた。

「もって後1年。医者がはっきり言いおったわ」

彼女はおもわず顔を上げて老人を見つめた。その言葉の真偽をたしかめようと。老人の眼はそれが冗談でないことを告げていた。

「だがたとえ一ケ月だろうと寝たきりになんぞなってたまるか」

老人は彼女に促した。

「わかったか、だからわしを支えろ、ちゃんと歩けるようにな」

彼女の介助する手に力がこめられた。しばらく彼女は動転し言葉を失っていた。これまで色々な患者に出会ったがこれほど・・耿克毅のようにこれほど強い印象を与える患者は初めてだった。彼女は一歩づつ老人に寄り添い歩いた。
それは生きる為というよりむしろ死への道を一筋に進んでいるようだった。だが彼女は感じていた。老人にとってはもはや立ち止まる事は許されず歩き続けるしかないことを。


第2章


江雨薇は椅子に腰かけ老人の寝ている姿をじっと眺めていた。彼女が老人の担当になって二日目の午後である。
 彼女はすでに黄医師と婦長から老人の病状を聞いていた。老人のベッドの上には掛けられた札には簡単にこう記されてある。

<耿克毅、河北出身、68歳、男性、病名:両足麻痺>

だが老人の本当の病名は「心臓動脈腫瘍及び肝硬変」。四日前に老人は別の大病院からここへ移送されてきたのだ。老人はその病院が台北でも最高級であるにかかわらずその設備をこき下ろし病室が最低だとさんざんけなした。老人はそこで半月以上治療を受けかなり回復していたという。老人は自ら余命1年以内と告げた。しかしまた老人は誰もが驚くような速さで歩行能力を回復していた。黄医師は理解できないという風に言った。

「どんな医師でも治せやしないよ。よしんばつかのま歩けるようになっても それからいったいどれだけもつっていうんだ」

江雨薇だけは深く理解していた。たとえ一日でも一時間でも一分でも老人は歩く権利を取り戻そうとしていたのだ。永遠にくじけず屈さない、老人はそういう人間なのだろう。

老人は眠っていた。午前中いっぱい要した注射と服薬、物理治療、電気治療・・それら諸々は人を疲れ果てさせるには充分だ。さらに老人はその間じゅうずっと治療にあたった医師とその現代医術を罵り続けた。そして自分の自由にならない両足を罵り車椅子を罵りおまけに口のへらない生意気なこの付き添い看護婦を罵った。
 さすがに疲れ夢のあいだをさまよう老人であったがいったいどんな夢を見ていることであろう。その表情は穏やかと言うにはほど遠く苦しげに眉はつり上がり口は堅く結ばれ肌は堅くこわばり、老人が悪夢をさまよっていることをはっきりと示していた。あるいは老人が潜在意識下で死の恐怖と戦っているのだろうか。もしやそうなのかも。老人の寝顔にはただものならぬ苦悩と孤独が滲んでいた。

彼女はぼんやりとその顔をみながら考えた。この数年付き添ってきたのはよほどの重病人かあるいは金持ちの患者。それゆえ患者のたどる道はいつも二つだ。一つは無事退院。もう一つは霊安室。そして耿老人はどちらをたどるのだろう。黄医師はこう言った。

「彼の足がもう少しよくなったら退院できる。それから注射と投薬を続けて療養するわけだがおそらく一年以内にいつ「その日」が来てもおかしくない」

彼女は老人が早く退院してくれる事を願った。霊安室で老人と相対するのだけはとにかく避けたかった。なぜだろう、これまで少なからぬ数の臨終に居合わせ人が死に翻弄されるのを眺めそして誰もが遂に霊安室へと向かった。看護婦になりたての頃患者の死に出会うたび食事は喉を通らず心苛まれ吐き気に襲われ患者の家族と共に泣いた。そしていつしか彼女もそれに慣れ動揺することもなくなった。彼女は悟ったのだ。死は誰にもいつかはやってくる。逃れる術はないと。
 けれどこの老人の死だけはなぜそうして受け入れる事が出来ないのだろう。彼女にはどうしても理解できなかった。なぜ?

老人は寝返りをうつと軽い寝息をたてた。今は熟睡しているのか表情から凶暴さは消え穏やかな好々爺のようだ。季節も秋を迎えたが依然暑く額には汗の粒が浮かんでいる。江雨薇はそっと立ち上がるとテーブルの上のガーゼを取り額の汗を静かに拭いた。かすかな感触だったが老人はそれをきっかけに急に寝返りをうつと二文字の単語を口にした。

「若成・・・」

若成?いったいなんの名前かしら。人?会社?あるいはもっと他のなにか?江雨薇は老人を見つめ直した。老人の穏やかだった寝顔にしだいに不安の色が広がっていく。表情はゆがみ痩せた指先はシーツをかく。老人は不明瞭なつぶやきを苦しそうに洩らしたが彼女がようやく聞き取れたわずかな数語は呪詛の言葉だった。

「この馬鹿め・・くそったれ・・たわけもんが・・・」

まあ、夢でも罵ることを忘れないのね。江雨薇は思わず苦笑した。しかし老人は身体を一瞬痙攣させたかと思うと突然大きく叫んだ。まるで傷ついた野獣が悲しげに咆哮するように。

「若成!」

その一声はあまりに明瞭でしかもすさまじく江雨薇をひどく驚かした。だが彼女があわてて近づくと老人の顔は再び静かな眠りのそれへと戻った。そして今度はやさしくささやくようにつぶやいた。

「シァオシァ、行かないでくれ、おねがいだ・・」

シァオシァ??小佳かしら?彼女は身も知らぬ誰かに思いをめぐらしつつやはり老人の顔を眺め続けた。今度はいったい誰なの。行かないでくれだなんてこの性格強固な老人に言わせるなんて。夢の中でかつての恋を思い出しているのかしら。もちろん恋の一つもしない人なんているはずもないけれど。彼女はぼんやりとそう考えた。

その時老人はあくびを一つすると突然目覚めた。老人は瞼を開け一瞬視線を泳がせたがすぐに江雨薇を認めると頭をふりながらぶつぶつといつもの調子でつぶやいた。

「・・お前はどこのくそったれだ?」

江雨薇はあきれた。やれやれ目が覚めたらいきなりこれだわ。おまけに彼女が誰だったかまで忘れてしまうなんて。彼女は小さく息を吸い込むとおだやかに微笑みかけた。

「お忘れですか。あなたの12番目ですわ」

「12番目」

老人は目を見開きようやく気がついたようだ。

「そうだ、お前はあのへんてこな看護婦だったな」

彼女は婉然と微笑むと身を翻し浴室に入りタオル手にしてきた。特等病室なのでほとんど一流ホテルと変わらない。

「よく眠ってらっしゃいましたわ」

彼女はタオルを老人に手渡すとベッドから身を起こすのを助けた。

「少なくとも2時間はお休みでした。睡眠はあなたの場合とても大切です」

彼女は笑んだまま続けた。

「夢の中でも怒鳴るのを忘れませんのね」

老人はぎょろりと彼女を睨んだ。

「寝言でも言ったか」

「ええ」

彼女ははじけるように笑った。

「まるで子供みたいに」

「ふん」

老人は鼻をならすと戒めるように言った。

「わしを子供扱いするんじゃない」

「あれもいけないこれもいけないが多すぎますわ」

彼女はシーツを整えながらやはり笑いながら答えた。

「あなたのような我が儘な病人は初めてです。本当にあなたのまわりの人で癇癪玉をぶつけられない人はいるのかしら」

「わしの精神分析でもしたいか」

老人はさらに眼光を増して彼女を見据えた。

「言っとくがわしについてきれい事のごたくを見つけようたって無駄だぞ。わしは人ぞ知る極悪爺いだからな」

「そう思いこんでおられるだけじゃありませんの」

江雨薇は素直に思ったままを言った。

「思いこむとはどういうことだ」

「誰でも必ずひとつは心やさしくなれるなにかを持っているものですわ」

老人の濃い眉の下の目が獰猛に光った。

「聞いたふうな事ぬかすな。わしのどこにそんな甘ったるいもんがある」

彼女は頭を上げるとにこりと笑った。

「小嘉(シァオシァ)さんてどなたですの?」

突然老人の眼が冷たく光り刃のように彼女を貫いた。まるで殺意さえ感じられるほどに。

「なんでその名前を知っている」

彼女は一瞬ひるんだがすぐに毅然と答えた。

「あなたが自分でおっしゃいました」

「わしが言っただと」

老人は吼えた。

「ええ、寝言でその名前を口にされましたわ」

彼女はじっと老人の目を見据えて答えた。

「寝言?」

老人はしばし呆然とすると首をかしげ信じられないとでも言いたげに彼女を見た。しだいに表情から凶暴さは薄れ元のやつれた老人らしさがとって現れた。

「馬鹿馬鹿しい」

老人は吐き捨てるように言った

「うわ言を真に受けるんじゃない」

「あら、夢は正直ですわ」

すかさず彼女は反論した。老人はもういちど彼女をにらみつけた。

「このくそたわけのばかもんが」

老人は吼えた。

「なんでお前みたいなのを付き添いに選んじまったんだ」

「いつでもクビになさってくださいな」

「ふん」

老人は一言大きく唸ると窓の向こうに目を移した。戸外の陽光を眺めながらひととき考え事をしていたがやがて彼女を見て探りを入れるように尋ねた。

「他になにか言ったか、わしは」

「人を罵ってましたわ」

彼女は答えた。

「はっ」

老人は当然という顔をした。

「罵り足りることはないからな」

「それからもう一言・・・若成・・と」

そう言った瞬間だった。老人は青ざめたちまち凶暴な形相に変わると手を伸ばし彼女の腕を掴んだ。その手には信じられないほどの力がこめられ彼女は腕に焼けるような痛みを感じた。そして取って食わんばかりの激しさで彼女に向かって罵りたてた。

「誰がその名前を口にして良いと言った!ええ誰だ!もしもういちどその名前をわしの前で言ってみろお前を八つ裂きにしてやる!わかったかこの馬鹿野郎!くそったれが!ぶち殺すぞ!・・」

まるで潮のように老人の口からはとめどなく罵詈雑言が吐き出された。その形相は凶暴で血の気がなく江雨薇は驚きと恐怖と怒りにうちのめされた。それは彼女にとって忍耐の限度をはるかに越えるものだった。何年か看護婦をしてきてこれほどの侮辱を味わったことはなかった。彼女はどうにか手をふりほどき逃れたが身体の震えと動揺は収まらなかった。

「あなたはまるで野獣ですわ・・私はもう・・」

彼女が「辞めます」と叫ぼうとしたまさにその時、ドアを叩く音がした。よかった、たぶん回診の時間だわ。彼女は医師にありのままを話そうと思った。この老人は身体以外に精神に異常があるに違いない、いえもうほとんどキじるしだわ。

しかし彼女が急いでドアを開けるとそこにいたのは医師でなく身だしなみ良く背広を着た二人の中年の男性だった。

「あっ」

彼女は言いかけた言葉をのみこむと看護婦の職業本能で無意識に答えていた。

「耿さんは面会謝絶です」

「私たちは客ではありませんよ」

背の高いほうの一人が微笑して言った。

「耿克毅の息子です」

「あっ、はい」

江雨薇はあわてて身をひくと二人を招き入れた。まださっきの恐ろしいショックから醒めやらぬ彼女だったがたちまちまた耿克毅のあの罵声にみまわれるはめになった。

「ふん、親孝行な息子ども。何の用だ」

「お父さん」

背の高いほうが腰をかがめ近づいた。

「ご機嫌如何です。なにかまたお気にさわることでもありましたか?」

「お前らの知ったこっちゃない」

老人は冷たく言い放つと彼らに背中を向けた。

「培中、培華、少しでもわしを思いやる頭があるならわしにかまうな。静かにすごさせろ。わしはお前たちの顔もお前の嫁たちも見たくはない」

のっぽのほう_耿培中_は歳の頃四十、鼻筋とおった美男だった、彼は上品に微笑むと振り向いて言った。

「わかりました。培華、それじゃあ行こうか。無理に居座ってもお気に召されないなら仕方がない。お父さん。くれぐれもお大事に。」

「安心しろ、わしはまだ死にきれん」

老人は陰々滅々と答えた。

「お父さん」

もう一人_耿培華_が口を開いた。彼は兄より背も低くまた太っていて、そして兄ほどの自制心もないらしかった。

「父さんはどうして僕たちのところへ来て一緒に暮らさないんだよ」

「早く出ていけ」

老人は振り向きもせず手を振った。

「わしの邪魔をするな、わしはもう眠るぞ」

「わかったよ」

培華はベッドのそばで憤懣やるかたなく言い放った。

「行くさ、俺たちはいやがられるだけだ。どうせ父さんのお気に入りは若成だけなんだろ!」

電光石火の速さで老人はふりむいた。江雨薇がいったい何事が起こったのかを認める間もなく鋭いビンタの音が響いた。老人が培華を殴りつけていたのだ。耿培中はすばやく培華を引き寄せひそひそとささやいた。

「培華、辛抱しろってあれほど言ったじゃないか・・」

兄弟二人はさっさと出て行きドアは再びぴしゃりと閉められた。江雨薇はそこに佇んだまましばらく呆然としていた。息子が二人慌ただしく見舞いに来て帰った。まさに一瞬!こんな家庭、こんな親子関係があっていいのだろうか。やがて彼女はたった数分前に老人からひどい侮辱を受けた事を思いだした。彼女は振り返り耿克毅を見た。辞めますという言葉は喉まで出かかっていた。しかし彼女は新たな局面に出くわし激しく驚いた。あの冷酷、頑固で非情きわまりない筈の老人が今は枕に顔を埋め弱々しく打ちひしがれているのだ。その両眼には涙さえ光っている。泣いてるんだわ。泣いてる。それはなによりも江雨薇を驚かせた。この鬼のような老人の眼にまさか涙を見るなんて。彼女はベッドに近寄り身をかがめると急いで尋ねた。

「耿さん、大丈夫ですか」

老人は身震いを一つすると彼女を見上げた。老人のその眼の奥にはただ真摯さと辛労とそして悲しみがあった。

「辞めないでくれ・・」

老人はかすれ声で言った。

「ここにいてくれ・・わしらは仲良くやれる筈だ」

老人は彼女の気持ちを見通していたのだろうか。彼女はそっとシーツを軽くなでつけるふりをした。

「辞めるだなんて・・誰がそんなことを?」

彼女は口ごもりつつ答えた。彼女は少し視線をさまよわせたが次ぎに発せられた声には決意が込められていた。

「さあ歩行練習ですわ。もし一生車椅子のままがお嫌でしたら!」

老人が彼女を見た時すでにその眼から涙は消え、彼は再び頑強きわまりない鉄の老人に戻っていた。その口元には一種賞賛の笑みさえ見られた。______
老人は愛おしささえ込めて言った。

「わしの娘になれ」

「はい?」

彼女はぽかんとした。

「お前をわしの娘にすることにした」

老人はにんまり笑った。

「あらら」

彼女はやれやれと言うように

「そうするとまた私にいっぱい憎まれ口をたたくことができますものね」

二人は眼をあわせるとどちらともなく笑い出した。

「口のへらん奴だ」

老人はそう言うと手を彼女にさしのべた。

「さっ手を貸せ起きるぞ」

その日はそうして和やかに過ぎた。彼女は再び老人の家庭とそして”若成”の謎には触れなかった。夜になり彼女は夜勤担当の付き添い看護婦に引き継いだ。(まったく、彼女は毎晩別の看護婦を頼まなければいけなかったのだ)
彼女はようやく212号室を後にした。

言いようのない疲労と気分を抱えて彼女はゆっくりと長い廊下を通り階段に向かった。その廊下のつきあたり階段のそばに置かれたソファーに一人の若い男が座っていた。彼は突然立ち上がると彼女の前に立ちはだかった。

彼女は驚きその見知らぬ男を見据えた、背はすらりと高く、瞳は光を放ち、黒い髪はくしゃくしゃだが鼻筋は通り唇は薄く意志の強さを示していた。そり残しの顎髭と開いたシャツの襟、破れた古いGジャン、洗いざらして白くなったGパン。身なりのだらしなさと、いかにもきかん気の顔だちにかかわらずかえってそれが独特の男っぽさを漂わせていた。

「なにか?」

彼女はいぶかしげに尋ねた。

「あんただね、耿克毅の付き添いをしてるのは」

彼は尋ねた。

「ええ」

「彼の病気はどんな具合だ。それだけ教えてくれ」

若い男は彼女に向かいぶっきらぼうに聞いた。

「あなたはどなたです」

「俺が誰だっていいじゃないか!教えろよ」

唇を噛んだ若い男の眼に一抹の影があった。

「彼は死ぬのか」

「あなた・・」

彼女はためらいつつ答えた。

「お知りになりたければ主治医の先生におたずねになってください。私よりもご存じですわ」

「でもあんたもおおよそは知ってる筈だ、そうだろ」

彼は荒々しく言うと非常な剣幕でせきたてた。

「今は良好です、でも・・おそらく一年以内の命だとか・・」

有無を言わさぬ彼の気迫に彼女は抗しきれないまま真実を述べた。彼は一瞬打ち震えるとすばやく彼女に背を向けた。彼女は彼が手の甲を口に持ってゆき噛みしめるのを見てとった。彼の身体はこわばり震えた。まるで激しいショックを受けたかのように。けれどすぐに向き直ると青ざめた顔色以外いかなる動揺も見いだせなかった。

「ありがとう看護婦さん」

かすれた無愛想な声で彼は言った。

「俺が来たことは言わないでくれ。喜ばれやしないからな」

「でも・・あなたはいったい誰?」

彼はじっと彼女を見た。彼のその眼差しは沈み謎を秘め、寂寞と空虚と凄惨で満たされていた。

「名無しのゴンベさ」

彼はぽつりと答えた。

「ええ?どういうこと?」

彼女は眼を丸くして聞き返した。

「もしも呼びたけりゃ”若塵”と呼んでくれ。字はゴミ同然て意味の塵さ。わかるかい。なんの値打ちもなけりゃ重みもない。風に吹かれて飛んでゆきそれでオシマイって意味さ。」

彼は自嘲の笑いをうかべるとまた言った。

「あんたには感謝するよ」

振り向くと彼はまたたくまに階段を駆け下りやがて見えなくなった。彼女はそこへ佇んでいた。若成・・ルオチェン・・若塵・・やはりルオチェン。この不思議な名前の一致は?今まで彼女は”若成”だと思っていたが本当は”若塵”なのかも。まるでゴミ同然・・。あなたはいったい誰?耿一家!不思議な老人!彼女がこの職について以来始めて知る変わった人物であることに間違いはない。


第3章


「夕べの看護婦はわしを殺そうとしやがった」

耿克毅は車椅子に座って吼えた。

「でくのぼうのとんまめ、あいつはお前の教えたことをちっともわかっとらん、まったくお前たちは何年看護婦の訓練をしてきた。いったいどうやればあんなできそこないができるんだ。一昨日の奴なんぞわしがほんのちょっと怒鳴っただけでいきなり泣き出しやがるし」

江雨薇はベッドの整理をしながら背中で聞いていたが老人に向き直ると言った。

「看護婦は普通の患者さんを想定して訓練しますわ、あなたのような方は例外です、耿さん」

「要するにわしのほうが異常だって言うことか」

「そうじゃありません、あなたは例外だということです」

「どう例外なんだ」

「ご自分でおわかりになりませんの」

彼女は少し考え込んでから言った。

「短気で怒りっぽくて神経質で強情で傍若無人でむらっ気で近寄り難い。こういう人には大概の者は辛抱できません。決して彼女らを責めないでください。いじめられるのを我慢するのは業務外ですわ」

「おいおい」

老人はほとんど白目を剥いた。

「人を暴君扱いしやがる」

「そう言ってもいいかもしれません」

彼女は少し考えた。

「誰でも自分の心の王国では暴君でかまいません。けれど王国を一歩出ればもうその権利はなくなります」

老人はまるで不思議なものでも見るように彼女を見つめた。やがてしばらく黙って考えこむと車椅子をくるりと動かし窓に向かいそっとつぶやいた。

「変わった女だなお前さんは。ユニークきわまりない」

「別にユニークじゃありませんわ」

彼女はおかしそうに答えた。

「普通よりはちょっとしぶといでしょうけど。くじけるのが嫌なだけなんです」

「だからわしをこらしめるってわけだな」

「どうしてです?」

彼女は眉をしかめた。

「あなたは絶対にくじけるような人ではありません。あなたの担当を勤めるのは私にとってこの仕事を続ける上でのひとつの試練でもあります」

「それに他につとまる者もおらんしな」

「そういうことです」

老人は窓のところからとってかえすと彼女が慣れた手つきでシーツを取り替えるのを、彼女が忙しげに部屋を片づけるのを見守った。それから老人は彼女の溌剌として意志が強く機知にあふれた面立ちを見やった。聡明で表現力豊かな瞳、小さくよく動く口、細長い眉、ちょこんとした鼻、頬のえくぼ・・老人はその時初めてこのへんてこな看護婦が人をして振り返らせるほどの魅力を備えていることに気づいたのだ。老人はふいに笑って言った。

「お前さんもやっぱり自分自身の王国じゃ暴君なのかね」

「私ですか?」

彼女は少しぽかんとしたがすぐに眼差しを伏せた。

「私の世界なんてあまりにちっぽけです。暴君が住むほどの値打ちもありません」

「ちっぽけでくその値打ちもないだと」

老人は彼女を見つめた。

「そんな事はあるまい。お前みたいな良くできた娘ならもっと大きな可能性が
 あるはずだ」

彼女は老人の言葉が意味するところに感づくと少し頬を赤らめてうなづいた。

「ええ、おっしゃるように私も大きな望みがありますわ。でもそれはやはり自分
 の思い通りにはなりません」

「わしが保証してやろう、いつかどこかの若いのがお前さんの王国を独り占め
 にしようとやって来る筈だ」

老人は笑った。

「それともとっくにのさばっとるか」

江雨薇は儀礼的な笑みをかえした。

「では耿さん、お話しが長くなりましたがそろそろ治療室に向かう時間ですわ」

「まだ半時間もあるじゃないか」

老人は時計を見た。

「まだまだ話す時間はやまほどあるぞ。お前さんの彼氏はどんな奴だ、言っても減るもんじゃなかろう」

彼女は仕事をする手をぴたりと止め、老人を正面から見つめるとベッドの縁に腰をおろした。

「わかりました。私の素性をお知りになりたいのですね」

彼女は両手でスカートのひだをなでつけ老人から眼をそらし語った。

「あなたは経済界の重鎮でらっしゃいますわね耿さん。そして大富豪。私はあなたが裸一貫からここまでの地位を築かれたことを知っています」

「おいおい、そうじゃないぞ。わしはお前さん自身のことを聞きたいんだ」

老人は眉をしかめた。

「わかっています」

彼女はゆっくりうなづいた。顔からはすっと血の気がひいていくように見える。

「私の父もそうでした。同じ裸一貫から事業を興したのです。でもあなたは成功し父は失敗しました。母は私が幼い頃に世を去りましたが私と二人の弟はずっと苦労も知らず育ちました。父の事業が順調だと思いこんでいたのです。けれ
 ど私が中学生になった頃、父は破産し工場は没収されました。家は競売に出され父はその痛手から立ち直れずとうとう自らの命を絶ちました。15才の私と幼い二人の弟とそして永遠に償いきれない債務を残して」

彼女はそこで言葉を切った。大きな瞳はやはり目の前の老人から視線をそらしたままだ。老人は眉をよせて彼女のまだ幼さの残る顔をじっと見つめている。

「私には悲しんでいる暇などありませんでした」

彼女は続けた。

「私は弟たちに告げました。もう甘えてはいられないと。私は看護学校に 入り夜はノート写しや謄写のバイトもしました。上の弟は毎朝自転車で新聞を 配達し下の弟はまだ幼いながら私達二人のためにご飯をつくり弁当をこしらえ
 てくれました。私達は勉強を続けるためにどんな人よりも苦労しましたがかえってそれは私達の絆を強めたのです。
 そうして私は学校を卒業してから迷わず付き添い看護婦になり、いろいろ様々な患者さんに接し経験を重ねました。休暇は取らず毎日残業をしたおかげで普通の付き添いよりも多くの稼ぎになりました。それでようやく弟は新聞配達を
 しなくてすむようになったのです」

彼女はそこで微笑むと心持ち誇らしげに顎をすっと上げた。

「そして今、上の弟は師範大学教育課三年に在籍し下の弟はこの夏とうとう台湾大学の中国文学科に合格しました」

彼女は言い終わると老人を見た。

「これで私の全てをお話ししましたわ」

老人はじっと仔細深げに彼女を見ながら言った。

「お前と弟さん達は一緒に住んでるのか」

「いいえ弟達は学校の宿舎です。私達に部屋を借りれるお金はありません。私は病院の近くのアパートを看護婦寮にしています」

老人は彼女を見つめ続けた。

「お前は今いくつになる」

「22歳です」

彼女はすらすらと答えた。

「私と弟達とはそれぞれ2歳づつ離れています。20歳と18歳。以上。」

彼女の眼差しはいきいきと輝いていた。

「もっとお知りになりたいことがありまして?」

「好きな男の話はまだしとらんぞ」

「あはは」

彼女は小さく笑うと首をかしげしばし考えてから言った。

「笑っちゃいますけどこれまで一人も好きな人はいませんでした。きっとあんまり忙しすぎたから恋をする暇もなかったんだわ」

「しかし言い寄って来る奴はいただろう」

「あはは!」

彼女はもっと笑った。

「少なくとも1ダースくらいは」

「ろくな奴はおらんのか」

「たぶんその中の一人と結婚するかもしれませんわ」

彼女は言った。

「それが誰かまだはっきりしませんけど・・でも80%くらいは医者だと思います。」

「どうして?」

「だって看護婦と医者の夫婦。一番ありふれてるじゃありませんか」

彼女はベッドから立ち上がると突然とまどいを覚えた。いったいどうしてかしら。これまでこんな話は誰にもしたことがなかったのに、どうしてこのお爺ちゃんに?彼女の笑顔は消え眼差しは沈んだ。彼女は首を振ると小さくため息をついた。

「これぐらいでいいでしょう。私の身の上話なんて聞くだけ無駄です。さっ、治療の時間ですわ。」

老人は今度は反抗しなかった。彼女の言うがままに治療室へ向かうと注射、物理治療と続けて行った。その日の老人は素直で忍耐強く癇癪を爆発させることも咆哮することもなかった。ただじっと江雨薇を見ては考え事をして彼女を落ち着かなくさせてはいたが。日も暮れた頃彼女は老人に尋ねた。

「今日はとても大人しくてらっしゃいますのね」

「考えてな」

老人は言葉を選びつつ言った。

「たしかにわしには暴君として振る舞う権利はない。それにお前の肩の荷をこれ以上重くする必要もない」

彼女は驚きすぐに老人の顔を見た。老人の眼には最初の日に彼女が感じた慈愛と優しさの光りがあった。どうしてあの凶暴なうわべから想像できよう。彼女は身をかがめると思わず言葉が口をついて出た。

「耿さんおかまいなく。私の苦労なんてあなたの悩みに比べればとるにたりない事ですわ。癇癪おこしたければいつでもどうぞ。私ぜんぜん平気です」

老人の眼つきが沈んだ。

「なんでお前がわしの悩みを知っとる」

老人はかすれ声で唸りだした。眉が真ん中によってくる。これこそ癇癪の前ぶれだ。

「今日でもう四日間担当を勤めました。私にも眼と耳がありますからそれなりの観察は出来て当然ですわ」

彼女は老人の痩せた背中にそっと手を載せ柔らかく暖かな眼差しで見つめた。

「お悩みなのでしょう。耿さん」

「でまかせを言うな」

老人はたちまち噴火した。

「お前なんかに何がわかる」

「本当の事はわかりません」

彼女はうなづいたがもう一度繰り返した。

「それでもやっぱりわかります。あなたが苦しんでることが。事業に成功し大金持ちで子供も車も家もなにひとつ不足はない。人も羨む生活。でも・・あなたはやはり幸せそうには見えません」

老人の眼つきが厳しくなった。

「わしに説教するつもりかな。江お嬢さん」

氷のような冷たさで老人は言い放った。

「たいした度胸だが、わしの胸のうちを探ろうなどと金輪際考えるな。わしが一番嫌いなのは人が隠しているものを剥ぎ取ってさらし者にしようとする奴だ。これほど無礼なことはない!」

「御忠告有り難うございます」

彼女はすっくと背を伸ばした。

「私はかまわないかと思ってましたわ。なぜなら誰かさんが先に私にそうなさいましたから。ほんと意外です」

彼女は唇をきっと閉じると出口に向かった。

「やっぱり暴君でらっしゃいます!」

老人は一瞬あっけにとられたがあわてて言った。

「どこへ行く」

「今日のご奉公はもう終わりです。耿さん。夜勤番の看護婦がすぐ来ますわ」

「待たんか」

老人はいらついて叫んだ。

「まだ話は終わっとらんぞ」

「看護婦は病気の面倒を見るのが仕事です。お喋りのおつきあいではありません。それに専政暴君と楽しい会話ができるでしょうか。不平等な身分で言論の自由もないのに」

彼女はドアのノブに手をかけ今にも出ていこうとした。

「おいおいおい」

老人はさらにけたたましく吼えた。

「行くことは許さん」

「どうしてです」

彼女は振り向いた。

「もう退社時間です!」

「割り増しを払うぞ、どうだ?」

「生憎です」

彼女はいたずらっぽく笑った。

「今日は残業したくないんです!」

彼女はドアを開けすばやく部屋をとび出ると後ろで怒鳴るのもかまわずぴしゃりとドアを閉め気かんぼう老人を閉じこめた。そして彼女が廊下を歩こうとした時思わず男性とぶつかりそうになった。立ち止まって見ると歳の頃は50、縁の広い眼鏡をかけ大きな業務鞄を持っている。見るからに聡明で有能。著名な朱正謀弁護士だ。耿克毅の顧問弁護士でもある。彼は以前も一度耿克毅に面会に来たことがある。仕事抜きでも二人はすこぶる気のおけない友人だった。

「おや!江さんこれは失礼」

彼は彼女を支えた。

「耿さんに会われるのですか」

江雨薇は尋ねた。

「そうです。いろいろと業務上の相談がありましてね。それで彼はまだ面会禁止でしょうか」

「いいえ、面会は昨日から許可されています。回復がとても順調ですから。でも」

彼女はちょっと間をおいた。

「もしも私でしたら相談はまた今度にしますわ」

「なぜ?」

「あの方は今大癇癪を起こしたばかりですから」

朱正謀は笑った。\

「彼が癇癪をおこしてない時なんてありますか」

尋ねる眼鏡の奥の瞳が光った。耿克毅を知り尽くしているのだ。

「ときたまあるようです」

「私はそのときたまを待っていられないのですよ。そうでしょ」

江雨薇も笑った。

朱正謀が耿克毅の部屋に入ろうとドアを開けたとたん江雨薇は耿克毅のいつもの咆哮が響きわたった。

「どこのくそったれだ、入ってこい!」

彼女は首を振りながら苦笑した。本当にユニークで寂しいおじいちゃん。ちゃんと二人の息子と何人かの孫もいるのにどうしてこれほど孤高でなければならないのかしら。いくら首をひねってもわからない。不可解な人の性、不可解な人生。

階段を降りロビーを抜け彼女は病院を後にした。今晩は約束がある。相手の名は呉家駿。詳しく言うと呉家駿医師、彼が彼女を華国ナイトクラブに誘ったのだ。
とりあえずは彼も花婿候補の一人ではある。彼女は宿舎に戻り着替えと化粧をしようと急いだ。

けれど病院の角を曲がった時、彼女は突然湧いて出たような一人の人物に道をふさがれた。

「江さんだったね」

低いかすれ声、どこか沈んだ面もち、破れジャケットに洗い晒したジーパン、くしゃくしゃの髪型、印象的な瞳・・あの謎の若者、「ゴミ同然」の若塵だわ!

「あなたはあの・・」

彼女はしばしあっけにとられた。

「そう俺さ」

彼は視線を落としたまま道ばたの石ころを蹴った。まるでことさら関心のなさを現したいかのように。

「あんたの患者はどんな具合だ」

「耿克毅さんの事?」

「他に誰がいるってんだ」

彼はぶっきらぼうに言った。見るからに短気ですぐに眉をしかめる。この気性、この態度は誰かと良く似てる・・江雨薇はそれが誰か思い出そうとした。

「あの方はだいぶ良くなられました。」

彼女は答えた。

「あと一週間もすれば退院できそうです」

「あんた言ったよな。」

彼の眼が鋭く光った。

「爺さんはもう大丈夫なのか」

「そうじゃありません」

彼女は憂鬱げに答えた。

「持ち直したと言ってもそれは一時のあいだです。一年以内にいつ・・亡くなられても不思議ではありません・・」

「なんで治してやらないんだ?」

彼は頭を上げると激しく問いかけた。眼の中でめらめらと炎がゆれている。

「爺さんみたいな金持ちならどんなクソ高い薬だって買えるだろ、なんであんた達は治せないんだ?」

「仕方がないんです」

江雨薇は丁寧に言ってきかせた。若者の激しい表情が彼女に強い動揺を与えた。

「医師団はあらゆる手を尽くしていますが耿さんの病いは今の私達の手に負えるものじゃないんです」

「あんたは爺さんが死ぬしかないって言うのか」

彼は大声で叫んだ。その表情は歪み目つきはすさまじい。

「断言してるわけじゃありません。それなら医師の先生にきいてください」

「あんたら医者も看護婦も役立たずばかりだ!」

彼の声は荒々しくて、かすれていた。

「最初からあんたらに任せるのは間違いだと思ってたんだ!」

「・・」

江雨薇はじっと彼を見つめるとこの粗暴な若者にことさら冷静に尋ねた。

「それほど心配しているのならどうしてもっと自分でかかわろうとしないんですか」

「俺が心配してるだって」

若い男は彼女をじっとにらみつけた。顔の肉はぴくぴく動き目つきはぞっとするほど刺々しい。押し殺したような声で彼は一言づつはっきり言った。

「あんたに言っとく、あいつは俺にとってこの世で一番憎い奴だ。それにあいつにとっても俺が一番憎い筈だ。わかったか?」

江雨薇は呆然とした。これほど恨みのこもった声も目つきも初めてだ。彼女にはこの”ゴミ同然の若塵”と耿克毅の関係が理解できなかった。でも人間どうしがこれほど憎みあう理由って。それに耿克毅を憎んでいるのならどうして命の心配をするの?

「いったいあなたは耿さんのなに?」

彼女は驚きながら尋ねた

「仇敵さ」

彼はすぐに答えた。

「じゃあ」

江雨薇はわざと氷のように冷たく言い放った。

「喜びなさい。あなたの仇敵はもう長くはないわ」

若い男の眼は大きく開かれたちまち顔色は蒼白になった。唇を噛みしめたまま眼は血走っている。彼は恐ろしい目つきで江雨薇をにらむとまるで喰い殺しそうに歯の間から言葉を吐き出した。

「お前みたいな奴にわかってたまるか!」

そう言うと彼はくるりと向きを変え大股で街中へと消えていった。

江雨薇は街角でしばらくぽかんと立ちすくんでいた。黄昏が男の姿を包みやがてその他のあらゆるものを隠して見えなくしていった。彼女はその深い謎の闇の中でただ途方に暮れていた。


第4章

時は否応もなく過ぎてゆき江雨薇が耿克毅老人の看護を始めて十日がたった。この十日間というもの江雨薇はほとんど日課のように耿克毅と口喧嘩の一戦を交えた。老人はとにかくまれにみる瞬間湯沸かし器だったのだ。けれど看護時間が終わってみると彼女は不思議と老人からいつも新しいものを吸収している事に気づいた。物事の見方とか感情のありよう。それは彼女の心に深く浸みて老人の短気も癇癪もおおよそほとんどの欠点を忘れさせ彼女に看護婦でいることの励みさえ与えた。そして彼女も気づいていた。老人も老人なりにあれでもなるだけ我慢してこのへんてこりんな若い看護婦にあわそうとしていることを。

そうやってこの十日間二人は過ごした。時に打ち解け時にいさかい時に良し時に悪し。それは彼女にとって実り多い十日間でもあった。

この日江雨薇は出勤の際ひどく気が滅入り落ち着かない気分だった。耿克毅の退院がとうとう翌日になったからだ。彼女はもちろん情の移った患者との別れにも慣れていた。一人の患者が終わるとまた新しい患者を迎えるその繰り返し。その中でも耿克毅は扱い難く怒りっぽくはあったけれどそれ以上に見識と知性とユーモアをもっていた。甚だしく手こずらせられたがでも微塵も味気なさや退屈を感じなかった。次ぎはどんな患者かしら。どこかのお喋りお婆さんか末期癌患者、あるいは事故による肢体不自由者か。江雨薇に言えることはたとえ誰であろうと耿克毅以上に印象深い患者は考えられないということだ。
それともうひとつ、出勤する途中でまたあの若塵と出会ってしまった。今日の彼はボロいバイクにまたがり電信柱に身をかくして彼女を待ち伏せしていた。彼女は彼を認めると訊かれるまでもなく答えた。

「耿さんはもう歩けます。杖は必要ですけど。明日退院できます」

若塵は黙ったまましばらく彼女をその愁いのこもった瞳で見つめていた。なにかを問いたげに。彼女は付け加えた。

「それからはもう幸運を祈るしかありません・・けれど私達もせいいっぱい頑張ったんです!」

彼は小さくうなづくとやがていつものかすれ声できっぱりと言った。

「有り難う」

彼は唇を噛むと歯のすきまから絞り出すように言った。

「爺さんの面倒をみてやってくれ」

そう言うが早いか彼はバイクを走らせると放たれた矢のようにたちまち街中へ消えていった。面倒を見てやれですって?彼女はあっけにとられた、老人は明日退院するというのにどうやって?そんな事もう一度入院して来ないかぎり・・そう考えた彼女は突然身震いした。その時こそ老人がもはや余命の尽きた時なのだ。彼女は老人のそんな姿を見たくはなかった。患者の死には慣れもできる、でも”友人”の場合は別だ。彼女にとって老人はすでに友人以外なにものでもなかった。

それにしても若塵、あなたは老人のなんなの。あれほどに”仇敵”の身を心配する人がいるかしら。あのふさぎ込んだ様子と一途な態度。まったくどこまで悩ませてくれのよ。彼女は考えるほどに胸がさわぐのを抑えられなかった。

首から重りをぶらさげられた気分で彼女が病室に入った時、窓際でじっと立ちすくみ外を眺めていた老人はすばやく振り向き江雨薇はいきなり老人の強い眼光と白くこわばった顔にでくわした。老人は彼女をじっと見つめてせかすように尋ねた。

「今そこでお前と喋ってたのはなにもんだ」

彼女は”若塵”の二文字が喉まで出かかったがようやく飲み込んだ。老人の近くへ歩み寄るとそこからはさっき彼女と若塵がいた場所がはっきり望める。でも誰かまではわからない筈と彼女は思った。

「えっと、見知らぬ人に基隆通りまでの道を聞かれたんです」

彼女はつとめてなにげなさを装った。若塵の名前を出して良かったことなんてこれまで一度もない。

「そうか。見知らぬ人か」

老人は独り言のようにつぶやくと急に杖を持つ手から力が抜け倒れそうになり、彼女はあわててかけよるとベッドに座らせた。額を手で支える老人からは衰えと疲弊がはっきりと見てとれる。

「見知らぬ人・・」

老人は再度つぶやいた。

「わしはてっきりあいつかと思った」

「どなたと思ったんですか?」

江雨薇はマズいと思いつつもやはり聞かないわけにいかなかった。

「わしの」

老人は歯を食いしばるように言った。

「仇敵が来たかと」

また仇敵!なんでこの二人は申しあわせたように同じ事を言うのよ。江雨薇はつくづく呆れた。耿克毅は再びその表情に力をみなぎらせ眼の奥に癇癪と怒りを蓄えている。

「敵があちこちにいらっしゃるんですね。耿さん」

江雨薇は若塵の愁いのこもった瞳を思いだしながら注意深く尋ねた。

「うむ」

耿克毅はうなった。

「人間ってものはとかくいろんな理由で争うもんだ。たしかにわしを憎んでいる 奴はごまんといる。あいつもその一人だ」

「あいつって?」

彼女がそう言うと老人がぎょろりとにらんだ。

「今日はいったいどうしてそんなに聞きたがる」

老人は冷ややかに言った。

「お前には関係ないことだ」

「もちろん私には関係ありません」

彼女は背すじを伸ばすとシーツを直し始めた。そして負けず冷ややかに答えた。

「もうしわけございません、つい身分を忘れてしまいましたわ。旦那様」

老人は彼女があれこれ用事をするのを見ていたがとうとう気まづい沈黙に耐えかねて口を開いた。

「おいおい江さん、今日はもめないでおこうじゃないか。これからも長いつきあいなんだから仲直りしょう。ずっと敵になんぞなりたかないぞ」

これから長いつきあいって?本当にわからないおじいちゃん。彼女は笑ってふりむいた。

「大丈夫です。その心配ありません。だって明日退院されるじゃないですか」

「わかっとる」

老人は答えた。

「だから今日はお世話する最後の日です」

「いや」

老人は首を振った。

「お前はわしと一緒に帰ることになっておる」

「はい?」

彼女は驚いて問い返した。

「どういう意味です?」

「黄医師は言っておったな。わしには必ず付き添い看護が必要だと。注射やら薬やらの為にわざわざここまで来れんわい。だからしてお前がわしの付き添いになる」

江雨薇は立ち止まったまま瞳を見開いて老人をじっと見つめていたがやがてゆっくりと言った。

「いつ私に打診しました?それに私が引き受けるかどうかもわからないのに」\

「お前の仕事は付き添い看護婦。そうだな?」

老人も彼女を見つめたままゆっくりと言った。

「そうです」

彼女はうなづいた。

「この病院内で仕事するのとわしの家で仕事するのと違いはなかろう」

老人は尋ねた。彼女は眉をひそめて口ごもった。

「少し考えさせてください・・」

「考える必要なんぞない!」

老人は彼女の言葉を問答無用とさえぎった。

「わしは聞いたぞ。付き添い看護婦は病院に属さないでフリーだと。それならわしの頼みを妨げる理由はないじゃろ。わしの家へ来てみろ、でかい部屋とでかい花園がお前を待っとる。きっと気にいる筈だ。とっくに用意はさせとるから明日お前は身の回りのものだけ持ってカバン一つで来ればいい。他のもんはいらん。そうしてお前は黄医師の指示のもとわしの面倒を見てくれ。もう10日間つきあったんだ。問題はなかろう」

江雨薇は老人の口調があまりに断言的なのについむかっときた。

「では、私が断るのも自由なことはご存じですね」

彼女は冷ややかに答えた。

「もちろん、お前にも権利はある」

老人は少しもひるまなかった。

「言い忘れておった。給料だが今の三倍でどうだ。お前が物入りなのは知っておるからな」

彼女はじっと老人を見つめた。

「用意周到でらっしゃいますのね」

彼女は冷笑を浮かべた。

「大きな花園に居心地の良い部屋、三倍のお給料。あなたは私が断る筈はないと思っておいでですね」

「賢いやつなら断らんぞ」

「ええ、でも私はあなたがいつもおっしゃっておられる様にとんまでまぬけです」

彼女は言い放った。

「ほう、そうだったかのう」

老人は聞き流した。彼女は一種矛盾した感情に翻弄された。確かに良い条件、彼女がこの依頼を断る理由はなかった。けれど金銭を持ち出した老人への反感を彼女は捨てきれなかった。じっと黙ったままの彼女に老人はたたみかけた。

「今すぐ決めんでいい」

老人は言った。

「夕方までに返事してくれ。実際それほど長い間にはならんじゃろ。お前も知っているように今のわしがくたばり損ないだとしたらそれほど長く面倒もかけない筈だ」

彼女は背筋に冷たいものを感じた。老人は自分の命の短さを暗示させながら切実に彼女を必要としているのだ。むげに断るのはあまりに難しかった。

「しばらく考えさせてください」

彼女は答えた。

「お話がいきなり過ぎますし。それにご家庭の事情がちょっと・・」

「おや、そうだったか?」

老人は驚いて言った。

「わしの家族のことをなにも話していなかったか」

「何もうかがっていません」

彼女は老人の二人の息子とその嫁を思い出した。あんな人種とうまくつきあっていける筈がない。

「息子と嫁のことは心配するな」

老人はまたも彼女の気持ちを見透かしたように言った。

「あいつ達とは別居してるからな。妻は何年も前に死んだ。我が王国にはわしと4人の使用人がいるだけだ」

「4人ですって?!」

彼女はつい叫んでしまった。たった一人の老人の為に4人の使用人。そのうえまた看護婦が一人!

「運転手の趙と李夫婦、これはもう20年働いてくれている。翠蓮は掃除専門だ。大丈夫、彼らはお前を御主人様と思って仕えてくれるぞ」

「御主人様?」

彼女は眉をつり上げた。

「そんな結構な御身分とは縁がありません」

彼女はよく懲りていた。大きな家の使用人ほど扱いにくいものはない事を。

「うちのもんはみんないいやつばっかりだぞ」

またも彼女は気持ちを見透かされた。

「必ずお前は受け入れられる筈だ」

彼女は注射の用意をしながら言った。

「また後でお話しましょう」

耿克毅はそれから再びその話を持ち出さず一日中お互いどちらも口をきこうとはしなかった。けれど江雨薇はずっと考え続けていた。この話を受けるべきかどうか。
心の奥で反対の声が入れ替わり現れては彼女に囁いた。そうしてやがて黄昏せまる頃とうとう彼女は決断をせまられた。彼女は老人に向かうときっぱりと言った。

「耿さん申し訳有りません。この話はお受けできません」

老人はぴくっと震えると癇癪を起こす前のすごい形相で彼女をにらみつけた。

「どうしてだ」

「別に理由はありません」

彼女は答えた。

「理由を言ってみろ!」

老人は吼えた。

「なんで断るんだ、給料が足りないならもっと出してやるぞ」

「お金の問題じゃありません」

彼女は首を振った。

「じゃ何だ!」

老人は顔を真っ赤にして大声で叫んだ。

「そのかわり他の看護婦を紹介いたします」

彼女は理由に触れたくなかった。

「こんな条件ならいくらでも良い看護婦が見つかりますわ」

「他の看護婦なんぞ要らん!」

老人は怒鳴り続けた。

「お前はまたくそとんまな他の奴をわしに押しつけようってのか。いったい・・」

老人がそう言い終わらないうちにドアが開いた。息子の”耿培中”とその嫁だ。すらりとした目鼻立ちのはっきりしたその女は入って来るやいなやいかにも芝居じみた声で叫んだ。

「あらあ、お父さんどうなさったんですか?そんなに御立腹で。先生が言ってましたわ、この病気で一番いけないのが興奮することだって」

それから江雨薇をにらむと。

「江さん!」

厳しく詰問した。

「あなた、父さんを怒らせちゃ駄目じゃない!」

「私は患者さんの健康状態には責任がありますけど」

江雨薇は冷ややかに答えた。

「患者さんの機嫌にまで責任は持てません」

「あらあ、なんて人かしら!」

”耿夫人”はひきつったように叫んだ。

「こんな看護婦見たことないわ、本当にあつかましい、お父さんが立腹される筈だわ、ねえ培中、どう思うの?他の人に替えてもらわなきゃ!誰だってこんな人我慢できないわよね、良かったわ明日が退院で、さもなきゃ・・」

「思紋!」

耿克毅老人の一喝に女は黙った。

「まだ喋り足りないか」

思紋と呼ばれたその女は一瞬顔をけわしくしたがすぐに機嫌取りするかのように老人に対して腰をかがめた。

「そうよねお父さん、あたしすぐに大声なっちゃうから」

彼女の猫なで声への素早い変わり様を江雨薇はプロの役者なみだと思った。

「機嫌なおしてねお父さん、あたし達明日迎えにくるわ。退院してからのお父さんの事は美珂とも相談したの。あたし達交代でお父さんに付き添うわ。それか・・」

彼女は老人の顔色をうかがいながら言った。

「よかったらあたし達の家に引っ越して・・」

「わはは」

老人はいきなり大笑いして息子と嫁を見た。

「わしが死ぬのがそんなに待ちきれんか」

「父さん、なんでそんな事を」

耿培中は眉をしかめた。

「ぼく達は父さんの為を思って・・」

「わしの為だと?」

耿克毅はしげしげと耿培中の顔をのぞき込んだ。

「培中、たいした息子だなお前は。わしが入院しとる間に会社のカネを20万元ちょろまかしただろ?培華もお前と同じだ。わしの為だと?まあなどっちみちわしとてカネをあの世には持っていけんしな」

「父さん!」

培中は顔色を蒼白にしてあわてふためいた。

「あのおカネはボクの建築会社の資金繰りの為なんだよ、一ヶ月たてば返そうと思ってたんだ」

「まあいい。それで」

老人は彼をさえぎった。

「今日はいったい何の用だ」

「あたし達さっき黄先生に会ってきたんです」

思紋が言った。

「先生が言うには父さんが退院してからも絶対に付き添いが必要だって言うじゃありませんか。あたし達相談したんですよ。うちに来てもらうか、それとも美珂のほうか。翡蓮はバカでしょ。あんな娘には任せられないし」

「もういい!」

耿克毅は息子夫婦を睨みつけた。

「わしはお前の面倒にはならん、美珂にもだ。わしは看護婦が一人いれば充分だ!」

老人は視線を江雨薇に向け問いかけた。

「どうじゃな。江さん」

江雨薇が我知らず一歩前へ出て口を開きかけた時、思紋が横から割り込んだ。

「あらあ、こんなのダメよさっきお父さんを怒らせたばっかりじゃないの。ろくな看護婦じゃないわ、だからさ・・」

「耿さん」

江雨薇は自分の声にゆるぎない決意と情熱が込められていることを感じた。

「さきほどの依頼をお受けします。明日退院してから私はずっと付き添い看護をさせて頂きます。クビになるまで!」

耿克毅老人は眼を輝かせそしてイタズラっ子の様に微笑んだ。老人は勝ち誇ったように息子夫婦に告げた。

「わかったか思紋、どうやら問題は解決したようだ。お前は自分の家で亭主と子供の面倒でも見ていろ。亭主の首に縄つけて子供もグれさせんようにな」

思紋は蒼白になって唇を噛んだがやがてぶつぶつと呟いた。

「そんなのわかってるわ、・・父さんの二の舞はさせるもんですか、だいたいよそに子供つくるなんて・・」

「やめろ思紋!」

培中は思紋の話を思わず遮ると腕をひっぱった。

「もう行くぞ!」

そう言うと振り向いて老人に言った。

「じゃあ明日迎えに来ますよ。お父さん」

「要らん」

老人は言った。

「趙が車で迎えに来てくれる。それにこの江さんも居るしな。お前も培華も誰も来んでいい」

培中は忍耐の限界と言うように歯を食いしばって言った。

「わかりました、じゃお好きなように!」

出て行く時思紋は江雨薇に恨みのこもった視線を浴びせた。ドアが閉まるのも待たず思紋はさんざんわめき散らしながら去っていった。

「あんたの父親はますます手がつけられなくなってきたじゃない!それにあの看護婦とは絶対わけありだよ!」

彼女は唇を噛むと静かにドアを閉め老人の側に近づいた。老人はまるで青年のような清々しい眼で彼女を見た。

「すまないな、江さん」

老人はしみじみと言った。

「なんで心がわりしてくれたのかな」

なぜですって?それはあなたが孤独な王様だから、あなたには誰も心許せる人がいないから、あなたこそ本当は持たざる人だから、あなたの人生の黄昏があまりに荒涼としてるから・・。けれど彼女は笑みを浮かべて答えた。

「さきほどおっしゃったじゃありません?。給料を三倍にしてくれるって」

老人はじっと彼女を見つめた。彼女は老人がなにもかも察していることを理解した。老人は落日を思わせるような笑みを浮かべて言った。

「お前はりこうないい娘だな。雨薇」

雨薇?老人は初めて彼女の名前を呼んだ。それもごく自然に。やがて老人はそっと瞼を閉じた。よほど疲れたのだろう。憔悴しきった瀕死の孤独なこの老人。彼女は目頭が熱くなるのを感じた。布団をかけ直そうと近くへ寄った時彼女は老人のかすかなつぶやきを聞いた。

「若塵、今こそお前が戻る時だ・・」

若塵?・・若塵?・・若塵?彼女は呆然とした。老人がこれほど密かに口にしなければならないなんていったい若塵、本当にあなたは何者なの?


【続く】
作者: mizuiro    时间: 2006-5-14 18:49
youdariyuさん、こんばんは。

とてもすばらしい訳文です! 
日本の方が訳された中国の文学作品は初めてなので、興味深く拝読しました。
『心有千千結』の原作も読んだことがあるので、日本語版は読めば読むほど読みたくなりました。
たくさんの日本語らしい表現が勉強できて大変嬉しいです。
「なるほど!日本語はこんなとき、このように表現するんだ」と何回も頷きました。
特に、日本語の豊かな擬声語、擬態語に感心させられます。
非常に参考になりました。
出来れば、ぜひとも最後まで『心有千千結』の日本語版を読ませてください。
お願いいたします。

それから、youdariyuさんの訳文に少し理解できないところがあるので、お伺いします。

1.老人は陰々滅々と答えた。

「陰々滅々」の読み方は何でしょうか。

2.それは彼女の心に深く浸みて老人の短気も癇癪もおおよそほとんどの欠点を忘れさせ彼女に看護婦でいることの励みさえ与えた。そして彼女も気づいていた。老人も老人なりにあれでもなるだけ我慢してこのへんてこりんな若い看護婦にあわそうとしていることを。

「浸みて」の読み方は何でしょうか。

「あれでもなる」の意味がよく理解できません。
教えていただけないでしょうか。

文末の「を」は「に」の入力ミスでしょうか。
「ことに気づく」になると思いますが、youdariyuさんのご意見はいかがでしょうか。

3.「時に打ち解け時にいさかい時に良し時に悪し。それは彼女にとって実り多い十日間でもあった。」

この文の意味がよく理解できないので、原作でチェックしました。

「融洽也罢,不融洽也罢,好也罢,歹也罢,十天总是顺利的过去了。 」とありました。
「時に打ち解け時にいさかい時に良し時に悪し」という文はどのように区切るでしょうか。
「時」は「とき」と読みますか。
とても難しいです。

4.亭主の首に縄つけて子供もグれさせんようにな。
「グれする」は新語でしょうか。
どういう意味でしょうか。

以上の質問でよろしくお願いいたします。
作者: aokira    时间: 2006-5-14 22:44
引用第66楼sefirosu2006-05-13 12:04发表的“”:
今読んでいるのは日経掲載中の≪世界を創った男 チンギス・ハン≫です。
今は、その妻ーーボスクル族出身のボルテがメルキト族の襲撃で捕らえられてしまったところまで読みました。戦場を駆けぬくかのチンギス・ハンもこんな悲惨な時期があったなあって感嘆中です。
それで、ちょっと気になる新堂の新作≪毒虫VS溝鼠≫を買おうかなって考え中
誰か読んだ人はいませんか
ほんとうに宣伝通りに『ページをめぐる手は休まることを知らない』なんですか

新堂冬樹ですね。「毒虫VS溝鼠」は読んだことないのですが、昔、新堂作品を一作だけ読んだことがあります(タイトルは忘れました・・)。極道や闇金の世界を舞台にした作品が多いですね(最近は恋愛ものも書いているようですが)。そういうの世界が苦手でなければ、結構面白かったと思います。

チンギスハンは、私もyoudariyuさんと同じに、井上靖の『蒼き狼』を読みました。三国志を読んで、「中国を舞台にした歴史小説って面白い!」と目覚め、海音寺潮五郎の『孫子』や井上靖の『蒼き狼』など、本屋で見つけた作品を読んでいました。
小学校の終わりか、中学の初めの頃のことだったので、・・実は内容はもうあまりよく覚えていないのですが(ただ、蒼き狼で、チンギス・ハンの幼名「テムジン」が「鉄木真」と表記されていて「てつき まこと? その日本人は誰だ。。。と悩んだことを覚えています^^;)、あの頃は小説を読むのがとても面白かったですねぇ。

中国ではチンギス・ハンなどを題材にした歴史小説で有名な作品はありますか?
作者: aokira    时间: 2006-5-14 22:59
引用第65楼youdariyu2006-05-12 18:34发表的“”:
aokira さんこんにちは。

大阪の万国博覧会、1970年ですね。私は3回行きました(^^)。今度は上海が会場になるみたいですね。

1970年のあの頃は誰もが想像していました。21世紀になればマッハ(马赫)3の超音速機がぶーん(擬態語)と
.......

大阪万博・・私はその頃まだ生まれていなかったので、残念ながらテレビでしか知りません。母が行ったことがあるそうです。すごい人出だったらしいですね。

中国の人の数の多さを考えると・・・2010年の上海万博も大混雑しそうな感じがします。(できれば行ってみたい^^)。

尚、大阪万博というと、マンガの『20世紀少年』(浦沢直樹、小学館)がその時代を舞台にしていますね。このマンガは面白いですよ。

> 1970年のあの頃は誰もが想像していました。21世紀になればマッハ(马赫)3の超音速機がぶーん(擬態語)と飛んで・・・

なるほど、そうだったのですか。戦後間もない頃とその当時の発展ぶりを考えると、同じペースで発展していけば、30年後にはそんな時代がやってくるに違いない、当時はそう思えるほどの発展スピードだったのでしょうね。
手塚治虫の「鉄腕アトム」はもっと前の時代の作品ですが、21世紀をあのように想像していたのですからねぇ。

でもこれは私の小さい頃でも同じですね。

私の小さい頃は「21世紀にはリニアモーターカーが東京と大阪を結ぶ」と言われていましたが、実現していませんもの(というか、人口動向やコスト・財政を考えると、未来永劫に実現しなそう・・)。
しかし、上海ではリニアーモーターカーが実用化されているではないですか!去年訪れた際、乗りました。私にとって「リニアモーターカー」は子供の頃思っていた未来の一部。それが上海で実現しているとは感慨ひとしおです。

乗ってみると空港から市内まで7,8分(タクシーでは小一時間かかる距離です)。短い距離でしたので最高時速420Kmで走ってい時間は1分あるかないかでしょうか。
新幹線に比べると速度が1.5倍以上のためか、ややうるさいですが、揺れはそんなになく、乗り物としては十分実用的です。

ただ・・・停車駅が上海の中心部ではないため、結局そこからorそこまでタクシーを利用せねばならず、大きな荷物を持っている旅行者にとってははじめからタクシーに乗ったほうが便利かもしれません。数人で乗れば価格も大して変わりませんし。。。

個人的には、成田エクスプレスをリニアモーターカーにして欲しいです(・・まぁ、羽田からもっと国際線が出ればそれに越したことはないんですが)。

> ところが実際に21世紀になっても、それほど変わりませんでしたね。
> 逆に環境問題のように悪化した面も多い。

リニアモーターカーは実現しませんでしたが、あんなに小さな携帯電話で、写真が取れたり、テレビが見れるようになりましたし、コンピュータとネットワークがこのように当たり前になって生活に浸透しているんですから(これは予想だにされなかったのではないでしょうか)、結構進歩はしているのでしょう^^
環境問題も、あの頃のように公害を公然と撒き散らすことはなくなり、またエネルギー効率も向上するなど、個々の活動で環境に与える負荷は下がっているのだと思います。ただ、経済規模自体が拡大しているので、二酸化炭素排出量などは増えていますけれどね。。まだまだ改善していかなければいけないのでしょう。
マンションだって、100Fはともかく、40-50Fの高層マンションは実現しましたしねぇ。
とはいえ・・家族で住める広さとなると、1億円前後~で、普通のサラリーマンには手の出る値段ではないですが。。。。


確かに進歩と幸せは必ずしも一致しませんが・・・進歩のない社会はやはり面白みに欠ける気がします。

今の中国の人はどんな未来を思い描くのでしょうね?そして30年後、どれだけかなっているのでしょう?
作者: youdariyu    时间: 2006-5-15 12:01
Mizuiroさん、こんにちは。
拙文を読んで頂き有り難うございます。早速ですがご質問にお答えします。

1.    「陰々滅々」は「いんいんめつめつ」です。
2.    「浸みて」は「しみて」です。
3.    分解すれば「あれでも、なるだけ」となります。「なるだけ」は「できるだけ(尽量)」です

     この場合、「に」でも「を」でも、どちらでも正しいです。「そして彼女も気づいていた」と
     いう前の文章を受けて、「彼女が何を気づいていたか」という事を後の文章で説明しています。
     小説ではよく使われる「倒置法」です。
  
    「時に打ち解け時にいさかい時に良し時に悪し」は苦心した訳なんですよ(^^;
    「時」は「とき」でいいです。「罢」というのは日本語に訳し難い文字なので、雰囲気で訳しま
     した(苦笑)、「いさかい」は「争い」という意味です。「時々仲良く、時々口喧嘩をして良か
     ったり悪かったり」みたいな感じで書きました。

4.   「グレさせる」は「ぐれる」の使役形です。昔から有る口語的表現で「堕落する」という意味で
     す。おわかりと思いますが、ユーモラスな表現にしたい時や強調したい時、本来はひらがなの
    言葉をカタカナで書く場合が多いです。

おわかり頂けましたでしょうか(^^)
作者: youdariyu    时间: 2006-5-15 12:21
琼瑶の小説「心有千千結」日本語拙訳です。

「心有千千結」

第5章

車は台北市街を抜けて圓山大橋を渡ったところで大きく曲がり一路陽明山への道を上りだした。運転手の趙には慣れた道らしく飛ぶように山道を走って行く。

「あの、耿さん」

江雨薇は多少不安になりながら尋ねた。

「御自宅がこんな山の上だとは聞いてませんでしたわ」

「不便には違いないがな」

耿克毅は答えた。

「約束しよう。毎週少なくとも一日は休暇日だ。そうすればあの医師ともデートできるだろ」

「あの医師って?」

彼女はびっくりした。

「あの呉医師だ。X線科の。なんだったかな名前は、呉家駿か」

耿克毅はしらっと答えた。江雨薇はあっという間に顔を赤らめると断固抗議した。

「まさか探偵でも使って素行調査でもしたんですか?!」

「わはは」

老人は得意そうに笑った。

「図星のようだな。なに、お前がわしをX線検査に連れて行った時、あいつの眼がずっと透視しとったのはわしじゃなくてお前だったからな。わしくらいの歳になると見ただけで人が何を考えているかわかるもんだ」

老人は少し間をおいて続けた。

「どうだ?あいつはお前のなかではいい線いってるほうか?」

「答えたくありません」

江雨薇は不機嫌そうに言うとしばらく窓の外を眺めた。後ろへ流れてゆく草花や木々、雲に隠れた山々、窪地に広がる翡翠のような竹林。

「やっぱり」

彼女はのんびりと言った。

「暴君は豪華な宮殿に住んでるのかしら」

「もうすぐわかる」

老人は言った。

「そろそろ着くぞ」

車は左に曲がると私道に入った。砂利が敷かれた道は広々として両側に竹が密集している。江雨薇はこの道がわざわざ竹林を切り開いて造ったのだとわかった。
車は最後にもう一度大きく曲がると大きな花のレリーフが刻まれた鉄の扉の前で停まった。江雨薇が頭を伸ばして見ると扉の右の柱に大きな文字で「風雨園」とある。彼女は老人のほうを見た。

「花園にわざわざ「あらし(風雨)」と命名する方も少ないんじゃありませんか」

老人はなにも言わず、扉を開けに来た使用人の李と挨拶を交わした。車が門の中へ入っていくとかぐわしい花の香りが彼女の鼻腔をくすぐった。晩秋の最後を飾るジャスミンだ。庭園内にはいくつもの竹の茂みもあった。ここの主人の好みだろう。他にも雲に向かいうねるような枝ぶりの松の老木。
それらの間を通り抜けると噴水のある小さな池が目の前に現れた。池の中には一体のビーナス像が置かれている。その彼女の身体を流れる噴水の水は夕日に照らされまるで水晶のように白い肌を輝かせた。その美しい肢体は秋の夕陽の中でまばゆく浮かび上がっていた。それはまるで彼女がこの花園の主としていきいきとふるまっているかのようでそれは限りなく神秘的だった。

車が停まり江雨薇は半ばぼんやりとしながら外へ出た。彼女の視線はそのビーナス像から離れなかった。彼女はその彫刻の肌が柔らかな張りを持っているのではないか確かめたいとさえ思った。

「どうだ」

老人は尋ねた。

「ヨーロッパを旅した時に見つけたんだ。大枚はたいて買ってきた。”この子”の瞳と顔を見る時わしはいつもこの子が生きてるように思えてしまう。それに・・ある女とうり二つでもある」

老人はそこで急に声を詰まらせた。

「どなたです。あなたの恋人ですか」

彼女は思わずそう言った。

「そうだ」

老人は否定しなかった。

「わしが深く愛した女だ」

「その方はどうされたんですか。もういらっしゃらないんですか?」

「もうおらん」

江雨薇は老人にそれ以上尋ねようとはしなかった。六十八才の老人には語り尽くせない物語があって当然だ。老人は庭園を懐かしそうに眺めた。池のまわりに咲きほこるジャスミンと薔薇、その他にも数え切れないほどの植物。ツバキ、ムクゲ、マイカイ、モチノキ・・。彼女が頭をめぐらすと二階建ての館が眼にはいった。純白の外観と、床から続く幅の広い大きな窓。こちらもまるでクリスタルの工芸品のようだ。玄関には石段と古代ローマ風石柱、アーチ型の門。入り口には純白の絨毯が敷かれ黒いソファーと二色の対比をなしていた。

「・・」

江雨薇はため息をついた。

「本当に宮殿にお住まいだったんですね」

「もし良ければ」

老人は言った。

「家の中のみんなを紹介しよう」

江雨薇がはっと我に返ると李夫婦と翠蓮がすでに出てきて庭園の中で待っていた。
まず運転手の趙とはもう顔を会わせている。真面目で穏やかな中年の男性だ。
それから李夫婦。共に五十才前後、夫の「老李」のほうは控えめで額に傷跡があり、決して醜いわけでもないがどこか人を遠ざけるものがある。老李は冷ややかに江雨薇に挨拶をするとすぐに木立の向こうへ消えていった。彼女は老李がびっこをひいている事に気づいた。そして妻の「李媽」は夫と正反対だった。丸々と肥えた身体にまん丸い顔、いかにも嬉しそうに満面に笑みを湛えて江雨薇をおおいに歓迎した。

「きっとここが気にいるわよ、江お嬢さん。なんでも必要なものがあったら言ってちょうだい。すぐに用意するから!」

そして翠蓮。歳の頃十八、九の見るからに朗らかな生粋の台湾娘だった。にこにこしながら早く江雨薇にまとわりつきたくて仕方がない様子に彼女もつい笑わずにはおれなかった。

「いいかい翠蓮」

李媽は言った。

「これから江さんのお世話をちゃんとするのよ」

「はい、わかってます!まかして!」

翠蓮は何度もうなづいた。この家の中ではどうやら李媽が一番の実力者らしい。

「それでは耿さん」

江雨薇は老人に促した。

「そろそろまいりましょうか。冷たい風はお身体にさわります」

山稜を越えて来る風は深まった秋の気配を伝えていた。松をゆらし竹をざわめかせ、その音色は人の心の琴線をうちふるわせた。彼女が老人を支えると翠蓮が素早く杖を手渡した。石段を上り広い真っ白な大広間にたどり着くと老人は黒いソファーに腰掛けほっとため息をついた。

「我が家は良いのう」

翠蓮が熱い茶を入れ李媽は江雨薇の皮鞄を二階へ上げようとしていた。老人は江雨薇のその鞄を見て言った。

「ここで白衣はやめとこうじゃないか」

「私の仕事着なんですけど。いけません?」

「なるべくならその忌々しい格好は勘弁してくれ。わしはまだ入院しているような気になる」

江雨薇はにっこりと笑いそれ以上話そうとはしなかったが実際のところ他の着替えなんてほとんど持っていないのだ。彼女は室内を見回した。白い絨毯と黒い家具。黒い蓮の刺繍がされたカーテン。大きな暖炉と竈。竈は黒い大理石で造られ部屋全体が黒と白のモノトーンで構成されていた。唯一の例外は暖炉の上に置かれた眼が醒めるような深紅の薔薇だった。江雨薇はうっとりしながら言った。

「黒と白だけでこんなに素晴らしく部屋を飾れるんですね」\

「この部屋を設計したのは一人の奇才だった」

老人は賛嘆した。

「そうなんですか?」

江雨薇は何の気なく言った。

「お前は信じられんだろうがその時”あいつ”はたった十八歳でしかも専門的な勉強なんぞしたことさえなかった。全部独学だったんだ」

「まあ」

江雨薇は問いかけた。

「それじゃさぞかし有名な方なんでしょうね」

「いいや」

老人は眼を伏せて苦痛をこらえるかのように答えた。

「今は何でもない」

江雨薇の興味はすでに設計家から壁の掛け軸へと移っていた。対句は整っているとは言えなかったが返ってそのぶん力強さを感じさせた。

「風雨楼にて風雨を聴く

 夕陽を浴びて夕陽を見る」

これは耿克毅の心境?彼女はそれが老人の筆跡であることを知っていた。大きな窓へ近づくと確かに窓は西に面していた。今まさに落陽が山の彼方へ沈もうとしている。その輝きに映える雲は無限の色調で彩られていた。彼女はその夕陽を背景に佇んだ。全身に深紅の輝きを浴びた彼女を見て老人は感じ入ったように言った。

「お前はこの場に似合っている」

「でも風雨に似合いたくありませんわ」

彼女がそう答えると老人はほのかに笑った。

「機転に富んだ子だな。将来それが自分に累を及ぼさないようにすることだ。」

老人は言った。

「よし、それじゃお前はまず自分の部屋を見てきなさい。どんなのか興味があるだろう」

「それよりもお薬の時間です」

彼女は時計に眼をやると医薬箱を開いた。

「その後、お部屋へお送りしますから少しお休みになってください」

「まったくお前は口やかましい看護婦だな」

彼女は笑うと自分の義務を果たした。そうしてから彼女は老人を支えて階段を上らせたがそれは老人にとってかなりの重労働だった。老人は例によって階段を罵り自分の脚を罵りそして最後にこの家の設計師を罵った。

「くそったれが、なんで2階なんてつくりやがったんだ。脳味噌のかけらも無いわい」

「さっきは天才だっておっしゃったじゃありませんか」

彼女は吹き出した。

「それにその時はあなたの脚のことまで計算できなかったでしょうし。いつ頃の話です?」

「十一年前だ」

「それなら当然です、十一年も先のことなんて誰も予想できません。あら、ほんと素敵・・」

彼女は二階の雰囲気がまた違うことに驚いた。今度の基調は紅と白。大広間の壁と絨毯は紅く、反対に窓のカーテンやソフアー、ミニバーは純白。そして天井からはその双方の色で飾られたシャンデリアが下がっていた。一階の”冷”と二階の”熱”はあざやかに対比の妙を見せていた。

「設計師はなんていう方ですか」

彼女は興味を呼び覚ました。

「そいつの名は若塵という」

老人はさらっと言ってのけた。彼女が一瞬ぴくりと身震いするのを老人は意外そうに見やった。

「なんで驚くんだ」

「以前その名前を口にして、私は絞め殺されそうになりました」

彼女は思わず問い返した。

「まさかお忘れですか」

「ほお、そうだったかのう」

老人は少しだけ眉を動かした。

「お忘れだとは思いません。でも」

彼女はまわりをぐるりと見回して言った。

「詮索する気はありません。だって」

「それはお前の仕事に関係ないから。そうだな?」

老人は言葉を継いだ。

「まったくいつでも職分に忠実なことだな」

彼女は微笑んだ。

「ところで寝室はどちらですか」

広間と並んで大きなバルコニーがあった。バルコニーの向かいには一本の廊下がありその両側に全部で7つほどの部屋が並んでいた。その中で格別大きな部屋を指して江雨薇は尋ねた。

「あちらかしら」

「いや」

老人は杖を頼りに近づくとその部屋の扉を開けた。

「ここは図書室だ。お前はどうか知らんが以前ここには本の虫がおってな。やつは台北じゅうの本を集めおった」

江雨薇は入り口に立ちつくし口を開けたまま眼を丸くした。想像もしなかったほど広い部屋は窓をのぞけば壁際が全て本棚で占められていた。その本棚の間にはこれまた多くの彫刻やクリスタル工芸品が並んでいる。彼女は大きくため息をついた。

「すこし見てよろしい・・でしょうか」

「もちろんだ」

老人は部屋の灯りをつけた。すでに黄昏が深い影を落とす室内が明るくなり二人は部屋の中へ入った。老人は近くの安楽椅子に腰をおろした。江雨薇と言えばふらふらと老人の存在も忘れたかのように書架へ近づいた。老人は頬杖をついてじっと彼女を見ている。
彼女はそこにある書籍類が注意深く分類され保存されているのに気づいた。大部分は芸術、建築、文学類。彼女はチェーホフの短編を手にとり表面のほこりをそっとはらった。おそらく久しく誰にも手を触れられていないのだろう、歳月を表すかのように紙は黄ばみいくらかのほころびも見られる。
最初の頁を開くとそこに二行の文章が記されていた。達筆でありながら個性的。内容はこうだ。

”1964年10月14日、クーロン街古書店にて入手。狂喜乱舞す。

 若塵”


その文字を見た時彼女の脳裏にはあの破れジャケットにGパン、くしゃくしゃの髪に憂愁を帯びた瞳の若者の姿が浮かび上がった。けれどこの本の一節とあのチンピラみたいなのどうやって結びつくだろう。ましてやこの書庫からは想像も出来ない。
彼女は書架に本を戻すと全体を見渡した。「断崖」「貴族の家」「父と子」「アイスランドの漁夫」「カラマーゾフの兄弟」「パリの僧院」「凱旋門」・・まるでここは小さな図書館と言っても恥ずかしくないほどだ。その他にも中国古典文学である百家詞や石点頭、琵琶記、香嚢記。青衫記にいたっては全五十二巻が揃っている。彼女は頭がくらくらした。小さい頃から大好きな読書だったが生活に追われこれまでろくに本を読む時間さえなかったのだ。それなのにここには書庫さえある!彼女は別の一冊を取り出すとその表紙に再び若塵の名前を見た。

”購入価格高し。絶版の疑いあり。文字の妙まさに驚くばかり、作者は天才なり  
          若塵  1963年2月”

ページを開くと梵語、イスラム、違菱、さまざまな文字がまるで絵画のように並んでいる。彼女はその本を胸に抱くと耿克毅に尋ねた。知らず頬が照り眼も輝いている。

「この本お借りしてかまいませんか?」

「もちろんだ」

老人は深くうなづいた。

「ここにある本は自由に見てかまわん。ただ読み終わったら元の場所へ戻しておいてくれ」

江雨薇は心はずませながら老人を見た。

「よくわかりましたわ、耿さん」

彼女ははしゃぎ気味に言った。

「あなたが本当に王国をお持ちだという事が。しかも計り知れないほどの」

耿克毅は静かに笑ったがその顔には一抹の寂寥があった。

「たしかに多くのものを得た」

そして聞き取れないほどの声で呟いた。

「失ったものも多いがな」

失ったもの。江雨薇は敢えてそれが何かを詮索しようとはしなかった。彼女は老人を介助して一番大きな彼の居室へ入った。広く快適な室内は青い絨毯と同じ色のカーテンで飾られ、それは湖や海、大空を思わせた。窓からは台北の夜景が一望できる。そして上を見上げれば満天の星。まったく世の中にはこんなおとぎ話のような生活をする人もいるとは。彼女はふと壁の掛け軸に気づいた。
  

「夕陽は沈み 荒野に愁いは深し 今宵七月 

 人の世も月のごとく時に欠けれどもまた圓く有れ

 過ぎし歳月いくとせか 哀しみは深く涙は尽きず

 再び巡り会うことはかなわず 雁は故郷を求めてさまよう」
  

江雨薇は改めて老人の憔悴した顔を見つめそこになにが隠されているのか見いだそうとした。彼女はとぎれとぎれに言った。

「非のうちどころのない人生なんてあるんでしょうか。あなたは多くのものを無くされたかも知れませんけど。・・でもこの世に永遠なものなんてないんじゃ」

老人はしばらく黙っていたがやがて卓上の呼び鈴を押した。

「翠蓮にお前を部屋まで案内させよう。それから」

老人は言った。

「夕食の後に話す事がある。お前の疑問もそれで解ける筈だ」

翠蓮が来て彼女は老人の居室を後にした。向かって左が彼女の部屋だった。淡いピンクの壁に純白な化粧台、クローゼット、サイドテーブル、机、電気スタンド、全てが揃っていた。しかも彼女はそれらの豪華さに目をみはった。この「風雨園」に足を踏み入れてからとにかくあまりに驚くことばかりだ。窓からは花園と噴水が望め、それにあの大理石の女神が月光の中でおぼろに浮かんでいる。玉のような水の粒を輝かせながら。

「江おねえさん、他になんか手伝わなくていい?」

翠蓮が尋ねた。

「今はいいわ、ありがとう」

翠蓮は去り江雨薇は窓べに立ち大理石の女神と遠くの山にかかる月を眺めた。聞こえるのは鳥と蛙の鳴き声、それに木々のざわめき。しばらく夢の中にいるような心地をさまよった彼女はやがて携えていた本のことを思い出した。
彼女がスタンドの灯りをつけベッドの上に本をそっと投げ出した時だ。一枚の紙切れがひらひらとこぼれ落ちた。拾い上げてみるとそれは鉛筆だけで書かれたデッサン画で簡潔な線しか使っていないにかかわらず充分に被写体の特徴を捉えていた。誰が見てもそれは耿克毅老人以外の何者でもない。そしてその横にはこう一行記されていた。

「父の肖像。息子若塵気まぐれに書く 1963年春」
作者: longxing01    时间: 2006-5-15 14:32
youdariyuさん、こんにちは

ご傑作を拝見し、すっごく感動しました。
この前、僕もある中国語版の文章を訳しておりましたが、
翻訳すればするほどその難しさが分かる気がします。
とっくに、日本語の擬態語や擬声語などに関しては
なかなか活かせることができいみたいです。
琼瑶の小説といえば高校時代の頃読んだことがあり、どんな作品を呼んで内容はなんだか
もう忘れましたけど、そのとき、琼瑶先生が書かれた小説に感動するのは
一生かかっても忘れないほど心の中に刻んでいます。
幸いで今回ここでyoudariyuさんの傑作である訳品をご拝見できればなんよりも喜んでいます。

ちなみに、youdariyuさんは江蘇にいるということがしってる、偶然で僕も
江蘇の蘇州におります。去年、大学卒ばかりなので日本語もまだまだで
これからよろしくお願いいたします。

admin啓上
作者: mizuiro    时间: 2006-5-15 16:26
引用第72楼youdariyu2006-05-15 12:01发表的“”:
Mizuiroさん、こんにちは。
拙文を読んで頂き有り難うございます。早速ですがご質問にお答えします。

1.    「陰々滅々」は「いんいんめつめつ」です。
2.    「浸みて」は「しみて」です。
.......
youdariyuさん、こんにちは。

早速のご返事ありがとうございます。
「ユーモラスな表現にしたい時や強調したい時、本来はひらがなの言葉をカタカナで書く場合が多い」は知りませんでした。
カタカナで書くのはこのような働きをするのですね。
「グレさせる」をきっかけに、今後日本語の小説を読むときに意識しておきます。
確かに小説でよくこのような表記が目にしています。

今回、第五章もまた興味深く拝読しました。
すばらしいです! 
お忙しい中を本当にありがとうございました!!
「風雨園」の景色はとてもきれいに訳しておられると思います。
頭を下げます!
youdariyuさんのおかげで、また新しい表現がたくさん習得できました。

youdariyuさんの訳文を拝読していつも感じるのですが、
日本語と中国語は両国の言葉ともよく理解なさっている方なって。
翻訳者の中で、優れた作家も多いと以前どこかの本で読んだことがあります^^。

それでは、またお時間のある時に更新してください。
楽しみにしております♪
作者: youdariyu    时间: 2006-5-15 18:59
Aokiraさんこんにちは。
陳瞬臣の「小説マルコポーロ」はジンギスカンではなくフビライハンの時代の話ですが、
この時代の雰囲気をよく表しています。南宋の滅亡、元寇。
おおいに感動するという作品ではありませんが。

そう言えば日本には伝説が有りますね。ジンギスカンは実は日本人の源義経だったとい
う伝説。中国やモンゴルの人が聞けば大笑いでしょう。

日本人が笑える伝説は、楊貴妃が実は日本に来てから死んだという話。そして山口百恵は
楊貴妃の子孫である(^^)。何人かの人から聞いたので中国では結構有名な話みたいです。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-15 21:05
longxing01さん、こんにちは。拙文を読んで頂き有り難うございます。

外国人の方にとって擬態語、擬声語は難しいと思いますが、是非チャレンジしてください。
これらは日本語の香辛料のようなものです。無くてもなんとか味わえるけれど、味気ない。
これからも宜しくお願いします。

mizuiroさん、こんにちは。
この翻訳文は、かなり以前に書いたものですので、忙しさには関係ありません。一人よがり
(觉得高兴一人)の表現も少なくありませんので、解り難い部分が有れば、いくらでも指摘
してください。

琼瑶先生の作品の魅力を日本語でいかに上手に伝える事ができるか。
未だ「叹息看海」の心境です。(この成語の使用法で正しいでしょうか)







作者: youdariyu    时间: 2006-5-15 21:19
瑶の小説「心有千千結」日本語拙訳です。

「心有千千結」

第6章

晩餐の席で彼女は再び耿克毅に会った。階段が使えない老人の為にダイニングは二階に設えられ、特別設計らしい照明は少しもまぶしさがなく柔らかで静謐な光を投げかけている。そのやや赤みがかった光の中で老人の顔は病院にいた時よりも溌剌として見えた。

「部屋は気にいったかな。雨薇」

老人は尋ねた。

「ちょっと良すぎます」

彼女は率直に答えた。ふかふかのベッドになんでも揃っている化粧台、それに独立したバスルーム。

「あんまり豪奢な部屋には泊まったことがないんです。父の事業が順調な時でさえ」

「若い娘なら時には贅沢も必要だ。夢も見なければいかん」

老人は江雨薇を暖かい目で見ながらいった。彼女はすでに老人のお気にめさない白衣を着替え黒いセーターと赤いスカート姿になっている。衣服は流行遅れだったがそれは逆に彼女の若さとスタイルを際だたせた。

「夢ですか?」

江雨薇は淡々と笑った。

「あたしが夢見る少女に見えまして」

「お前くらいの歳なら誰でも夢を見るものだ。わしでさえそうだった」

江雨薇はそっと目を伏せた。

「私の場合本当に・・半端な忙しさじゃなかったんです。夢どころか私がいつも思っていたことは弟たちにどうやって食べさせるか、それにどうやって学費をひねり出すかというただそれだけでした」

「一息つくことも必要だな」

老人は赤ワインの瓶を手にとるとグラスになみなみと注いだ。

「わしが長生きすればそれだけお前は給料を多くもらえるわけだ。それならわしの長寿を祈って乾杯してくれんか」

「いけません!」

江雨薇はあわてて遮った。

「お酒は絶対禁止です」

「堅いことを言うな。葡萄酒をほんの少しだ」

老人は言った。

「しばらく看護婦という事を忘れろ。お前を歓迎し、わしがまだ生きてることを喜び、そしてお前の未来の為に乾杯しよう」

「お酒を飲んだことがないんです」

「じゃあ今日が最初だな」

「じゃあ」

江雨薇は長い髪をかきあげた。

「一杯だけ」

二人はグラスをあわせた。

「健康と幸せを祈って」

彼女がごくごくと一気にワインを飲み干したので老人は目を丸くした。

「なんてこった。初めてじゃなかったのか」

「そんな事言いましたっけ?」

老人は微笑むとそっと酒を啜り食事を始めた。テーブルの上には丹念に造られた主菜が四皿にスープが一皿並んでいる。彼女は一口食べてそれが四川風だという事に気づいた。

「あら、北方の方だと思ってました」

「そうだ。だがわしは南方の料理が好きなんだ。李媽はたいしたやつでな。東西南北あらゆる地方料理が造れて一度に三卓は平気だ。以前この家がにぎやかだった頃なんぞ最高で45人の客を招待したが全部李媽が一人でまかなった」

「どうして今は招待なさらないんですか」

江雨薇は老人が一人で食事をしてる光景を寒々しく想像した。

「あれは」

老人は酒をまた一口啜った。表情はけわしく声は沈んだ。

「ここに居るのがわしだけになってからだ。あれからこの家は変わった」

彼女は老人をじっと見つめて言った。

「どうしてあの人を連れ戻さないんですか」

その途端、老人は持っていた箸をテーブルに落とすと恐ろしい眼差しで彼女をにらんだ。その声は氷のようだった。

「お前は今なんと言った。誰を連れ戻すだと」

「あなたの息子さんですわ。耿さん」

彼女は老人の眼光に射られ身体をこわばらせながらも視線をまっすぐ老人に向け続けた。

「息子だと」

老人の咆哮は続いた。

「お前はあのくそ息子ども二人の事を言ってるのか。奴らは奸計を尽くしてわしから銭を搾り取る事しか考えとらん。あのバカどもを呼んでわしを早く殺したいか」

「あの方達じゃありません」

彼女は言った。

「あなたのもう一人の息子さんです」

「もう一人の息子だと」

老人は目を剥いた。

「なにをたわ言ぬかしとる」

「たわ言は言ってません」

彼女ははっきりとことさら明瞭に答えた。

「若塵はあなたの大切な息子さんなんじゃありませんか」

その言葉を口にした時彼女は自分がもう後戻りできなくなった事を悟った。束の間あたりを静寂が支配した。風の音が聞こえる。遠くを走る汽車の汽笛と階下の時計が時を告げる音も。そして自分の胸の鼓動まで。
江雨薇は老人の視線を感じながらも自分がとんでもない事をしでかしてしまったというプレッシャーに卓上の四川料理を見つめるだけだった。死のような静けさに背筋を冷たいものが流れた。そうしてどれぐらい時間がたったかやがて老人はついに口を開いた。ひときわすさまじく。

「顔を上げろ、江!」

老人は今度は名前で呼ばなかった。彼女は号令をかけられたように顔を上げた。

「まっすぐこっちを見ろ」

老人はまたもや蒼白になり眼を血走らせている。

「お前はなにを知っているか言ってみろ!」

さながら軍法会議だった。彼女はそっと一枚の紙片を手元から取り出し老人の前に置いた。老人は顔を近づけると感電したようにぴくりと震えそれを手にとった。

「どっから持ってきた」

依然声は厳しい。

「お借りした本に夾んであったんです」

彼女は小さな声で答えた。老人は黙ったままじっとその紙片に見入った。ゆっくりと老人から怒りの色が消えていった。ゆっくりと。老人はやがて椅子に深くもたれかかった。青ざめた顔に今度は苦痛がとってかわった。老人は首をふり小さくつぶやいた。

「そうだ。わしの息子だ。わしが一番愛して心痛めたな。誰がなんと言おうとあいつはわしの息子だ」

「そうだと思ってました」

江雨薇はまた言わずもがなを始めてしまうのだった。

「あなたとあの人は本当にそっくりです。会ったとたんわかりました」

「なんだと」

老人は聞き逃さなかった。

「なんであいつを知ってる」

「あっ、それはその・・」

彼女はしまったと思ったがもう言ったものはひっこめられない。

「えっと・・それは」

「どこであいつと会ったんだ。言ってみろ」

老人はひきさがらなかった。

「言ってみろ。お前は他にまだなにか隠しているだろう」

「あれは・・」

縮み上がった彼女はとうとう白状した。

「病院でした」

「病院だと?」

老人はいぶかしんだ。

「そうです。病院の中や外で」

彼女は勇気を奮い起こしまっすぐ老人に向かって言った.

「あの人はあなたを心配して三度も来ました。でもあなたに知られたくないからいつも離れた場所で私に尋ねたんです。知らせるなって言われたのにあたしつい口がすべって・・。でも言わせてください!私はたしかに息子さんに会いました。そしてあなた方親子の間にいったいどんな事があったかは知りません」

彼女は目の前の料理を押しやりすっくと立ち上がった。彼女は自分でもわからない感情に駆られて眼に涙を浮かべた。

「もしも私があなたならあの人をきっと連れ戻します!なぜならあの人こそ世界じゅうで一番あなたを愛しているからです!」

そう言うと彼女は身を翻し自分の部屋へ駆けこんだ。彼女は部屋の中で混乱した自分の気持ちを整理しようとした。どうしてあんな事を言ってしまったんだろ。自分はさほど事情を知っているわけでもないのに。それに他人が人の家庭の問題に割り込んでどうなろう。彼女は自分に腹をたて、また後悔もした。
彼女は世界から忘れ去られたように一人闇の中で物思いに沈んでいたがやがて夜も更けた頃誰かが扉をノックした。

「どなた?入ってください」

入ってきたのは李媽だ。にこにこしながらお盆を持ってやってきた。そこにはトーストにバター、スクランブルエッグ、それに熱いミルクが載っている。

「旦那様からですよ。江お嬢さん」

李媽は笑いながら言った。眼差しに。

「あなたがたぶん何も食べていないだろって」

「・・」

江雨薇は差し出された食べ物を見てはっとした。こんがり焼かれたトーストと卵のたまらなくいい匂いが食欲を呼び覚ました。彼女の空きっ腹がぐうと鳴った。

「冷めちゃうから、早くお食べなさい!」

李媽はまるで我が子に言う様に彼女に促した。江雨薇は椅子に座りなおすとすぐさまぱくぱく食べ始めた。その様子には微塵もためらいが無い。本当に腹ぺこだったのだ。李媽はそれを好ましげに見ながら言った。

「それから食べ終わったら旦那様の部屋へ行ってあげてちょうだい。自分で注射出来ないって困っておいでだから」

「あちゃ!」

彼女は口いっぱいに入れたスクランブルエッグを思わず吹き出しそうになった。そうだあたしは付き添い看護婦だったんだ!

「終わったらそのままテーブルの上に置いときなさい。また片づけに来るからね」

李媽はそうして部屋を出て行きかけたが扉付近で立ち止まり数秒江雨薇の顔をじっと見てから言った。

「江お嬢さん、あなたが来てくれて本当に嬉しいのよ」

「そうですか?」

彼女は少し戸惑った。

「もし私でなくても誰か他の看護婦が来たのでしょうけど」

「そうじゃないの」

李媽は首を振ると感激したように江雨薇に言った。

「今まで旦那様にあそこまで言った人はいませんでした」

彼女は熱っぽく言った

「あなたが晩餐の時に喋った事ですよ。もしも・・」

彼女は少し間を空けた。

「もしもあなたなら”ぼっちゃん”を連れ戻せるかも知れないわ。そうなったら本当にいいんだけど」

江雨薇は面食らった。この李媽はさっきの会話をみんな聴いてたらしい。しかも彼女が”ぼっちゃん”を連れ戻すって?いったいどうやって?それにしても若塵と他の兄弟二人、培中と培華、なんで名前が揃ってないんだろ。スクランブルエッグを前に彼女はしばし考え込んだがすぐに首を振った。もう気にしないでおこう、自分はただの看護婦なんだ。
食事を全部平らげて顔を洗うと彼女は耿克毅の部屋へ急いだ。ベッドの上で横になっていた老人は彼女をそっと見やった。

「申し訳有りませんでした、耿さん」

彼女はもじもじと謝った。

「さっきは失礼なこと言ってしまって」

「もう食事はすんだかな」

老人は彼女の言葉が聞こえないふりをし、何事もなかったように優しく尋ねた。

「ええ、おかげさまで」

彼女は少し赤くなりながらテーブルの上の医薬品箱を開け注射器を取り出した。使い捨てなので煮沸消毒しなくていいので助かる。彼女はアルコールに脱脂綿を浸した。

「やってくれ」

老人は注射される間じっと大人しくしていた。

「脚のほうはいかがですか」

「ちょっと疼痛がある」

「麻痺するよりは良いと思います」

彼女が答えると老人はちらりと彼女を見た。

「いつも打てば響くお前みたいな娘は珍しいな」

「動かないでください」

彼女はベッドの縁に腰かけた。

「脚の血行を良くするためにマッサージしますから」

老人は言われるまま素直にした。

「今度はお前が暴君になりそうだな」

老人の言葉に彼女はくすっと笑った。

「きっと暴君は伝染病なんでしょう」

「やれやれ」

老人は嬉しげに言った。

「ようやく笑ってくれたな。これで仲直りだ」

「もともと争ってなんかいないじゃありませんか」

彼女はマッサージを続けながら言った。

「それに私はただの雇われ看護婦にしか過ぎませんし」

「わかった、わかった」

老人はすぐさま反応した。

「そのよそよそしい言い方はやめてくれんか。もう聞き飽きたぞ」

「仕事に忠実だといやがられるし、そうでないと出しゃばるなって言うし、本当にどうればいいのかしら」

彼女は軽くため息をつくと黙ってマッサージを続けた。しばらく部屋は静まりかえり、青で統一された室内に幽玄な時間が流れた。机の上にはおそらく李媽が活けたのであろう万寿菊が一輪。そういえば今は菊の真っ盛りなのだ。

「お前はさぞ不思議に思っただろう。培中、培華、そして若塵。なんで息子達の名前が揃っていないのか」

老人は突然口を開いた。きわめて自然に。彼女は無言のまま老人を見た。

「そもそも若塵は妻の子供ではない。いわばわしの私生児だ。この意味はわかるな?」

彼女は一瞬手を止めたがすぐにまた続けた。

「若塵の母親はわしの秘書だった。華奢で小さくてまだ少女っぽさを残した女だった。わしに何も求めず籍はおろか金さえ受け取ろうとしなかった。だが若塵が産まれた時だけあいつは泣いて言った。この子の命はまるで風に漂う塵のようなものだと。それでわしはその子に若塵と名付けた」

老人はそこで眼を細めた。

「だがなんと聡明で強情な子だったろう。わしに生き写しなその子をわしは限りなく愛した」

老人は続けた。

「若塵が6歳になったある日、友だちと喧嘩して帰ってきた。全身傷だらけになって母親に尋ねた。『お母さんは妾なの?』と。
わしは暁嘉のあれほど悲しむさまを見たことがなかった。あいつは若塵を抱きしめて一晩泣いておった。そして次の日若塵をわしに預けてこう言った。この子を正式な養子にしてほしいと。わしはあいつに誓った。必ず面倒を見ると。実際あの時わしは妻としてもあいつを選ぶべきだったかも知れん。しかし事業が成功しだし社会的地位の出来つつあったわしはスキャンダルを恐れ、また妻は自殺さえしかねなかった。わしは暁嘉に言い繕い続け時間稼ぎをした、そしてある日暁嘉は忽然とわしの目の前から去っていった。

・・そして久しくして暁嘉が日本の華僑に嫁いだと聞いた。わしはあいつが去って始めてどれだけ深く愛していたかを知った。あいつが去ったことでわしの人生の半分も終わったんだ。わしは暁嘉を取り戻そうとしたが駄目だった。そしてわしは持てる愛情の全てを若塵に注いだ」

老人はそこまで言い終えると天井を凝視した。その顔にいつもの厳格さはなく深い哀しみが浮かんでいる。

「若塵は成長するにつれ、わしに似て負けず嫌いに、母親に似て聡明で感じやすい子になった。本と絵画を好み十歳で早くも詩をつくり絵の才能を発揮した。あいつはわしの生活の中心だった。友だちも多く朗らかでおごらず、あいつさえいればこの家は笑いと元気さで満ちあふれた。わしら親子の仲はこれ以上ないほど良好だったんだ。わしは自分の可愛がり加減が度を過ぎていたこともわかっていた。だがこんな生い立ちの子に誰がそうせずにいられるだろう」

老人は再び黙った。江雨薇は水差しを取ると老人の唇に持っていった。老人は一口含むと再び語り始めた。

「わしは家の中で若塵の生い立ちを口にすることを堅く禁じた。若塵には実の母親がすでに死んだことにしておいた。あいつはわしの妻を敬いはしたが母親とはしなかった。あいつは家の中でしだいに浮き上がっていき更にわしの寵愛は妻の実の子供、培中と培華にとって眼の中の釘となった。あいつらは若塵に嫌がらせをしようと素性について陰口を叩き始めた。そしてあいつは十八になりこの「風園」を建てる時に天才的な才能を発揮した。しかしそれはわしに大きな誤った決断をさせた。わしはあいつを自分の会社へ連れて行き部下達に紹介し、あいつはたかだか二十歳そこそこで専務になった。培中と培華はどうしたかって?わしはそこまで考えていなかった。妻と二人のその息子から若塵に向けられた嫉妬がどれほどすさまじかったか。その時若塵は大学で文学を専攻し書籍集めに熱中し貪欲に知識を吸収して仕事どころじゃなかったようだ。だがそんな事も知らずわしがある日調査すると会社の金が100万元近くもあいつの名前で借り出されていたんだ」

老人はため息をつき首を振った。

「わしは激怒し、ひどく若塵を責めた。お前はわしの短気がどんなものか知っているだろう。傍らで培中が煽った為にわしの怒りは更に高まった。あいつは全く身に覚えがないと言ったがわしはその時聞く耳など持たんかった。おまけに培中が口からでまかせを並べたて若塵はとうとう大声で叫んだ。『たしかに俺は妾の子だ、あんた達には目障りだろう、俺があんた達の金を盗んだって言うのか、じゃあ言ってやる、俺はあんた達の汚い金と根性をずっと軽蔑してきたんだ、20年間ずっとな、二度とあんた達の顔は見たくない!』
それが若塵が出奔した最初だった。わかるだろう、わしの性格でこんな事が許せるかどうかが。しかも最も寵愛した息子からのこんな言い方が。しかしそれから半月後だ、わしは見つけた。無くなった100万元は実は妻と二人の息子がしめしあわせてやったものだと言う事を。やつらはその罪を若塵になすりつけたんだ」

老人はそう言うとゆっくり深呼吸した。江雨薇は今は手を動かすのも忘れただ
じっと老人の話に聞き入っていた。

「それからどうなさったんです?」

「それからか」

老人は続けた。

「わしはあまりに傲慢だった。傲慢過ぎた。わしは自分の過ちを認めるよりもまず二人のバカ息子に心底激怒した。わしはあいつらに若塵を探させ連れ戻すよう命じたが若塵は絶対に戻ろうとはしなかった。わしは怒りのあまり妻と二人の息子をこの家から追い出し縁を切った。そしてその事が伝わるとようやく若塵は戻ってきたんだ。だが、今もはっきり覚えている、あいつはわしの前に立ちこう言った。

「お父さん、僕たち母子が味わったのと同じ苦労をもう一度誰かに味あわせるのはやめてくれ」と。

若塵がそう頼む以上どうしていかんと言えるだろう。わしは妻と二人の息子を再び呼び寄せた。わしはこれで全てうまく行くと思いこんだ。この一件が兄弟の仲直りのきっかけになる筈だと。だがそれは甘い期待だった。三人の間の亀裂は深まるばかりで更にわしと若塵の関係も次第に壊れていった。頑固で負けず嫌いの若塵はあまりにもわしの血を受け継ぎ過ぎていた。あいつは決してわしを許そうとしなかった。そしてある事でそれは決定的となった」

老人が身を起こそうとしたので江雨薇は慌てて身体を支えた。

「何があったんですか」

「ある冬の日、日本から一通の手紙が届いた。暁嘉が京都の病院で肺病のために死んだという知らせだった。わしはその時あいつが結婚して三年後男に捨てられ日本を放浪していたことを始めて知った。だが困窮の中でも誇り高いあいつはわしに何の頼りもせずそうしてほとんど行き倒れ同然で亡くなった。その時のわしの気持ちがわかるか。わしは日本に行きあいつの骨を拾った。そして若塵は狂ったようにわしを非難した
「母さんは生きていたんじゃないか、それなのに放ったらかしで見殺しにするなんてあんたは人間じゃない、畜生だ!」
わしはもちろん自らが責めを負う気持ちに偽りはなかった。だが子が親をそこまでなじる非礼にわしは思わずあいつを殴った。そうしてあいつは二度目の家出をした。

この時の家出は1年間近かった。なぜなら大学二年の夏休みにあいつは退学ししばらく兵役に行ったからだ。その間に培中と培華は結婚しよったがどっちもろくな嫁じゃなかった。培中に三人目の子供が出来た時わしはまとまった金を彼らにやって出ていけと命じた。培華はひどく腹を立てわしに喰ってかかりおった。

「俺たちを追い出すのはあの妾の子の為だろ、あんな本当はどこの馬の骨かわか
らん奴!」

わしは培華をぶんなぐった。翌日あいつ達は出てゆき、わしはと言えば昏倒し台北大学病院へ入院することになった。最初の発病だ。そして一週間ほど無意識のまま目覚めた時枕元に居たのは若塵だった」

老人はそこでしばし口を閉じた。寂しげな微笑が口元に浮かび眼はかすかに潤んでいる。江雨薇は時計を見た。もうすでに12時を過ぎている。夜は深く窓の外の夜景と天上の星は境目を無くそうとしていた。彼女はそっと申しでた。

「そろそろお休みにならないといけませんわ。後のお話は明日また伺わせてください」

「いいや」

老人は何かにせかされる様だった。

「もう少しだ、最後まで聞いてくれんか。わしは言ってしまいたんだ」

「わかりました」

江雨薇は優しく促した。

「おっしゃってください」

「若塵は帰ってきた。だがあいつは以前の若塵じゃなかった。陰気でしかも怒りっぽく無気力になり、いつもわしを恨む様な眼でにらんだ。日々口喧嘩が絶えずわしらの心はしだいに離れていった。いつしかわしらは「仇敵」に変わったんだ。おまけに培中と培華はあいつが帰ってきたのは遺産目当てだとあちこちで吹聴しおった。あいつは激怒し酒に乱れ四六時中わしにからんだ。

「いつかこのクソ忌々しい腐れ縁をぶった切ってやる」

わしはあいつがそう言いながらもわしから離れない理由を知っていた。あいつは暁嘉の子であると共に間違いなくわしの子だったからだ。自分にわしと同じ血が流れている事実に逆らえきれなかったんだ。だがあいつの堕落した様子は我慢できるもんじゃなかった。わしはあいつを罵りあいつはわしを罵った。わしらはまさに「仇敵」以外なにもんでもなくなった」

老人はため息をついた。

「どうだ、こんな親子が他にいると思うか」

彼女はそっと首を振った。

「そして妻が世を去り風雨園に残されたのがわしと若塵の二人になった時、わしは急に孤独を感じ始めた。新しい状況はわし達に仲直りのチャンスを与えたかのようだった。わし達はお互い歩み寄りを模索した。だがまたその時だ。若塵がろくでもない女にひっかかったのは」

老人は口をゆがめ、江雨薇は注意深く耳を傾けた。

「女の名は”紀靄霞”と言った。わしは生涯その名前を忘れん。若塵より三歳年上で世慣れた奴だった。あいつがその女を連れてきた時わしは一目で女の魂胆を見抜いた。わしは若塵に近づくなと忠告した。女は金が目当てで本心ではないとな。だが若塵はわしの言葉を聞ききいれるどころか激怒した。好きな女を侮辱され愛情を疑われたと思いこんだ。あいつはわしに毒づきわしを守銭奴だと言いおった。そして自分の母親もその欲の犠牲になったんだと。わしは自分の傷口に触れられた事に我を忘れて怒った。わしらは罵りあい互いに呪いの言葉をぶつけあった・・とうとうわしはたまらず出て行けと叫んだ、二度とそのつらを見せるな、二度とこの風雨園の敷居をまたぐな、永遠にお前の名は聞きたくないと。そうして今度こそあいつは本当に出ていった。死んでも帰らないと言いながら」

江雨薇はじっと老人の瞳をのぞきこんだ。

「それはいつの事なんですか」

「四年前だ」

「じゃあ出ていかれてからもう四年になるのですね」

江雨薇は少し驚いて尋ねた。

「この四年の間、消息は届かなかったんですか」

老人の眼が彼女をちらりと見た。

「わしらは親子の縁を切ったんだぞ」

老人はそう言ったがすぐに力なく笑って首を振った。

「ああ、知ってはいる」

「まだその女性と御一緒なんですか」

「女と住んだのはたった一年だった。その女はわしから何もまきあげることが出来ないとわかるとおさらばした。あきれた話だ。奴は若塵と別れる前にわしのところへ来て金をゆすろうとした。手切れ金を払えば別れてやると言って。わしが一銭も払わんと答えると女はさっさと若塵を捨て今ではどこかの社長の後妻だ」

江雨薇はじっと老人の顔を見ていた。

「わかりました」

彼女は言った。

「それこそがあの人の帰らない理由なんです。あの人はとても自尊心が強いのだと思います。愛した女性に騙されたショックと、最初に忠告してくれたあなたに対しての負い目からあなたに会わせる顔がないんでしょう。それに自分自身に対しても」

老人ははっとしたように彼女を見た。

「お前の言うとおりかも知れん」

老人はこっくりと首を縦に振った。

「わしもあいつも負けず嫌いだ、自尊心は人一倍強い。わしらはお互い言ってはならん事を言い過ぎた。どうして一方から歩みよれるだろう」

老人は寂しく微笑んだ。

「どうだ。今宵お前はある金持ち一家の痴話を聞き通した。もしも小説にするならさぞかし面白いものが書けるぞ。父親と憎みあう三人の息子のドラマが」

江雨薇は立ち上がった。

「いいえ、違います。耿さん」

彼女は心から感じた事を口にした。

「あの人はあなたを憎んでなんかいません、決して」

「お前は若塵のことを言ってるのか」

「そうです」

江雨薇は老人が横になるのを助け、安定剤を飲ませた。

「あなた方に必要なのはお互いが意固地を捨てることだけです。私にはわかります。あの人はきっと帰ってきます」

「ほう、そうかな」

老人は半ばうとうとしながら答えた。

「もしも帰られたらその時は辛抱なさってください。決して責めたりされませんように」

彼女は部屋を後にしようとして扉の近くで振り返った。

「それではおやすみなさい。耿さん」

老人の部屋を出てから彼女はゆっくりとした歩調で自分の部屋に戻った。頭の中には千千(ちぢ)に乱れる様々な思いが去来した。老人と若塵の名がいつまでも彼女の脳裏から去らなかった。彼女はこうしてここでの最初の夜を眠れないまま過ごしたのだった。
作者: 80988995    时间: 2006-5-16 00:34
youdariyuさんはえらい。     
作者: youdariyu    时间: 2006-5-16 12:25
80988995 さんこんにちは。
拙作を読んで頂き感謝します。顔アイコンを三つも有り難うございます(^^)

ついでに自己RES、「日暮れて道遠し」という諺は「叹息看海」だと思ってたんですが、
辞書を調べなおすと載っていません。遊びに来てた中国人の友達に聞いても「そんな
成語は知らない」。私の記憶違いかな?(汗)
作者: youdariyu    时间: 2006-5-16 12:41
琼瑶の小説「心有千千結」の拙訳です。

第7章

その日の朝、江雨薇が老人に注射やマッサージを施していると弁護士の朱正謀がやって来たので仕事の話に遠慮し彼女は席をはずした。実際、天気も良い日で庭園には陽光が満ちジャスミンの香りが溢れ外へ出ずにはおれなかったのだ。秋の日差しは暖かく、頬にそよぐ風はふんわりとしてやさしく彼女を酔わせた。そうしてゆっくりと庭園を散策しながらも彼女の胸中からは耿克毅とのその息子達の事が離れなかったけれど。
 庭園にはいくつもの大きな松とこんもり茂る竹林がありその間には小さな小道が伸びていた。彼女が何気なくその道をたどるとふいに濃密な木犀の香りが漂った。そう今は木犀の盛りでもある。そのまま道を行くと今度はまた少し開けた空き地に出た。そこには菊、マイカイ、それにシナフジの棚がまたひと味違った趣を醸し出していた。シナフジに囲まれて石造りのテラスがあり紅色のシナフジは光に映えその隣には木犀の大きな大木が黄金色の花の房を投げかけている。

「すごい」

彼女は思わず叫んだ。

「この庭園はいくつにも分かれてるんだわ」

考えてたよりもはるかに大きな庭園なのだ。彼女は木犀に近寄り花の一つを手にとり甘い香りをいっぱい吸い込んだ。そしてシナフジの棚が飾られた石の椅子に腰をおろした。陽光が花の間を透過し彼女の身体に降り注いだ。彼女は花をテーブルの上に置き深く椅子にもたれた。しばらく花と空を眺め、木々と庭園を眺めた。マイカイと木犀の香りに包まれ少しの間彼女はさながら桃源郷にさまよい込んだ気分だった。
 今度はなにか本を持って来よう、彼女はぼんやりとそう考えた。頭に浮かんだのは書庫から借りたあの本、そして自然と若塵が書いたあの肖像画に思いは移った。塵芥のような若塵・・。彼女は椅子に身を委ねその面影を心に描いた。
 
ふいに、葉っぱがざわざわと揺れる音が彼女を現実へ引き戻し、彼女は椅子に座りなおした。老李が木の間をかきわけ現れたのだ。彼はびっこをひきながら彼女の方へ近づいていった。手には大きな花ばさみを持ち目は彼女をしっかりとらえている。

「なに?」

江雨薇はちょっとびくついた。老李の顔は刃物傷があってスゴいのだ。そのうえ見たところ彼は江雨薇をつけて来たように思える。彼女は動悸が早くなるのを感じた。まったくこの人があの気さくな李媽と夫婦だなんて想像もできない。

「・・花のお手入れ?」

とりあえず思いつく一番当たり障りない言葉だ。

「あんたを探してましたぜ」

老李は低い不気味な声で答えた。

「私を?」

「ええ」

そう言うと老李は素早く彼女に歩み寄り、ポケットから一枚の紙片を取り出し彼女の目の前に突きつけた。

「これを」

彼はぶっきらぼうに言った。

「これって?」

江雨薇はそう聞き返したが反射的にその紙片を受け取った。開けてみるとそこにはこんな文字が。

「和平通り東側、3丁目990,208の19号」

江雨薇はわけがわからなかった。

「これは何?」

彼女は尋ねた。

「”ぼっちゃん”の居場所に決まってるじゃありませんか」

老李はすぐさま答えた。

「旦那様にはこの李が知らせたって事はくれぐれも内緒に」

それだけ言ってしまうと彼は去って行こうとした。

「ちょ、ちょっと待ってください!」

江雨薇は思わず叫び老李は立ち止まった。

「これでいったいどうしろって言うんです?」

老李は振り返り、さも妙な事を聞かれたかのようにいぶかしげに彼女を見た。

「あんたが”ぼっちゃん”を連れ戻してくれるって聞いたんだが」

彼は付け加えた。

「居場所がわからなきゃあどうしようもないしな」

「私が?」

彼女の眼が点になった。

「どうして私が?それに連れ戻すってそんな簡単に・・」

「わしの嫁さんが言ってたよ、あんたなら大丈夫だって」

老李の眼が大きく輝いた。

「旦那様の為にもあんたが行かなくちゃあな」

「行かなきゃって?」

江雨薇の眉間がぴくぴくと動いた。

「どうして私が行かなきゃならないんです?」

老李はすっくと背筋を伸ばした。その姿はそびえ立つ鉄塔のようで、濃く太い眉毛は一直線につながり両目は訴えかけるように彼女を見ている。

「それはあんたにその力があるからですぜ、お嬢さん」

彼は言った。

「私に?」

江雨薇はますます困惑した。

「旦那様にとってはあの”ぼっちゃん”だけが心の支えだった。もしもう一度帰って来てくれたなら・・」

彼は少し言いよどんだがやがてこう呟いた。

「もう思い残す事はないかも知れん」

「あの方には他にも二人の息子さんがいるじゃありませんか」

江雨薇は探るように言った。いったい培中と培華はここではどんな扱いなのだ。

「旦那様にとって本当の息子は一人しかいなかった」

老李はしみじと言った。

「あの”ぼっちゃん”だけが旦那様を本当に思いやり、それにわしらの事も思いやってくれた」

そう答える老李の眼は潤み、深く尽きせぬ思いが滾々とわき上がってくるようだった。傷が刻まれゆがんだ彼の顔が美しく変わるようにさえ思えた。

「あんな素晴らしい若者は他にはいませんぜ、江お嬢さん。わしらは子供の頃からずっと見てきたんだ」

「それなら」

江雨薇は紙片を示して言った。

「どうしてあなた方が連れ戻そうとしないんですか?」

老李は哀しげに眼を伏せた。

「やっては見ました。でも”ぼっちゃん”はわしらの言う事を聞いてくれなかった」

「じゃあ、どうして私の言うことなら聞くって言うんです?」

老李は自信たっぷりに彼女を見た。

「あんたは旦那様を手なづけたじゃありませんか」

彼は嬉しそうに言った。

「あの旦那様を手なづけれるなら”ぼっちゃん”だって大丈夫!」

「なんてこと!」

彼女は天を見上げた。いったいどういう理屈なのよ。

 彼女はもしかして自分がアリ地獄に片足つっこんだじゃないかと思った、それにこの峻厳にして熱血系の人物の期待さえ呼び覚ましてしまったではないか。こっちはどうしていいか皆目見当もつかないのに。
 彼女は弁解したかった、自分はただの看護婦であってなにも家庭争議を仲裁するために来たんじゃないと。けれど老李は彼女のそんな気持ちも知らずさっさと後ろの竹林の中へ去っていった。こう言い残し。

「江お嬢さん頑張ってくれ、その住所はなくさんようにな」

「あっあの」

彼女は叫んだ。

「待ってください!」

しかし老李は消えた後だった。江雨薇は花棚の下で紙片を握ったまましばし立ちつくした。もうなにがなんだかわからない。なすすべも見つからない。自分はたしかにここへ看護婦のつもりで来た筈。なのにこの耿家のみんなはいったいなんだと思ってるのかしら。
 彼女は首を振り紙片をポケットに入れると最初に来た道を戻り始めた。噴水の前で弁護士の朱正謀に会った。彼は自分のダッチ(車)に乗り込み今まさに去ろうとしていた。彼は車の窓から顔を出して言った。

「慣れましたか?江さん」

彼はにこにこと笑った。

「ええ、なんとか」

彼女も微笑み返した。

「きっとこの風雨園を気に入るでしょう」

彼は自分でも得心するようにうなづいた。

「本当に魅力のある庭園だ、そう思わないですか」

「そうですね」

「ぼちぼち、やっていくことですよ」

朱正謀は彼女を元気づけるように言った。\

「耿克毅と長くつきあっていけばたぶん気づく筈です。彼はただの頑固親爺じゃない。ボロクソは言うけど気にすることはない、ね?」

江雨薇は笑った。彼女はこの温厚な弁護士に親しみを感じていた。

「有り難うございます、朱さん」

彼女は言った。

「御助言忘れませんわ」

 朱正謀が去った後も彼女は噴水の側で大理石のビーナスを見つめていた。神々しさはやはり比類ない。そうしてしばらく佇んでいると今度はクラクションの音と共に黒い乗用車が入って来て門の前で停まり、中から小太りの男が出て来た。眼鏡をかけた白髪のその男は皮鞄を抱え、運転手の趙に何事か告げるとあたふたと急いで屋敷の中へ入っていった。状況からして耿老人は本日ご多忙らしい。

江雨薇は車のほうへ近づいた。

「おはよう、趙さん」

彼女は声をかけた。

「おはようございます、江お嬢さん」

趙は恭しく返事を返した。

「さっきの方はどなたです?」

彼女は何気なく尋ねた。

「旦那様の紡績会社の唐経理部長です。旦那様が最も信頼をおいておられます」

「あら」

江雨薇は肩をすぼめた。

「退院してすぐにこの有様なんですね。山ほどの商談と事務処理と。こんな事ではまた身体をこわしてしまいます」

「旦那様には優秀な社員が必要なのですよ」

趙はそう言ってから江雨薇をじっと見つめてこう付け加えた。

「”ぼっちゃま”がお戻りになるまでは」

江雨薇はびっくりして趙を見た。

「今なんて?」

彼女は思わず尋ねた。

「老李からもう話は伺っておりますよ」

趙は答えた。

「いつでもあなたをお連れできます」

「連れて行くって?」

彼女はわけがわからなくなった。

「車の準備は万全です」

趙はぺらぺら喋った。

「なにしろ、あそこは分かり難い場所ですからね」

そしてひそひそ声で。

「ご心配なく、もちろん内緒にしておきますよ。旦那様には町に用事で出かけるとかおっしゃって頂ければ」

またこれだ!これっていつのまにお約束ごとになっちゃったの?

彼女は厄祓いするかのように首を振り振り彼をやり過ごすと白いロビーへ向かった。唐経理部長はおそらく二階で仕事の最中なのだろう、姿は見えない。彼女は置かれてあったステレオに近づいた。積まれたレコードを見るとそれらはみな4年前に流行った曲だ。ということはおそらく若塵が集めたものだろう。彼女には今はもう鬼門の方向としか思えないあの”ぼっちゃん”の!

「江お嬢さん!」

彼女が振り向くと李媽が例によってにこにこ笑っている。

「なんでも食べたいものがあったら言ってね、おもいっきり腕をふるうから」

李媽はいかにも彼女に喜んでもらいたそうにことさら熱心にふるまった。

「どうか気をつかわないでください」

彼女は不気味なタクラミを感じとった。

「あたし、好き嫌いはないんです」

「どこのお生まれかしら?江お嬢さん」

李媽は尋ねた。

「湖南です」

「あっ、じゃあ辛いのがいいわね」

李媽は得意そうに言った。

「「辣子鶏丁」と「豆鼓魚頭」なんかどうかしら?」

「あのー、李媽」

江雨薇はさらに不安になった。

「本当におかまいなく、かえってあたしが困ります」

「させておくれよ、あたしにさ!」

李媽は相変わらず嬉しそうだった。

「喜んでもらって始めてこっちだって造りがいがあるってもんだよ、そういや”ぼっちゃん”は昔大皿いっぱいの料理を全部たいらげちゃ、あたしにこう言ったもんさ、李媽、ぼくがデブになったら李媽の責任だよってね、あの時”ぼっちゃん”は本当に元気だったのに、でもここ数年は全然会えなくて・・」

李媽の顔が曇った。彼女はため息をついて言った。

「いったいどんな暮らししてるやらねえ・・あっ!」

李媽はいかにも意味ありげに江雨薇の顔を見た。

「それじゃあ、食事の支度をしなくちゃ!」

李媽が去った後江雨薇はパニック寸前だった。いったいどういう事よ?あたしが捕まったアリ地獄はますます深くなって行くじゃないの。ここまで使用人を一致団結させるなんて若塵、あなたはどんな人なの?それにその崇拝されようもただ事じゃない。でもそれがあたしとどんな関係があるって言うのだろう、なんでこうまで足をつっこまなければいけないの。彼女は考えれば考えるほど混乱した。

やがて彼女はのろのろと二階にあがった。唐経理部長はまだ老人の部屋で打ち合わせ中らしい。時計を見るとまだ服薬と注射の時間ではなかったが彼女は老人の部屋の扉をノックすると声をかけた。

「耿さん、あまりご無理なさらないでください!金儲けよりもお身体のほうが大事です!」

「ほら来やがった」

耿克毅は呻いた。

「この女暴君は口やかましいぞ」

そう言って唐経理部長に彼女を紹介した。

「これはわしの付き添い看護婦をやってくれている江雨薇さんだ。こっちは唐経理部長」

江雨薇は唐に小さく会釈した。

「あまりお仕事を持ち込まないでくださいね。唐さん」

「ええ、言われるとおりで」

唐は汗をかいた。

「どうだ、女暴君だろ」

老人の言葉に彼女はにっこり笑うと部屋を出た。彼女はそれから自室に戻らずあの広い図書室に向かった。彼女にとってここは図書室であり宝の山であった。蓄えられた本の数々は磁石のように彼女を誘引し、それは一歩入ったが最後出ていく事が難しい仙郷だった。無数の絵画本や詩本の中で彼女はあれこれを手にとったが多くの本には短いメモが添えられていた。それが全て若塵の手によるものであることに疑いはなかったが彼女は彼がたった一人でこれほどの本を読んだとは信じ難かった。彼女は「ゾラ短編小説集」のメモにこう書かれてあるのを見つけた。

「僕はこの頃自分の欠点が何かを見いだしたように思う。二つの矛盾した感情である自尊心とコンプレックスが僕の心の中でいつもせめぎ合っているのだ。自尊心とコンプレックスは考えるところ表裏一体の関係にあるらしい。そして時にそれは一緒になって区別がつかなくなるのだ」

彼女はその文字をしげしげと眺めた。自尊心とコンプレックスの関係、確かにそれはそうかも知れない。彼女が覚えているある人物は自らを天才と認じながら生涯を困窮に甘んじた。彼の友人がからかって、君は天才なのにこのていたらくはなんだと言うと彼は殴りかかったものだ。彼のその行動は自尊心によるものなのかコンプレックスなのか。貧しい者は貧乏人と呼ばれるのを嫌い、逆に学歴のない者は無学と呼ばれるのを厭う。コンプレックスを補おうとする心の動きが自尊心かも知れない。彼女は紙片を戻しそびれたまま本棚の前の安楽椅子に腰掛けぼんやりと思案した。

階下の時計が12時の時報を鳴らし、彼女は椅子から跳び上がった。もう午前が過ぎてしまった。彼女は急いで自分の部屋へ戻った。部屋へ入ったとたん彼女はそこに翠蓮の姿を見つけて驚いた。翠蓮は江雨薇を見ると顔をくしゃくしゃにして笑いながら言った。

「江おねえさん、早く早く!この服いいと思わない?」

江雨薇はそこでようやく床いっぱいに広げられた衣服の数々に気づいた。彼女は歩み寄ってその一着を手にとった。どれもみな真っ新でセーターからロング、ショートのスカート、スーツ一揃え、それにコートにドレス、およそありとあらゆるものが並んでいる。彼女は思わず叫んだ。

「ここで洋服屋でも開くつもり?」

「やだあ!」

翠蓮はけらけら笑った。

「これは旦那様が唐さんに言って持ってこさしたものよ。おねえさんに着てもらう為に!さっどれにする?」

「え?あたしの為に?」

彼女は眼を丸くした。

「どうしてそんなことを?服なら持ってるわ」

翠蓮はおかしそうに首を振って見せた。

「きっと旦那様は白衣が好きじゃないのね」

彼女はそう言うと一着を取り上げ彼女の身体にあわせた。

「わあ、最高!これなんておねえさんのために誂えたみたい!」

彼女はしばらく何事か考えていたが、ふいに手に持った本を近くへ投げ出すと、さながら一陣のつむじ風のごとく風を切って耿克毅の部屋へ駆け込んだ。唐経理部長はすでに帰って、老人だけが椅子に一人座っている。

「耿さんお話があります」

彼女はぶつける様に言った。

「あの衣服はいったいどういう意味ですか」

ほとんど検事が罪人を問いつめるがごとき口調だ。

「おう?服だって?」

老人はちらりと彼女を見ると呑気そうに答えた。

「若い娘ならそれに見合った格好をせねばな。どうだ?あれはわしからのプレゼントじゃから給料とは別だ」

江雨薇は少なからずかちんと来た。

「私の格好はそんなにみすぼらしいですか?この豪華なお屋敷にはふさわしくありませんでしょうか?」

「おやおやおや」

老人は言った。

「気にさわったかな」

「ええ」

江雨薇は顔をこわばらせた。

「あんなものを頂く理由がありません。私は自分の好きなものを着る権利がある筈ですわ。たとえ白衣だってかまわない筈です。たとえあなたが好まれなくても。・・私は”施し”は受けません」

「待ちなさい」

老人は眉をしかめた。

「どうしてあれが”施し”だと言うのかな」

「私にはそう感じられます」

老人はしばらく彼女を見ていたが。

「わしの話を聞きなさい。雨薇」

諭すように言った。

「あの服は全部わしの社の製品だ。わしは紡績工場を持ちそして既製服も造っておる。お前のサイズは見たところ米基準の7号と9号だな。それでわしはこの秋冬の新作を唐部長に持ってこさせた。だからわしは余計な金を費やしたわけではない。お前はわしにからかわれたように感じたかもしれんが、わしにはついぞそんなつもりはない。貧しい事は何も恥じゃないぞ。お前は着るものを持っていない。だがそれだけの事だ。わしはお前がそんな小さい事にこだわるのが理解できん。お前が守らねばならない自尊心はそんなものじゃないだろう」

自尊心。江雨薇は若塵のメモ書きを思い出した。自尊心とコンプレックスの関係。そう、たしかにここでむげに断るのは自尊心なんかじゃない、むしろコンプレックスのなせる業だ。老人はなにも彼女を見下してなどいない。彼女はしばらくじっと考えるとやがて笑顔に戻った。

「わかりました耿さん。あなた方親子の言われるとおりです。御好意をお受けしますわ」

「親子だって?」

老人は一瞬何のことかわからず問い返そうとしたがその時彼女は部屋を去っていた。なんだってここにいない若塵があの娘の服の話に入ってくるんだ?

やがて江雨薇は翡翠色の長いドレスをまとって食事の席に現れた。襟と袖口はゆったりとして蓮の刺繍が施されている。衣装にあわすために彼女はうっすらと化粧までしていた。優雅に微笑み若さをふりまきながら席についた彼女を見て耿克毅はまぶしそうに言った。

「わしがもう30年若ければ放ってはおかんのにな」

「いえ、その時でも相手は私じゃなくて」

江雨薇はほとばしるように笑った。

「きっとあのビーナス・・の方じゃありません?」

老人の顔が少し曇った。

「たしかにな」

老人は言った。

「わしが気になるのは、お前を嫁にする幸運な奴はどいつかってことだ」\

「幸運ですって?」\

彼女は問い返した。

「こんなひどい女暴君なのに?」

老人が大声を上げて笑った。その傍らでは李媽がひどく喜び涙を流さんばかりだ。彼女は老人が心から笑ったのをここ何年も見たことがなかったのだ。

江雨薇はたらふく「辣子鶏丁」と「豆鼓魚頭」を食べた。午餐が終わり彼女が部屋へ戻るとテーブルに木犀の花が活けられていた。ふくよかな香りが部屋じゅうに満ちている。彼女が花瓶に近づき顔を近づけた時ドアを叩く音がした。振り向くと李媽がにこにこしながら立っている。

「木犀が好きなんでしょ、江お嬢さん。この庭園の中でなんでも欲しい花があったら一声言ってね、すぐ持ってくるから」

「・・」

江雨薇は感激した。

「本当に・・有り難う!」

「これぐらい当たり前ですよ。江お嬢さん」

李媽はエプロンの前でもみ手をして、精一杯自分の気持ちを表現した。

「あなたはこの家にまた笑い声を運んで来てくれたんだから、本当に素晴らしい娘さんよ」\

本当?それ本当?本当?これほど褒められたことなんて今までなかった。彼女は眼をぱちくりしながら言った。

「李媽、ちょっと話があるんですけど」

李媽は近づいた。江雨薇は小さな声でささやいた。

「老李と趙さんに言って欲しいんです。来週のお休みの日、私はあの人を探しに行きますって」

李媽の眉がぴょこんと上がり眼は輝き口元にあっと言う間に笑みが広がった。彼女は喜び溢れた様子で江雨薇に深くうなづくとそそくさと出て行った。

江雨薇はベッドに仰向けになると天井を身ながら呟いた。

「江雨薇、江雨薇。あなたとうとう台風の眼の中へとびこんじゃったのね、これでもう後戻りできないわよ!」

【続く】
作者: mizuiro    时间: 2006-5-16 21:06
引用第77楼youdariyu2006-05-15 21:05发表的“”:
mizuiroさん、こんにちは。
この翻訳文は、かなり以前に書いたものですので、忙しさには関係ありません。一人よがり
(觉得高兴一人)の表現も少なくありませんので、解り難い部分が有れば、いくらでも指摘
してください。

琼瑶先生の作品の魅力を日本語でいかに上手に伝える事ができるか。
未だ「叹息看海」の心境です。(この成語の使用法で正しいでしょうか)
うわ、更新速度は速すぎ~~
消化不良になりそうです。

youdariyuさん

「叹息看海」は成語ではないような気がします^^。
もしかして、「望洋兴叹」のことでしょうか。

「望洋兴叹」
本义指在伟大的事物面前感叹自己的藐小,今多比喻要做一件事情而力量不够,感到无可奈何。
しかし、「望洋兴叹」は普通本当に自分の能力不足を感じて、もうどうしようもない、やめる、諦めるときしか使わないので、この場合では不適切だと思います。

「日暮れて道遠し」は知りませんでした。
早速意味を調べてみました。
「年をとって人生も残り少なくなったのに、 いまだ少ししか目的が達せられていないこと」とありました。
これに似ている意味の成語はちょっと思いつけなくて・・・(中国語の勉強不足)

中国語には「日暮途穷」という表現があります。
これは「日暮れて道きわまる。困窮のどんづまりに突き当たる」という意味です。
「年をとって人生も残り少なくなったのに、 いまだ少ししか目的が達せられていないこと」とは違いますね。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-17 12:26
mizuiroさんこんにちは。
消化不良を起こさせてしまっては申し訳ないので、これからは小さなネタ(話題)を途中
に挟みながら、ゆっくり更新しますね(^^)

「望洋兴叹」、そうです!この成語です。教えて頂いて有り難うございました。

>しかし、「望洋兴叹」は普通本当に自分の能力不足を感じて、もうどうしようもない、やめる、諦めるときしか使わな>いので、この場合では不適切だと思います。

そうなんですか、私の辞書にはそこまで詳しく説明されていませんでした。やはり語学はネィティブの方と交流しないと上達しませんね。
日本語の「日暮れて道遠し」は

>「年をとって人生も残り少なくなったのに、 いまだ少ししか目的が達せられていないこと」

の意味で問題ないと思います。

以下余話です。
文芸小説を翻訳していて楽しい事。それはストーリーがすでに出来上がっているので、どんなに苦労しても、いつかは完成出来る、という事ですね。
琼瑶先生がこう書いておられます。「たった一つの台詞を考え出すのに徹夜した事もある」
それに較べれば翻訳は楽な作業です。

逆に、翻訳していて苦痛に感じる事。それは「この台詞は省略したほうがスッキリするなあ、この場面は余分だなあ」
と思っても、やはり原作を尊重する以上、忠実に訳さないわけにはいかない、という事です。
勝手に内容を変えたりすれば、別の作品になってしまいますもんね(笑)
作者: youdariyu    时间: 2006-5-18 14:01
落語「牛肉麺公社」
これは落語の「ぜんざい公社」を標準語に修正したものです。役所の仕事の非能率を皮肉った話。

●あの、すいません
■はい
●こちらの牛肉麺を食べたいんですが
■当公社の牛肉麺をお食べになる? お食べになる牛肉麺は特別牛肉麺になさいますか? それとも一般牛肉麺になさいますか?
●な、何です?
■特別扱いの牛肉麺になさいますか? 一般扱いの牛肉麺になさいますか?

●特別扱いの牛肉麺って何ですか?
■特別牛肉麺とは、まず、新疆出身の牛肉麺技師が新疆産の肉を用い、上海産の醤油を入れまして、四川省産の砂糖にて味付けしたものです
●それ、すぐ食べられますか?

■はい、今日申し込んでいただきますと、一括いたしまして審議にかけ議会の議決を必要としますので……、受け渡しは来年の3月7日以降となります
●そんなに、待てません。一般扱いでけっこうです。

■では、このカードを持って18番の窓口で手続きをしてください
●牛肉麺食べるのに手続きが要るなんて、役所は大変だな……、18番、18番。すいません、牛肉麺を食べる手続きに来たんですけど。

◆はい、あなた住民票、運転免許証、保険証その他、身分証明になるものはお持ちですか?
●散歩のついでに寄ったんです、そんなもの持ってる筈がないでしょ
◆それではこちらの方で書類を作成しますから、ここに住所、氏名、生年月日、職業、連絡先等書き込んでください。

●牛肉麺一杯で身分証明書? 書けと言われれば、書きますけど、、どうしてこんな面倒臭い事をしないといけませんか?
◆当公社ではいつどなたが牛肉麺をお食べになったかといぅことを克明に記録にとどめ、決算期になりますとこれを元帳に転記し、来年度予算請求の資料といたします。

●よ、予算請求……。書きました、ちょっと見てください
◆はい、北京市……、王さんですね。お食べになるのはあなたご本人ですね
●当たり前でしょ、牛肉麺食べるのにどうして人を雇って食べさせるんですか
◆それなら結構、代理人の場合は委任状が必要となりますので、念のため。

◆右の者、牛肉麺を食すこと保証します。牛肉麺飲食公社保証の印。はい、これが証明書類の代わりになります。が、印紙が必要となりますので1番窓口で印紙を購入してきてください
●印紙が要るんですか? 面倒臭いなぁ……、1番、1番、あの、すいません。書類作成の印紙もください。いくらですか? 100元? 100元も要るんですか。

◆はい、結構です。これで当公社の牛肉麺を食べていただきます。が、当公社では代金前払制となっておりますので、ここの廊下の突き当たりに銀行の出張所がございますから、そこで振り込んできてください。

●いくら払うんですか?
◆250元です
●いくらですって?
◆一般扱い牛肉麺は一杯250元となっております
●高い、高過ぎます。それなら民間の牛肉麺店に行きます
◆お食べにならない。それはご自由ですが王さん、あなたと当公社の間には既に売買の契約が成立しております。それを一方的に破棄なさるといぅことになりますと、牛肉麺法第3条2項(契約の破棄)違反5万元の罰金もしくは6ヶ月の懲役。

●馬鹿馬鹿しい。牛肉麺の為に懲役……、食べます、払えばいんでしょ

  ========================

こんな感じで、本当はもう少し続きます(^^)
作者: longxing01    时间: 2006-5-18 14:15
面白いご落語をご提供いただいてありがとう。
いいお勉強になりました。

ちなみに、youdariyuさんは日本の数字関連の言葉が知ってますか。
ご存知なら、教えていただければありがたいんですが。
例えば、4649=よろしく
作者: youdariyu    时间: 2006-5-18 16:24
longxing01さん、こんにちは。

数字関連の言葉ですか。よく中国の人が使う「88(拝拝)」みたいな言葉ですね。
日本の女子高生が携帯電話のメールでよく使ってるようですが、私はオジサンなので
あまり知りません。ごめんなさい(^^; 見つけたら覚えておきますね。
作者: xuyinkid    时间: 2006-5-18 17:29
引用第85楼longxing012006-05-18 14:15发表的“”:
面白いご落語をご提供いただいてありがとう。
いいお勉強になりました。

ちなみに、youdariyuさんは日本の数字関連の言葉が知ってますか。
ご存知なら、教えていただければありがたいんですが。
.......
4649は よろしくって 面白いですよね
じゃあ 
8083 八百屋さん(やおやさん)
1564 人殺し  (ひとごろし)
1122 いい夫婦 (いいふうふ) 
2319 ぶさいく  
1039 盗作   (とうさく)
4864 弱虫   (よわむし)
8931 白菜   (はくさい)
8783 花屋さん (はなやさん)
2983 肉屋さん (にくやさん)
3783 魚屋さん (さかなやさん)
2683 風呂屋さん(ふろやさん)
1028 豆腐屋さん(とうふやさん)
どうがな~!
作者: mizuiro    时间: 2006-5-18 18:26
youdariyuさん、こんにちは。

第六章は読み終わりました。
不好意思,让你等得花儿都快谢了^^。
(「花が散るほどお待たせしました」という意味。「長いことお待たせしました」の面白い言い方)
今回は口語の表現がたくさん習得できてありがとうございました。

「心有千千结」の第六章についての質問です。

1.他爱朋友,爱交际,爽朗好客,一掷千金。只要他在家里,家里永远充满了笑闹,充满了生气,充满了活力与青春的气息。
友だちも多く朗らかでおごらず、あいつさえいればこの家は笑いと元気さで満ちあふれた。

「一掷千金」は「いってきせんきん。ばく大きな金を惜しげもなく使う」という意味なので、「おごらず」は正反対の意味になってしまうような気がしますが、youdariyuさんのご意見はいかがでしょうか。

「友だちも多く朗らかで客好きでいってきせんきん。あいつさえいればこの家は笑いと元気さで満ちあふれた。」という訳文はいかがでしょうか。

2.そのやや赤みがかった光の中で老人の顔は病院にいた時よりも溌剌として見えた。

「かった」の元の動詞は何でしょうか。「かう」ですか。「かる」ですか。そして、その意味は何でしょうか。

3.テーブルの上には丹念に造られた主菜が四皿にスープが一皿並んでいる。

「四皿」と「一皿」の読み方を教えてください。

4.江雨薇は老人の視線を感じながらも自分がとんでもない事をしでかしてしまったというプレッシャーに卓上の四川料理を見つめるだけだった。

「プレッシャー」の後ろの「に」がよく理解できません。どんな働きなのでしょうか。

5.そこにはトーストにバター、スクランブルエッグ、それに熱いミルクが載っている。

「スクランブルエッグ」は「目だめ焼き」のことですか。「目だめ焼き」という言い方より、日常会話でよく「スクランブルエッグ」を使うのでしょうか。

6.「旦那様からですよ。江お嬢さん」李媽は笑いながら言った。眼差しに。

「眼差しに」の「に」はどういう意味でしょうか。「眼差しに」は文中でどんな役割なのでしょうか。

7.母さんは生きていたんじゃないか、それなのに放ったらかしで見殺しにするなんてあんたは人間じゃない、畜生だ!

「放ったらかし」の元の動詞は何でしょうか。どういう意味でしょうか。

8.その間に培中と培華は結婚しよったがどっちもろくな嫁じゃなかった。

「結婚しよった」の「よった」は何でしょうか。

9.老人は半ばうとうとしながら答えた。

「半ばうとうと」の読み方と意味を教えてください。

山ほど多い質問で申し訳ありません。
お時間がある時に教えていただければ大変ありがたいです。
よろしくお願いいたします。

私の特に好きな琼瑶の作品は『六個夢』(特に、『追尋』、『三朵花』この二つの短編)、『梅花烙』です。
ご存知でしょうか。

作者: youdariyu    时间: 2006-5-18 19:54
Mizuiroさんこんにちは。

早速ご返答いたします。Mizuiroさんのような「骨の有る」質問をしてくれる方がいると、私も、やりがいがあります。

>1.他爱朋友,爱交际,爽朗好客,一掷千金。只要他在家里,家里永远充满了笑闹,充满了
>生气,充满了活力与青春的气息。
>友だちも多く朗らかでおごらず、あいつさえいればこの家は笑いと元気さで満ちあふれた。

>「一掷千金」は「いってきせんきん。ばく大きな金を惜しげもなく使う」という意味なので、
>「おごらず」は正反対の意味になってしまうような気がしますが、youdariyuさんのご意見
>はいかがでしょうか。

>「友だちも多く朗らかで客好きでいってきせんきん。あいつさえいればこの家は笑いと元気
>さで満ちあふれた。」という訳文はいかがでしょうか。

「おごらず」について。
「おごる」という動詞を「奢る(請客)」、「人に食事を提供する」という意味で考えれば「おごらず」は確かに正反対なのです。
けれどこれを「驕る」と書くと、「謙虚な態度を失い、傲慢になる」という意味になります。
ですから「おごらず」を詳しく書けば「気前良く人に「おごる(ご馳走する)」けれど、彼はその事を全然「おごらない(自慢しない)」」となります。
「一掷千金」という成語は日本では普段使わないので、この言葉はこう訳すしかなかったんですよ。

>2.そのやや赤みがかった光の中で老人の顔は病院にいた時よりも溌剌として見えた。

>「かった」の元の動詞は何でしょうか。「かう」ですか。「かる」ですか。そして、その意味
>は何でしょうか。

「がかる」という表現は「帯有..様子」「有点像..」です。
例えば「吉田は考える事が左がかっている」は「吉田的想法有些偏左」です。

>3.テーブルの上には丹念に造られた主菜が四皿にスープが一皿並んでいる。

>「四皿」と「一皿」の読み方を教えてください。

「四皿」は「よさら」或いは「よんさら」、「一皿」は「ひとさら」です。

>4.江雨薇は老人の視線を感じながらも自分がとんでもない事をしでかしてしまったという
>プレッシャーに卓上の四川料理を見つめるだけだった。

>「プレッシャー」の後ろの「に」がよく理解できません。どんな働きなのでしょうか。

この「に」は「の為に」と同じです。「吉田のアホな行為に全員怒り狂った」は「大家都発怒吉田的愚行」となるでしょうか。

>5.そこにはトーストにバター、スクランブルエッグ、それに熱いミルクが載っている。

>「スクランブルエッグ」は「目だめ焼き」のことですか。「目だめ焼き」という言い方より、
>日常会話でよく「スクランブルエッグ」を使うのでしょうか。

手元に原本がないので実際の料理名が今わかりません。「炒蛋」でしょうか。
すいません、これを訳していた時私はたぶんお腹が空いてたので、つい、自分の食べたい料理の名前を書いてしまったのでしょう(苦笑)。
冷静に考えれば、たぶん台湾の人が作るのは目玉焼きでしょうね。
「スクランブルエッグ」は日本語だと「炒り卵」。卵を炒りながらかきまぜて「そぼろ(魚肉松)」みたいにする料理です。

>6.「旦那様からですよ。江お嬢さん」李媽は笑いながら言った。眼差しに。

>「眼差しに」の「に」はどういう意味でしょうか。「眼差しに」は文中でどんな役割なので
>しょうか。

ごめんなさい。この部分は間違いです。「眼差しに」の後に何か書くつもりだったのに忘れたみたいです(汗)。

>7.母さんは生きていたんじゃないか、それなのに放ったらかしで見殺しにするなんてあん
>たは人間じゃない、畜生だ!

>「放ったらかし」の元の動詞は何でしょうか。どういう意味でしょうか。

「放ったらかし」は「放置不管」です。原文はどうなっていたでしょう、訳し間違えたかな?

>8.その間に培中と培華は結婚しよったがどっちもろくな嫁じゃなかった。

>「結婚しよった」の「よった」は何でしょうか。

「よった」は連用形の後に使います。嘲笑、驚きの感情が含まれます。この場合は嘲笑ですね。
例えば「吉田は食べ過ぎで死によった」。どちらかと言うと関西地方でよく使われます。

>9.老人は半ばうとうとしながら答えた。

>「半ばうとうと」の読み方と意味を教えてください。

「なかば、うとうと」です。「なかば」は「ほとんど」。「うとうと」は「眠っていないけれどもすぐ眠ってしまいそうな様子」の擬態語です。例えば「吉田は昼食を食べた後、いつもうとうとして仕事をしない」。

「六個夢」は、私が始めての海外旅行一人旅で台湾に行った時、テレビで放映されていた思い出の作品です。この時代の中国の女子学生の制服はカワイイなあと思いました(^^)

またじゃんじゃんどしどしどんどん(全部「たくさん」という擬態語)質問をお願いします。
作者: longxing01    时间: 2006-5-19 11:58
xuyinkidさん
教えいただきありがとうございます。

これから4649.
作者: youdariyu    时间: 2006-5-19 14:55
琼瑶の小説「心有千千結」日本語拙訳です。

「心有千千結」

第8章

一週間はあっというまに過ぎた。さしたる容態の変化もなく老人は今や杖さえあれば階段の上り下りや、庭園の散歩も出来るようになった。黄医師は一度訪れ、老人のその様子に感心したが心臓と肝臓の疾患にはやはり顔を曇らせ、診断は依然余命一年のまま変わらなかった。\
それでも耿克毅は自分の生死にさして関心をよせる様子もなく毎日を唐部長と仕事の話に費やし、朱弁護士も隔日で来ては密談を交わしていくのだった。
この週の中で唯一通り過ぎた風雨(あらし)と言えば土曜日に家族総出でやって来た培中と培華兄弟だった。それはなんと”いらつく”一日だったろう。培中の妻の思紋は一歩入ったとたん、窓の掃除ができてないと翠蓮を叱りとばし、培華は老李に小言を始めた。培華は自分が子供の頃に植えた夾竹桃を老李が勝手にひっこ抜いたのが至極お気に召さないらしい。口論のあげく寡黙な老李もとうとう堪忍袋を切らして怒鳴った。

「この風雨園はあなたの持ち物じゃありませんぜ!」

培華は怒髪天を衝かんばかりに老李をけしからんと罵倒したが老李はかかわるだけ無駄とさっさと姿をくらました。培華の妻の美珂が仲裁しようと言った事がまたピント外れで思紋を怒らせた。普段からこの思紋と美珂はあまり仲がよくなかったのだ。培中の子の凱凱と培華の子の斌斌がしょっちゅう喧嘩ばかりしてたのが原因だが、実際は子供をダシにして自分達もおおいにやり合った。ということで大きいのも小さいのも巻き込んでしばらくは秩序もへったくれもない。

耿克毅は彼らが乗り込んで来た途端に部屋に閉じこもり睡眠を理由に出てこようとしなかったが、階下のあまりの騒ぎを聞くにつれようよう杖を頼りに姿を現した。老人が階段を降りて来ると今まで好き放題喋っていた全員が一斉に黙った。子供でさえ威厳にうたれたのか一言も発しない。老人は彼らの前に立つと全員を見回した後、冷ややかにこう言い渡した。

「お前達の見舞いごっこはもう終わりだ」

「父さん!」

培中はすぐに叫んだ。

「もういい!」

老人はなにか言いたそうなのを手で遮った。

「なにも言うな。お前達の”孝心”とやらは聞くまでもない。ここにいる看護婦の江さんによればわしに今必要なのは安息ということだ、そうだな?」

江雨薇はうなづいた。

「わかったら、子供を連れてとっとと帰れ」

「お父さん」

培華はタイミングを見計らって言った。

「お身体は如何ですか?あまり無理なさらずに。僕達が会社を手伝いましょうか?」

「要らん」

老人の声は冷たさを増した。

「わしはまだ仕事が出来る。早く帰れ」

「父さん!」

培中は懲りずにまた言った。

「僕は思うんだけど、あの唐部長はちょっと信用できないんじゃ・・」

老人の怒りが爆発した。

「まだわからんか!耳の穴をかっぽじって欲しいか!お前らがわしのために出来ることはわしに近づかんことだ、わかったら出てうせろ!今すぐだ!」

真っ先に逆ギレしたのは思紋だった。

「わかったわよ!行きましょう!凱凱、中中、雲雲!帰るから早く服を着な!こんなとこに居ることないよ!あの爺ちゃんはあんた達孫よりも素性のわからない息子が大切らしいからね!」

老人は頭に血をのぼらすと杖を振り上げて培中に怒鳴った。

「早くこのクソ女を放り出せ!二度と顔を見せるな!出て行け!」

培中は思紋の腕をひっつかむと無理な作り笑いをして言った。

「父さん怒らないでよ、嫁ふぜいに腹を立ててどうするんです」

数分の内に培中と培華の家族は風雨園から去っていった。彼らの車が門を出ていくと老人はようやく力尽きたようにソファーに倒れ込んだ。江雨薇は駆け寄って脈を取るとすぐさま注射をし、脱脂綿で揉みながらやさしく問いかけた。

「耿さん、どうしてそんなに怒らなければいけませんの?」

李媽も水を汲んで来ておろおろしながら言った。

「そうですよ旦那様、あんなに腹を立てちゃ身体を壊すに決まってるじゃありませんか」

老人はソファーに横たわり瞼を閉じていた。それは見る者に気力果てた抜け殻のような印象さえ抱かせた。

「息子、わしの息子・・」

老人はうわごとを呟いた。

「あいつはわしの息子だ、間違いなくわしの・」

江雨薇は老人の痩せた背中にそっと手をおくとそのままなにも言わずにじっと考え事をしていたがやがて立ち上がった。彼女は李媽と視線を交わし暗黙の了解を交わした。そうだ、もうぼやぼやしてられない、自分はあの困難きわまりない使命を全うしなければならないのだ。

日曜日が来た、江雨薇の始めての休日だ。朝早く彼女は老人への注射を済ませると李媽に服薬の時間を細かく指示した。黒に赤の枠どりをした服と、同じデザインのコートを着て外出の準備をした彼女を見て老人は言った。

「どこへ出かけるんだ」

「弟達の大学です」

彼女は笑ってごまかそうとしたが老人は見透かす様に尋ねた。

「あの”X線”医師のところじゃないのか」

「かもしれません」

江雨薇は微笑んだ。

「気をつけなさい」

老人は注意した。

「男というのは危険な動物だからな」

「有り難うございます。気をつけますわ」

「趙に送ってもらえばいい。帰りはどこからでも電話すれば迎えに行かせよう、山道は女には険しすぎるし夜道を歩くのは危ないしな。それになるだけ早く帰って貰いたい」

「承知しました」

江雨薇はにこりと笑って応じ、老人はそれだけ言うと黙って彼女が出て行くのを見送った。彼女は趙の車に乗ると老李に貰った紙片を取り出し少しの躊躇もなく言った。

「和平東通りね、趙さん。知ってるでしょうけど」

「まず弟さんに会いには行かれないんですか?江お嬢さん」

「弟達とはまたいつでも会えます」

江雨薇は言った。

「来週でも遅くありません。でもこっちは早くしないと!」

趙は無言でうなづくと、アクセルを踏み飛ぶように車を走らせた。江雨薇は車の中で窓の外の光景を眺めながらああでもないこうでもないと思案をめぐらせていた。実際のところどうすればいいか見当もつかなかった。若塵に会ってからなんて言えばいいかもわからないのにこんな役を引き受けるなんて。本当にあたしったら。

車は台北市街に入り新生北通りを過ぎ新生南通り、左に曲がって和平東通り。広かった道はしだいに細くなり両側の建物は高層建築から低い木造のアパートに変わっていった。小さく重なるようにひしめきあった家屋の前の道路は舗装が剥がれ子供がどろんこで遊び人々が玄関先で洗濯し米を研ぎ、さながら泥溜まりと化していた。その中の一筋の路地の前で車は停まり趙は振り向いて言った。

「この路地ですよ、江お嬢さん。車はこれ以上入っていけません。ここを進むともっと小さな路地があります。そこを左に曲がって4番目。小さな木造の家がそうです」

江雨薇は車を下りると路地を見て一瞬ためらった。

「前も来られたんですね、趙さん?」

「はい、老李と一緒に一度。確かに」

「結構です。じゃあもうお帰りになって。耿さんには師範大学まで行ったことにしてください」

「ここで10分だけお待ちしましょう。もしそこに居なければ他の場所へ江お嬢さんをお送りしますよ」

趙は手筈を心得ていた。

「わかりました。じゃあ10分たっても私が戻ってこなければお帰りください」

彼女はその小さな路地へ足を踏み入れた。両側には小さな雑貨店や露天食堂が並び魚肉と黴臭さが入り交じった一種異様な匂いを漂わせていた。江雨薇にはちょっと苦手な匂いである。彼女の住んでいたところはまだしもここよりはきれいだった。それにしてもあの花咲き乱れる風雨園の御曹司がこんな場所に住んでいるなんて。

彼女はやがて目的の場所に辿り着いた、ちゃんと表札もある。けれど彼女はその前に立ち思った。ここは人間の住む部屋じゃない。これは勝手口のゴミ箱のちょっとマシなものだ。物置、いや鶏小屋かも知れない。濃厚なゴミの臭気があたりにたちこめてもいた。江雨薇は玄関の前で2秒ばかりためらってから息を吸い込んでこれから言うべきことを用意した。そして勇気をふるって扉を叩いた。

返事は返ってこなかった。どうやら不在らしい。彼女はがっかりする以上にほっとした。だが念のためもう一度ノックすると。

「どいつか知らんが入ってこい!」

彼女は一瞬、中にいるのは耿老人じゃないかと錯覚した。ここまでそっくりな親子もこの世にはいるのだ。ドアを押し中に入った彼女は強烈な油絵の具とテレピン油の臭いに思わずくしゃみをした。目をこらしてよく見ると部屋は大小様々なキャンバスで埋まっている。そしてその中に長身の青年、彼女の知ってる耿若塵その人がいた。彼はTシャツにあの洗い晒して白くなったGパン姿で絵筆をふるっているところだった。彼はドアが開く音に振り返ると眉をしかめて尋ねた。

「誰だ?」

「私をお忘れですか」

彼女はそう言うと室内を見渡した。床には掛け布団、衣服やキャンバス、原稿用紙、絵の具が散乱して、机の上も寸分の隙なく文学書や原稿で埋まっている。足の踏み場もない中に更に大小の画板とイーゼルが置かれ想像を絶した有様だ。彼女は風雨園の広々とした書庫に秩序良く並べられた書籍の様子と思わず比べずにいられなかった。

「ああ」

若塵は筆を卓上に放り投げるとゾンビのような目で彼女をにらんだ。

「思い出したぞ。あんたはあの時の看護婦だったな」

そう言った彼の顔色は蒼白になった。

「待てよ、あんたが来たってことは・・」

「違います!そうじゃありません」

彼女はあわてて言った。

「あの方はお元気です。歩けるようになりましたし今は順調です」

彼は江雨薇を見つめた。

「聞けばあんたは風雨園で爺さんの面倒みてるそうだな」

彼の声はぶっきらぼうで低く、それはまさにもう一人の若い耿克毅がそこにいるようだった。

「そうです」

「そのあんたが俺になんの用だ」

彼は獲って喰わんばかりに尋ねた。

「あのー、あたし」

江雨薇は突然舌がもつれだした。

「あなたとちょっとお話しがしたくて・・」

「じゃあ話しな!」

彼はそう言うと藤椅子を彼女の前に放り出した。

「座れよ。あいにく茶の一杯も出せないぜ。ここにはそんなもん無いからな。それで?なにを話そうってんだ」

江雨薇は渇いた唇を嘗めて潤し窮屈そうに椅子に腰かけた。手は知らずバッグを握りしめ身体はこちこちになっている。もごもごと言いかけた。

「あの、耿さん」

「うざったい言い方やめろ」

彼はいきなり遮った。

「若塵でいい」

「わかったわ、じゃあ若塵・・」

彼女は続けようとした。

「あのー、そのー、私は」

「いったいなにが言いたいんだ!」

彼は吼えた。

「もっとはっきりさっさと言えないのか」

「なによ」

今度は江雨薇の番だ。

「なんでそう聞かん坊なの、お父さん以上じゃないの。どうしてあなたみたいな人をお屋敷のみんなが宝物みたいに扱うのかしら、わけがわかんない。それを連れ戻せだなんて」

「どういう意味だ?!」

彼は形相ものすごく目をぎょろりと光らせて尋ねた。

「あなたに帰って欲しい、そういうことよ!」

若塵の居丈高さに誘発され彼女も負けずに怒鳴った。おまけに彼の挑むようなぎらぎらする目に晒されていると、用意してた穏当な説得の文句も遙か数万光年の彼方である。もう単刀直入言うしかない。

「帰れだと?」

彼の目は更に大きく、声は鋭くなった。

「誰の差し金だ」

すごい剣幕である。

「誰がお前をよこした。親爺か」

「親爺ですって?」

彼女は本格的に切れた。さながら耿老人が乗り移ったかのように。まったくあの下世話で卑劣な二人の息子に加えてこっちは強情で独善的ときてる。\

「そんなわけないでしょ、あの人がそんな事すると思ってるの。そんなのあなたのほうがよく知ってる筈よ、絶対するもんですか」

「それなら」

彼は咆哮した。

「誰だ、そんな寝ぼけた事言う奴は」

「あたしよ!」

彼女は大声で叫んだ。だがそう口にしたとたん一瞬彼女はぽかんとしてしまった。どうしてこんなこと言ってしまったのかしら。どうしてこんなにむきになってわざわざ火の粉をかぶってしまうの?でも一旦言ってしまった言葉は飲み込めない。

「お前が??」

耿若塵はたしかめるように言った。意外さに声がひっくりかえっている。

「お前が俺に帰ってくれだと?」

彼は事態が理解できなかった。

「俺の聞き間違いか?」

「聞き間違いじゃないわ、耿若塵」

彼女は度胸を決めた。満身の血液が沸き立っている。彼女はまっすぐ彼を見据えた。

「あなたに帰って欲しいんです。あなたのお父さんのいる風雨園へ」

「どうしてだ」

「それはあなたが息子だから」

彼女は諭すように言った。

「あの人はあなたを愛し、あなたはあの人を愛してます。そして今のあの人にはあなたが必要なのよ」

「お前になんでわかる」

彼の声はざらついていた。

「あいつが言ったのか」

「あの人はそんな事言いません。絶対に言わないわ。もうとにかく強情なんだから。強情なあまり我が子に対してさえ心をうちあけようとしないんだわ。残り少ない命なのに」

彼はぴくりと震えた。

「もうマジでヤバいのか」

「今はいつその時が来てもおかしくないんです。あの人にもう来年の秋はありません」

江雨薇はじっと若塵を見つめた。

「でも今だからあなたに帰って欲しいと言うんじゃありません。あの人はずっと孤独だったんです。あなたが必要なんです。あの人が唯一息子と認めたあなたを」

彼はもう一度身震いした。

「どういう意味だ」

彼の声はかすれていた。

「あなたもわかってる筈よ、耿若塵」

彼女は率直に包み隠さず話し始めた。

「あの人は培中と培華を嫌ってる。あの人が唯一愛したのはあなただけ。それなのにあなたはあの人に背き仇敵のような目を向けわざとあの人を苦しめている。耿若塵、そんなあなたに本当は愛される資格なんてない筈よ」

彼は背筋をぴんと伸ばし焼くような瞳で彼女をにらんだ。

「お前は何様のつもりだ」

彼は吼えた。

「お前になにがわかる、知ったかぶりするんじゃないぞ。あいつは俺を憎んでいる。ずっとそうだった。わかるか?俺達が一緒に生活してた時は毎日が喧嘩だった。お互い軍鶏のように噛みつき血を流しあったんだ。俺は絶対に帰るもんか。死んだってな。憎いのは俺だって同じだ」

「憎いですって?」

江雨薇の声もしだいに乱暴に甲高くなっていった。

「あなたこそ分からず屋のお馬鹿さんよ。あなたは何にも自分でわかっちゃいない。本当は父親を愛してるのよ、あの人があなたを愛してるように」

「はっ!」

彼は咆哮した。

「俺がわからんことがお前にわかるのか」

「ええ、わかるわ!」

江雨薇はぐっと下顎を突き出した。

「あなた達はお互いいがみ合い、争い、文句ばかり言い合ってる。それはあなた達があまりにそっくり過ぎるから。どっちも強情で負けず嫌いでお互いが歩み寄ろうとしないからよ。でも一番大切なのはお互いが相手を必要としている事実。なのにどちらもあまりに心の触覚が鋭敏過ぎて相手を傷つけることを恐れている」

耿若塵はしっかりと彼女をにらみ続けて呑みこまんばかりだ。

「はっ!」

彼は再び咆哮した。

「言うことえらく筋が通ってるじゃないか、お前はまさか自分が仲裁の神様だと思ってるんじゃないか。だがお前はやっぱり何にもわかっちゃいない、忠告するぞ、他人のことに口出しするな!」

「もう遅いわ、今更見過ごせるもんですか!」

もはや彼女も意地である。

「あなたの気持ちが私にわからないって言うの?あなたは卑屈なだけよ。それはあなたが私生児であり、その責任をお父さんになすりつけてるからだわ。それはあなた自身もわかってる筈。心のつながりに法律なんて関係ない!なのにあなたはわざわざお父さんを責める理由を探してあなたの口実にしている」

若塵はのしかかるように彼女に近づいた。彼の眼はらんらんと燃え顔色は蒼白になり声は威圧めいている。

「なるほど」

彼は小さく息を吸った。

「俺が私生児だってことも知ってるんだな。他になにを知ってる?」

「あなたがある女性に騙されてお父さんに会わせる顔をなくしてそれで肝っ玉がひしゃげてしまったこと。お父さんはなんでもお見通しなのをあなたが怖がってること。あなたに意気地がないから現実を直視できないってこと。あなたが・・」

「もういい、やめろ!」

彼はひときわ大きく声を張り上げ江雨薇は鼓膜が破れるかと思った。

「俺に叩き出される前にとっとと消え失せるのが身のためだぞ!」

「上等よ!」

彼女はすっくと立ち上がった。

「言われなくたって出て行くわ!あなたみたいな人に道理を説くのが無理だったみたい。だってあなたは真実を受け入れようとしないんだから。もしも最初からわかってればこんなとこには来なかったわ!」

彼女は彼を見た。

「さっぱりわからない、あなたの父親が夜も眠れずに譫言のように名前を呼ぶその人がこんな思慮分別のない、とんまなまぬけだなんて!」

彼女は知らないうちに耿克毅の口癖を真似ていた。

「じゃあ帰るわ、これっきりよ」

彼女が出て行こうとすると彼が前に立ちふさがった。

「出てけって言ったんじゃないの」

彼女は眉尻を上げた。

「とにかく私はあなたに話すべきことは話したわ。あなたが帰る気になろうがなるまいが後はあなたの勝手よ。でも他の兄弟がお父さんを両方から二つに引き裂こうという時にあなたはここで抽象画を描いてるのかしら、哀れな老人を黄泉に送っても平気なわけね。ええ、どっちみちあの人は長くはないわ。それに今帰ったらおそらく人は噂するでしょ、あなたは遺産目当てに帰ったんだって」

彼女は描きかけの絵に眼をやった。

「ついでにあなたのこの絵、最低!どうせ中山北路の三流画廊で外国人相手に売りつけるんでしょう、ほんとちゃんちゃらおかしい、希代の天才もここまで落ちぶれるのね」

彼女が彼のそばをすり抜け扉を開けようとすると彼の手がそれを遮った。

「ちょっと待て!」

彼は怒鳴った。彼女は顔を上げるときりっとした眼差しで彼をにらんだ。

「まだなにか用なの」

「なんでお前はそんなに怖いもの知らずなんだ」

彼は厳しい眼で彼女を見た。

「どんな権利があってそこまで言う」

「私は自分がいいと思うことをするだけだわ」

彼女は彼を見つめた。

「自尊心とコンプレックスで自分の本心を隠すべきじゃないし、あなたのお父さんは守銭奴なんかじゃない、ただの孤独の老人に過ぎないわ。あなたが頭を下げる相手はお父さんじゃない、自分自身よ!自分の誤解に謙虚になりなさい!」

彼女は雑然とした惨状の部屋を飛び出すと路地を駆け抜けた。そして路地の出口でふりかえった彼女はまだすぐ側に若塵の熱い視線を感じるような気がした。

第8章終わり
作者: mizuiro    时间: 2006-5-20 12:00
youdariyuさん、こんにちは。

早速のご返事ありがとうございます。
ほとんどすっきりしました。

>>5.そこにはトーストにバター、スクランブルエッグ、それに熱いミルクが載っている。

>>「スクランブルエッグ」は「目だめ焼き」のことですか。「目だめ焼き」という言い方より、日常会話でよく「スクランブルエッグ」を使うのでしょうか。

>手元に原本がないので実際の料理名が今わかりません。「炒蛋」でしょうか。

原文は「煎蛋」とありました。「煎蛋」は「荷包蛋」ともよく言います。「目玉焼き」のことですね。

>「スクランブルエッグ」は日本語だと「炒り卵」。卵を炒りながらかきまぜて「そぼろ(魚肉松)」みたいにする料理です。

これは「炒蛋」か「炒鸡蛋」のことだと思います。「炒り卵」というものはあったのですね。ずっと「卵いため」だと思っていました。

>>6.「旦那様からですよ。江お嬢さん」李媽は笑いながら言った。眼差しに。
>>「眼差しに」の「に」はどういう意味でしょうか。「眼差しに」は文中でどんな役割なのでしょうか。

>ごめんなさい。この部分は間違いです。「眼差しに」の後に何か書くつもりだったのに忘れたみたいです(汗)。

原文は以下のようになります。もう一度「眼差しに」のご説明をお願いいたします♪

“是谁?进来!”进来的是李妈,堆着满脸的笑,她捧进来一个托盘,里面放着两片烤好的面包,一块奶油,两个煎蛋,和一杯热气腾腾的牛奶。“老爷要我送这个给你,江小姐。”李妈笑吟吟的说,她的眼光那样温和,而又那样诚挚的望着她。“他说你晚饭什么都没吃。”“哦!”江雨薇意外的看着面前的食物,不知该说些什么好。那烤面包和煎蛋的香味绕鼻而来,使她馋涎欲滴。她这才发现自己已经饥肠辘辘。

>「放ったらかし」は「放置不管」です。
「放ったらかし」の読み方を教えてください。意味は理解できますが、この単語自体は辞書で見つかりませんでした。

>「吉田のアホな行為に全員怒り狂った」は「大家都発怒吉田的愚行」となるでしょうか。

微力ながらお力添えしたいと思いますので、中国語の添削一箇所させて頂きます^^
「大家都発怒吉田的愚行」ー>「大家都对吉田干的傻事感到怒不可遏。」
「発怒愚行」は文法の間違いです。
「人発怒」(人は怒る)あるいは「对(人)発怒」(人に怒る)は一般的です。
怒不可遏=「怒りをおさえることができない。業を煮やす」

私の一番好きな琼瑶の作品は全部ドラマ化されたことがあります。しかも、悲劇です~
お時間がある時、もう一度ご指導くださるようにお願いいたします
作者: ayuki    时间: 2006-5-20 13:18
こんにちは

皆、流暢な日本語で書いていて、
時間がある時、ぜひ最初から読ませていただきます

日本語の小説を読むのはランゲージアップに役立ちますね
読んでいるうちに、生単語はたくさん出てきます
一つ一つ辞書で調べるのは大変そうです^^
でも、単語量を多くするために、そうするしかないみたいですね
作者: youdariyu    时间: 2006-5-20 14:36
mizuiroさんこんにちは。
早速解説しますね。

>李妈笑吟吟的说,她的眼光那样温和,而又那样诚挚的望着她

普通に直訳すれば「李媽は笑いながら言った。彼女の眼差しは暖かく、誠実そうに彼女を見ている」
となるのでしょうけれど、読者はすでに李媽のキャラクター(性格)を分かっている筈なので、このまま
書くと少し「当たり前」過ぎて「くどい」ような気がします。ですから、他の面白い表現を探したのです
が見つけられなかったんです(苦笑)。

「放ったらかし」は「ほうったらかし」或いは「ほったらかし」です。

中国語の添削有り難うございます。とても助かります。中国語で会話をしている時「あっ?自分が話した
この中国語、どこか不自然な筈?」と思う事が多いんです。
でも、ほとんどの人は「意思明白,没有问题(^^)」と言うだけで訂正してくれないので、結局私の中国語
は「日本人的中国語」のまま、いつまでも向上しないのです(言い訳)。これからもご指摘ください。

そう言えば「ほどほどにしてください」と言いたい時「请你不要过分」と言って、周囲から大笑いされた
事があります。「过分」はこういう時使わないんですか。

琼瑶先生の小説は悲劇も多いんですね。私はハッピーエンドの作品が好きです。中国人の女の子に
「どの作品が好き?」と尋ねると、「窗外」という答が多いんですが、これは悲劇だと聞いていま
すので、いまいち手が伸びません(^^;
作者: youdariyu    时间: 2006-5-20 14:42
ayuki さんはじめまして。

分からない単語が有ればまず一度辞書で調べてください。それでも分からない時は、気楽に質問してください。
長期間それを続けていれば、膨大な数の単語を覚える事ができると思いますよ(^^)
作者: youdariyu    时间: 2006-5-20 15:07
ショートSF「来信」

この手紙はいったい誰からなのかしら。

美華は配達ロボットワイルドグース1号が届けてきた一通の手紙を不思議な気持ちで眺めた。

合成墨と合成紙しかしらない美華にもちょっと懐かしい匂いのするその便箋。封筒には送り主の
名前どころか宛先さえも記されていない。

なんであたしのところに届いたんだろう。

そこには幼い女の子が書いたかのような、けなげで、はかなげで、それでも、ひたむきな文字でこう一言。

「がんばって」

言葉自体は古めかしい中世漢語であったが世界標準語エイジアンズで教育を受けている美華にとってもその
程度は理解できた。

誰かを勇気づけようとしているのだろうか。

じっと見つめているうちなぜか美華はそれが自分に宛てられたものであるかどうかにかかわらず胸が暖かくな
ってゆくのを感じた。

この子はもしかすると・・。

美華はいつのまにか見知らぬ差し出し人に親しみを覚え始めていた。

手紙を出したこの子は未来を見ることが出来るのかもしれない。幼いながらも人が生きてゆくことの
いろいろを知ってしまった為に、誰かに何かを伝え励まさずにはいられなかったのではないだろうか。

たった一通の手紙、たった一つの言葉が美華にさまざまな思いと想像をいだかせた。

そして手紙はその後も続いてやってきた。

同じように差し出し人も宛先も記されていない封筒と便箋にやはりたった一言。

「まけないで」

美華がなにか困難に出くわしたり落ち込んだりすると決ってその手紙は届けられたのだ。

「あきらめないで」 「しんじつづけて」

そのたびに美華は元気づけられとてもやさしい気分になれた。

どこの誰が送ってくれるのか知らないけれどほんとうにありがとうね。美華は名前も知らない
その幼い少女..(彼女はすでに想像を確信していた)、に心の中で感謝したのだった。

そんなある日、美華の家を貧しい旅の道士が訪れた。

やさしい美華が心のこもったお布施を用意すると道士は大層喜び、彼女にこんな事を教えてくれた。

「気だてのよいお嬢さん。未来は自分でつくりだしてゆくもの。誰にも占うことなど 出来ない。けれど、
 お礼にあなたの前世の様子を教えてあげよう。

 あなたは100年ほど前の前世でも人助けがお好きだったようです。

 そう、子供の頃から手紙を書くのが好きだったようですね、それも少しかわっていて、例えば宛先も書
 かずに誰かを励ます手紙を書き、どこかの誰かのところへそ れが辿り着いてその人が少しでも元気づ
 けばいいと思うような。

 昔昔あなたが出した手紙。今ころどこの誰のもとについてるのでしょう・・。」

 ================
語句説明
  「ワイルドグース1号」という、ロボット(機器人)の名前は中国の「雁書」を、もじっています。
  「雁」は英語で「Wild goose」

  「世界標準語エイジアンズ」は近未来の架空の言語です。

  
作者: mizuiro    时间: 2006-5-20 17:34
youdariyuさん、こんにちは。
早速のご回答ありがとうございます。

「放ったらかし」は「ほうったらかし」或いは「ほったらかし」にするべきだったんですね。
とても恥ずかしいことに、「はなったらかし」だと思いました。

>そう言えば「ほどほどにしてください」と言いたい時「请你不要过分」と言って、周囲から大笑いされた事があります。「过分」はこういう時使わないんですか。

あはは♪
「过分」は「ひどい!!」という感じなので、よく「你太过分了!!」、「怎么那么过分!!」のように使います。
youdariyuさんはたぶん「过度」と「过分」の使い分けはまだはっきりしていないでしょう。
「请你不要过分」は「いい加減にしなさい!」のようなイメージを受けています。

「ほどほどにしてください」は「要适度。」、「要适可而止。」のことかと思います。
「适可而止」=「ころあいを見てやめる。然るべき程度でやめる。」
口語で、「ほどほどにしてください」のようなニュアンスを表すときに、よく次のような文を言います。
機会があれば使ってみてください。

「但是,大家请注意,凡事都有一个度。过了这个度就不好了。」
(しかし、皆さん、注意してくださいね。何事にも「度」というものがあります。この「度」を過ぎるとよくない」)

『窓外』は私もけっこう好きな一作品です。
これは琼瑶自身の経験にもとづいて書かれた彼女の初めての作品です。
『窓外』は教師と生徒の愛を描く小説です。
教師(男性)と生徒(女の子)のようなパターンは現実でもあんまりにも多いので、
特に女の子の共鳴を引き起こしやすいと思います♪
作者: mizuiro    时间: 2006-5-20 17:57
それでは、第七章についてまた爆弾を投下させていただきます♪

1.彼女の眼が点になった。

これは驚く時の表情なのでしょうか。
眠い時の表情のような気がします。

2.あんたは旦那様を手なづけたじゃありませんか

「手なづけた」のもとの動詞を教えてください。

3.無数の絵画本や詩本の中で彼女はあれこれを手にとったが多くの本には短いメモが添えられていた。

「絵画本」と「詩本」の読み方を教えてください。

4.どれもみな真っ新でセーターからロング、ショートのスカート、スーツ一揃え、それにコートにドレス、およそありとあらゆるものが並んでいる。

「真っ新」の読み方を教えてください。

5.あれはわしからのプレゼントじゃから給料とは別だ

ここの「じゃから」は「ではから」でしょうか。
どういう役割でしょうか。

よろしくお願いします。
作者: youdariyu    时间: 2006-5-20 19:05
mizuiroさんへ。我が軍の対空防御体制は万全です。

>1.彼女の眼が点になった。
数年前から普通に使われるようなった表現で、「驚く、呆気にとられる」という意味です。元々は漫画
から来ています。日本の漫画本を見てもらえればわかりますが、「驚き、呆気にとられた」登場人
物の目は極端に小さく点のように描かれます。
同じように漫画から来た表現に「顔にすだれがかかる」があります。「すだれ」は「帘子」。
「青ざめる。蒼白になる」の意味です。


>2.あんたは旦那様を手なづけたじゃありませんか

「手なづける」は「手懐ける」とも書きます。中国語は「驯服」でしょうか。例えば「犬に毎日餌を与えて手なづける」。

>3.無数の絵画本や詩本の中で彼女はあれこれを手にとったが多くの本には短いメモが添えられていた。

>「絵画本」と「詩本」の読み方を教えてください。

「絵画本」は「かいがぼん」、「詩本」は「しほん」ですが、これはほとんど使わない言葉です(^^:
「挿絵のたくさんある本」を「絵本(えほん)」と訳すと、幼い子供だけが見る本というイメージになるので
こう訳しました。
「詩本(しほん)」は「詩集(ししゅう)」と素直に訳したほうが良かったかもしれません。

>4.どれもみな真っ新でセーターからロング、ショートのスカート、スーツ一揃え、それにコートにドレス
>、およそありとあらゆるものが並んでいる。

「真っ新」は「まっさら」です。「新しくてまだ一度も使ってない」という意味ですが、中文XPのIMEでは変換
されないみたいですね。

>5.あれはわしからのプレゼントじゃから給料とは別だ

「じゃから」は「だから」或いは「なので」です。老人の「老人らしさ」を表現したい時に、ドラマや小説で、よく
使われる表現です。文法規則としては「だ」が「じゃ」に変わります。
例えば「私は年寄りだが元気なのだ」は「わしは年寄りじゃが元気なのじゃ」。「わし」は老人の一人称単数形。

ちなみに大阪では男や老人だけでなく若い女の子も時々自分の事を「わし」と呼びます。

「千軍万馬」を率いて「雨あられ」と爆弾を投下してください(^^)
作者: mizuiro    时间: 2006-5-21 21:19
youdariyuさん、こんばんは。

ご回答ありがとうございます。
第七章の質問は全部解決できました。
さすが対空防御体制は万全ですね。

第八章についての質問です。
最後のチャンスかもしれませんね♪

1.お前達の”孝心”とやらは聞くまでもない。

「やら」は何でしょうか。

2.耳の穴をかっぽじって欲しいか!

「かっぽじる」の意味は何でしょうか。

3.真っ先に逆ギレしたのは思紋だった。

「逆ギレする」の意味は何でしょうか。

4.若塵は筆を卓上に放り投げるとゾンビのような目で彼女をにらんだ。

「ゾンビ」は何でしょうか。

5。彼女は本格的に切れた。さながら耿老人が乗り移ったかのように。まったくあの下世話で卑劣な二人の息子に加えてこっちは強情で独善的ときてる。\

ここの「切れる」の意味を教えてください。
「ときてる」は何でしょうか。

6.お前になにがわかる、知ったかぶりするんじゃないぞ。

「知ったかぶり」はどのように区切るでしょうか。
「知った かぶり」ですか。
「知ったか ぶり」でしょうか。

7。自分の誤解に謙虚になりなさい!

この文はどのように理解するでしょうか。
意味がよく分かりません。

どうぞよろしくお願いします。




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