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标题:
けっこうおもしろい文章、一期一回
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作者:
chain233
时间:
2008-5-29 16:45
标题:
けっこうおもしろい文章、一期一回
知られたくないこと
" D/ W+ m8 l1 O) R8 P
0 Z; H/ q6 b% {8 J
8 d0 `) {( g! g9 i& C! n
& o& }7 Q. [6 G; d
俺は2年目のサラリーマンだ。
9 y, k2 _6 ~* F6 h3 E7 S/ }
ただ,普通の(という言葉の信憑性自体が俺にとっては怪しいものだったが)2年生に比べて,俺には特殊な事情があった。
- e% a" ^9 D K$ j' p- L2 X
俺にはどうも「鬱」のケがあるらしいのだ。
- _# {8 @/ [1 a
とにかく体がだるくなる時がある。
- J. U6 `5 ]# ^( M5 A
しばしば頭が痛くなり,肩で息をしながら仕事をする事態も珍しくはないのだ。
' i8 `+ G: D- K3 `1 b' f" W
ある日どうしても体が動かなくなり,有休をとって病院に行くと,体はどこも悪くない,精神的なものじゃないのか,と言われた。
7 ^5 @5 k' @ x
仕方がないから神経科に行ったら,「うつ病」と思いっきり診断され,薬と「1週間休みなさい」という診断書をもらった。
8 s9 @& Q8 b; {' b* s! T9 t$ J
1週間明けて帰ってきてみると,課の人事担当の係長が不機嫌そうな顔でソファに腰を下ろしていた。
. F; a. z* w4 B7 i9 c" \
聞くと,今日面接に来るはずのバイトさんが,約束の時間から20分経っても来ないので苛立っているんだそうだ。
7 ?/ U, v. t# a9 m$ Y4 V
「大川さんのタイプじゃないかと思うんだけど,どう?」
]1 Q2 A8 o$ M2 W |
人事担当の職員のおばちゃんが,まるで見合い写真でも見せるようにその人の履歴書を見せた。
% ]1 ~9 U' b$ P- X1 H1 t
その写真は白黒で,しかもプリントの色が濃かったものだから,どんな顔をしているのかさっぱり分からなかった。
1 C. p, f4 \& k
そもそも,俺はあまりその時女に食指を伸ばそうという気にもなれていなかった。
* O/ ?( H2 q0 S, [
女と布団とどっちと結婚したいですか,と聞かれたら迷わず布団,と答えてしまいそうだった。
' H1 ~6 E8 N1 w
「ふうん,そうですねえ」
$ s/ A- u4 S( U- i8 i
生返事で答えた所で,ガラガラとドアの開く音がした。
2 q& P% Z8 n. V6 O: D0 x
件の彼女だった。
9 s- @2 T# o7 ^( q
顔はよく見えなかった。
7 G6 F$ H" N9 r( H) R2 R- b
ただ,悪びれる様子もなく平然と面接に臨んでいた。
; X( d: h, {, W
へえ。
( ?* Y3 Z4 T' t
俺はちょっとだけ感心した。
5 M* }6 W- A" y3 f+ f8 s: ]
彼女が正式にバイトとして働きに来たのは,3日後からだった。
- L% c" ]3 o6 \+ ?4 J# }! Y3 }2 q
俺が課の部屋の隅っこのOA室でパソコンを叩いていると,不意に彼女がやってきた。
# M% g" A8 S7 y. c
俺は彼女を横目で見た。
2 u: _7 f9 @/ S% F; `
顔が小さく,背が高く,まるでモデルのような,今風の風体だった。
* q2 L* b0 h& O" |8 R
ただ,俺はさっきも言った通り鬱だったから,彼女についてどうこう感想を抱くような事はなかった。極端なことを言うと,そういったことに気を回すことさえ面倒くさかった。俺はこの仕事をとっとと終わらせて何も文句を言われることなく5時に退社することしか考えていなかったから,彼女の存在はむしろ邪魔でさえあった。
+ F9 t) ^- S6 c' D
「大川さん」
. V4 T7 r2 e. h: u
彼女は,不意に声をかけてきた。
4 N ?$ q# N1 A" z1 S# m
「ここ分からないんやけど,どうしたらええん?」
4 o6 K5 b- e3 j7 r1 n7 e
彼女は関西弁のため口で,そう話しかけてきた。
$ }0 W9 b- M9 ~+ }
質問自体はパソコンの簡単な操作法に属することで,俺は難なく彼女の疑問に答えることが出来たが,俺は一風変わった違和感にも似た気持ちを彼女に抱いていた。
g0 V# p4 p. g. z# \
彼女が俺より一つ年上なのは,履歴書を見て知ってはいた。
3 |, J% @1 {% y/ O6 W& d
しかし,今まで来たバイトさんの中で,腐っても正職員である俺に,初対面でいきなりため口で物を言って来た人はいなかった。
Y9 k# h! }6 C( l0 @ B: k7 H. g
しかし俺は,そのことに対して,別に失礼な,とかの不快感は感じなかった。
4 H, \7 k% z1 w5 o( p. A2 U* r8 r2 l
むしろ逆に,ごく自然に,そのことを,彼女の俺に対する親愛の情ととった。
0 p% ^" ]$ l; a+ v0 h. E
俺はその時,パソコンの話とかを一言二言彼女と話した。
2 W3 N% `5 H) Y2 g
その時の俺は,明らかに今までの「鬱」の俺とは違っていた。
t2 H8 r6 y0 d: Z# P' W1 N
俺は課の中で一番若かったから,課の仕事以外にも,いろいろと雑用を任される機会が多かった。
* w2 M# M- r' u# }% t
そして,バイトさんもそれを手伝って一緒に雑用をすることが多かった。
. P( t* t6 C8 E
俺と彼女は,必然的に一緒に行動することが増えた。
v' [0 K/ k( }4 C6 n
俺は彼女と色々な話をした。
9 r; v$ a& M7 ?* s) K7 p
その多くは,仕事とは関係ないことだった。
8 p& d* X( H" t+ a9 n& R
唯一仕事と関係のある二人の話題―それは,彼女の今の職場に対する不満だった。
8 C# f c; W5 ^. V) \
どうして女性ばかりがお茶くみをしなければならないの。
1 ?8 x0 C1 R' w3 K X7 y$ R
どうして私ばかりがコピー取りをしなければならないの。
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大体この職場の人って,何だか暗いし,細かいことばっかり言うし,どうしてもなじめないんよねえ,あたし。
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こうやって人のいないところで職場の不満をぶちまける彼女に,俺は,まあ職場ごとに雰囲気があるから仕方ないよ,とか,あの人たちだって決して悪い人達じゃないんだから,と逆にフォローをしてやるのが常だった。
: T, n' u8 D$ v4 {. M5 j/ E* J
彼女は言いたい事を言ってしまうと,顔を近づけ,片目を閉じて口をすぼめ,人差し指を一本上げて,シーをして言うのだ。
: n( a# I( r* G
「これは大川さんやから言うんやからね」
* v q% ^! N$ D& i( O! x# K' ~
俺と彼女が親密になりつつあることは,狭い職場のことだから多くの人が気付いていた。
8 O- d# k: ~1 r: {
勿論職場で彼女の前でそういう話が出ることはなかったが,ある時年の近い先輩と飲みに行った時は,早く彼女をデートに誘わな,とせかされたし,課の有志でのみに行った時は,隣の係の係長に,好きなんやったら応援するで,と冷やかされた。
$ f7 p3 Q* P' B. m, U
確かによくよく見れば,彼女はモデル体型だったし,顔も美しかった。遊び好きな所も何となく合いそうだ。
4 Y. [5 g2 ]+ R' ]# J4 Y% Z
誘ってみたい。
8 e7 p+ I. w$ B" O n* L
恋だの何だの,そういったものを抜きにしても,一度遊んでもらえたら。
1 p {6 t. u: m7 a+ @
そういう意識が少しずつ自分の中で高まっていったことは,紛れもない事実だった。
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いつしか,嫌で嫌で仕方なかったはずの職場に行く足取りが軽くなっているのを感じた。
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それが彼女のおかげであることもまた,紛れもない事実だった。
6 X. C: W _- o
なあ,下城さん,飲みとかよく行くん?
( `1 t d1 T2 B t$ C. i- h
んー,まあ,コンパとかは多いかな
0 }# N! t; T! y. X8 V
飲めるの?
0 r8 C! g4 k+ U" X! }. `& h
あんまり…まあ,人並みには飲めるかな。
. E& [6 O R0 l* `1 |
人並み言う奴に限ってほんまはめちゃめちゃ飲めるんやで。今度飲み比べせえへんか。
" J$ O+ l( N7 F* ?5 w* O
(苦笑)
1 l4 e# Y' Z! X/ H, H
カラオケとか好き?
1 C+ t" e3 ^2 Q* j
んー,人が歌うのを聞いてるのは好き。自分で歌うのは苦手やね。
4 g( w: X) r9 i8 c4 S0 N
そうか,じゃあ今度聞かせたるわ。俺,カラオケで笑かすの得意やねん。
# k& q2 f) z" G) Z
(苦笑)
0 o% g- W: _2 ]" W
土日とか何しよるん?
# [/ C- |7 }& [8 L( W7 i' {, Y
んー,何だろう。分かんない。
3 r2 ^4 T7 A% ~( Y% ]$ Z4 R% r
こんな会話が続いた。
2 }9 K8 c( ? K0 C& p D$ o
何とかきっかけを掴もうとしながらも,彼女は巧妙にそれをすり抜けるように見えた。
) U! \! k/ n6 j- a. e7 b4 P
これは大川さんやから言うんやからね。
4 l n; c0 C* U1 K
あの言葉の意味は何だったのだろう。
* }5 l! Q4 Q2 A4 \
俺を信用して,俺となら秘密を共有してもいいと思ったからそう言ったんじゃないのか。
/ E! J3 X- k+ ]$ \9 \6 |2 v, O) O
俺が彼女を誘おうとしているのは,あまりにもあからさまに彼女に分かっていたようだった。
/ V: P2 B, i0 c$ @8 O5 R- J
彼女はそんな俺を弄ぶように,巧妙に逃げ道をつくって俺との距離を離していく。
$ C$ w) l) }: ?- h: U0 \
どうすることもできないまま,時間だけが過ぎていく。
) B( x( s: d9 _
彼女のバイト期間は4ヶ月。
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彼女が来てから,既に3ヶ月が過ぎようとしていた。
6 z+ T+ g5 G+ ]4 z4 v3 R
残りの1ヶ月が,少なくとも俺にとって重要な時であることは分かっていた。
7 F& m9 }8 x* F+ W; P) ^- @
恋人になるとかデートに誘うとか,そんなことじゃなくてもいい。
6 v( d/ e8 ]- [! f) m5 l$ W2 c
彼女との接点をつないでおかなければならなかった。
/ ^ T3 a& i8 h1 S) y
その大切な1ヶ月。
; A% {+ a# U$ d) b3 _5 @
きっかけは仕事上の失敗。
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上司にこってりと油を絞られ,後始末さえどうしていいか分からなくなった俺は,袋小路に迷い込んだ。
5 Q$ b9 @( c. }% }
その日から,再び頭に鈍痛が溜まり,体に力が入らなくなり,肩で息をして働く日々になった。
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忘れかけていた「鬱」の病が,再びぶり返し始めたのだ。
8 U) H5 ]2 b$ G
俺は再び神経科に行き,再び1週間休養の指令を受けた。
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「どうしたん?1週間も休んで」
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久しぶりに出てきた俺に,彼女はいの一番に聞いた。
- \" {: B# b$ c: K
本当のことなど言えるはずがない。
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もし言えば,俺は彼女から即座に精神異常者のレッテルを貼られ,今まで築いていた「それなりにいい関係」も破綻してしまうことは明らかだった。
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少なくともこの事だけは,彼女に知られてはならなかった。
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悟られることさえも許されない,と思った。
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なあに,ちょっと風邪をこじらせてな,もう大丈夫や,と俺は彼女の前で虚勢を張った。
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体も精神も,もはやまともに働ける状態ではなかった。
?- l. {. g$ m9 D A
しかし,俺は,彼女に自分の今の状態を悟られたくない,ただそれだけのために,少なくとも夕方の5時まではしゃかりきになって「元気に」働くことを強いられた。
; S7 i0 D" D2 R' W- \0 p# u5 r8 w
頭は痛い。体はだるい。誰もいないエレベーターの中では座り込んでしまっている。
2 y9 q5 `& V0 J9 n4 {* G* r# _) l2 u
そんな状態なのに,彼女にばれたくない一心で,「若くて健康でやる気に溢れた」勤労青年を装いつづけた。
4 Y% b7 R0 B. K8 X: C9 m* L
それはあたかも,いつ切れるか分からないけれどひたすら限界まで引っ張るゴム紐のようだった。
9 @/ G) ?9 U) s9 h
彼女のバイト期間は,明日で終わる。
3 I5 V2 h) L- P1 t+ x6 q
最後に二人で荷物運びをした。
/ U2 }( A. [& f+ X& A. N
「下城さん,明日で終わりやね…俺,淋しくなるわ」
8 b( ^5 s5 L1 Y, j, {- Q- M$ g
俺は言った。最後の賭けだった。
0 p0 o' Q" q0 `/ K/ ~1 S3 G
間髪入れず,返事が返ってきた。
, [1 `- a8 y% ~+ w
「また新しいバイトさんが来るじゃない」
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俺はその言葉の真意を把握するまでに若干の時間を要した。
+ J# k8 j* E4 t
そしてそれを把握した時,自らの芝居が単なる徒労であったことを知った。
@1 o1 O1 E/ _
これは大川さんやから言うんやからね。
7 G( N& E% y4 d1 r9 B) N% P8 y. x
その言葉に彼女が込めた,その奇妙な親近感の意味さえも。
& x! u; c7 F t. H4 r
ゴム紐は―切れた。
( u+ _& r3 j/ y( _( `! f4 z
また新しいバイトさんが来るじゃない。
2 w& W+ A* \* n) w, x5 R, M9 k& a6 j
(だから,あたしのことは諦めてちょうだい。)
& ~: u% [& a% V6 V' }5 X. N
だめなんだ,他の人じゃ。
$ [; H2 \3 V3 u$ s7 C ?
君じゃなきゃ,だめなんだ。
7 r0 L9 A [3 C) t/ H% g2 l
そう言えれば良かったのかもしれない。
9 c" h3 q# I& M; K5 C
しかしその時の俺には,それを言うほどの度胸も気力も残されてはいなかった。
; _; ?+ h/ d1 Y: v6 }( T/ Q
(私はもう二度とここには来ません。ここにいる人達に会う事もないでしょう。この,私にとってあまりにも息苦しい場所でただ一人この気持ちを共有してくれたのは,紛れもなく大川さんだけやった。でも,それだけやった。私にとって貴方は,それ以上でも以下でも決してなかった…)
* {* `; \& @9 R% ]4 X! \
最後の日。
8 K1 Z) [! V; y0 O
課の人たちが総出で彼女を見送った。
7 U- ~! K2 `+ o
俺は行かなかった。
+ n3 a& r3 L a7 |( G" g3 e
行かないの,大川さん。
% u+ _, p4 K% g% @2 q; s
人事担当の職員のおばちゃんが,不思議そうな目で俺を見ていた。
8 ?/ r( `0 h3 d/ A2 l/ ^, E1 s
5 ^; z( d. n, g8 ^1 Z" J2 _% v4 a# D6 h
ーおしまいー
作者:
chain233
时间:
2008-5-30 10:41
标题:
若き青年の悩み
俺にはある悩みがあった。
) I/ o! i/ Q4 q+ Y* J
美しすぎることだ。
/ i3 J3 L+ j. _% Y& h
こんなことを言うと,醜い奴らや,そうでなくても平凡な容姿しか持たない奴らは,贅沢な悩みだの傲慢な奴だのと言って俺を非難するのだろうが,これは俺にとって真に深刻な悩みだ。
Z6 p9 Y- i( ]6 I
俺の美しさにはある種の特徴があった。
* [" C) Z( m9 j+ N1 c& I
俺の美しさは,男性としてのそれでなく,女性としてのそれなのだ。俺は今まで,22人の人間に好きだと告げられ,百人以上の人間に路上で声をかけられたが,恐るべきことに一人残らずそれらは男性からのものだったのだ。
, z1 h. X; [' Z9 j# b1 G" w
俺は当然,男性などに興味はなかった。それどころか,嫌悪さえもしていた。顔かたちは醜く,毛深くて,近寄ると変な臭いがする。こんな生物と交わらないと子孫を残せない女性というものに同情したし,不憫だとまで思ったものだ。俺は男にナンパされた日は常に憂鬱に沈み,告白などされた日にはいっそ死にたいと真剣に願ったものだ。この気持ちがその辺の平凡な顔をした奴らに分かってたまるか。いっそ思いきり醜く生まれた方がどんなにマシだったか知れない。
" G7 W, f# |4 ^, Z- C4 f: B) r k) Q
ちょっと前に,女性っぽいスタイルをした男が女性にもてた時代があった。その時俺は,いよいよ俺の時代が来たか,と相当期待をした。しかしそれは期待外れだった。男が女性っぽい格好をするからうけただけであって,顔が女性そのままの俺が女性の格好をしたら本当に女性そのものになってしまいしゃれにも何にもならなかったのである。結果俺はますます男にばかりもてることになってしまった。まさに悪夢である。
& i3 i4 [ n, a! t8 F
男に走れればどんなに楽だろう。しかし,俺は男にもてればもてるほどその反動で男に対する嫌悪感を募らせ,女性にもてたいという願いを募らせるようになった。
2 Z9 h: O3 Y) r @# K& Y
俺は機会さえあれば女性となるべく接し,すきあらば男女の関係になる方へ意識を向けようとした。しかし,ことは俺の思う方へ決して運ぶことはなかった。
9 x! l8 N2 Z! ~1 x h
女性たちは間違いなく,俺の「女性としての美しさ」に嫉妬していた。彼女達は俺に好意を向けるどころか,明らかに悪意を持った視線を向けていた。彼女達が俺に,このオカマめ,あっちへ行け,と言っているのが,言葉を通さなくても俺には分かっていた。彼女達は悪意を決して表には出さない。ただ,笑顔を見せていても不思議とその悪意は伝わってくるものだ。その狡猾さが,却って俺の気に触り,俺を傷つけることになるのだ。俺は決して女性を神聖視していたわけじゃなかった。とはいえ,女性のもつ優しさだの,思いやりだの,母性だの,そういったものは信じていた。それが少なくとも俺にとっては幻想に過ぎなかった。女性の俺に対する仕打ちは,あくまで残酷でしかなかった。
$ b- L7 U" L! _
俺がさらに絶望したのは,自分の美しさから来る自尊心の故だった。美しさというのは,異性を惹きつける最強の武器たり得なければならなかった。孔雀だって,あの美しい羽は異性を惹きつけるために生えているのだ。なのに,俺の美しさは女性を惹きつける上で何の役にも立たなかった。むしろ逆に,俺が最も避けたいと願っていた男性を惹きつけてしまうのだ。俺は自分が美しいということに,かつては誇りを持っていた。この美しさの故に,俺は将来幸福を手に出来ると信じていた。なのにどうだ。今の俺ときたら,この美しさの故に不幸を招いている。もし俺が生まれついて醜かったならば,この顔の故に女性に愛されることはないと諦めがつくのだから楽だ。他の部分で女性を振り向かせようという努力だってできただろう。ところが俺は,なまじっか美しく生まれた所為で期待を抱いてしまった。期待しておいて落とされることは初めから期待しないより何倍も哀しい。
6 b2 }* A7 {: C$ ?) C0 s9 c4 D- H0 E
俺は本能の上で,女性と交わることを要請されているはずだった。だから女性をひたすら求めつづけていた。そして,それを拒絶されると深く傷ついて絶望したのだ。
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しかし,何度拒絶されてもこの戦いを諦めるわけにいかない。それは俺の人間としての落伍,敗北を意味していた。最終的に諦めた時は死ぬときだと,俺は真剣に考えていた。生き恥をさらすくらいなら,誇り高き死を。
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とはいえ,俺は全ての男どもを敬遠していたわけじゃない。単に友人としての交際ならば,俺は可能な限り彼らと友好的に接するよう努めていた。
' T) a# b$ z1 Q
そんな中に,俺と殊更気の合った男が一人いた。そいつとは2年前にアルバイトを通じて知り合った奴で,初めて会ったときからやたらに話が弾んだ。一緒にいて実に楽しい奴で,何度も一緒に遊びに行ったし,付き合いが長くなるにつれて,よくお互いの悩みを打ち明けたりする仲になった。お互いがお互いを親友と認め,あまりにもクサイせりふだったから口には出さなかったけれど,ずっとこのまま変わらぬ友情を誓おうな,とお互い思っていた。
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) u9 f2 r8 y9 f7 h; h
8 v& j8 I5 @9 O- v
そんな関係はある日突然破られた。
% M4 i. F# ^8 W( D7 R
思えば2ヶ月くらい前から,彼はおかしくなり始めていた。彼はその頃,ずっと好きだったと言っていた同じ大学の同級生に失恋した。いつになく,らしくなく落ち込んでいた彼を,俺は必死になって慰めた。
' K' s. x$ P% k
「きっとまた,いい人が見つかるから」
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そう言って彼を見た時,ふと目と目が合った。その時,彼が俺に今までとは違った視線を投げていたことに気付いた。
" @. a k; q+ N Y1 i
「俺,やっぱり君のことが好きだ。ずっとそうだった。今,やっと気付いた」
, q0 ?5 L! ^0 `0 G7 R6 p
彼が俺にそう言ったのは,それから間もなくのことだった。
" q; ? B' {5 Z( U3 X2 \
俺は失望した。こいつだけは違う。ずっと友達でいてくれる。そう信じていたのに。
7 X' p" M& \% x6 Z, y8 Y; D w
俺は悩んだ。この男と恋人同士になる気なんて毛頭ない。しかし,それを拒絶すれば,彼は俺と友人でいることもやめてしまうだろう。俺にとって数少ない友人である彼を,俺はなくしたくはなかった。
: _! J2 D& r+ s7 \' G
「今までどおりの付き合いでいて欲しい。君がどう思っていようと,それは構わないから。」
7 m* R9 K9 W: p( [' l' J5 V
それが俺の答えだった。
( k1 F- b; c8 j) G) y6 J) ^
7 S/ G: [" A! c' F
% L8 g5 n& @ Z# ^$ r8 k3 q
あれから長い年月が経った。
$ J+ h# w+ b$ ~, i4 `; v
俺は結局,彼を拒絶することが出来なかった。
2 B& Y* p+ c; p. C7 f
俺は彼と関係を結び…
' r5 N9 J, ~( i
そして今,何故か俺と彼の間には3人の子供がいる。
作者:
星尤雅然
时间:
2008-6-2 22:16
果然 我能力有限
$ C9 ], W* h2 V
我要好好学习。。。。。。。。。。。。。55
作者:
minimro23
时间:
2008-6-4 17:04
けっこう長いね、でも面白かったよ、ありがとうね
作者:
dboy1983
时间:
2008-6-5 10:25
そして今,何故か俺と彼の間には3人の子供がいる
作者:
dboy1983
时间:
2008-6-5 10:26
不错。。。
作者:
huangwj@italia
时间:
2008-6-16 16:42
とても面白いですね。
作者:
yjl119
时间:
2008-6-23 00:28
皆さんが面白いといわれたら幸いです。これからもよろしくお願いします!
* G( d1 ?% c( A3 u7 |" H; e5 z
- n; w- s" g; G9 y
暇があれば更新します。
作者:
yjl119
时间:
2008-6-23 00:30
#7 落陽
まだ夕暮れ時だというのに,俺はとあるカウンターバーで酒を飲んでいた。
$ V/ u2 g* ^( |( N* U- p
土曜日のこの時間に一人で酒を飲んでいるなんて,大概ろくでもないものだ。
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今日の俺もその例に漏れなかった。もっと言えば,その時の俺は最悪の部類に属する人間だった。
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ウイスキーは味が嫌いだった。しかし,今の俺は一秒でも早く酔っぱらってしまう必要があった。
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「貴方とは友達以上にはならないから。」
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ランチの時に彼女が不意に言ったその言葉が俺の胸に突き刺さって取れない。
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確かに彼女とは,その時点で単なる友達に過ぎなかった。しかし,俺にとっては単なる女の友達以上のものを彼女には感じていたし,彼女にしたって俺のことを大切に思っていてくれていたはずだった。毎週のようにお互い電話をして,辛い時には励まし合い,悩みを相談し合っていた。誕生日やクリスマスはいつも一緒にいて,プレゼントを交換したりして,まるで恋人同志のように過ごしていた。いいところも悪いところも全てをさらけ出して,二人はいた。この5年間,俺と彼女はいつだってお互いを大切に思って生きてきたはずだった。…少なくとも俺は。
* {9 [! O0 a' j# B. T2 M
確かに「友達」だった。しかしそれは,将来に可能性を…いつか結ばれるという期待を残した関係だと,俺は思っていた。
9 `) _: J. P2 b1 _- `' L9 G" F
彼女はそれを否定した。
5 y( a9 m L3 m. M, A
友達として,大切に思ってきただけ。
# h5 n3 r2 ?, g1 ]% X
友達にはみんな,同じようにしてきたから。
# Q( _$ Q5 k) a, E! O
彼女はそう言った。
. `8 g$ Z5 b% Z3 m) Y2 f9 l; d/ _8 S
もはや,思い出したくもなかった。
( n3 a! n H; [6 X: P
俺は水割りを水のように飲んだ。
+ h/ i& N8 h+ V- _2 j0 @& T
空けてしまうと,インターバルを置かずお代わりをした。
& X6 f) \/ Q! O: ^/ K& H( n. p
一秒でも間を開けると,あの忌まわしい一言が何度も何度も頭を回り出して気が狂いそうになっちまう。
: r9 F& N& s d8 q5 k1 N
「隣,いいかな?」
6 S* T" d) X# H
そう言いながら,いいとも悪いとも言わないうちに一人の男が俺の隣に座った。
6 |7 F8 v+ H& Q: ^7 l: X
「どうだ青年,わしと飲まんか?」
' b c+ L" i! } W
なんだこいつは!?なんで男をナンパするんだ?
) c, S) m7 `+ I! P
俺はびびった。いくら女に振られたばかりとはいえ,やけになって男に走るような趣味はない。気味が悪くなり,俺はその場を離れようとした。
0 `$ p0 i8 ^# h6 J1 ]
「何だよ爺さん,また来たのか」
1 K9 o) H% H0 `* V
バーのマスターが振り向いて言った。爺さんは笑った。
* m& u0 b1 c J" w3 q# ~; H; N
「いやねお客さん,この人はここの常連でね,貴方みたいに一人で寂しげに飲んでいる若い人を見てはこうやって声をかけてるんですよ。話がしたいみたいでね。まあちょっと変わってるけど,危険はないから」
7 l$ |: k$ R8 _ p/ ?8 r% ?
「危険た何じゃい,失敬な」
* C* }# v/ g }! i' M! l5 u9 h
二人はそう言ってお互いに笑った。
+ x4 k$ x# v! b+ L: j- ]( E e% q
そう言われていささか安心はするけれど,しかしこの小洒落た雰囲気のカウンターバーに,この霞でも食って生きているような爺さんの風体は明らかに浮いている。白髪三千丈とも言える白髪に,聖徳太子か何かのような長いあごひげを生やしている,80越えていそうな爺さん。
3 o1 [0 g: J S6 t' Q
俺は,マスターを間にはさむようにして,恐る恐る爺さんのお相手をすることにした。
9 [7 l2 i) P7 I7 U
「青年,歳はいくつじゃ?」
6 r) Y/ K2 R9 k) d' r9 ^
「はあ,…25っす」
0 f# A: J0 O- R6 `0 B7 D
「若いのう…そのええ若いモンが何故にこんな時間から一人で飲んでおるんじゃね?」
; g% T+ B2 g5 ~+ v! ?* C6 l
「…」
( k3 ?) t. ^$ j8 C+ Q' [- ~# H
「…そうか,聞いてはいかんことじゃったか。すまんかったの」
. Y' `7 ] g; Q5 }: R
「いや…いいです」
4 q1 D4 \! x- F
だいぶ酔いが回っていた。この奇妙な雰囲気にも順応し始めていた。何より,誰かにこの悲惨な話を,俺の愚痴を,聞いてもらいたかった。
: Z) U, ~# m7 F3 q
「振られたんですよ…大好きだった女にね」
0 y, F" h, m& ]+ t
「まあ…深くは聞かないが」
& F9 {3 `' B& B8 T2 w2 E
切り出したものの,その後の言葉を続けることが出来ない俺に,爺さんはフォローするように言った。
; j) |; H' O* n% c! ~
「しかしなあ,青年」
* m$ h: M- o% K) z. x( O
爺さんは俺の目を見ないで,下を向いて静かにウィスキーを一口飲んだ。
* `* \1 J$ z" e% [
「あんたはまだ若い。若ければ…何だって出来るさ」
& J9 x0 w1 T# O
その真剣な…しかしどこかしら寂しげなその口調が,俺を責めるように耳に痛い。
0 v8 N4 N+ Y7 ^' h( r
「ワシなんて…」
8 S) @$ E8 e# c. s: K; ^ j
俺はその先を止めようとした。それは余りに悲しい言葉。
$ d+ Y- \) z6 W* }4 o- K9 |2 e
「ワシなんて,バイアグラ使うてももう役に立たんのじゃからな」
1 O; I; Y+ W- [3 C5 n) D' [
そう言って爺さんは大笑いをした。
8 W5 A5 ^! x$ k: \
俺は拍子抜けをして腰を抜かしてその場に倒れそうになった。
) I. f+ R" c" R$ |
「何なんだよアンタはよう」
4 [3 G# ^4 D& u2 [0 ]
怒ったように,俺は叫んだ。
! N& S# v; Y% w* S, ?# v
「はっはっはっはっ。まあそう怒るな」
W4 @" E& d0 g( H2 S4 N8 d, [3 N1 A
爺さんはまだ笑っていやがる。
! s6 F1 \3 \* e) G) _
「いや,冗談はともかく」
2 k+ H" v* H [1 e" P5 E
一呼吸置くように,爺さんは真面目な顔を作って言った。
* K" j- E/ {" r2 _. J
「青年,アンタはまだ若い。今から一度や二度の失恋でやけになって大酒を食らってどうする。今からいくらだってチャンスはある。めげんことじゃ。さっき冗談のように言ってしまったが,ワシなどもう恋をしようにもできやせんのじゃからな」
0 O# _8 g6 l: C; h" L" R# @5 d
「爺さんも…いろいろあったのか,若い頃に?」
\" h+ n) N' ^$ _4 T( ]2 y+ @
「そりゃそうじゃ」
( P- W0 S* B% s3 t1 b. }
爺さんは少し胸を張るようにして言った。
# [# I, B. E' R, E( M9 W6 Q
「聞きたいか?」
0 {9 L. J8 U3 a# p8 d. K$ ]8 L) k" s: n
俺は無言でうなずいた。
) ^% G6 {: O7 x; C% N5 ^2 K5 Y g$ ^
爺さんは自分の若い頃を語り始めた。
" C" C) Y% U9 C
自分は若い頃,どうしようもない純情青年だった。
+ E: \# F2 V, o
惚れた女は何人かいたが,その事を言葉にしていう事はなかなかできなかった。
" C+ u0 `. U" b! |) ?% e) \ |
そりゃ話をして仲良くなって,「友達」になるまでは出来たさ。
2 d7 W6 w) i% G; @' Q. m
しかしその後…男女の関係になるのはどうしても出来なかった。
& s* B2 F1 n6 w6 m$ m
まあ…ワシの時代は今のようにさばけてはいなかったから,その所為もあるがな。
4 W ~, M8 [6 @1 @
好きな女と「友達」で止まってしまうのはなんとも言えず悔しいもんじゃ。
o: ?, c0 r7 T5 h% g
「友達」だの「思い出」だの,そんなものは結局恋愛に敗北した者の負け犬の遠吠えに過ぎんのよ。
; U8 K, ^& f! g" V# L; T7 Y0 V
何だか,自分のことを言われているようだ。俺は自嘲気味に,
- F$ |8 z0 _) W" X( c! Z5 |1 o9 y
「どこかで聞いたような話だなあ」
/ m; K9 d7 Z9 n) E) W, S8 U
と言った。
: F, F* s: C# {. i
爺さんは静かに微笑んだ。そして,トイレに行く,と言って席を立った。
- l* K' U/ J% O c, a: S
数刻後,トイレから一人の男が出てきた。
& e, [* \( [. f3 O3 o1 H
それは,あの爺さんではなかった。
9 X5 i8 U$ l2 d; z
髪は黒々としていて短く,ひげもなかった。そして,その顔かたちは,俺に生き写しだったのだ。
3 ]+ i: S* a5 ?; Y
男は俺の方を向いて,笑顔で手を振った。そして,静かに店を出た。
5 p s4 z% G2 D' S; D/ b' x
俺はある考えがあったから,トイレに駈け込んだ。
9 |* I" u3 d1 P3 \& A
トイレに鍵は掛かっておらず,個室の中には誰もいなかった。
) k/ o# W2 {6 c# F7 J! z
俺は店の外に出た。
+ r) J+ W' m7 S$ g% u
すっかり暗くなった上空から,一筋の光が差していた。
' c. @/ t; m y- ~' G6 q- a/ N! O
見上げると,光の先には俺に生き写しのその男が,若い女性と一緒に空へ上って行くところだった。
Q/ J# v) F; D+ L
女は後ろ向きで,姿は定かでなかった。
0 X2 l8 [5 P& |" ?. h5 h: }
「爺さん!!」
, E9 {2 D, \' f' Y# u" C) X3 i
俺は確信を持ってそう叫んだ。
8 |) r! f. q- ~" E4 z$ p; j3 w+ u
俺に生き写しのその男は…いや,「爺さん」は,再び微笑みながらさっきよりも大きく手を振り,なおも空へ上って行った。そして,見えなくなった。
! ~# i. ?0 d0 }* N" D
一体あれは何だったのだろうか。
5 J+ D! f _1 Q- E+ |4 b# E
ともあれ,何故か分からないが,俺はその日からふられたことなどすっかり忘れて,明るめの毎日を送っている。
6 n+ W S( o8 {/ _9 w( z
確かに未だに彼女はいないし,あの女に代わる人だってまだ見つかってはいない。
7 f7 q& q2 ]0 |+ V
でも,あの日のことを,爺さんのことを思い出すと,何だか安心するのだ。
# P8 P7 [2 ~8 h" m
今でも,目を閉じると,あの爺さんが手を振っていた姿が思い出されてならない。
1 `% E* B) s9 m& T; Y
また,現れてくれるだろうか。
. X# {1 _* i9 R. j# j1 E
俺が恋に悩んだ時に。
! S) e" n" T0 L2 {7 l5 Z) v) }
★あとがき
" t3 I1 B1 ?# ?. ]; m9 G9 }
吉田拓郎の歌に似たようなのがあったが,はっきり言って意識してます。「世にも奇妙な物語」にありそうな話だが,それもかなり意識してます。もともとSFっぽいのは不得手なんですが,敢えて挑戦してみた作品です。ストーリーの真意,特にここでは「爺さん」の正体について,掴みにくいみたいなんですが,そこは読者の皆さんで想像してください。この作品に関してはぼくなりの正解を用意してはいますが,ここでは敢えて言いません。
作者:
luer0625
时间:
2008-7-1 15:01
没有了?
9 [# f# d1 Q' {- C1 y' h
等待ing
作者:
yjl119
时间:
2008-7-1 16:13
#8 あたしは
道化
(ピエロ)
, ?2 C9 }% d5 `( _0 d* r
. r3 Z# p. ]" ^: T, D/ W
; `% i4 v, P, G! z
5 v) F4 }: j3 t5 f( b- D
1 o% u, e% ` J- g+ M8 |
自分にそんな素質があるなんて,考えてもみなかった。
6 V2 p4 _* N' y" N7 c
俺は
一介
のサラリーマンだった。
9 c, z) h3 _- ^1 y( \. a
仕事に関しては,正直自分でも「
うだつのあがらない
」というコトバが悲しいくらいぴったりくる,というレベルでしかなかった。
0 U7 | L4 r( o$ H# `
俺が社内で最も彩りを放つのは,宴会の時だった。
0 O, d! {/ l( w0 f
俺は所謂「宴会部長」で,酒を飲むとテンションが上がり,ここを先途と騒ぎまくった。とはいえどんなに酔っても,吐いたり暴れたり潰れたりすることは皆無だったので,一緒に行った連中も安心して俺を「楽しんで」いた。
l/ m7 [9 s) l! b
さて,そんな俺だったが,女性関係に関しては完全にダメだった。「明るくて楽しい人」は本来もてて
然る
べき筈なのだが,俺に関して言えば,ただ明るいだけが取り柄で,仕事も出来ない,顔も大したことない,言ってしまえばタダのバカ,という言い方も出来ないことはない,という状況だった。
. {" i# i: U0 B: _' \9 @' j
「私,村上君のこと,好きよ」
; N) q: L [: V9 K' _% H
かつて酒の席で,ある女に不意にそう言われたことがある。しかし,その「好き」は,明らかに「男として」の「好き」とは別のものだった。それはあくまで「Like」であって,「Love」には転化し得ないものだった。それは分かっていた。もし本当に「Love」という意味で俺を好きなら,そんなことを酒の席で言ったりはしないだろう。
; z: b9 v& w# l- m- O# M4 d8 [
基本的に俺はそういう人間だった。
- [3 ^# o; f: M, G* y
みんなに好かれる。でも決して「愛される」ことはない。
7 Z( q5 f) }% ~4 I }
さしずめ
,サーカスで踊るピエロのような存在。
' v0 m- n5 s6 @3 R# E4 [* |$ }( |5 h9 F
基本的に俺はそういう人間だった。
. f5 @& A1 X" D; Y% T, k& x3 L2 ?' B
俺に彼女がいなくて,
なおかつ
そういう存在を病的なまでに欲していることは,既に同期の男連中の中では知れ渡っていた。
. @- x# G c) G. d& b) s) _
最初の頃は,それさえも「ネタ」にしていた。何か女性と接する機会があるとなれば友人達はその話をこぞって聞こうとしたし,まして合コンなどあった日には,あたかも芸能人に群がるレポーターの如く,俺の一挙一動が注視の的となった。しかしそれは決まってうまくいかないのが常だったので,彼らは,
- B7 P$ O' ?* t7 u# i
「バカだなあ,村上(おまえ)は」
; R9 c- ~9 N% O( {- W& _9 l$ f5 _1 I
そう言って笑ったものだった。
4 O. T8 Y# s, l% C
俺も一緒に笑っていた。
8 H+ c$ H; S& G* [) j. v
そのことで皆の話題の中心になることは,決して俺にとって気分の悪いことではなかった。むしろそれを積極的に「芸風」としてウケをとっていたふしがあった。
7 z z. Q* n. V9 l
「末期」になると,それすらも難しくなっていた。笑っていられるような余裕はなくなった。
) g2 N) ]% e3 |
そもそも俺は,根本から「明るい」人間ではなかった。これは自覚していたが,俺は非常に気持ちが
挫け
やすい人間で,仕事上でもちょっとうまくいかなかったり上司に怒られたりすると,人のいないところで深く沈みこんでいた。そしてそんな時,悩みに入ると同時に,強烈な淋しさを感じた。誰もいない家に帰って一人で酒を飲みながら,誰かにそばにいて欲しい,支えて欲しいという気持ちに浸されていった。
" Y) E7 E" y9 s4 i' |/ J: x5 Y; S
「淋しさ」は,木が根っこから腐っていくように,徐々に徐々にジワジワと俺の心を侵していった。
$ a; }1 K0 ?3 F7 w
土日に外出し,華やいだ街をブラブラすることは,俺の大きな,数少ない楽しみの一つだった。しかし,その頃はもうそれすらも楽しくなくなっていた。何せ,街はカップルだらけなのだ。楽しそうに若い一時を謳歌する彼らと,独りそれを横目に羨ましげな目をして,
辛気臭い
ツラで眺めながら行き過ぎる俺。その時の俺は街で最も醜い,下等な人種に思えた。
6 g, k* M `, R$ \% o
その意識を殊更に肥大させる出来事があった。
$ b- J, U# m$ y2 `6 L$ p
その日は文字通りの五月晴れで,GWの最中という事もあり,絶好の「デート日和」だった。そんな日にのこのこ出て行った俺も
うかつ
だったのだが…
0 Q4 i: E+ t/ v, g% E1 \- j' O
いつものように死人のような顔をして歩いている俺の横を,一組のカップルが通った。
5 t" G+ P h' q$ `7 ?5 F
男の方に見覚えがあった。
3 R. i$ g. a- ^! F
彼は俺の親友で,俺と同様独り身をかこっていたはずの,社の同期のWだった。
$ A5 v d9 w" n3 ] F, j( Y0 u
女の方にも見覚えがあった。
# n# E" B. `! o/ R
彼女は一度,社の同期飲みに参加したアルバイトの娘で,女のメンバーの中で一番可愛い(と俺は思った。そしてそれは男達全員の共通認識だったはずだ)Dさんだった。あの飲み会にはWも参加していたが,二人がそれほど親しくしている様子はなかった。むしろ彼女とよく喋っていたのは他ならぬ俺自身で,彼女が好感を抱くとしたら,その対象は俺以外にあり得ないと思っていた。
, T, M- h5 i. z& o# \
なんとも言えない気持ちがせり上がってきた。
a: P% z5 @6 G
訳も知らず,目が
涙目
になっていた。
- A* S e! F$ C3 u0 G
どうしたというのだろうか?その理由が,にわかには判らなかった。
# T+ s1 k4 s0 r! m) P }
DさんをWに取られた,その悔しさからか?
% \" o- `& i- x* H8 D, h1 v6 G0 }/ d
きっと,そうじゃなかった。
; M4 p5 u: z* m3 P# u+ X5 a
確かにあの飲み会の時こそ,俺と彼女はかなり親しく喋っていた。しかし,その後俺は全く彼女に対してアクションを起こしていなかったし,それどころか,その後俺の頭の中から彼女の存在はきれいさっぱり消え去っていたのだ。
- P, o# V4 s2 { c8 U8 A T
だとすると…友人に先を越されたという事実そのものが悔しかった,もっと言うと,友人の幸せが妬ましかったのだろうか?
# `5 m. r/ `8 b' v( m3 T/ O) s
友人の中で最近彼女ができた,という奴はWだけじゃなかった。他の奴から「彼女ができた」という話を聞かされても,こんな気分にはならなかった。
& T" Z2 P6 G# B- x; V
「Wに対してだけ」,こんな気持ちになった。
( A) @; g. x9 I J9 {
どうしたというのだろう?
# B! M; ?; y9 P. @( X# F7 Y5 U! X
Wは俺と同じような境遇にあった。
3 R4 v+ ~* l0 j$ W
明るいキャラクターの中に,暗さとか淋しさとかいうのを隠していて,心の支えになってくれる「彼女」という存在を強烈に求めていた。でもなかなかうまくいかなくて,それでもお互い頑張っていこうぜ,と慰め合い,励まし合うような関係。
: e& t9 {% g& w
そんなWに春が訪れた。本来なら友人の,しかも同じ苦しみを分かち合ってきた友人ならなおのこと,その幸せをともに喜んでやらなければならないはずだった。しかし今の俺はそれを素直に喜べない。それどころか,目に涙をためるような精神状態に陥っている。
, Z' d3 V2 _' O0 r+ g
俺がWを
密か
に「心の拠り所」にしてきた,そういう節は確かにあったかも知れない。Wは俺に似た性質を持っていて,顔(ルックス)は俺と同レベルかそれよりちょい上。気のいい男で結構誰からも好かれる,それなのに彼女ができない,という悩みを持っていたこの友人を,俺は密かに「こいつがダメだから,俺だって」というネガティブな意味で頼りにしてきたのかも知れない。悩みを共有する,と言えば聞こえはいいが,「同病相憐れむ」ことで心の傷を自ら慰め精神の均衡を守ってきたのかもしれない。
) `- [9 n4 q: m8 O) g9 ~
Wに彼女ができたことで,その「心のつっかえ棒」が外されてしまった。俺の今の,ある種平静を失った精神状態は,そこからきているのだろうか。
: e+ h( ]4 z1 ~( g' U+ j
もしかするとあれじゃないか?
0 X/ ~& S/ r$ P/ k- \$ M' X- M& v
心の傷を舐め合っているうちに,お前の中にWに対する愛情のようなものが芽生えてきた,だからお前は,「DさんをWに取られた」ことでなく,逆に「WをDさんに取られた」ことに嫉妬しているんじゃないのかい?
7 {8 | Y z) i5 \3 C. r
それはある種同性愛的な気持ち。
{9 u) }4 M* ]3 m* h# V6 @% f% ~
お前にはそっちのケがあるんじゃないのかい?
; P* w# H) {- F' l
ヤケクソのようにこんなバカなことを考えて,やっとのことで俺は笑いを取り戻した。
$ U7 F1 g9 {! {7 l
しかし,そんな明らかな冗談でさえも,俺を心から素直に笑わせるには足りなかった。
0 J" \ M$ s+ i$ \" ?9 W5 J
周りの同世代の友人たちが次々と恋人を作り,果ては結婚をして幸せになっていくのを尻目に,俺は相も変わらず独り身の,相当暗めの毎日を送っていた。
' n# d0 z5 D( k# z& a+ v
友人たちは誰一人として,こんな俺に手を差し伸べようとはしなかった。女を紹介することは勿論,合コンの声も掛からなくなっていた。
- ~$ S( P& P* z9 W5 g
理由は判っていた。
8 ?0 P& s0 K5 j* R( W# d* m
友人たちは,俺が不幸なままでいたほうがよいのだ。俺は「万年彼女募集中の不幸な男」であることを「ネタ」にしていて,それが
芸風
だった。彼らはそんな俺を楽しんでいた。俺に彼女ができて幸せになったらもうそのネタで楽しめなくなるから,不幸なままにしておいた方が彼らには面白いのである。また,所詮合コンに俺を呼んだところで成果がないから無駄である,ということを彼らが知り始めたせいもあっただろう。
, x8 s4 `4 j% W: h7 m! w' O
俺は別にそのことに関しては何も思うところはなかった。そんな芸風を作ったのは俺が悪いんだし,何も彼女を作るのに友人たちに助けを求めよう,すがろうなどという甘えた気持ちを持つのも
癪に障った
。
' O4 Z. v+ T. O1 I
とはいえ,日々独り身の淋しさは容赦なく俺を襲い,そんな中でも人前では道化(ピエロ)として笑っていなければならなかった。
$ \% l* T% {, I3 ~
その無理から生じる精神の歪みは,結局のところ酒で矯正するしかなかった。独りで家に帰り,潰れて眠るまで独りで飲んでいた。
! \6 l$ C, K1 F5 ^8 U% S K1 k5 n8 `
ある日のことだった。
0 E! Q. C. Y* e
いつものように独りで飲んでいた俺は,酒を切らしたのに気付いてコンビニに買いに出かけた。
0 R! ~/ O& _+ A' [
そこは,薬や化粧品まで売っているかなり大きな店で,俺はお目当ての酒を確保した後,用もないのに店内を徘徊し,買う気もない本だの雑貨だのを物色していた。
4 j- {/ N5 H5 v3 j! U
その時,俺の目を何故か奇妙に魅いたのは,化粧品のエリアだった。
8 }3 B) m/ {6 q6 U2 a
そういえば最近,女装する男とか,そこまでいかなくても女のような化粧をして売り出している男性歌手とかをテレビでよく見る。
+ a! o$ |8 w/ k( B
こないだそのテの某男性歌手が,「高校時代の写真」を紹介していたが,そこに写っていたのはどう考えても今の「美しい」彼とは似ても似つかない,冴えない,野暮ったい顔をしたイモ少年だった。
' a/ y* v8 p0 L; X
俺が化粧したら,どうなるんだろうか?
6 z$ R+ |+ }6 O3 U6 k% v& c
あの顔でああなれるなら,俺だって。
& {1 F5 s; c) Y! Q) h6 ?9 y
酔っていたこともあり,高揚した悪戯心に火が点いた。
. \. z! T3 V8 ]" p
俺はこともあろうに,酒と一緒に,化粧品一式を持ってレジに走っていた。
% W; ~* l0 j1 w1 p0 |6 p
帰った俺は,酒そっちのけでなれぬ手つきで粉を塗りたくり,眉毛を書き,口紅を引いて「変身」を開始していた。
% o9 [+ s4 Y- p6 s' d$ A
時計は零時を回っていたが,構いやしない。
/ t1 Y; L1 s) c \9 t: {
どうせ明日は土曜で休みだ。
1 N: S4 Q3 Z9 s; ~9 e! |6 R' z
「変身」が殆ど完了した瞬間,一気に酔いが回ってきて,俺は何だか判らぬままに眠ってしまった。
% @/ a# W- T8 z
翌日目が覚めると,俺は日課の髭剃りと寝癖直しのために半ば無意識に鏡に向かった。
% a% M6 Y, i F B
そこで俺は初めて,昨日やらかした馬鹿の結末を思い知ることになった。
+ W M* T" A* ?5 |# |
鏡には,俺じゃない奴が写っていた。
& E) w5 t5 o: l0 j
きれいなのかそうじゃないのか,俺にはよく分からなかった。女に見ようと思えば見えるが,所々に「俺の名残」が残っている気もしないでもない。
2 N; m- A2 ]4 D; ~' y
人の目には,どう見えるのだろう?
8 f2 w2 Q C4 h, ~: D2 |
そこまで考えて,俺は薄笑いを浮かべた。
& d2 L6 g* e! b$ }
髪をセットし髭をそり,一晩を経て崩れた化粧をちょちょいと直すと,俺は外に飛び出した。
2 x% @& f& t* g# ?3 }; \" L
TシャツにGパンというラフな格好は,お世辞にも人目を引くものではなかった。ただ,俺の体型の特徴として腰がくびれていて尻がでかかったので,それなりに格好はついていたのだろう。
2 j- K) M: q$ _4 |+ f% _
来る途中道端で,姉ちゃんが道行く女性達に生理用品(ナプキン)の試供品を配っていた。そして彼女は,何の迷いもなくそれを俺にも手渡した。
& r6 N& h1 J' `; d% b' e
女の目から見て,俺は「女」に見えるのだ。
. L/ S6 K% C0 s6 \$ _8 E8 h+ W$ Z
この事実は,俺を勇気付け,有頂天にするのに充分だった。
3 G: |8 [) h+ o% _8 _) Y4 V
次の瞬間だった。
u$ W, j: _5 t% H
見覚えのある二人組(カップル)。
# L, b. D a. |6 b8 ?
あの時と全く同じシチュエーションで,WとDさんが俺の目の前にいた。
* e( D: F) t$ @: ~' b/ M, z
Dさんは俺に気付かないらしかった。
3 }" K1 [% O4 g8 e: k8 T2 Z3 m& {
しかし,Wは―その俺の親友は―
0 y& L, m: N3 u' e3 ?9 e* c2 Q
一瞬怪訝げな目で俺を見,次にフッと視線をそらして,逃げるように早道で通り過ぎて行った。
- V+ ?- F" t) B* d+ f
見られた…!!
& O' A, {( J; ~6 H
2 I5 ^$ \1 I* \. W8 s1 t. W
作者:
yjl119
时间:
2008-7-1 16:14
俺は目の前が真っ暗になった。
9 L) H; b3 T$ r5 ^
この格好で知り合いに会ってしまうことは,俺が心密かに最も恐れていた事態だった。しかも,知り合いの中でも最も俺をよく知る者の一人であるWに…。
8 Y& i1 h5 z! ]2 }* K; D
彼は俺に気付いたに相違ない。
; P! ?3 E# Q0 G' p0 p8 b
彼は俺のこのキテレツな姿を見て,果たしてどう思っただろうか。
, s- H4 o7 W9 F8 d3 @
そして,彼はこのことを会社の誰かに話したりするのだろうか?
. b4 H( q/ g# P+ ]" k
そうなったら,俺は終わりだ。
. O/ Z) |! K# ^9 P" v. |6 J
自信も何も木っ端微塵に砕かれ,俺は
暗澹
たる気持ちで家路についた。
( ` x O, j5 k( z- t% d
帰路の途中,俺はまるで護送中の犯人のように,ずっと手で顔を覆い隠していた。
/ M3 R0 e% M0 h& j. I! Y
翌日の日曜日は,化粧を一生懸命で元に戻し,その後も何度も何度も顔を洗って,それでも怖くて一歩も外に出られなかった。
5 y6 a1 |9 k4 R, A
月曜日。
: ~8 C- L5 r! P3 t' W
ずる休み
をする訳にもいかず,俺は3秒に1回くらいの割でため息をつきながら職場に向かった。
2 u t) b1 x$ [/ O0 k7 h
昼休み。
" |) I* @% k" s1 ~# H: K. d
社員食堂の隅っこで目立たぬように飯を食っていると,聞き慣れた声が背中を刺した。
# D3 ` z9 g9 a8 u% B% S* b
「村上…」
! m3 m* Q- l6 Q& C% O1 t; K# N
いつになくか細いその声は,Wのものだった。
( O0 s1 Q- B# A m* K3 i9 G% B
「は…はい」
u% R, \8 _$ r/ K
俺は動揺のあまり声が裏返った。
+ p0 D4 c; q% X2 u
「話があるんだ…ちょっと来てもらえるか」
) K3 y5 h1 m7 i1 x2 p! Q$ f
来た。
; J3 y4 ~* {" c! B% H
来てしまった。
$ Y, @8 P7 ~6 m
ここまできたら,シラを切りとおすしかない。
1 f3 M9 X! U) e6 V, e9 l" t
「あれ」が俺である証拠なんて,どこにもないのだ。
. I8 s7 u; z# Z& j) c6 H. \
覚悟を決めて社屋の屋上に付き合う俺にWは,
# L$ {4 Q; J8 c2 _8 u P- G
「相談がある…」
- M+ O. G, z8 E
言うと,続けるのを
逡巡
するようにしばらく間を空けた。
: l& n4 q$ S( Z# I$ ~0 ~
「何だよ,早く言えよ」
- u" ~6 Q: D6 E" s+ \$ J* e* U* f
俺は不安の裏返しから,次の言葉をせかした。
, V4 p6 I3 Y% H
次の言葉。
; O, U* x: U; b# }
それは,意外なものだった。
. ^6 r. ~1 T U" \. A" }
「俺,彼女おるやろ」
8 ]$ V! O8 F9 Q K
「ああ,Dさんな」
: ?& l* h% C4 B+ Y2 o* t7 u/ @
「うん…でもな…他に…好きな女(ひと)ができた」
3 c2 }; q% P. L
Wの話はこうだ。
. G C! x$ `/ D6 o9 k
おとといの土曜日,Dさんと一緒に街を歩いていた時にすれ違った,名も知らぬ女性に一目惚れしてしまった。
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年の頃は24,5。背丈は自分と同じ位で,凛とした感じのショートヘアの美人。お尻が大きいのがやけに印象に残っている。
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「それで…彼女はどんな服装(なり)をしてた?」
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「Tシャツに…Gパン」
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俺は,ある事実に突き当たって茫然自失になった。
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「ところで,何でそんな事聞くんだ?」
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何も知らない友の言葉は,もはや俺の耳には届かなかった。
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「おい,どうしたよ,村上!?」
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次の週から,女に化けて外出するのが,俺の週末の日課になった。
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目的は一つ,親友のWを誘惑することだ。
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これが,自分にとって意外に面白い。
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毎週同じ街の同じ通りに現れるWに,時に視線を投げかけてやると,あいつはポーッとして,Dさんそっちのけで俺を見るのだ。
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何週かすると,今度は彼女なしで,一人で出てくるようになった。そして,まるで尾行でもするように,俺の後ろをついてくる。
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Wと彼女の関係はこのまま壊れるかもしれない。もしそうなったら,その時に本当のことを話してやろうかな。その時,彼は何を思うだろう。
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一人で想像して一人で楽しむ。
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我ながら残酷な趣味だ。
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最近,「女」が
板について
きた。
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W以外の男の視線も頻繁に感じる今日この頃。
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それがちょっぴり快感でもある。
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こんなことを言うと,
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「お前,やっぱりそうなんだろう!!」
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と言われそうだが,きっとそれは違う。
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自分の仕掛けた罠(トラップ)に男たちが次々にかかっていく,それが楽しくて仕方ない。
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だってしょうがないじゃない。
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全ては冗談(ジョーク)。
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永遠の悪戯小僧。
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それがあたしの―道化(ピエロ)の本性なんだから。
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★あとがき
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今見ると怪しい,えげつない話である。初めて読んだ人はぼくのことを誤解するのではなかろうか。言っておくがぼくにはそういう趣味はないぞ。でもただ怪しいだけではないぞ。人間のなんと言いますかこう,深い心理を描くことに挑戦した作品でもある。そしてそれは相当程度成功した自負がある。ただ,その「心理」の正体が作者のぼくにも何となく掴みきれないのだ。ぼくにも,そして他の多くの人にもきっとこういうことをしてみたい心理はあるはずなのだが。難しいなあ。
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