長期金利の動き~市場は正常 (2004.06.30)
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日銀はやはり長期金利の上昇を容認しているように見える。先週の日銀決定会合後に行われた福井総裁の会見は、表向きは「速すぎる長期金利の上昇を冷やした」ように見えて、実は「市場は正常に動いている」として、金利の動きを容認している。また、景気回復が続く中で早くも緩和の「出口論」が出てきていることに対し、「3つの条件が満たされるまで、粛々と今の緩和を続ける」、「3つの条件がクリアされるまでかなり長いと思う」として、市場の思惑を牽制したように受け止められた。
しかし、量的緩和解除後のゼロ金利期間も含めて、「ゼロ金利が長く続くとか、続かないとか、何か判断しうる材料は今何一つない」、「3つの条件を修正するつもりは全く無い」と、あくまで自然体。今すぐ動くことは無いが、状況が変れば別の話しだ、とも受け止められる。そもそも、根底にある景気判断について、「生産活動や企業収益から雇用者所得への好影響の波及は、次第に明確化していく」と、自信の程をみせている。
結局、「3つの条件が揃うまでは緩和を続ける」、としか言っていないわけで、景気が回復を続ければ、いずれ政策変更がある、として長期金利が上昇する事態に対して、多少先走りはあるが、自然な動き、との認識を示したことになる。
では物価上昇率がプラスになったときに、日銀はどう動くのか。おりしも、欧米主要国が利上げモードに入ってきたが、日本は「総合判断」を盾にして金融緩和の「アンカー」役を果たすのか。はたまた世界の流れに仱盲凭徍亭涡拚讼颏Δ韦
まず消費者物価の上昇率だが、10月の「展望」までに単月では前年比プラスで出る月があるりそうだ。これが今年度下期になると、プラスの月が複数回出るようになるとみる。この10月時点で、消費者物価予想をプラスと見る審議委員が一部に出る可能性がある。もっとも、3つの条件のうち、再びマイナスに転じる可能性や「総合判断」によって、日銀はかなり裁量的な判断が可能になる。しかし、現実に物価がプラスになる状況を前にすると、市場は次の当局の動きを先取りして動く。日銀内部にも「物価がプラスの状況でゼロ金利を続けるのは不自然」との見方がある。そこで「アンカー」機能を果たそうとすれば、先週も示したように、「ビハインド・ザ・カーブ」ととられてますます長期金利に上昇圧力をかける。
従って、異常な量的緩和を解除すべき状況となれば、やはり異常なゼロ金利政策の修正も必要になる。そこにインフレ参照値を設けて時間軸を長期化し、ゼロ金利の維持を図ることは、ビハインド・ザ・カーブの感を助長するだけで、財政負担がかえって高まる。しかも、金融がグローバル化した今日、主要国が緩和を修正し、流動性を吸収するときに、日本だけが蛇口を全開にしても、お互いの政策効果を減殺するだけだ。IMFも主要国に行過ぎた緩和の修正を求めている。マクロの回復がこのまま続けば、日銀の出口対策は予想外に早まる可能性がある。 |