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第三回(1)
□ 天のマンション?仕事部屋
天、パソコンに向かっている。
天 「(画面を見て)........」
□ パソコン画面
お金ってなくては困るものだけど
もっと大切なものがあるはず
それを探しにパリに来ました
今でも宝物です
間違って届いた素敵なメロディ (^o^)/?
hataさんは作曲家?
私は元?銀行員
今度は私が質問します
Who are you?
てるてる坊主
□ 天のマンション?仕事部屋
天 「........」
天、マウスを操作し、【ツールバー】の【返信】をクリックする。
新規送信メールのウィンドウが開き、題名(件名)は、自動的に【Re:(*_*) 】となる。
天 「........」
□ フラッシュ
天 「(見据えて)伊藤に300万、握らせたのか」
英 子 「........」
× ×
英 子 「天の曲をゴミにしたくないの。お金が、手助けしてくれるのよ」
天 「でも........」
英 子 「(キッと)あなたはそういう世界にいるのよ!」
天 「(絶句して)――」
□ 元の仕事部屋
天 「........」
天、キーボードを打ち始める。
□ パソコン画面
文字が打ち込まれてゆく。
てるてる坊主さんへ
Who are you? にお答えします
私は元?作曲家
□ 仕事部屋
天、手を止める。
天 「........」
□ 雨音のアパート?室内
パジャマ姿の雨音、パソコンのスイッチを切りかけ、躊躇う。
雨音、もう一度メールチェックしてみる。
雨音、!
□ パソコン画面
新着メールが読み込まれてゆく。
題名――【Re:(*_*) 】
差出人はhata@~
題名がクリックされ、メールが開かれる。
□ 室内
雨 音 「(画面に目を走らせ)........Who are you? にお答えします、私は元?作曲家 .........(続いて)」
□ パソコン画面
今では東京を離れ
ふるさとの小学校で
子供たちと一緒に、音楽を楽しんでいます
hata
□ 室内
雨音、顔が綻んで――
雨 音 「ふうん、小学校の先生か........」
雨音、デスクトップの音楽ファイルをクリックする。
短いがリリカルなメロディが流れる。
雨音、目を細めて聞く。
□ 東京オペラシティ?全景
――昼。
□ 同?一階エレベーターホール
銀行の従業員用通用口から雨音が出てくる。
鼻歌混じりにエレベーターホールにやってきて、!
エレベーターのドアが閉まりかけている。
雨 音 「(思わず)待って!」
雨音、ドアを押さえて仱贽zんだ。
□ 同?エレベーター内
ホッとため息をついた雨音、ドキッとなる。
仱盲皮い郡韦稀⑻欷窑趣辍
天 「どうも」
雨 音 「(ドギマギ会釈して)........」
天 「(軽い調子で)この前は悪かったね」
雨 音 「いえ........」
□ フラッシュ
――ふたば銀行?一階フロア
天、雨音に詰め寄っている。
天 「どうしてそんなに頭が固いかなあ」
雨 音 「(ムッと)お客様が非常識なこと、仰言ってるんですよ」
天 「(必死に)大事なことなんだ!」
雨 音 「申し訳ありません(と、頭を下げる)」
□ 上昇するエレベーターの中
雨 音 「........」
天 「........」
上昇してゆく階数表示ランプ。
雨 音 「(見るともなく見てしまう)........」
天 「(欠伸をしたり)........」
□ 東京オペラシティ?最上階フロア
到着したエレベーターのドアが開く。
天、さりげなくレディファースト。
雨 音 「........すみません」
と、降り、あるレストランへ向かう。
天もまた、同じレストランへ――
雨 音 「(気にして)........」
□ 同?レストラン
天と雨音、一緒に入ってくる。
あるテーブルに、めぐみと祐子。二人に気づいてビックリして見ている。
その隣のテーブルには、英子、健太郎、そして恰幅のいい男(早瀬)がいる。
天と雨音、それぞれのテーブルへ――
めぐみ 「(声を抑えて)お友だちになったの?」
雨 音 「(首を振り)はい、これ」
と、テーブルの上に“食事券”三枚を置く。
祐 子 「すみません、先輩に」
(2)
□ 同?“AVA”?社内
天、英子、健太郎が入ってくる。
みどり他社員たち、出前の寿司をパクついている。
みどり 「お疲れさまでーす」
社員たち 「お疲れさま」
天 「お疲れ」
健太郎 「(みどりに)あー、寿司勝手に取ってる」
天 「給料から天引きだな」
みどり 「社長がいいって........」
英 子 「え? 言った?」
みどり 「社長ォ」
英 子 「冗談。(天に)ね、ラブソングにしよう」
天 「CDのコンセプト?」
英 子 「そう。オリエンタル石油のCMは地球環境を守ろうってヤツでしょ? そんなお題目、誰が聞きたい? 男と女のラブ、今の世の中それしかないでしょ」
みどり 「泣けるのがいい。胸がキュンとなるの」
天 「(考えて)........そうだな」
英 子 「決まりね」
健太郎 「先生、そろそろスタジオ」
天 「金太郎、先生はやめろって言っただろ」
健太郎 「金太郎もやめて下さい」
みどり 「いいんだよ、金太郎で」
健太郎、ムッとみどりの寿司を摘み、軽い喧嘩に。
天、苦笑して――
□ 同?ふたば銀行?一階フロア
雨音、百万円の札束を数えている。
雨 音 「(焦っていて)........97、98、99........」
99枚しかない。
客(中年女性)、雨音を見ている。
雨音、もう一度数え始める。
中年女性、頬杖をついて雨音の手つきを見ている。
雨 音 「(数え終わって)........」
中年女性 「どうしたの」
雨 音 「申し訳ありません、何度数え直しても99万円しかないんですが........」
中年女性 「(ニッと)優秀だわ」
と、一万円札を取り出してヒラヒラさせる。
雨 音 「(絶句)――」
横目で見ていためぐみ、ムカムカ。カウンターの下、客に見えないところで拳を作っている。
雨 音 「(気持ちを抑えて)........100万円お預かりします」
と、一万円札を受け取り、手続きを進める。
□ パソコン画面
銀行ではストレスのたまることばかりでした
お客様に理不尽なことを言われても
まず私たち銀行員が頭を下げなければなりません
□ 雨音のアパート?室内(夜)
雨音、パソコンの前にいる。
缶コーヒーを手に、フランス?パリ関係の雑誌やパンフレットなどを見ている。
□ パソコン画面
hataさん
雨のパリ、モンマルトルの丘
学校帰りにテルトル広場のカフェでお茶しました
ここは芸術家が集まる場所です
ユトリロはこの地で生まれ育ち
ピカソやモジリアーニはアトリエを持ちました
今も若い画家たちが街のあちこちでカンバスをたてています
日本での生活がウソのようです
hataさんはどうして東京を離れたのですか?
てるてる坊主
□ パソコン画面
私も似たようなストレスを感じていました
□ MAスタジオ
天、ディレクター(杉浦)と打ち合せながらの音入れ作業。
健太郎もいる。
後ろの席でクライアント数人がヒソヒソと話している。
杉 浦 「(振り向いて)何か注文がおありでしたら聞こえるように仰言って下さい」
クライアント 「音楽が大人しすぎるんね」
天 「(ちょっとムッと)昨日、派手すぎるから抑えてほしいという注文でしたよね」
クライアント 「元の方がいいな」
その部下たち、頷いている。
杉 浦 「(もムッと)ちょっと待ってよ。長谷川ちゃん徹夜で直したんですよ」
クライアント 「元に戻して」
杉 浦 「(ブチブチと)やってらンねえよ」
と、鉛筆などを投げ捨てる。
クライアント 「(激怒して)なんだ、その態度は! 金出してンのはこっちだぞ!」
健太郎 「(ブツブツ)会社の金でしょ」
天 「(健太郎の頭をポカリとやり)まあまあ、杉浦ちゃん、直しましょうや」
杉 浦 「それでいいのかよ!」
天 「いいからいいから」
と、軽い調子でなだめる。
□ 天のマンション?仕事部屋
パソコンの前の天、ため息でキーボードを打つ。
□ パソコン画面
今は、ビジネスではなく
純粋に音楽を楽しんでいます
hata
□ 雨音のアパート?室内
パソコンの前の雨音、フランス関係の雑誌を広げている。
音楽のページ。
雨 音 「ふうん、聞いてみよう」
――エディット?ピアフの記事を見ている。
□ パソコン画面
hataさんはどういう音楽が好きですか?
私はやはりフレンチポップス
最近は古いシャンソンも聞いています
一番のお気に入りは
激しい愛に身を焦がしたピアフです
てるてる坊主
□ 天のマンション?仕事部屋
天、そのメールを読んでいる。
天 「ピラフ?」
天、もう一度文字を確認。
天 「あ、ピアフか」
□ 東京オペラシティ?CDショップ?店内(翌日の夕方)
――ロック?コーナー。
天、CDを選んでいる。
数枚ピックアップし、レジへ向かう。
シャンソン?コーナーが目に入る。
天 「........」
天、シャンソンコーナーに足が向かう。
天 「(ブツブツ)新進歌手新春シャンソンショー........」
“エディット?ピアフ”のCDを見つける。
天、それを持ってレジへ向かう。
そこへ――
会社帰りの雨音が入ってくる。
天には気づかず、まっすぐシャンソンコーナーへ。
雨 音 「(ブツブツ)ピアフ、ピアフ」
探すが、ない。
会計を済ませた天、雨音には気づかずに店を出てゆく。
と、同時に、雨音は別の歌手の“ピアフを歌う”などといったタイトルのCDを持ってレジへ。
きわどいすれ違いである。
□ 天のマンション?室内
天、CDをステレオにセットする。
スピーカーから流れるピアフの歌。
――例えば、「人の気も知らないで」。
昔のレコードをCD化したもので、独特の音質である。
天 「........」
□ 雨音のアパート?室内
CDラジカセから、同じピアフの歌が流れている。
雨音、うっとりと聞き入っている。
□ 天のマンション?室内
聞く天、気に入らない様子で顔を顰める。
□ 東京オペラシティ?全景
□ 同?ふたば銀行?一階フロア
雨音、いつものように笑顔で客に応対している。
隣の窓口のめぐみ、咳払いをする。
吉田がやってきたのだ。
雨 音 「(見て)――」
吉田、笑顔で順番待ちの番号札を取る。
雨 音 「........」
気になるが、仕事を続ける。
× ×
めぐみ 「番号札、○○番でお待ちのお客様........」
吉田が立ち上がりかける。
雨音、ホッとなるが――
吉田、順番待ちをしていた他の客と番号札を交換する。
雨 音 「――」
× ×
雨音の前に、ニコニコ顔の吉田が座る。
吉 田 「こんにちは」
雨 音 「(ビジネスライクに)いらっしゃいませ。どのようなご相談ですか?」
吉 田 「今日の夕飯、どこにしましょう」
雨 音 「――。どうぞお一人でご自由に」
吉 田 「雨音さんもお腹は空くでしょ?」
雨 音 「空きません」
その時――
祐 子 「村上さん、お願いします」
と、バックオフィスから呼ぶ。
雨 音 「(ホッとなって)失礼します」
と、席を立ち、祐子のところへ――
雨 音 「(祐子に小声で)ありがと、助かった」
祐 子 「課長が呼んでるんです、奥で(と、怒っているというジェスチャー)」
雨 音 「........」
□ 同?奥
雨音と小西課長。
小西課長 「あのお客さん、知り合いなんだろ」
雨 音 「知り合いと言えば、知り合いですけど........」
小西課長 「知り合いだったら勤務時間外に会いなさい」
雨 音 「そういう知り合いじゃありません」
小西課長 「だったらどういう知り合いなんだ」
雨 音 「........」
小西課長 「クレジットカードはお作りいただいたのか?」
雨 音 「........いえ」
小西課長 「お勧めしなさい」
雨 音 「でも........」
小西課長 「村上くん、今月分のノルマ、まだ果たしてないんだぞ。だいたいキミは .........(と、小言、続く)」
雨 音 「(ため息で)........」
□ パソコン画面
hataさん
困っています
しつこくデートに誘う人がいます
どうして私を?
世界七不思議の一つですけど
てるてる坊主
□ 天のマンション?仕事部屋
天、ピアフの歌を聞いている。
□ パソコン画面
てるてる坊主さんへ
シャンソンは食わず嫌い
いや、聞かず嫌いでしたが
今では心地よく耳に響きます
一度付き合ってみては?
相手も意地になっているだけかもしれません
hata
□ 天のマンション?仕事部屋雨音のアパート?室内
雨音、パソコンの文面を見ている。
雨 音 「(考えていて)........」
□ 東京オペラシティ?ふたば銀行?一階フロア
雨音、客はいず、伝票を整理している。
吉田が入ってくる。
雨 音 「(気づいて)........」
小西課長、咳払いする。
吉田、いつものように雨音の窓口へやって来る。
雨 音 「........いらっしゃいませ」
と、丁寧に頭を下げる。
吉 田 「(いつもと違う態度に)........?」
めぐみの声 「どういう風の吹き回し?」
□ 同?ロッカールーム
終業後。雨音たち、着替えながら――
雨 音 「(必死に)付き合ってるくれるよね」
めぐみ 「三人だったら安心ってわけ?」
雨 音 「(頷き)........」
めぐみ 「今日デートなの。ゴメンね」
雨 音 「お願い!」
めぐみ 「じゃ、彼氏も一緒に吉田さんにたかるか」
雨 音 「何でもいいから二人にしないで」
めぐみ 「OK。場所決まったら携帯に電話ちょうだい」
雨 音 「!? 一緒に行こうよ」
めぐみ 「彼氏の買い物に付き合わなきゃいけないの。第一希望、イタリアン。よろしく!」
と、出てゆく。
雨 音 「(不安で見送り)........」
□ 夜の街
タクシーが走ってゆく。
□ 走るタクシー?中
不安げな表情の雨音と、ニコニコ顔の吉田が仱盲皮い搿
雨 音 「........どこに行くんですか?」
吉 田 「大丈夫ですよ、ホテル街じゃないですから」
雨 音 「――」
□ ある街
到着したタクシーから降り立った雨音、ポカン。
そこは、雨音ならずとも不安になるような無国籍タウン(例えば新大久保)。
吉 田 「(周囲を見回して)あれえ、この街もホテル多いなあ」
雨 音 「(警戒して)........」
□ ある街?ベトナム料理店?表
――外装も内装も小汚い店である。
雨音が店の前で携帯電話をかけている。
雨 音 「(驚いて)来れないって、どうして!?」
めぐみ 「彼氏、面倒臭いって」
雨 音 「(泣きそう)そんなァ」
□ 同?店内
吉 田 「残念だなぁ、めぐみさんの彼氏の顔、見れないのは」
と、ニコニコ顔で雨音から携帯電話を受け取る。
雨 音 「........」
吉 田 「しかし雨音さん珍しいですね、今時携帯持ってないなんて........」
雨 音 「........必要ありませんから」
吉 田 「ISDNの方が引きたい?」
雨 音 「(驚いて)!?」
吉 田 「図星でしょ」
雨 音 「(警戒して)........」
吉 田 「ヤダなあ、最初に会った時にインターネットが趣味だって........」
雨 音 「........」
吉 田 「そうだ、メールアドレス教えて下さいよ」
雨 音 「........覚えてないんです。英数字の組み合わせなので........」
吉 田 「(首を竦め)ま、いいけど」
料理が撙肖欷皮搿
吉 田 「これこれ、この生春巻。あっちで食べたのと同じ味なんですよ」
雨 音 「ベトナム、行かれたことあるんですか?」
吉 田 「雨音さんは?」
雨 音 「ありません」
吉 田 「僕もありません(と、笑う)」
雨 音 「........」
吉 田 「あっちというのはパリです」
雨 音 「........!?」
吉 田 「ベトナムは元フランス領ですからね、パリにはベトナム料理店が多いんです。その中でもピカイチの店があるんですよ、ここに似て小汚いんですけどね。そこの生春巻の味が忘れられなくて」
雨 音 「そのお店........」
吉 田 「15区にあるKIM-ANH(店名)」
雨 音 「――。頑固そうな、でもホントはとっても優しいおじいさんがやってる店」
吉 田 「ジュラ地方のワインばっかり勧めるおじいさん........」
雨 音 「〔思わず身を仱瓿訾罚┢郡姘驻ば韦违铳ぅ螅 |
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