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おもしろ化合物

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发表于 2006-10-25 20:13:23 | 显示全部楼层 |阅读模式
第1話:「ヘリセンの光学分割」
 ヘリセン(helicene)をご存じですか?
 ヘリセンは、
ベンゼン
環を弧を描くようにらせん状に連ねた構造の分子で、ベンゼン環の数によって、[n]helicene のように命名します。たとえばフェナントレンは、[3]helicene に相当します。こういうふうにベンゼン環をつなげていくと、[5]helicene までは平面ですが、6個になると、両端の環がぶつかりあって、片方がもう一方にのりあげたような形になるので、分子に「ねじれ」が発生します。当然「右ねじ」と「左ねじ」に相当する二種類の構造が存在し、事実、[6]helicene は
光学分割
が可能です。ちなみにベンゼン環を平面環状に6個つなげてしまうこともできますが、それは全体が板状の
多核芳香族環
になり、まったく別の化合物(coronene)になってしまいます。ベンゼン環を連ねて大きな輪をつくるというのもなかなか魅力的なテーマ(一連の分子は circulene とよばれる)なのですが、今回は別の話です。
 ちょっと構造を書いてみましょう。

 [6]helicene の両異性体のねじれのようすがよくわかるでしょうか(欠けているベンゼン環が下になっている)。この [6]helicene の合成と光学分割は1956年に報告されていますが、これが世界で初めて平面のベンゼン環のみで
キラル
な分子をつくった例となっています。
 さて、その光学分割はどうやるかというと、常法通り他のキラルな分子との複合体のつくりやすさの違いを利用してわけるのですが、ここで使われているのが
光学活性
2-(2,4,5,7-tetranitro-9-fluorenylideneaminooxy)-propionic acid(TAPA)です。どこからこんなへんてこなキラル分子をもってきたのか不思議ですが、このTAPAを使って見事に
R

S
の [6]helicene が得られました。この光学活性ヘリセン、
旋光度

[α]D
)が約3700度といいますから驚きです。
 ところで、[6]helicene にさらにベンゼン環をつないでいくと長いらせん状になり、すでに [14]helicene なども合成されています。このくらいになると、一部はベンゼン環が三層になっているわけですからすごいですね。これくらい分子がねじれてくると、
ラセミ体
の溶液からそのままで右らせんと左らせんの結晶が分かれて晶出してくるそうです。
 いま私がやっている「おもしろ化合物ゼミ」の内容からご紹介しました。どうもここではあまりこういう構造有機ネタは好まれないようですが、たまにはこんなのもいかがでしょうか。
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:14:23 | 显示全部楼层
第2話:「分子の歯車が回る」
 好評につき(^^;、おもしろ化合物ゼミから第2話です。
 トリプチセン(triptycene)という化合物がありまして、その構造はちょっとわかりづらいのですが、次のようです(^^;。

 つまり、[2,3],[5,6],[7,8]-tribenzobicyclo[2.2.2]octane ですね(命名法については突っ込まないように(^^;)。平面に描くと面妖ですが、立体的には三個の
ベンゼン
環が三枚羽根の歯車のように配置した分子をイメージしてください。上の図を上からみると、ベンゼン環がちょうど120°の角度で三個配置しているわけです。これが理解できないと先へすすめませんから、精一杯想像をたくましくしてくださいね(^^;。
 で、このトリプチセンが二個、それぞれの
橋頭位
(三個のベンゼン環をつなぎあわせている位置)で
エーテル
結合した分子があります。図を描くと次のようになります。

 つまり、三枚歯の歯車が二個酸素でつながっていて、ちょうど傘歯車のように噛み合っている状態になります。室温では、この分子歯車は高速でぐるぐる回転(もちろん二個のトリプチセンが連動して)しています。
 これだけでも十分面白いのですが、さらに面白いことを考えた人がいて、この三枚歯のベンゼン環のひとつに
置換基
(Clとか)をつけて目印とします。両方のトリプチセンに一個ずつ目印をつけた歯車ができますね。
 さてこの歯車が噛み合った状態を考えると、一方のトリプチセン単位の印をつけたベンゼン環に対して、他方の印つきベンゼン環が噛み合う位置は三通り考えられます。つまり、右ねじれ(右60°)、左ねじれ(左60°)、正反対(180°)です。この三通りの状態がいりまじってくるくる回転しているのです。「右ねじれ」と「左ねじれ」は互いに
鏡像体
の関係にあり、それに対して、「正反対」はねじれをもたない
メソ体
ということがいえます。
 この分子歯車の歯の噛み合いはしっかりしているので、これらの三種の「
異性体
」はいくらぐるぐる回ろうとも相互に変換することはできません(相互変換するには歯を乗り越えなければならない)。「右ねじれ」と「左ねじれ」は鏡像異性体ですから分離不可能ですが、「正反対」とは分離することができます。実際に
HPLC
で、「左」+「右」と「正反対」の二種の異性体を分離することができました。
 こういう異性関係を、歯車の噛み合い方、すなわち位相の違いに起因するので、
位相異性体
(phase isomer)と名付けられています。
 おもしろいですねぇ.....って、わかります?
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:15:02 | 显示全部楼层
第3話:「あ~ら不思議、分子の早変わり」
 忘れたころにやってくる(^^;、「おもしろ化合物ゼミ」から第3話です。
 ロータン(rotane)、コロナン(coronane)という分子があります。構造はそれぞれ下に書いたとおりで、ロータンは、
シクロアルカン
の各頂点に三員環が
スピロ
結合したもの、コロナンはシクロアルカンの各辺に別のシクロアルカンが
縮環
したものです。両者は、正多角形の頂点を共有しているのと辺を共有しているのとの違いで、兄弟のような関係にあります。
 さて、こういう面白い形の分子をどうやって合成するかという話なのですが、例によってそんなものなんの役にたつのか、という議論はなしです(^^;。

 こういう分子をつくるのはさぞや難しいだろうと思われますが、このロータンから一挙にコロナンができるのですね、これが。といってももちろんそのままのものができるわけではないのですが(^^;。[6]rotane と [6,4]coronane は、ちょうど
異性体
の関係にあります(どちらも分子式は、C18H24)から、パタパタパタと連続した
転位
反応を起こさせれば変換ができそうに思えますね。
 実際の反応は、下記のようで、ロータン型のアルコールを脱水条件(SOCl2/Py)で処理すると、OH-がぬけて根元の炭素に+イオンができ、そこへ左上の三角のC-C結合が切れて+イオンのところと新たに結合をつくります(いわゆる
1,2-シフト
というやつ)。そうすると左上の四角が一個できて、+イオンがひとつ左下に移動します。そこへ、左下の三角が切れて転位して.....、とパタパタ連続的に転位がおきて、最終的に、5個目の四角ができたところで行き止まり(^^;になり、そこにOH-が
付加
してコロナン型アルコールになります。う~む、こんな稚拙な説明でわかるかしらん。

 どうです、きれいすぎて話がうますぎるでしょう。こんな反応を一度でいいからやってみたいものです。
 
カルボカチオン
の転位はいろいろ面白いのがありまして、古典的なのでは、
Wagner-Meerwein 転位
が有名ですね。ちょっと構造を描くのは至難の技ですが、ボルナン骨格からカンファン骨格への転位は(私は「だましぶね転位」とよんでいます(^^;)、初めてみたときは不思議でたまりませんでした。
メルクインデクス
をおもちの方は後ろの人名反応の項で引いて見てください。
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:15:52 | 显示全部楼层
第4話:「なわ跳びはお好き?」

 長らくお待たせしました。「おもしろ化合物ゼミ」から第四話です。あまりに間隔があきすぎて前回のが見つからない(^^;、というご指摘がありましたので、今回から【面白】のヘッダをつけました(でもいつまで続くのだろう(^^;)。
 
クラウンエーテル
はみなさんよくご存じだと思いますが、「なわ跳びクラウンエーテル」というのがあります。構造は下に描いたようなもので、
ナフタレン
環の1,5位の間をクラウンエーテル鎖でつないだ分子です。1,5-位(
アンチ
だったかな、ベンゼンでの
オルト、メタ、パラ
のように、二置換ナフタレンにもすべて名前があったような)という位置関係がまあ、ミソでして、このナフタレン環が、クラウンエーテル鎖の「なわ」をもって「なわ跳び」をするのです。

 「なわ」が十分長ければ、自由にくるくる回ることができます(このあたりが実際のなわ跳びとは違うところで、人間はなわが長すぎるとかえって跳べませんね(^^;)。分子の場合は、たとえば上に描いた22員環をもつ1,5-naohtho-22-crown-6では、スムーズに「なわ跳び」ができます。どうしてそれがわかるかといいますと、左の構造では、Haの水素二個がナフタレン環の内側(
エンド
側)、Hbが外側(
エキソ
側)に位置しているのに対し、右の
コンホーマー
では、それが逆転しています(Haが外でHbが内)。これは、「なわ」が半回転するときに、これらの水素の位置も反転するためです。
NMR
でみると、エンドの水素とエキソの水素は当然環境が異なりますから、これらは異なるシグナルをあたえるはずですが、上の分子では、この
ベンジル位
の水素のシグナルは一本しかあらわれません。すなわち、かなり速いスピードで「なわ跳び」しているために、HaとHbの区別が見かけ上できなくなっているわけです。
 それでは、「なわ」を少し短くしてみましょう(^^)。こんどは、1,5-naphtho- 19-crown-5です。

 構造式で描くとあまり違わないように見えますが、こうするともはや「なわ跳び」ができなくなってしまいます。鎖が短くなったので、ナフタレン環とぶつかって回れなくなったのですね。たしかに、NMRでみるとHaとHbが別々のシグナルとして現れます。
 分子の運動状態は温度によって変化しますから、これまでの話は室温でのことですが、19員環の場合、160℃でもNMRシグナルがやや幅広くなるだけで、ほとんど変化しないことから、「なわ跳び」に必要なエネルギーは22kcal/mol以上であると計算されています。逆に、最初にあげた22員環の分子も、温度を下げていくと、「なわ跳び」が緩慢になっていき、NMRシグナルが、幅広くなっていって、-134℃より低温ではHaとHbが二本に分離します。この温度から、こちらの「なわ跳びエネルギー」は、6.3kcal/molとわかります。
 せっかくクラウンエーテルなので、
カチオン

キレート
させてやったら「なわ跳び」速度に影響がでるのでは、と考えたくなるところですが、残念ながらそれはまだ成功していないようです。
 今回から引用文献もつけますね。
 H. S. Brown et al., J. Org. Chem., 1980, 45, 1682-1686.
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:16:23 | 显示全部楼层
第5話:「できた!五輪マーク」

 もうすっかり忘れられているでしょうが(^^;、「おもしろ化合物」の第5回は「5」にちなんだ話題です。
 とうとう五輪分子が完成しました。鎖のように環がからみあった分子、
catenane
の話題は以前にも登場しましたが、環が5個連なった [5]catenane がこの分野の第一人者である英バーミンガム大の Stoddart らによって今回初めて合成され、「olympiadane」と命名されました。

 さて、実際の分子ですが、これがなかなか難物でして、こんなものでおわかりでしょうか(^^;;。

 つくり方は簡単で、B環とD環(同じもの)をまずつくっておき、それをC環の原料でつなぎあわせて、B-C-D部分を組みます。このときうまく鎖になるのは、B(D)環構造の中の 1,5-dialkoxynaphthalene 部分(-O-□-O-)が電子過剰型であり、対するC環構造の中の 4,4'-bipyridinium 部分(-■-)が電子不足型なので、うまくサンドイッチ(□■□)のように
配位
して分子構造が固定されるためです。
 次に、できたB-C-Dに対して、さらにA(E)環の原料をはたらかせて
閉環
させると、今度は上とは逆の形のサンドイッチ(■□■)型に配位して、めでたく五輪が完成します。ただし、配位力による反応分子の固定は
選択性
があまりよくなく、
収率
はいまひとつで、B+C+D→BCDが6%、A+BCD+E→ABCDEが5%となっています。まあこの場合、一段階目は二つの環を一度につなぎあわせる反応であり、二段階目は両端の環にそれぞれ新たな環をつなぐ反応ということを考えれば、低収率もやむを得ないところでしょう。なんにせよよく作ったものです。
 ところで、この分子は本当に五輪マークの形をしているのでしょうか? 実際の分子は、70℃での
NMR
の結果、D2h対称(一直線の直鎖でそれぞれの環が直交)であることがわかりました。それ以下の温度では環の運動が抑制されていくつかの
コンホーマー

平衡混合物
で存在するようです。いずれにしても、W字型にはなってないわけですね。まあ当然でしょうが。
  D. B. Amabilino et al., Angew. Chem. Int. Ed. Engl., 33, 1286 (1994).
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:16:57 | 显示全部楼层
第6話:「ダブルヘリセンの立体異性」

 新着の有機合成化学協会誌を見ていたら、面白い話をみつけました(もちろん日本語です(^^;)。
 
ヘリセン
はこのシリーズの第一回にとりあげた面白化合物ですが、そのらせんが二方向に巻いた「ダブルヘリセン」という分子があるそうです。
 その一つは、「S」字型のもので、たとえば10個の
ベンゼン
環からなる下のような分子があります。この分子は両端の重なりぐあいによって
dl-体

meso-体
が存在するそうです。
 ちょっと見ると、両端が同じ側に向いている方がmesoで、それぞれ反対側に向いていて分子全体がねじれている方がdlのように思えますが、それが逆なのが面白いですね。なんか不思議な気がしませんか?

 もう一種のダブルヘリセンは、「3」の字型に二つのらせんがつながった分子で、たとえば次の二種のようなものがあります。こちらは両端が同じ側に向いているものは、得られず(
立体障害
でしょうね)、互い違いになっているものだけが知られています。ややこしいのは、この「3」型は、この互い違いがdl-体になることです。う~ん、頭が痛い(^^;。

 キャラ図ではわかりにくい方は、是非原著をご参照ください。もっと色々な話があって面白いですよ。
 大須賀、鈴木、有合化、52(12)、1020 (1994)
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:17:26 | 显示全部楼层
第7話:「三角酸、四角酸」

 実はまだ続いている「面白化合物」シリーズです(^^;;。
 有機合成化学協会誌の4月号にスクアリン酸の話があったので(目次は16番会議室にアップしました)、以前ちょっと一連の化合物を調べたときの資料をひっぱりだしてきました。

 オキソカーボン酸といわれる一群の化合物がありまして、上の二つのように
エンジオール
の両端を
カルボニル
の鎖で環状につないだ構造をしています。環の大きさは3~7が知られていて(私の知る限りですが(^^;)、五角酸がクロコン酸、六角酸がロディゾン酸、七角酸がヘプタゴン酸とよばれています。
 で、なんでこれが面白いかといいますと、これらの酸から
プロトン
が2個脱離したジ
アニオン
が非常に安定で、そのため
エノール
としては異常に強い酸性を示すのです。
共鳴
構造を描いてみるとわかるように、このジアニオンはすべてのカルボニル上に電荷が分散可能で、しかも理論計算から環は
芳香族性
をもっていることが示されています。すなわち二重に安定化されているわけですね。ということで、四角酸の場合、
pKa
値は一段目が約1、2段目が2.2と、硫酸に匹敵する強さをもっています。
 
環状共鳴構造
を有するので、塩類は特有の色をもち、クロコン酸は黄色、ロディゾン酸は赤色のギリシャ語に由来して命名された名前です。このうち、クロコン酸(五角酸)のカリウム塩は、早くも1825年に単離されており、同年に単離された
ベンゼン
と並んでもっとも歴史をもった
芳香族
分子といわれています。
 文献:S.Cohen, J.R.Lacher and J.D.Park, J. Am. Chem. Soc., 81, 3480 (1959).
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:18:15 | 显示全部楼层
第8話:「「恐竜の背」脂肪酸」
 そんなシリーズがあることなど誰もおぼえていないでしょうが(笑)、面白化合物シリーズ第7話です(7ヶ月ぶりですね(^^;;)。

 米アップジョン社の研究グループがあるバクテリアの培養液から単離した一種の
脂肪酸
アミド
なのですが、ご覧のように恐竜の背中のように
シクロプロパン
環がならんでいます。
生合成
的には、C18の
ポリエン
酸が生成したあとで
メチオニン
由来のC1ユニットが順次導入されていくと推定されています。なんで途中一ヶ所飛んでいるのでしょうね?(^^;
 構造も驚くべきですが、もっと驚いたことは、この化合物が血液中のHDLからVLDL、LDLへアシルコレステロールを転移させる
タンパク質
、CETP(choresteryl ester transfer protein)の強力な阻害物質として単離されたことです。末梢から肝臓へ
コレステロール
を逆転送するHDLは血中コレステロール濃度を低下させるのに寄与していますが、そこからLDLにコレステロールエステルが転移してしまうと、また組織に運ばれていってしまいます。この転移を触媒するCETPの活性を抑えると血中のコレステロール値を下げ、粥状動脈硬化などの血管性疾患を防ぐことができることがわかっています。
 こういう臨床上有用なポテンシャルをもつ物質を
スクリーニング
していて、こんなに変わった化合物がひっかかってきたなんて話がうますぎますよね。
 M.S.Kuo et al., J. Am. Chem. Soc., 1995, 117, 10629-10634.
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:18:40 | 显示全部楼层
第9話:「クムレンを折り曲げる」
)より
 
累積二重結合
をもついわゆる「cumulene」は、直線状分子ですが、これを無理やり折り曲げてしまった分子が合成されました。

 3,4-dehydrothiophene がその分子で、これまでに確認された最も小さい環状cumuleneだそうです。

 この化合物は、C-4位に trimethylsilyl 基、C-3位に -I(C6H5)OSO2CF3基をもつ
チオフェン

クラウンエーテル
存在下、KFで処理して得られました。といってももちろんこんなひずみの大きくて不安定な分子が存在しうるのは一瞬のことで(^^;、各種の
ジエン

トラップ
された
環化付加
物の構造から存在が確認されたわけです。
 
ab initio 計算
によれば、この分子の C-3/C-4 間の
π結合
はかなり大きな
ビラジカル
性をもっているそうです。まあ、そうでしょうね。
 ref: Chem. Eng. News, March 18, 1996, p24.
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:19:05 | 显示全部楼层
第10話:「しなやかなねじれオレフィン」
 お待たせしました(笑)。
 「面白化合物」というシリーズが1フォーラム時代の【有機】会議室で細々と続いていたのを覚えておいでの方もおられると思います。ちなみに前回のは旧FCEHM/MES/10/4194で一年以上前です(^^;。今はnifty:FCHEMH/LIB/9/97にあるログファイルに収録されています。
 心を入れ替えて、その続きをまた始めます(^^)。第10話になります。
 東北大の原田らのグループがなかなか面白い
オレフィン
を合成しました。cis- および trans-1,1',2,2',3,3',4,4'-octahydro-4,4'-biphenanthrydeneというのがそれで、構造は次のようなものです。

  すなわち、はしのベンゼン環一個が
飽和
化した
フェナントレン
を対称に二重結合で結んだ形です。
シス
体の方は向き合った
ナフタレン
ユニット同士がねじれて上下に重なっており、
軸不斉
によって二種の
鏡像異性体
があります。また、
トランス
体はナフタレンユニットと相手方の
シクロヘキサン
環の間でやはりねじれが発生し、こちらは、上上、下下の一対の鏡像異性体と、上下という
メソ体
があります。
 で、色々と分光学的性質などが調べられているのですが、面白いのはこれらの分子が比較的容易に
ラセミ化
することです。

  環の一部が重なっているにすぎないトランス体に比べ、シス体はまるまるベンゼン環一個分重なっていますから、それがすりぬけて
異性化
するのは困難なように思えますが、実際にはシス体の方が低い温度で容易にラセミ化するのが不思議です。しかもこのラセミ化反応は片側のユニットが一回転、つまり二重結合が一旦きれて
ビラジカル
のようになり、トランス体を経て進行するのではないことが明らかになっています。
 このシリーズの第一回に
ヘリセン
の話を取り上げましたが、あのラセミ化も予想以上にいきやすかったですし、分子は必ずしも剛直なものではないという証左なのかもしれません。
  ref.: N.Harada, A.Saito, N.Koumura, D.C.Roe, W.F.Jager, R.W.J.Zijlsta, B de Lange and B.L.Feringa, J.Am.Chem.Soc., 1997, 119, 7249-7255 (1997).
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:19:28 | 显示全部楼层
第11話:「アホウドリの羽ばたき」


 月一という声がかかってしまいましたので、第11話いきます。でもあくまで「不定期」ね(笑)。
 albatrosseneという雄大な名前の炭化水素が合成されました。さて、アホウドリのように悠然と羽ばたくことはできるかな?

 
ナフタレン
のすべての水素を
ベンゼン
環で置き換えた化合物がこのoctaphenylnaphthaleneです。これはまだアホウドリではないのですが(^^;、これが以後の化合物の基本をなすユニットといえます。ちなみにこの化合物は1,3-diphenylacetoneとbenzil(dibenzoyl)を原料として容易に合成することができます。いかにも窮屈そうで、ベンゼン環は自由に回転できるのだろうかと心配ですが、まだまだこれからです(笑)。

 このoctaphenylnaphthaleneを二つつないだ形がalbatrosseneで、二つのユニットが大きな翼に見立てられているのでしょう。実際の分子の形も両ユニットのすきまが裂け目のようになっているそうです。
 合成法は意外と簡単で、benzene-1,3-diacetic acidから出発して、
酸クロリド
にしたあと
Friedel-Crafts
アシル化
でベンゼンにくっつけ、両側の
ベンジル位
を酸化して
テトラケトン
にします。この両側の
αジケトン
を1,3-diphenylacetoneの
活性メチレン

アルドール縮合
するとテトラフェニルシクロペンタジエノン体が得られます。これをtetraphenylanthranilic acidから調製した
ジアゾニウムイオン
経由の
ベンザイン
(でしょうね)と
Diels-Alder付加
、脱カルボニルで目的のalbatrosseneができます。
通算収率
は3%です。
 で、合成した結晶について
X線結晶解析
が行われ、分子のパッキングのようすなどが掲載されています。
 ところで、気になるのはベンゼン環の回転です。13C-
NMR
では70本を超えるシグナルが観測され、
コンホーマー
間の変換が遅いことがわかります(完全自由回転だと炭素は42種類)。これはさもありなんですが驚くべきは次の化合物です。

 アホウドリというよりは雪の結晶を思わせるこの化合物、ベンゼン環ばかりからできているので、さながら大きな二重プロペラでしょうか。これも合成されまして、その13C-NMRは18本のシグナルしか観測されないことが示されています。すなわちNMRのタイムスケールではすべてのベンゼン環は自由に回転しているわけです。う~ん、からまっちゃたりしないんでしょうかね(笑)。ちなみに、真ん中のベンゼン環につながっている三個のベンゼン環をナフタレン環(もちろんすべて
フェニル
化されている)に変えた分子も合成され、それでは自由回転が見られないことも示されています。そこまでよくやるな、という気もしますが(^^;、ナフタレン環はやはりベンゼン環よりも剛直な面があるようですね。
 ref.:L.Tong,D.M.Ho,N.J.Vogelaar,C.E.Schutt and R.A.Pascal,Jr. J.Am.Chem.Soc.,1997,119,7291-7302.
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:20:00 | 显示全部楼层
第12話:「がんじがらめの二重結合」
 第12話になります。
 前々回にねじれ
オレフィン
の話がでてきましたが、今回はいうなれば「からまりオレフィン」(^^;です。
 二環性化合物に
四置換オレフィン
を組み込む方法は何通りか考えられますが、
縮環
部に
エンド型
にオレフィンがはいった形、たとえば 1,2,3,4,5,6,7,8-octahydronaphthalene(bicyclo[4.4.0]dec-1(6)-ene)みたいなのがすぐ思い浮かびますね。この場合両側の環は二重結合に対して
シス
の関係に当然あります。ではこれを
トランス
にしてやったらどうなるか、というのが今回の化合物なのです。頭の中がこんがらがりますから図にしてみましょう(^^;。
 ただし、さすがに
6-6員環
では不自由なので少し環を大きくします。

 10-12員環に拡大したのが図の化合物(bicyclo[10.8.0]eicos-1(12)-ene)で、Aのほうが普通のシス体、Bが問題のトランス体になっているのがおわかりかと思います。こんな化合物、考えつくだけでも大したものですが、しかしどうやったら
立体選択的
につくれるか、と考えると頭がいたくなりますね(^^;。
 実際の合成は、Aのほうをつくっておいてから
光異性化
でBを得ています(なあんだ(笑))。ところが光反応ではうまいこと A:B = 2.4:1 の混合物になるのですが、それを分離するのが難しいのです。
クロマトグラフィー
などでは分離できず、結局、
ジクロロカルベン
と反応させるとシス体だけが
付加
物を生成することを利用して分離に成功しました。なぜトランス体は反応しないかというと、実際はトランス体はCのような構造をしているのですね。つまり二重結合の上下を
アルキル鎖
がマスクしている形のために、反応性が非常に低下しているわけです。実際、トランス体は
接触還元
にも抵抗することが確かめられています。
 この形のトランスからまりオレフィンは、[m,n]betweenanene と命名されています(m,nは二重結合を除いた炭素数)。まさにCの通り、うまいこと名づけたものです。
 さて、この betweenanene ですが、分子全体がねじれているように見えます。このたすきをひとつはずした形に相当するトランス
シクロオレフィン
では、たとえば E-cyclooctene(安定に存在する最小のトランス環状オレフィン)は
光学異性体
をもつことが知られています。

 同じように、「からまりオレフィン」も
光学分割
できそうですね。原報には合成したのはちゃんと
(±)-体
と書かれています(^^)。
 ref.: M.Nakazaki, K.Yamamoto and J.Yanagi, Chem.Commun., 1977, 346.
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:20:24 | 显示全部楼层
第13話:「ベンゼン・オブ・ベンゼン」

 正月を祝って大作をお送りします(自分でいうなよ(^^;;)。
 新年にふさわしい化合物、というわけじゃないんですが(^^;、有機化合物の代名詞といえばやはり亀の甲の
ベンゼン
でしょう。そのベンゼンの構造を解き明かした化学者といえば、これはもう
ケクレ
ですね。そのケクレの名を冠した
芳香族
炭化水素に kekulene という化合物があります。これこそ benzene of benzene なのです。

 ご覧のようにベンゼン環を連ねて大きな六角形をつくったのが kekulene です。一辺がベンゼン環2個だと中空の部分が六角形でそれ自身がベンゼン環になってしまいますから(
おもしろ化合物 第1話
に登場する coronene がそれです)、中にスペースの空いた六角形としては、一辺がベンゼン環3個からなるこの kekulene が最小分子になります。
 単にベンゼン環を連ねて大きなベンゼン環をつくったというだけならなんのこともないのですが、実はこの分子の
共鳴
構造にはちょっと特別な興味がもたれます。つまり実際の分子の共鳴構造がAの
ベンゼノイド
型かあるいはBの
アヌレノイド
型か、ということです。もしAのようならば、大きな六角形を形づくる小さな六角形単位一つずつが共鳴構造をとっている、つまり全体は12個のベンゼンの重ねあわせで表されるのに対し、Bでは大きな六角形の外周と内周がそれぞれひとつながりの
ポリエン
構造で表されます。Bの構造は一見単なるポリエンで不安定そうですが、よく見ると外周は[30]annulene、内周は[18]annuleneになっていますから、どちらも
ヒュッケル則
から安定な
芳香族性
を示すことが期待されるのです。
 この両者の区別は
NMR
によって容易に行うことができます。kekulene には環の外周に2種(Ha,Hb)、内周に1種(Hc)の3種の
プロトン
が存在します。もしベンゼノイド型であれば、この3種のプロトンはすべて共鳴構造(ベンゼン環)の外側すなわち
環状電子雲
による
脱遮蔽
領域に位置しますから、通常のベンゼン環プロトン同様に
低磁場
シフトして観測されるはずです。これに対し、アヌレノイド型では大きな環全体でひとつの共鳴構造(実際には二重)を形成しますから、外周プロトンは脱遮蔽、内周プロトンは
遮蔽
領域にはいります。つまり、Hcは大きく
高磁場
シフトすると予想されます。
 実際の測定は実は容易ではなく(^^;、というのはこの kekulene 非常に溶解性が悪いため、1H-NMRの測定は力ずくで、
1,3,5-trichlorobenzene-d3
の飽和溶液、215℃で50000回
積算
を強いられています。得られたピークは、
δ
7.94, 8.37, 10.45 に 2:1:1 の強度比で、合成
中間体
のNMRデータとの比較から、順に、Ha, Hb, Hcと帰属されました。大きく高磁場シフトしたシグナルが存在しないことから、kekuleneの構造はベンゼンノイド型であると結論されました。実際には、Cのようなフェナントレン構造の寄与が大きいと予想されています。

 最後になりましたが、この合成は、テトラヒドロジベンゾアントラセン誘導体を二分子
カップリング
し、光酸化、脱水素によって行われました。
収率
はまずまずですけど、各
中間体
ともほとんど溶媒に溶けず、反応には苦心しています。ちなみに、kekulene 分子はC48H24で分子量は600ちょうど。緑黄色微細結晶で融点は620℃以上、500℃/10-3
torr

昇華
するそうです。溶解性は、1-methylnaphthaleneに沸点(245℃)で10mg/350mL、1,2,4-trichlorobenzeneに沸点(214℃)で1mg/100mLです。また、
MS
では異常に
フラグメント
が少なく、
分子イオン
(100%)の他には
m/z
300(43%), 200(7%)にそれぞれ
二価、三価イオン
がみられるのみだそうです。さもありなんですね。
 ref.: F.Diederich and H.A.Staab, Angew.Chem.Int.Ed.Engl., 17, 372 (1978).
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:20:42 | 显示全部楼层
第14話:「プラチナのネックレス」

 June bride にはぴったりですね。お、シンデレラ、急がねば(笑)。
 というわけで、第14話です。
 molecular necklace(MN)は、要するに
位相結合
した分子の輪なのですが、
catenane
とは違ってひとつの大きな輪に小さな輪が3個以上はまりこんだ形の分子です(catenaneについては、
おもしろ化合物第5話「できた五輪マーク」
参照)。catenaneは基本的に直鎖の連鎖なので、MNはその変化形ではありますが、
分枝
catenaneなどというのも最近はありますからそれほど厳密な区別ではありません。molecular necklaceでは、全環数をnとすると、[n]MNと表記します。今回のは[4]MNの合成です。
 で、今回の分子ネックレスですが、ユニットがA、B、Cと3種からなっていて、Aはcucurbiturilという、環状
ウレア

縮環
体みたいのが
メチレン
橋を介して6単位大環状に巻いた分子、Bは
ピリジン
2個をアルカンジアミン鎖でつないだ鎖状分子、Cは白金のエチレンジアミン
錯体
(硝酸塩)です。これらを水中で
等モル
ずつ混合し、24時間
還流
加熱すると、なんと90%の
収率
でA、B、C3分子ずつが結合したネックレス(AをすりぬけているBの糸をCの留め金で結んだ三角形)が合成できました。BにAが巻きついたものが、Aどうしの相互作用で引き合って配置し、Cのところで
閉環
するということのようです。

 self-assemblyというのが最近のはやりで、catenane類合成には大昔は確率法で、あなたまかせの超低収率でしかつくれなかったのが、いまじゃ自動的に配向して高収率でこういう分子がつくれるようになっています。しかし90%とは驚きですね。できたからどうってこともないんですけど(^^;、要所にプラチナを配したネックレスなんざ洒落たものですね(^^)。
 ref. D.Whang, K.-M.Park, J.Heo, P.Ashton and K.Kim, J. Am. Chem. Soc.,1998, 120, 4899-4900.
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 楼主| 发表于 2006-10-25 20:21:05 | 显示全部楼层
第15話:「からくり分子ブルバレン」

 今回は、たぶんご存じの方も多いと思われるブルバレンの話です。おもしろ化合物の代表格といってもいいほどの大物ですが、テキスト文字でうまく書きにくくてあとわましになってました(^^;。
 
Cope転位
反応というのがあります。一般名では[3,3]
シグマトロピー転位
というのでしょうが、要するに1,5-シクロヘキサジエンの3,4位間の結合が切断と同時に1,6位間に新たな結合が形成され、それにともなって二重結合が隣に移動するというものです。電子の動きから考えると、電子対がひとつおきに隣へ移動するだけの反応で、結果的に二重結合は移動、単結合は切断や形成がおきるわけですね。
 1,5-ヘキサジエンそのものの場合は、生成物はやはり同じ1,5-ヘキサジエンになりますから、反応したんだかしないんだかわからないようなものですが(^^;、炭素に番号をふるとちゃんと
転位
反応がおきているのがわかります。

 で、この反応が可逆的に速く進行すると、出発物と生成物は平衡になって区別できなくなります。すなわちC-1,C-3,C-4,C-6は
等価
になります。
NMR
では炭素も水素も2種類(C-1,3,4,6の組とC-2,5の組)しかなくなってしまうわけです。
 ここまででもなかなか面白いんですが、次にヘキサジエンの開いた端(C-1,C-6間)を
メチレン
で橋架けして結んだ形を考えてみます。左右対称でないと等価になりませんから、同時にC-3,C-4間にも同じ橋架けをしておきます。できた分子が次の
ホモ
トロピリデンです。図のC-4とC-8が新しく付加されたメチレンで全体はC8H10となります。

 この分子も同じように速い速度でCope転位を起こして平衡になると、C-1,C-3,C-5,C-7が等価になります。
 次に三次元展開をします(^^;。ホモトロピリデンの構造をよく見ると、
シクロプロパン
環の三角形の2個の炭素と反対端の炭素を2本のエチレン鎖(-CH=CH-)でつないだ形であることにお気づきでしょうか。三角形の残った炭素と端の炭素をもうひとつのエチレン鎖でつないでやれば、
三回対称
のかご型の立体分子になります。それがブルバレンです。

 このブルバレンが同じようにCope転位反応をするとどうなるでしょう。番号をふって考えてみると、ホモトロピリデンのときと同じにC-1,C-7間が切断し、同時にC-3,C-5間に結合が生成すると図の右側の構造になります。

 ここで、分子は三回対称構造ですから、各炭素(水素)の等価性をみてみると、末端の炭素以外はそれぞれ3個ずつの等価な組にわかれます。転位反応が十分速く進行し、出発構造と生成構造間が区別できなくなれば、両側の構造の等式が同時に成り立つことになりますから、結局、すべての炭素が等号で結ばれてしまいました(^^)。これはブルバレンC10H10のすべての炭素、すべての水素は等価であるということを表しています。事実、1H-NMRスペクトルでは十分温度が高ければ(100℃)、δ4.2ppmにシグナルが1本しか観測されないことがわかっています。
 なんかだまされたみたいに不思議な話ですね。ブルバレンは分子が対称なために、常に起こりうるCope転位反応が三通り存在し、それが等しい確率で起きます。最初の図でいうと上記のほか、C-1,C-8切断、C-3,C-10形成の反応と、C-7,C-8切断、C-5,C-10形成の反応が同時に起こります。それぞれの生成物もやはり三通りの転位を起こしますから、つまりホモトロピリデンのような単純に両側の構造をいったりきたりではなく、結合の切断形成が複雑に連なってどんどん新しい構造(といっても分子自体は常に同じブルバレンなわけですが(^^;)に変換されていくために、結局すべてが等価になってしまうのです。
 ref. G. Schroeder, Angew.Chem.Int.Ed.Engl., 2, 481 (1963)
 ほんと、おもしろ化合物っておもしろいですね(笑)。
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