学校（シナリオ）

燃烧孤独

校長：ハイ

�井：お呼びですか。\

校長：�井先生、あんた撙�いいですよ。内示が来たんですがねえ、墨田区の横川学校。全く問題の無いいい学校です。向こうの校長先生も是非と言ってるそうです。お宅からの通勤距離も短いしね。

�井：異動の話ですか。断りします。\

校長：まあ、お座りください。

�井：ハイ\

校長：いつも申し上げてる事ですが、�井先生の夜間中学校にかける情熱、生徒からの信頼、それはよく分かります。大変ありがたい。しかし人事の交流は教育現場の全体的見地からすれば必要な事なんですよ。あなたのようなベテランが一つの学校に十年以上止まるというのは、全体から見ればマイナスですからね。

�井：校長先生、私、あの、タヌキというあだ名があるんですよ。これは同じ学校に十年二十年いますと、これが立派な古狸になりたいんです。まあ、昼間の中学校と違いまして、夜間の生徒ですね、あの、母校も懐かしいんですよ。恋しいんですよ。だから卒業して五年十年経ちましても、この、フラーと訪ねてきたりするわけですよ。その時にですね、知っている教師が一人もいないとこれ、可哀そうじゃないですか。

校長；分かってます。よく分かっています。だからこそ�井先生には一昨年と去年と二回の例外的措置でよって、この学校にとどまってもらったんですよ。ですけれども、これ以上例外を認めるわけには．．．

�井：如何して出来ないのですか。だって、夜間中学校そのものが例外として認められた学校でしょう。これはとっても人間的な行政だと思いますよ。だとしたらですよ、夜間中学校で働いてる私のような代わりもんぐらいを例外として認めて頂いても良いじゃないでしょうか。決まりどおりの人事だったら、コンピューターに任せしとけばいいですよ、校長。いろいろな例外が認められてこそ、学校は教育的人間的な場になるんじゃないでしょうか。

校長：あんたの教育論を伺う為に来てもらったんじゃありません。それ、私も教育者としての考え方を持っていますが。今は、校長としての立場で言ってるんです。

�井：なるほど\

校長：ともかく用件は申し上げました。どうもご苦労様。