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Q:信用状統一規則が2007年7月より改訂・実施されましたが、企業としてどういう点に注意したらよいか教えてください(永野相談員回答)
A:改訂信用状統一規則(UCP600-注-)は本年7月1日より、全世界一斉に実施され、従前の信用状統一規則(UCP500)に代替しました。今回は1993年以来14年振りの改訂ということになります。
そこで、UCP600を読んでみますと、銀行自身乃至は銀行間で必要な条文が結構あります。これらの条文については、必要があれば、銀行に聞くとして、ここでは、利用者(信用状発行依頼人乃至は受益者)の立場からUCP600の主な留意点をご参考までに挙げてみました。これを機会に一度UCP600を通読されることを期待します。
以下、条文順に説明しましょう。より詳しくは、UCP600をご参照ください。
1.第2条 定義
いろいろな用語が定義されていますが、その中で、「指定銀行(NOMINATED BANK)」とは、信用状が利用可能な銀行をいい、“a credit available with any bank”とあった場合は、この“any bank”を指します。その他の定義については、UCP600をご参照願います。
2.第3条 解釈
以下のごとき、時間を表現する用語が「解釈」に登場してきますので、ご注意ください。
①prompt、immediately、as soon as possibleというような用語は、信用状に記載したとしても、無視されますので、記載しない方がよいでしょう。
②on or about又はこれに類似の表現は指定日の5歴日前から5歴日後までを指します。例えば、“on or about Aug.15”といえば、「Aug.10からAug.20まで(両日とも含む)」となります。
③船積期間に関して、“to”、“until”、“till”、“from” 及び“between” は後続する日を含み、“before”及び“after”の場合は、後続する日は除外します。
④支払期日に関して、“from”及び“after”は後続する日は除外されます。
⑤信用状は全てIRREVOCABLE(取消不能)と規定されましたので、IRREVOCABLEと規定する必要はなくなりました。
3.第4条 信用状と契約
独立抽象性の原則がここに出てきます。今回多少用語が変っていますが、主旨は変っていません。要約すると、以下の通りです。
「信用状は契約とは別個の取引・・たとえ契約への何らかの言及が信用状に含まれている場合であっても、銀行はこのような取引とは、無関係であり、又、このような契約に何ら拘束されない。」
4.第5条 書類と物品、サービスまたは履行
書類取引の原則がここに規定されています。こちらも多少用語が変ってきていますが、主旨は変りません。要約は以下の通りです。
「銀行は書類を取扱うのであって、その書類が関係する物品、サービス又は履行(PERFORMANCE)を取扱うのではない。」
5.第10条 条件変更
一定期間内に受益者が拒否しなければ、アメンドは有効になるという主旨の規定は無視されることになりました。この点、受益者の立場が擁護されました。
6.第11条 テレトランスミッションによる信用状・・
AUTHENTICATEDされていれば、後続のMAIL CONFIRMATIONは無視されると規定されました。従って、AUTHENTICATED TELETRANSMISSIONを入手すれば、これに基づいて、船積書類を作成すればよいことになりますが、AUTHENTICATEDされているかどうかよくチェックする必要があります。自信のない場合は、この点を通知銀行に確認すべきでしょう。
7.第14条 書類点検の標準
1)b項
銀行によるUNPAID等の異議申立て期間が従来の7銀行営業日から今回5銀行営業日に短縮されました。2日間短縮されましたので、銀行が発行依頼人と連絡が取れないケースが増えると予想されます。その結果、銀行のみの判断でUNPAIDしてくる可能性があります。従って、輸出の場合、UNPAIDされたからといって、それが100%輸入者のUNPAIDとは限りませんので、とにかく輸入者と連絡を取ることが大切です。
2)c項
本項では、原本を含む運送書類の銀行に対する提示は、船積日(BL DATE)後21歴日以内で、かつ、信用状の有効期限内でなければならないと定められています。しかし、21歴日以内では遅過ぎますので、BL DATE後15歴日(乃至は10歴日)以内に、銀行に提示すべき旨、信用状に規定すべきでしょう。
3)h項
信用状がある条件を含んでいるが、どの書類にこの条件を規定すべきかが規定されていないとき、この条件は無視されます。従って、輸出の場合、このような条件は削除するよう申し込むべきでしょうし、輸入の場合はこのような条件を入れないようにご注意願います。
4)j項
発行依頼人と受益者の住所は信用状と合致する必要はなく、信用状に記載の同じ国であればよいとされています。但し、運送書類における荷受人(consignee)乃至はnotify partyの場合は信用状の規定通りに記載せねばなりません。
8.第18条 商業送り状
商業送り状は、信用状の通貨と同一通貨で作成されなければならず、署名される必要はないとされています。
9.第28条 保険書類および担保範囲
1)e項
保険書類の日付はBL DATEより遅くないもの・・とされていますので、ご注意ください。
2)f項
保険金額は最低でもCIF乃至はCIP価額の110%でなければならないとされています。
10.第30条 信用状金額、数量および単価の許容範囲
1)a項
About又はapproximatelyは、金額、数量又は単価に関して、10%を超えない過不足を容認しているものと解釈されます。
2)b項
信用状が包装単位数を定めていないこと、かつ、信用状金額を超えないことを条件として、物品数量の5%を超えない過不足を容認されています。
11.第37条 指図された当事者
「受益者への通知が通知銀行・・によって、その銀行の手数料が受領されることを条件としている旨・・規定すべきではない」と定められていますので、通知を受けたからといって手数料を取られることはありません。
なお、本レポートの作成時点では、UCP600の解説書であるCOMMENTARY及びISBP (INTERNATIONAL STANDARD BANKING PRACTICE:国際標準銀行実務)は、まだ国際商業会議所日本委員会より刊行されておりません。従って、これらの書籍が刊行され、留意点があった場合は、更に情報提供する予定です。
注:UCP600とは、正式にはUniform Customs And Practice For Documentary Credits, 2007 Revision, ICC Publication No.600といい、国際商業会議所(ICC)日本委員会から刊行されています。 |
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