【ストーリー】
心優しい藤原夫妻のもとに引き取られた“夏目貴志”は、妖(あやかし)から追われる日々を過ごしていた。周りから気づかれないように、逃げ回る日々を過ごしていた“貴志”。ある日彼は、神社に逃げ込んだ際にうっかり祠(ほこら)の周りに貼られていたしめ縄を切ってしまう。すると、そこから出てきたのは招き猫の姿をした妖だった。
“貴志”は、“斑(まだら)”と名乗るその妖から、他の妖たちが“貴志”を祖母の“夏目レイコ”と勘違いしており、名前を返してもらいたがっていると告げられる。“レイコ”の遺品の中には、確かに「友人帳」という名の帳面があり、なにやら文字のようなものが書かれている。
自分のように人間から嫌われた“レイコ”。その寂しさから妖たちに勝負を挑み、子分の証として名前を友人帳に書き連ねたという。“貴志”には、“レイコ”の気持ちがわかるような気がした。名前を返してやろう。“貴志”は、なぜだかそうしなければならないような気がした。そのことが身寄りのいない自分と祖母をつなぐ縁に思えたのかもしれない。
“貴志”は、自分を襲ってきた“斑”に、死んだら友人帳を渡す代わりに、名前を返すのに協力してほしいと説得する。呆れながらもそれを聞き入れる“斑”。
その妖のことを思いながら友人帳のページをめくる。すると自動的に名前が選び出された。“貴志”がそれをくわえて息を吹きかけると、文字が妖のもとへと戻っていく。すると紙をくわえることで、同時に妖の気持ちも流れ込んでくる。
(自分を子分にしたくせに、名前を呼ばない“レイコ”。もう寂しくはないのかい?)
“貴志”は妖の心を知った。妖にも人間にも心がある。“貴志”は、妖たちと向き合っていくことを決めるのだった。 |