第四章 「組織」としての企業[/SIZE][/ALIGN]
1.企業と官僚制
現代大企業は官僚制として組織されている。なんらかの目的を達成しようとする行為が、現場中心で各メンバーの計画と自己統制によって行われる段階では、官僚制による現場の支配は成立しない。現場における諸行為が事務所による計画・組織・命令・統制・調整によって遂行される必要が大きくなるにしたがって、官僚制は成立・発展する。官僚制は近代の機能的な組織と管理の一般的な特徴を示すものである。
官僚制は目的の合理的達成が求められるところ、大量の業務の迅速かつ継続的な遂行が求められるところに生まれてくる。現代では人間の社会的活動のあらゆる分野で官僚制が成立・深化・拡大している。現代大企業は官僚制の典型とされている。
官僚制がひとり行政の組織に存在している限り、社会は急激な変貌を遂げることはない。生産の分野に官僚制が成立すると社会が変わってしまう。官僚制は大量生産の容易な生産財生産部門に成立し、最終消費財生産部門に及ぶ。大企業と原材料・部品の取引関係にある中小企業や消費者も官僚制の支配下に組み込まれる。企業における官僚制が現場や市場を支配・管理するための重要な手段はマーケティングとイノベション出ある。
官僚制による現場の支配・管理は官僚制的組織を中核として行われる。官僚的組織とは、①規則中心で動き、②階層的な管理体制を伴った、③専門化されたピラミット型の組織である。その特徴は以下の点を挙げられる。
①規則の基づく権限の行使と職務遂行。職務・権限を明確化にする。
②非人格的な支配関係
③文書による命令・伝達・職務遂行
④専門分化された職務。専門的訓練、資格制度、試験制度を実施し、適材適所を求める。
⑤公私の峻別。客観的に物事を処理し、人の主観性を抹殺する。
⑥進級制に基づく権限のヒエラルキー(Hierarchy)。階層性と任命制が取られる。
⑦職務遂行手段からの個人の分離。
ウェーバーは職務を遂行するため、官僚制組織が最も正確性・迅速性・継続性・統一性・慎重性・明確性・客観性を持っていると論じている。
官僚制は官僚主義=非能率性や硬直性というマイナスの側面も持っている。これは官僚制の逆機能性と呼ばれている。また、官僚制において合理性・機能性を追求すればするほど人間性を仰圧する側面が耐え難くなる。抑圧(よくあつ)性は官僚制の根本問題であり、官僚制の機能性と仰圧性の矛盾をいかに解決するかは現代組織論・管理論の課題である。
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