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経済効果「379億円」 好機生かす姿勢必要
サミット会場周辺に設置された土谷特殊農機具製作所のアイスシェルター。側面には「氷だって エコエネルギー」の文字
四月にドイツ・フランクフルトで開かれた国際会議誘致の見本市。積極的にサミットをPRする札幌市のブースには「詳しい受け入れ態勢を知りたい」「環境に配慮した会議は開けるか」などの問い合わせが相次いだ。
7割「影響なし」
国際会議などの誘致を進める札幌国際プラザの根子俊彦(ねことしひこ)総務企画部長は「欧州で日本といえば東京、京都しか知られていなかった。サミットのPR効果は絶大だ」と驚きを隠さない。
北海道経済連合会が昨年発表した北海道洞爺湖サミットの経済効果は三百七十九億円。北海道日本ハムファイターズが昨年一年間行った道内での主催試合の一.八倍に当たる。
サミット開催費など直接的効果はこのうち三割強の百十八億円。それよりも大きいのは、サミットも受け入れられる体制が整っているとの情報や、北海道や洞爺湖の名前が世界的に知れ渡ることにより観光客や国際会議が増え、来道者の消費が拡大するなどの将来的な効果で、二百六十一億円との計算だ。
道経連は「これでもかなり控えめな見方。取り組み次第で経済効果はさらに増えるだろう」と期待する。しかし、道内企業全体としては、サミットへの期待感は乏しい。北海道新聞情報研究所が三月に行った経済動向調査で「サミットは会社の事業に好影響をもたらすか」との問いに「大いにもたらす」と答えたのは百六十二社中わずか三社。「業績に影響なし」との回答が七割弱を占めた。
多くの企業に共通するのは「単なる国際会議で経済効果とは関係ない」という冷めた思いだ。「規制強化で宿泊予約に悪影響が出ている」(道央圏のホテル)などと、逆にマイナスの影響を懸念する声まである。北海道商工会議所連合会の高向巌会頭は「またとないこのチャンスを各企業がいかに生かせるかどうかが問われる」と力を込める。
氷冷房売り込む
わずかだが、チャンスを生かそうと積極的に動く企業もある。
北海道の冬の冷気でつくった氷を真夏の冷房、冷蔵に利用する「アイスシェルター」の開発、普及に二十年以上前から取り組んでいる土谷特殊農機具製作所(帯広)は、サミット会場に近い道の駅付近など三カ所にシェルターを設置。サミットをきっかけに来道する国内外の研究者や企業関係者らにPRし、販路開拓を目指す。
土谷紀明社長は「道外、海外への売り込みを考えるなら、世界中の目が集まるサミットは絶好のチャンスだ」と力を込める。
サミットを、低迷が続く道内景気の起爆剤にできるのか。サミット開催まであと十九日。
(2008/06/18) 北海道新聞 『サミットと北海道』 |