死者最悪1万2千人…都心直下型地震の被害想定
都心の直下で大地震が発生した場合、死者は最悪で阪神大震災の倍近い約1万2000人に達し、約85万棟の建物が全壊、焼失する可能性があることが15日、政府の中央防災会議「首都直下地震対策専門調査会」が公表した被害想定の中間報告で判明した。
同調査会は、首都圏で発生する可能性がある18通りの地震について、死者数などの人的被害、建物崩壊など物的被害がどの程度発生するかを初めて詳細に算出した。今年度中にも、経済的損失も含めた最終的な被害想定をまとめ、政府に対策を提言する。
報告では、想定した18の地震のうち、都心付近を震源とする「東京湾北部地震」「都心東部直下地震」「都心西部直下地震」の3地震について、地震が起こった際の風速を、〈1〉阪神大震災と同じ3メートル〈2〉関東大震災と同じ15メートル――と2通り想定。さらに、それぞれのパターンについて、「冬の午前5時」「秋の午前8時」「夏の正午」「冬の午後6時」の4つの時間帯に分けて、詳細な被害を算出した。
死者が約1万2000人にのぼるとみられるのは、マグニチュード(M)6・9の「都心西部直下地震」で、「冬の午後6時、風速15メートル」で発生した場合。震源は、東京・西新宿の都庁直下と想定。都内の広範囲で震度6強となり、JR中央線沿線の中野区、杉並区などで密集した老朽木造住宅が火災によって焼失するなど大きな被害が予想される。
近い将来発生が懸念されている「東京湾北部地震」(M7・3)については、震源を東京・江東区の沿岸と設定した。死者が最も多いケースは、やはり「冬の午後6時、風速15メートル」で、約1万1000人が犠牲となる。
建物については、揺れによる全壊が約15万棟、液状化による全壊約3万3000棟、火災による焼失が約65万棟など、計約85万棟が全壊や焼失する恐れがある。この死者のうち約4100人が、独り暮らしの高齢者や障害者、乳幼児など、地震の際に助けが必要な人々となる見込みだ。
会社員や学生らが自宅に帰れなくなる「帰宅困難者」については、「東京湾北部地震」など都心付近を震源とする3地震が、「夏の正午」に発生した場合には、東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県で650万人にも達しそうだという。
3地震以外で、深刻な被害が予想されるのは、M7以上の地震が懸念される「立川断層帯地震」「神縄・国府津―松田断層帯地震」「三浦断層群地震」。震度6強以上の激しい揺れに見舞われる地域に、複数の中規模都市(人口20万―30万人以上)が含まれるため、多数の死者が出る見込みだ。 |