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文学作品における派生形容詞「~っぽい」
藍っぽい
○秩父銘撰の藍ぽい羽織を着て、下は瓦斯絲らしい。[尾崎紅葉・多情多恨・前編三六⑰]
青っぽい
○青ッぽいカンテラの光が揺れるたびにゴミゴミとした棚の一部や脛の長い防水ゴム靴や支柱に掛けてあるドサや袢天、それに行李などの一部がチラ、チラッと光って消えた。[小林多喜二『蟹工船』 二四⑪]
○演説者は、青っぽいくすんだ色のセルに、黄色の角帯をキチンと締めた、風采のよい、見たところ相当教養もありそうな四十男であった。[江戸川乱歩『白昼夢』一一⑧]
○少し青っぽくなるかもしれないけど。[干刈あがた「黄色い髪」六八⑮]
○鏡で見ると、頬の腫れは引いていたが、直美の言ったとおり青っぽくなっていた。[干刈あがた「黄色い髪」七二②]
赤っぽい
○「赤っぽい、ひげの長いやつだろう」[安部公房『砂の女』 二七⑧]
○寒いのに、コ-トは手に持ち、ジ-パンに赤っぽいセ-タ-着て、こっちがお葬式の準備してるのに、うろちょろして邪魔だったんだよ。[加賀乙彦『湿原』下・星一一九⑯]
○田舎だけではない、フェズのような大都会でも、旧市街には赤っぽい灯りがポチポチ点くだけなんだ。[小川国夫『悲しみの港』68]
赤茶っぽい
○史子に脱色の仕方を教えてくれた一人である彼女の髪も、明かりを吸って赤茶っぽく透けて見える。[干刈あがた「黄色い髪」二五六⑯]
垢っぽい〔〕
飽きっぽい
○飽きっぽい彼は、三日目あたりになると、もう押入れの寝台にも興味がなくなって、所在なさに、そこの壁や、寝ながら手の届く天井板に、落書きなどをしていましたが、ふと気がつくと、ちょうど頭の上の一枚の天井板が、釘を打ち忘れたのか、なんだかフカフカと動くようなのです。 [江戸川乱歩『屋根裏の散歩者』一五二⑧]
○・・・・・・雪森厚夫という男の性格は、表面上は人当りがよく、ちょっと理屈っぽいところが落ち着いて見え、初めは善人で学校の先生みたいに思われて信用されるのですが、元来飽きっぽく気が変りやすいのです。[加賀乙彦『湿原』上・闇 三九二⑱]
悪っぽい〔〕
浅っぽい[徳富蘆花「思出の記]
汗っぽい
○家の中にいても隣の家の話し声がどうかすると聞こえたりする。それは丁度動物同士肌をすり合わせる汗っぽい感じに似ていた。[大庭みな子『がらくた博物館』]
あだけっぽい〔〕
あだっぽい
○その人工の漆拭激稀⑿·扭辘释啢沃肖歉·ⅳ盲皮い啤ⅳ蓼磷咏悚丹螭蚊妞坤沥驅g際よりもあだっぽくみせてしまう。[宮本輝『道頓堀川』五④]
仇っぽい
「何だかまだ芝居に居るような気がして相済まないけど」とお糸さんが煙草を吸付けてフウと烟を吹きながら、「伯母さんの小言が台詞に聞えたり何かして、どんなに可笑しいでしょう」と微笑したところは、美しいというよりは仇っぽくて、男殺しというのはこういう人を謂うのかと思われた。[二葉亭四迷『平凡』一三七③]
婀娜っぽい
○ここでは酒を般若湯という。然もそうした家の主人はというと、まだ二十二三歳の婀娜っぽい美人なのだから驚かされる。――〔森銑三『明治東京逸聞史』趣味四一・六〕
厚っぽい〔〕
あぶらっぽい
○あたりにはサンダル、眼鏡、茶碗、箸などがころがり、あぶらっぽいような、淫らなような匂いがねっとりとよどんでいた。[開高健『夏の闇』一一六⑯]
脂っぽい
○私たちは毎日顔をあわせ、酒場の椅子に埋没して酒をすすりつつ、道をいく女たちの眼や腰を眺めて放埒な冗談をとばして脂っぽく笑ってばかりいた。[開高健『夏の闇』 八六⑨]
○ひねったり、つねったり、集めたり、こねたりして頬をのぞくと、中年男の顔は脂っぽくて蒼白いもやもやである。[開高健『夏の闇』 九八⑪]
○ショ-ウィンドウというショ-ウィンドウは淵の暗さがあらわれるまで磨きこまれ、その奥で脂っぽい頬が閃いたり、ゆっくりと影がうごいたりする。[開高健『夏の闇』九三⑤]
○私は脂っぽい、大きな袋に封じこめられ、顔をねっとりした脂と汗で蔽われてソファかヤクの皮にころがっている。[開高健『夏の闇』 九七⑬]
○タバコの吸殻などが刺さったりしている脂っぽい肉や魚の冷めきった残飯からたちのぼってくるものであるはずだ。[開高健『夏の闇』一四六⑪]
○担架は血と汗と垢でずず盲荬猡辍⒑癫激趣いΔ瑜辘悉筏郡郡耸工い长蓼欷扛铯韦瑜Δ使鉀gで光っている。[開高健『怪物と爪楊枝』二四一⑧]
荒っぽい
○結婚しょう。どんな大きな悲哀がそのために後からやって来てもよい、荒っぽいほどの大きな歓楽を、生涯に、いちどでいい……[太宰 治『人間失格』一〇五②]
○ごく荒っぽい形でなら、地球の皆さんも成功したようですが、複雑な構造をもった物質をいきなりつくり出す技術は、まだまだ無理なんでしょう。[安部公房『無関係な死』 七二⑧]
暴つぽい
○先刻〔さつき〕番頭さんに云ふ通り、八右衛門と云ふ荷主が山口屋へ爲換〔かわせ〕を取りに往くと云ふから、少しでもさう云ふ事を聞いちやア打捨〔うつちやつ〕ちやア置けねいから、暴〔あら〕つぽい仕事だが頭で突いて毒を服〔の〕ませ、生空〔なまぞら〕を遣〔や〕つて此方〔こつち〕の店へ來た所が、山出しの多助の畜生に見顯はされた上からは、私〔わしや〕ア繩にかゝつて出るのは承知サ。[三遊亭圓朝『鹽原多助一代記』一五〇上⑲]
あわれっぽい
○すなわち、世之介の質問に答えた飛子のアワレっぽい身の上話もデタラメの作り話なら、それに対する世之介の、いや実は自分も金性なのだ、という返答も(遊びの席での、とっさの、つき合いの)嘘なのではなかろうか?[後藤明生『吉野大夫』一二五⑮]
哀れっぽい
○家全体が、むりやり捩じまげられたような、哀れっぽい悲鳴をあげた。[安部公房『砂の女』 五一②]
○仔犬は、つれて来られるまえから、かなり乱暴なあつかいをうけていたらしく、最初からいかにも哀れっぽい悲鳴をあげていた。[安部公房『無関係な死』一四五④]
○二人とも繰り返して読んだ。ひどく哀れっぽいゆう子である。[幸田 文『きもの』三二八⑬]
憐れっぽい
○「あんな憐れっぽい事をお言いだがね、あれでもとはずいぶん酷かったんだよ」[夏目漱石『こころ』一四〇⑫]
いがらっぽい [上司小剣「石川五右衛門の生立」]
○トウモロコシ葉からつくった紙で巻いた、いがらっぽい塩漬の~のタバコをふかしながらそれらを眺めていると、さめたばかりなのにまたうとうとしてくる。[開高健『夏の闇』六⑭]
○けれどいま、ラムの甘い匂いとタバコのいがらっぽい霧のなかでは、別れた日の遠景が小さく見えるだけである。[開高健『夏の闇』九⑯]
○久瀬は汗にまみれて蚊帳のなかによこたわり、いがらっぽい~の兵隊タバコに火をつけた。[開高健『岸辺の祭り』九二⑧]
○この街道は広大なメコン・デルタとサイゴンをつなぐ大動脈で、交通量がもっとも多く、朝から夜まで、どの時刻にもいがらっぽい排気ガスと人声にみたされている。[開高健『怪物と爪柳枝』二三六⑨]
○私はいがらっぽい兵隊タバコをふかしながら感動していた。[開高健『輝ける闇』 六九⑯]
○いがらっぽい海水のなかを泳いでいるさなかによく冷えた真水をもらったようだった。[開高 健『花終わる闇』五五⑦]
意地っぽい[]
いたずらっぽい
○彼女はいたずらっぽく微笑むと、あいつとふたりっきりになりたくないからだと言いました。[宮本 輝『蹇悺弧∷囊 |
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