雪国（自译）8

华南虎

雪国（自译）8

    可是，走到旅店的大门口，岛村抬头看到了那满目新绿，葱郁迷蒙的后山，便像是受到了某种召唤一般，冒冒失失地跑了过去。
    他一路往山上跑，还莫名其妙地兀自笑个不停。
    等他觉得有点累了，又提溜一转身，撩起单衣的后摆，一撒腿冲下山去。脚边惊飞出两只黄色的蝴蝶。
    两只蝴蝶纠缠蹁跹，不一会儿就高过了山顶，随着黄色渐渐变成了白色，就远去不见了。
    “你怎么了？”
    只见先前的那位姑娘此刻正在杉树林的树荫里站着。
    “笑得真快活呀。”
    “那事儿，不干了。”岛村又莫名其妙地笑了起来。“不干了。”
    “是吗？”
    姑娘说着，忽地一转身，缓步走入了杉树林。岛村也默不作声地跟着走了进去。
树林里有一个神社。
姑娘在一只长满了青苔的狛犬（译注：放在日本神社、寺庙前的状似狮子的石兽，用以驱除魔鬼，守护神域。据说是古代从高丽国传入日本的。）旁平坦的岩石上坐了下来。
     “这儿最凉快了。三伏天也凉风习习的。”
    “你们这儿的艺妓，都是那副模样的吗？”
    “差不离儿吧。不过，年长的里边也有好看的。”姑娘低下头，冷冷地说道。她脖子上淡淡地映上了一抹杉树的暗绿色。
    岛村抬头朝树梢望去。
    “算了。不找了。憋着的一股劲儿全散了。唉，想想也真是好笑。”
    那些杉树都很高，高到不反手撑在岩石上挺起胸来就看不到树顶，并且都长得笔挺，像一根根直线似的射向天空，而天空又被其浓绿发黑的树叶密密层层地遮住了。抬头仰望时，会发现这个杉树的世界里寂静无声，静到能够听到自己耳朵里嗡嗡的空鸣声。岛村背靠着的那颗杉树，是其中最老的一颗，不知为何它朝北一侧的树枝从上到下全都枯死了，落光了树叶的枝杈如倒插的尖桩似的嵌在树干上，就像是天神的兵器一般，看着怪瘆人的。
    “说来也是我自己搞错了。从山上下来后一看到你，我就贸然觉得这里的艺妓真漂亮。”岛村笑道。到现在他才发现，当初自己之所以会觉能够轻松发泄掉山中七天所积攒下的精力，其实也是由于头一个看到的就是这个洁净无比的姑娘之故。
    姑娘怔怔地眺望着在夕阳下闪闪发亮的远处的河流，些闲得发慌。
  “哦，对了。我竟然忘了干嘛来了。你一定想抽烟了吧。”她尽量用轻松的语调说道，“刚才我回到你房间去一看，发现你已经不在了。心想你在干嘛呢，却看到你卯足了劲一个人在爬山呢。是从窗子里看到的。真是搞不懂你。发现你忘了带香烟了，所以就给你送来了。”
    说着，就从和服袖子里取出了香烟，并给他点上了火柴。
    “真是对不住那一位啊。”
    “这有什么呀?什么时候让她走，还不是听凭客人的吩咐吗？”
    耳边传来了潺潺流水之声。由于河里石头很多，流水声也显得那么的圆润、悦耳。透过衫树林的缝隙，可以看到林子对面的山上皱襞处已经暗下来了。
“不找个跟你不相上下的，以后见到你，你也会觉得遗憾的吧？”
  “关我屁事！想不到你还挺会找歪理的。”这话，姑娘虽然是板起脸来用嘲讽的口吻说的，可他们之间两相沟通的心意，却已经和叫艺妓之前完全不同了。
    当岛村彻底明白自己从一开始就是想要这个姑娘，却又像往常一样大兜圈子后，就讨厌起自己来了，与此同时，姑娘在他眼里也就越发的动人了。他发现，在杉树林下招呼过他之后，着姑娘看起来竟是如此的清纯脱俗，楚楚动人。
    她那细而高的鼻子虽然略显单薄，可下面的嘴唇却相当的丰润且富有弹性，即便是不说话的时候也好像是在微微地蠕动着的。这样的嘴唇如果有皱纹或色彩不好的话，就给人以不洁之感，可她的嘴唇却没有这样的毛病，可谓是芳泽莹莹。眼角不翘不塌，眼睛好像是故意画成一直线似的不那么自然，却被两条微微下垂的短毛弯眉毛恰到好处地覆盖着。多少有点中部突出的圆脸轮廓并不怎么出众，可她的皮肤异常细腻，就如同在雪白的陶器上涂上了一抹淡红一般。脖根处还相当的瘦弱，因此，她给人的印象首先是异常的洁净而不是美人或其他的什么感觉。
    不过，作为当过御酌的人来说，她的胸脯稍嫌过大。
    “啊呀，不知不觉的招了这么多的蠓虫了。”姑娘抖落一下衣服下摆便站起了身来。
    其实，老在如此静谧的环境里呆着，他们俩也一定会觉得无聊、扫兴的。

原文：
　しかし、島村は宿の玄関で若葉の匂いの強い裏山を見上げると、それに誘われるように荒っぽく登って行った。
　なにがおかしいのか、一人で笑いが止まらなかった。
　ほどよく疲れたところで、くるって振り向きざま浴衣の尻からげして、一散に駆け下りて来ると、足もとから黄蝶が二羽飛び立った。
   蝶はもつれ合いながら、やがて国境の山より高く、黄色が白くなってゆくにつれて、遥かだった。
「どうなすったの」
女が杉林の陰に立っていた。
「うれしそうに笑ってらっしゃるわよ」
「止めたよ」と、島村はまたわけのない笑いがこみ上げて来て、
「止めた」
「そう？」
女はふいとあちらを向くと、杉林のなかへゆっくり入った。彼は黙ってついて行った。
神社であった。
苔のついた狛犬(こまいぬ)の傍の平な岩に女は腰をおろした。
　「ここが一等涼しいの。真夏でも冷たい風がありますわ」
　「ここの芸者って、みなあんなのかね」
　「似たようなものでしょう。年増にはきれいな人がありますわ」と、うつ向いて素気なく言った。その首に杉林の小暗い青が映るようだった。
　 島村は杉の梢を見上げた。
  「もういいよ。体の力がいっぺんに抜けちゃって、おかしいようだよ」
   その杉は岩にうしろ手を突いて胸まで反らないと目の届かぬ高さ、しかも実に一直線に乾が立ち並び、暗い葉が空をふさいでいるので、しいんと静けさが鳴っていた。島村が背を寄せている乾は、なかでも最も年古(としり)りたものだったが、どうしてか北側の枝だけが上まですっかり枯れて、その落ち残った根元は尖った杭を逆立ちに乾へ植え重ねたと見え、なにか恐ろしい神の武器のようであった。
  「僕は思いちがいしてたんだな。山から下りて来て君を初めてみたもんだから、ここの芸者はきれいなんだろうと、うっかり考えてたらしい」と、笑いながら、七日間の山の健康を簡単に洗濯しようと思いついたのも、実は初めにこの清潔な女を見たからだったろうかと、島村は今になって気がついた。
  西日に光る遠い川を女はじっと眺めていた。手持ち無沙汰になった。
「あら忘れてたわ。お煙草でしよう」と、女はつとめて気軽に、
「さっきお部屋へ戻ってみたら、もういらっしゃらないんでしょう。どうなすったかしらと思うと、えらい勢いでお一人山へのぼってらっしゃるんですもの。窓から見えたの。おかしかったわ。お煙草を忘れていらしたらしいから、持って来てあげたんですわ」　　　
　そして彼の煙草を袂から出すとマッチをつけた。
「あの子に気の毒したよ」
「そんなこと、お客さんの随意じゃないの、いつ帰そうと」
　石の多い川の音が円い甘さで聞えて来るばかりだった。杉の間から向うの山襞の陰るのが見えた。
「君とそう見劣りしない女でないと、後で君と会った時心外じゃないか」
「知らないわ。負け惜しみの強い方ね」と、女はむっと嘲るように言ったけれども、芸者を呼ぶ前と全く別な感情が二人の間に通っていた。
　はじめからただこの女がほしいだけだ、それを例によって遠廻りしていたのだと、島村ははっきり知ると、自分が厭になる一方女がよけい美しく見えて来た。杉林の陰で彼を呼んでからの女は、なにかすっと抜けたように涼しい姿だった。
  細く高い鼻が少し寂しいけれども、その下に小さくつぼんだ唇はまことに美しい蛭(ひる)の輪(わ)のように伸び縮みがなめらかで、黙っている時も動いているかのような感じだから、もし皺があったり色が悪かったりすると、不潔に見えるはずだが、そうではなく濡れ光っていた。目尻が上りも下りもせず、わざと真っ直ぐに描いたような眼はどこかおかしいようながら、短い毛の生えつまった下り気味の眉が、それをほどよくつつんでいた。少し中高の円顔はまあ平凡な輪郭だが、白い陶器に薄紅を刷いたような皮膚で、首のつけ根もまだ肉づいていないから、美人というよりもなによりも、清潔だった。
　お酌に出たこともある女にしては、こころもち鳩胸(はとむね)だった。
「ほら、いつの間にかこんなに蚋(ぶゆ)が寄ってきましたわ」と、女は裾を払って立上った。
　このまま静けさのなかにいては、もう二人の顔が所在なげに白けて来るばかりだった。