|
2 十二滝町の更なる転落と羊たち(5)
僕はリュックを背負って五百メートルほどの商店街を端まで歩き旅館を探した。旅館はなかった。商店の三分の一はシャッターを閉ざしていた。時計屋の店先の看板が半分はずれて、ぱたぱたと風に揺れていた。
商店街がぷつんと切れたところに雑草の茂った広い駐車場があり、クリーム色のフェアレディーとスポーツ?タイプの赤いセリカが駐車していた。どちらも新車だった。不思議な気がしたが、その無個性な新しさはがらんとした町の雰囲気に合ってなくもなかった。
商店街の先には殆んど何もなかった。広い道はゆるい坂になって川まで下り、川にぶつかったところでT字形に左右に分かれていた。坂の両脇には平屋建ての小さな木造家屋が並び、ほこりっぽい色をした庭木が空に向けてごつごつとした枝を突き出していた。どの木も何かしら奇妙な枝の払われ方をしていた。どの家の玄関にも大きな石油タンクと揃いの牛乳箱が取り付けられていた。どの屋根にもあきれるくらい高いテレビ?アンテナが立っていた。テレビ?アンテナは町の背後にそびえたつ山なみに挑むように、その銀色の触手(しょくしゅ)を空中にはりめぐらしていた。
「旅館なんて無いんじゃない?」と彼女が心配そうに言った。
「大丈夫だよ。どんな町にも必ず旅館はあるさ」
我々は駅に引き返して駅員に旅館の場所を訊ねた。親子ほど年の違う二人の駅員は死ぬほど退屈していたらしく、おそろしく丁寧に旅館の場所を説明してくれた。
「旅館は二つあるんだ」と年取った方が言った。「ひとつはわりに高くて、ひとつはわりに安い。高い方は道庁の偉いさんが来た時とか、改まった宴会をやる時に使うんだ」
「食事はなかなか良いよ」と若い方が言った。
「もうひとつの方は行商人(ぎょうしょうにん)とか、若い人とか、まあごく普通の人が泊まるね。見ばえは悪いけど、不潔とかそういうんじゃないな。風呂はなかなかのもんだよ」
「でも壁が薄いね」と若い方が言った。
それからひとしきり壁の薄さについての二人の議論がつづいた。
「高い方にしますよ」と僕は言った。封筒の金はまだずいぶん残っていたし、節約しなければならない理由は何もなかった。
若い方の駅員はメモをちぎって旅館までの道を書いてくれた。
「どうもありがとう」と僕は言った。「でも十年前に比べると、ずいぶん町も淋しくなりましたね」
「うん、そうだねえ」と年取った方が言った。「木材工場は今ひとつだし、これといった産業もないし、農業はしりすぼみだし、人口も減っちまったよな」
「なにしろ学校のクラス編成も上手くできねえってたもんな」と若い方がつけ加えた。
「人口はどれくらいなんですか?」
「約七千って言ってるけど、本当はそんなにもいないさ。五千ってとこじゃねえかな」と若い方が言った。
「この線だってさ、あんた、いつなくなるかわかんねえよ。なにせ全国で三位の赤字線だもんな」と年取った方が言った。
これよりさびれた線が二つもあることの方が驚きだったが、僕は礼を言って駅を離れた。
我背着背包走到约五百米长的商业街的末端,寻找旅馆。没有旅馆。商店三分之一已关上门。钟表店店面的广告板有一半掉下来,呼嗒呼嗒被风吹摇动着。
在商业街的尽头有杂草茂盛的停车场,奶色的车和红色跑车停在那里。两辆都是新车。让人不可思议,那无什么个性的车的崭新程度和空旷的镇上气氛并不相对应。
在商业街的尽头几乎什么也没有。宽阔的道路变成缓坡向河走去,到了河边变成T字形向左右分开。在坡道的两侧用木材建造的平房排列着,满是灰尘的庭院中的树冲向天空,长出粗壮的树枝。每一棵树的树枝都有自己奇妙的长法。每家的大门前都放有巨大的石油罐和牛奶箱。每家的屋顶上也都竖有发呆的高高的电视天线。天线向镇后的耸立的山挑战,其银色的上端伸向空中。
“旅馆什么的难道真的没有?”她很担心地说。
“不用担心。什么样的镇上总要有旅馆的。”
我们重新返回到车站向车站人员寻问方在馆的地址。年龄相差很大像父子程度的两名车站工作人员无聊到死的程度,非常详细地耐心地给我们说明了旅馆的地址。
“旅馆有两个。”年纪大的人说。“其中一个较贵,一个较便宜。较贵的一个是道厅的官员们来时或者举行非常隆重的宴会时使用。”
“其伙食非常好。”年轻的人说。
“另一个呢,商人、年轻人或者普通人住。外观看并不好,但并不是那么不干净。洗澡可不错。”
“还有墙壁很薄。”年轻人说。
过了一会儿有关墙壁的薄厚程度二人还在议论。
“那就住较贵的吧。”我说。信封里的钱还剩很多,必须要节约的理由也并不存在。
年轻的车站工作人员从笔记本上撕掉一张纸,画出了去旅馆的道路。
“实在是太感谢了。”我说。“可是和十年前相比,镇上也太可怜了。”
“嗯,是的。”年纪大的人说。“现在只有一个木材工厂,虽这么说却也并没有什么产业,农业每况愈下,人口也在减少。”
“那是当然,学校班级的编班也不太好弄。”年轻人附加了一句。
“人口现在是什么状态?”
“虽说了约有七千人,而实际上并没有那么多,连五千人都不到。”年轻人说。
“因为这个铁路线,你还不知道什么时候撤掉。无论怎么说在全国有三个红线。”年纪大的人说。
和这个相比衰败的线还有两个,让很人吃惊。我表示感谢之后离开了车站。 |
|