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8 風の特殊なとおり道(3)
夕食を済ませたあと、僕は鼠の部屋から「パンの焼き方」という本と一緒にコンラッドの小説を借りてきて、居間のソファーに座ってそれを読んだ。三分の一ばかり読んだところで、鼠がしおりがわりに十センチ四方ほどの新聞の切れはしをはさんでおいたところにぶつかった。日付けはわからなかったが、色の具合から見てそれが比較的新しい新聞であることはわかった。切りとられた記事の内容はローカル情報だった。札幌のあるホテルで高齢化社会を考えるシンポジウムが開かれることになっていたり、旭川の近くで駅伝大会が催されたりしていた。中東危機(きき)についての講演会もあった。そこには鼠の、あるいは僕の興味をひきそうなものは何ひとつなかった。裏側は新聞広告だった。僕はあくびをして本を閉じ、台所でコーヒーの残りを沸かして飲んだ。
久し振りに新聞を読んで、僕は自分がまるまる一週間世界の流れから取り残されていたことにはじめて気づいた。ラジオなければテレビもなく、新聞も雑誌もない。今、この瞬間にも東京は核ミサイルで崩壊(ほうかい)しているのかもしれないし、疫病が下界を覆っているかもしれないのだ。あるいは火星人がオーストラリアを占領したかもしれない。だとしても、僕にはまるで知りようがないのだ。ガレージのランドクルーザーまで行けばカー?ラジオを聞くことはできたが、とくに聞きたいとも思わなかった。知らないで済んでしまうものならとくに知る必要もないわけだし、僕はもう既に必要なだけの心配の種は抱えこんでいるのだ。
しかし僕の中で何かがひっかかっていた。目の前を何かが通り過ぎたのに、考えごとをしていて気づかなかった時のような気分だった。そのくせ網膜には何かが通りすぎたという無意識な記憶が焼きついている……。僕はコーヒー?カップを流しにつっこむと居間にもどり、もう一度新聞の切れはしを手にとって眺めてみた。僕の探していたのはやはりその裏側にあった。
鼠、連絡を乞(こ)う
至急!!
ドルフィン?ホテル406
晚饭结束以后,我从老鼠的房间拿来了一本《面包的烧烤方法》和放在一起的英国小说家Conrad的小说,坐到客厅的沙发上读起来。读到三分之一时看见那里夹着老鼠的书签,是一个从报纸剪下来的十厘米左右的方块纸。虽然不知道具体的日期,但从其颜色上可以看出那是比较新的报纸。所记载的内容是地方消息。在札幌一个宾馆召开的一个高龄化社会研讨会,还有在旭川附近召开的接力长跑会。还有有关中东危机的演讲会。在那里没有吸引老鼠或我的兴趣的任何一样消息。背面是新闻广告。我打哈欠合上书,到厨房把剩的咖啡煮沸喝了。
隔了很久才看到报纸,这才注意到我落到了世界洪流后面已经整整一周的时间了。要广播没有广播要电视没有电视,没有报纸也没有杂志。在这一段时间里东京也许被核弹催毁,疫病液传播到了人间。或者火星人占领了奥大利亚。即便是如此我也并不想知道。到车房的汽车里面也可以听广播,但也并不想听。若不想知道这些而过生活的话,想知道的必要也就不存在。我也已经只是抱着一种非常必要的担心。
但是在我心中还掛有一件什么事呢。在眼前有一件事虽然已经过去,但有一种感觉:当思考事情的时候好象还没那么真正用心。在记忆网膜上已经记录有一件无意识往事。我把咖啡杯放到洗盆之后回到客厅,再一次把从报纸剪下来的方块纸拿在手里看。我所要看的东西还是其背面内容。
老鼠,希望联系
急切!
海豚宾馆 406
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