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16(2)
ユキはテーブルの向かい側からじっと僕を見ていた。何か珍しい生物でも見るみたいに。「でもやってるのね?」
「仕事だから」と僕は言った。それから僕は突然向かいに座っているのが十三かそこらの女の子であることを思い出した。やれやれ俺はいったいこんな小さな女の子を相手に何を言ってるんだろう?「行こう」と僕は言った。「もう夜も遅いし、そのアパートまで送るよ」
スバルに乗ると、ユキがその辺に転がっていたテープを手に取ってカー?ステレオに入れた。僕が作ったオールディーズのテープだった。僕は一人で運転しながらよくそういうのを聴いてるのだ。フォー?トップスの『リーチアウト?アイル?ビ?ゼア』。道路はすいていたから、赤坂まではすぐだった。僕はユキにアパートの場所を訊いた。
「教えたくない」とユキは言った。
「どうして教えたくないんだろう?」と僕は訊ねた。
「まだ帰りたくないから」
「ねえ、もう夜の十時を過ぎてる」と僕は言った。「長いハードな一日だった。犬のように眠りたい」
隣の席からユキはじっと僕の顔を見ていた。僕は前方の路面に目を注いでいたけれど、彼女の視線をずっと左側の頬に感じつづけていた。不思議な視線だった。そこには何の感情も含まれていなかったが、その視線は僕をどきどきさせた。しばらく僕を見つめたあとで、彼女は視線を反対側の窓の外に向けた。
「私、眠くないの。それに今アパートに帰っても一人だし、もう少しドライブしてたい。音楽聴いて」
僕は少し考えた。「あと一時間。それから帰ってぐっすり眠る。それでいい?」
「それでいい」とユキは言った。
僕らは音楽を聴きながら、東京の街をぐるぐると回った。そしてこういうことをしているからどんどん大気が汚染され、オゾン層が破壊され、騒音が増え、人々の神経が苛立ち、地下資源が枯渇するんだと思った。ユキは頭をシートにもたせかけ、何も言わずにぼんやりと夜の街を眺めていた。
「お母さんはカトマンズにいるんだって?」と僕は尋ねてみた。
「そう」彼女はけだるそうに言った。
「じゃあ、戻ってくるまでは一人なんだ」
「箱根に帰ったらお手伝いのおばさんがいるけど」と彼女は言った。
「ふん」と僕は言った。「しょっちゆうこういうことはあるの?」
雪从桌子的对面凝视着我。就像发现了什么珍稀的动物那样。“可是还在做着吗?”
“因为那是工作。”我说。我突然意识到坐在我对面的是一位十三岁的小女孩。哎呀呀,我怎么会把这么小的女孩当做交流的对象呢?“走吧。”我说。“已经很晚了,把你送到那个公寓。”
乘上斯巴鲁之后,雪把扔在旁边的磁带拿到手里放到立体声音响中。那是我转录的磁带。我一个人驾着车时经常听那磁带。是フォートップス的“リーチアウトアイルビゼア”。道路空荡荡,马上就开到了赤坂。我问雪公寓在什么地方?
“不想告诉你。”雪说。
“为什么不想告诉我呢?”我问。
“因为还不想回去。”
“那个,都已经过了晚上十点了。”我说。“这是长时间折腾了的一天。像狗那样想睡了。”
坐在旁边座位上的雪凝视着我的脸。虽然我注视着前方的道路,但能感觉到她的视线盯着我的左脸。不可思议的视线。在那视线里也没有包含什么样的感情,但那视线在不停地注视着我。看了一会儿我之后,她的视线转到了另一侧的窗外。
“我,还不想睡。现在若回到公寓只是一个人,想再兜风。还听音乐。”
我想了一下。“向后推一个小时。然后回来睡觉。可以吗?”
“可以的。”雪说。
我们听着音乐,围着东京的街转。做出这样的事我这样想:在污染大气,破坏臭氧层,增加骚音,让人们的神经焦急,让地下资源枯渴。雪把脑袋靠在座后背上,什么也不说模糊地望着夜晚大街。
“你妈妈在加德满都吗?”我问道。
“是的。”她懒洋洋地说。
“那么,到她回来之前就一个人吗?”
“若回到箱根的话那里有个阿姨能帮忙。”她说。
“是吧。”我说。“常有这样的事会吗?” |
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