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24(10)
「君はその女の事を知ってたんじゃないのか?」と彼は言った。「その殺された女の事を。新聞で読んだ。ホテルで殺されたんだろう。身元不明って書いてあった。名刺だけが一枚財布に入ってて、その人物に事情を聞いていると出てた。君の名前は出てなかった。弁護士の話だと君はK札では何も知らないと突っ張っていたらしいが、でも知らないわけじゃないんじゃないか?」
「どうしてそう思うんですか?」
「ただふと、さ」彼はゴルフ?クラブを手にとって刀のようにまっすぐに前にのばしてそれをじっと眺めた。「そういう気がしたんだ。何かをかばっているように俺には感じられる。ふとね。君と話していると、だんだんそういう感じがしてくる。細かいことにいちいちこだわるくせに、大きなことに対しては妙に寛大になる。そういうパターンが見えてくる。面白い性格だ。そういう意味はユキに似てるよ。生き延びるのに苦労する。他人に理解されにくい。転ぶと命取りになる。そういう意味では君らは同類だよ。今度のことだってそうだぞ。K札は甘くないからな。今度は上手くいったが、次も上手く行くとは限らんぜ。システムもいいが、突っ張ると怪我することが多い。もうそういう時代じゃあないんだよ」
「突っ張ってるわけでもないんです」と僕は言った。「ダンス?ステップみたいなもんです。習慣的なものです。体が覚えてるんです。音楽が聞こえると体が自然に動く。回りが変わっても関係ないんです。すごくややこしいステップなんで、回りのことを考えてられないんです。あまりいろんなことを考えると踏み違えちゃうから。ただ不器用なだけです。トレン一アディーじゃない」
牧村拓はまた黙ってゴルフ?クラブを睨んでいた。
「変わってる」と彼は言った。「君は俺に何かを連想させる。何だろう?」
「何でしょうね?」と僕は言った。何だろう?ピカソの『オランダ風の花瓶と髭をはやした三人の騎士』だろうか?
「でも俺は君のことが結構気にいったし、君という人間を信用するよ。悪いがユキの面倒は見てくれ。いつかきちんと礼はする。俺は借りは必ず返す人間だよ。そのことはさっき言ったよな?」
「聞きました」
「じゃあそれでいい」と牧村拓は言った。そしてゴルフ?クラブをそっと縁側に立てかけた。「結構」
「新聞には他にどんなことが出てました?」と僕は訊いた。
「他には殆ど何も出てないよ。ストッキングで絞殺された。一流ホテルというのは都会の盲点なんだと書いてあった。名前も何もわからない。身元を調べているとあった。それだけだ。よくある事件だよ。すぐにみんな忘れる」
「そうでしょうね」と僕は言った。
「でも忘れない人間もいる」と彼は言った。
「たぶん」と僕は言った。
“你不知道那位女人的事?”他说。“就是被杀的那位女的。通过报纸知道的。是在宾馆被杀的吧。写有身份不明。还写明只有一张明信片放到钱包里,向明信片的那位询问了有关事情。就是没有透露你的名字。根据辩护律师说的话,你还坚持己见,对K札什么也不说。难道真的什么也不知道吗?”
“为什么会那样想呢?”
“只是突然。对吧。”他把高尔夫球杆拿到手,像拿刀那样直直地伸到前边,死盯着。“有那么一种感觉。让我感觉到,你像是庇护什么似的。突然的,通过和你谈话,那种感觉越来越重。因为拘泥于小事,对大事就奇妙地宽大。就是那种模式。很有趣的性格。那种方式和雪相似。若那样地坚持下去会更辛苦。也难以被他人理解。一旦跌倒会给以致命打击。那种方式你也同类。这一次事件就是那样。K札也不姑息。这次是很得意,下一次就不会那么得意。整个系统不错,坚持己见的话会受伤严重。现在已经不是那个时代了。”
“也并不是坚持已见。”我说。“就像舞步那样。是习惯性的。身体有记忆力。听到音乐身体自然动起来。即使周围改变也没有关系。舞步极其复杂,不容想周围的事情。一旦想到过多其它事情就会迈错脚。真是太笨了。不与时代什么相关。”
牧村拓一句话没说,仍看着球杆。
“也太奇怪了。”他说。“你让我联想到什么?是什么呢?”
“是什么呢?”我说。是什么?毕加索的《荷兰的花瓶和留有胡子的三个骑士》吗?
“可是我对你的事很清楚,很信用你这个人。虽不好办请你帮助一下雪。找个时间给你一正式的答谢。我是肯定给人以报答的人。那件事就像刚才说的那样。”
“我知道了。”
“那么就这样了。”牧村拓说。接着把高尔夫球杆轻轻地立到傍边。“好了。”
“报纸上还登什么内容了?”我问。
“其它几乎什么也没有刊登。只写了用长筒袜勒死。高级宾馆也是大都会的盲点。连名字什么的也不清楚。正在调查其身份。就以上这些。这些是经常发生的事。马上会被忘却。”
“是那样吗?”我说。
“可是不忘记的人也有。”他说。
“大概吧。”我说。 |
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