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僕はそのスーツケースを抱えて下におりた。スーツケースの中には原稿や本がたっぷりと入っているらしく、みかけよりずっと重かった。その重みは僕にディック?ノースの死の重みを想像させた。
「今から届けてきます」と僕はアメに言った。「こういうことは早ければ早い方がいいですからね。ほかに何か僕のすることはありますか?」
アメは迷ったようにユキの顔を見た。ユキは肩をすぼめた。
「実は食料品があまりないの」とアメは小さな声で言った。「彼が買いに出て、それであんなことになって、だから…」
「いいですよ。適当に買ってきます」と僕は言った。
そして僕は冷蔵庫の中身を点検し、必要と思えるものをメモした。そして下の町に下りて、ディック?ノースがその前で死んだスーパーマーケットで買物をした。四、五日はもつだろう。僕は買ってきた食品をひとつひとつきちんとラップに包んで冷蔵庫にしまった。
アメは僕に礼を言った。大したことじゃないです、と僕は言った。実際に大したことではなかった。ディック?ノースがやろうとしてやり残して死んだことを僕が引き継いで済ませただけのことだった。
二人は石垣の上から僕を見送ってくれた。マカハの時とまったく同じように。でも今回は誰も手を振らなかった。僕に手を振るのはディック?ノースの役目だったのだ。二人の女は石垣の上に並んで立って、殆ど身動きひとつせずにじっと僕の姿を見下ろしていた。どことなく神話的な趣きのある情景だった。僕はそのグレーのプラスティックのスーツケースをスバルの後部席に入れ、それから運転席に入った。彼女たちは僕がカーブを曲がってしまうまで、ずっとそこに立っていた。日没が近付いていて、西側の海がオレンジ色に染まり始めていた。あの二人はこれからここでいったいどういう夜を過ごすんだろう、と僕は考えた。
我抱着那旅行箱走了下来。因为在箱中装满了原稿和书,比看上去要沉多了。那重量使我想起了ノース死的重量。
“现在就给他送去。”我对雨说。“这样的事越早越好。之外还有什么事我可以做的?”
雨像迷糊那样看了看雪。雪耸耸肩。
“实际上要吃的东西不多了。”雨用小声说了一下。“他就是出去买东西,没想到发生了那种事情。所以就……”
“知道了。我给买些回来。”我说。
接着我检查了一下冰箱里面的东西,把认为要买的东西记了下来。然后到下面的大街上,在ノース死之前的那个超市里面购物。买够四五天用的。我把买回来的食品逐个用保鲜膜包好放到冰箱里。
雨表示感谢。我说:不要那么客气。实际上并不是什么大事。就是ノース想要做的却留下来,由我接着完成的事。
她们二人从石墙上面目送我。就和在夏威夷的マカハ时一样。只是这次谁也没有挥手。向我挥手的是ノース的职责。两位女人并排站在石墙上面,身体一动不动呆呆地看着我的身影。总觉得这是神话般的情景。我把那灰色塑料的旅行箱放到斯巴鲁年的后座上,然后坐到驾驶席上。她们两位一直站到我开车到那拐弯处。太阳马上西落,西侧的海开始被染成橘黄色。那两位之后如何在这里度过这样的晚上呢?我这样想。 |
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