訴える
指導者は常に自分の考えを訴えなければならない
十三歳で松代藩(まつしろはん)十万石の家督(かとく)をついだ真田幸弘(さなだゆきひろ)は、十六歳になって元服(げんぷく)すると、非常に困窮している藩財政を建て直すため、家老(かろう)の末席にいた恩田木工(おんだもく)を抜擢し、藩政の改革に当らせることにした。
すると木工は、まず屋敷に家族親戚を集め「今度こういう重責をになったからには、自分は率先して徹底した倹約をしなくてはならぬ。しかしそれを家族や親戚の皆さんに強制はできない。ついてはこの際、妻を離別、息子は勘当、親戚とは義絶してこの仕事にあたりたい」といった。これにはみな驚いて「いや、どのような辛抱でも、おっしゃる通りにするから、そんなことはしないでください」と嘆願(たんがん)したので、木工は喜んでそれを聞き入れた。
それに続いて木工は、領民の主だった者を城に集め、藩の重役、役人のいる前で、藩政改革について協力を求めた。すなわち、これまでの藩の債務については、財政が安定するまで一時棚上げしてほしい、そのかわり藩としても、これからは無茶な税金やご用金のとりたてはせず、正常な財政に運営をしていくということを訴えたのである。領民たちはも木工の清廉篤実(せいれんとくじつ)な行いをみて、その人柄に信頼を深めており、藩の財政が正常化されるならということで債権の棚上げに進んで協力を誓った。その結果、官民一体となって藩財政の建て直しに成功したというのである。
指導者として、何か事を成していこうとする場合、人々に自分の考えを訴えるということがきわめて大切だと思う。一つの会社、一つの国をどういう方向に進めようとしているのか、そのために社員なり国民なり何を求めているのか、そういうことをはっきりと訴えなくてはいけない。そうした訴えは、常になされなくてはならないと思うが、とりわけ何か大きな困難、非常な大事といったものに直面して、それに処していこうとする場合には、ぜひとも必要である。だれしも大事に出会えば、ともすれば動揺し、判断に迷う。けれども、そういう時に指導者から適切な呼びかけがなされれば、みなの気持ちも一つにまとまり、難局を乗り越えていくこともできるだろう。\
そのためにはもちろん、どういう事態にあっても動揺しないような一つの信念を持っていなくてはならない。そうした信念を自ら養いつつ、事にあたって、つねに訴えるということを指導者は忘れてはならないと思う。
开诚布公
领导着必须经常将自己的想法开诚布公
真田幸弘十三岁时承继了松代藩十万石的家业,而在他十六岁冠礼之年,为了重振已极其艰难的藩财政,提拔了身居家老末席的恩田木工,让他改革藩政。
于是,木工首先把家属亲戚聚在家里,对他们说:“此次身担重任,今后我自当厉行节约以为表率。然不得强制尔等家眷亲属众人。在此,我欲别妻弃子、断绝亲谊以任此事”。对此,众人大惊,纷纷恳求,“不论有多么艰难,只管吩咐就是,请不要这样”,于是木工欣然答应了众人。
接着,木工将臣民的头脑招集到城里,并当着藩内要员、奉公当差之人的面,请求他们协助藩政改革。即,开诚布公道:在财政稳定之前,暂时将藩的债务搁置一旁,同时,藩也不乱征苛捐杂税,实施正常的财政运作。臣民们也发誓:在考察木工的清正廉洁,加深了对其人品的信任,且藩财政能趋于正常化的前提下愿意将债券放在一旁而与以协助。其结果,自然是官民一体,成功地重振了藩财政。
我认为作为领导者若要想做成什么事,开诚布公地向大家表明自己的想法是极其重要的。一个公司、一个国家将朝什么方向前进,为此,对员工、对国民又有什么请求,都必须开诚布公。这样的开诚布公是经常需要的,特别是在遇到大困难或非常之事而要加以处理时,则是绝对必要的。不论是谁,遇上大事往往都会动摇,举棋不定。但这时如有领导者作出正确的呼吁,就能万众一心,共渡难关。
为此必须要怀有一个不论遇到什么事情都毫不动摇的信念。领导者不可忘记:必须自己来培育这样的信念,遇事则常开诚布公地进行呼吁。
注:1)松代——长野市南部的旧称。
2)家老——江户时代大名的重臣,以统率藩内的武士、管理家务为职。 |