咖啡日语论坛

 找回密码
 注~册
搜索
查看: 5658|回复: 11

ふしぎ工房症候群4 日文全台词听写 (修改于2006.1.3)

[复制链接]
发表于 2006-1-26 09:54:56 | 显示全部楼层 |阅读模式
<P>&nbsp; 本贴首贴于狼藉论坛</P>
<P>ふしぎ工房症候群4 <BR>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; —— 一緒に死んでくれますか? <BR></P>
<P>語り:石田彰<BR>听写:qiaoseikou<BR>校对:eryue 、hanabi22</P>
<P>LIST:<BR>01-prologue&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; 07-星空<BR>02-理由&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; 08-決行<BR>03-仮面&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; 09-両親&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; <BR>04-ひとりぼっち&nbsp;&nbsp; 10-死ぬな&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; <BR>05-ふしぎ工房&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; 11-現実&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; <BR>06-出会い&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; 12-epilogue</P>
<P>&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; <BR>01-prologue&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp;&nbsp; <BR>日常で起こる些細で不可思議な出来事。それが人の思考と行動に影響を与えていく過程と結末を知りたいとは思いませんか?この物語は、貴方自身の好奇心と願望に基づいて構成されています。ともすれば 見落としてしまいがち ないつもの風景の中に。貴方が不思議工房を見つけることができるようにお手伝いしましょう。</P>
<P>02-理由 <BR>またか?考えも無しに、毎日暗いニュースばかり垂れ流すテレビに向かって吐き捨てる。強盗(ごうとう)、ストーカー、通り魔、サニー、校内暴力、家庭内暴力、虐待(ぎゃくたい)、もう うんざりだ。動機のさこそあれ、すべてが死に直結することを、当人たちはまるで分かっていない。いや、分かってやっているのか?人が人を殺すことの意味なんて、僕には分からない。ましてや、親が子を、子が親を殺す理由なんて、とてー理解できない。何かが狂っている、そうとしか言いようがない。<BR>所詮 他人事、そう自分に言い聞かせていたが、僕にも理解できる事件は 一つだけあった -- 集団自殺 だ。近年の大きな社会問題として、人々の好奇の目を集めている。ネット社会の弊害(へいがい)と口を尖らせる 人達がいる。友人や恋人と一緒に死ぬわけじゃない、ネットで知り合った見知らぬ他人と一緒に死ぬ。世間では理解されるはずもない、その行為(こうい)が僕の心を揺るがす 。自殺とは当たり前の話だが、人を殺すわけではない、自らの命を絶つ自らの命を絶つ行為で法に罰則規定があるわけでもない。人間、追い詰 められれば 死んだほうが増し だと思える事は、いくらでもある。それが集団でおこなわれるから、世間を騒(さわ)がすことになる。でも、僕には分かる。現代には精神を煩(わずら)っている人達が溢れ変えている。その人達が、ネットで容易に出会えるような時代になったからこそ実現した新しい自殺方法だと言えよう。<BR>誰でも死ぬことは恐い。一人で死ぬ勇気を持ち合わせている人間は、そうそういない。だからこそ、この方法に注目(ちゅうもく)が集まるし、僕も大いに興味を持っている。<BR>なぜなら、僕も自殺志願者だから。</P>
<P>03-仮面 <BR>街の風景がぼうっと流れる。僕は一人道路空きの円石に座っている。もう時間は夕刻を通り過ぎている。どのくらいここに座っているのか、見当もつかない。そろそろ人目が気になりだした。不意に地階の端に苛めに遭っている女の子を見付けた。何人かに囲まれて泣いている。だが、今の僕には、その子を助けてやれる気力はない。また助けたとしても繰り返される、しかも 永遠に。だから無駄なんだ。通りすがりの男性が「こら」と言って、苛めのグループを追い払った。泣いている女の子に「大丈夫?」と声をかけると、女の子は怯(おび)えた目付きで走り去ってしまった。<BR>ほらね、僕にはよく分かる。小学生の頃、苛められ子だった。最初は上級生、次に同級生、極(きわ)め付けは下級生みだ。唯一の対抗手段は作り笑いだった。僕はお前たちのことなんか ちっとも気にしていないぞ という精一杯の仮面。その仮面の下は、常(つね)に泣いていた。中学生になったら、今度は苛める側(がわ)に加(くわ)わった。自分が苛められないためだったが、気づいたら 苛めを楽しんでいる自分がいた。高校では無視された。クラス全員に無視されて、「村八分」 という言葉をした。ついでに、教師にも無視された。僕は再び仮面を被(かぶ)り、今日まで行き流れてきた。<BR>大人になるのが嫌だった、大人になるのが恐かった。でも、僕は大人になってしまった。もう 仮面を被るのは今日で最後にしようと思う。やっと気づいたんだ「僕は誰にも必要とされていない、自分自身をさえ必要としていない」そのことに。<BR>今日は僕にとって人生の終戦記念日となる。誰にも邪魔はされたくない。「頑張れ」なんて言ってほしくはない。余計に消えてしまいたくなるだけ。戦争や飢餓で死にたくない人がたくさん死んでいることも知っている。でも 死にたい人が死ぬんだったら、同情する必要もないでしょう?<BR>ただ、一つだけ お願いがあります。僕と一緒に 死んでくれませんか?</P>
<P>04-ひとりぽっち <BR>まだ街の風景がながれた。こんなにたくさんの人がいるのに、僕は一人ぽっちだ。掲示板(けいじばん)にも書いた、でも誰も僕の求めている答えをだしてくれない。「生きろ」なんて言わないで、「生きていればいいことある」なんて言わないで。いいことなんていつあるの?僕は今を生きることがつらいんだ。死ねって言ってもかまわない。ただ、僕を上から見下(みお)ろして笑うのだけは止めてくれ。弱虫って言われた。そうさ、僕は一人で死ぬこともできない 臆病(おくびょう)ものなんだ。だからどうした?それのどこが悪い?最後に理解者を、仲間を求めることさえ、僕は許してもらえない存在なのか?そうか?僕は本当に孤独だったんだ。両親のことを考えてみる。いや、やっぱり止(よ)そう。そのことは僕にとって一番辛い話になってしまう。今の僕はそれに耐える自信がない。携帯を見つめた、もう誰からも呼びかけはない。<BR>やはり 一人で死ぬしかないのか?<BR>僕はゆっくりと腰を上げると歩き出した。場所は下見してある。ただ、時間が早すぎる。みんなが寝静(ねしず)まり、人通りがなくなった時間に、あのビルの屋上から飛び降りるんだ。僕にだって、常識はある。人を巻き込むことだけは避けるつもりだ。ただ、時間が早すぎる。宛(あ)てもなく歩いた。今度は風景が僕を通り過ぎていく。後ろ、後ろへと。あと3時間。誰に言うともなく ぽつりと&nbsp; 呟(つぶや)いてみた。<BR>これから自分は楽になれるはずなのに、世の中から解放(かいほう)されるはずなのに、自然と涙が頬(ほほ)を伝(つた)った。孤独な自分に同情している自分がいる。それがまた悲しくて、いっそう涙が出た。あまりに自分が可哀相な気がして たまらなくなった。</P>
<P>05-ふしぎ工房<BR>もう時機それも終わるさ。<BR>自分を元気付けるように言って、手で涙を拭(ぬぐ)った。 視界がぼやけていると、歩くことにも不自由する。しっかりと前を見せたところで 自分が見知らぬ路地にいることに ふっと気づいた。<BR>あれ?道に迷った?<BR>しんと 静まり変えたちゅう宅外、いつもの見慣れた風景とは違うこの場所に、何時の間にか 紛(まぎ)れ込んてしまったらしい。だが、大丈夫。まだ時間はある。<BR>急き立てられる ように 時間の経過に気を使うことは、もう しなくていいんだ。<BR>そう自分に言い聞かせていると、足元で猫の鳴く声がした。小さな黒猫だった。妙に懐いて 僕の足に纏(まと)わり付いてくる。少し愛しくなった。人間もこのぐらい素直だったらなぁ 。しゃがんで その猫の頭を撫でようとしたら、黒猫はさっと身を引き、目の前の木戸の僅かな隙間に逃げ込んでしまった。<BR>ちっ、どうせ猫にさえも嫌われるんだ。<BR>そう思って立ち上がろうとしたら、目の前に奇妙な看板が飛び込んできた。戸板(といた)に筆で殴り書いたような文字で「ふしぎ工房」と書かれてある。何だか とても気になった。その文字を見つめていると、心が落ち着くと言うか、穏やかな気持ちになってくる。<BR>こんな気分になるなんて もしかして初めてのことか?<BR>その看板に目を奪われていると 今度は黒猫が激しく鳴いた。何か この世にとてつもなく 未練を残すような思いにとらわれて、思わずその引き戸に手をかけた。気付くと 僕はその引き戸の内側にいて、そこで はっと 我にかえた。<BR>ここは?<BR>中はがらんどう の倉庫(そうこ)のようだった。薄らくて、どこか異世界に迷い込んでしまったかのような錯覚(さっかく)に落ちっていると 不意に人の声がした。<BR>老人:ご注文は?<BR>老人のような声だった。僕が緊張してその場に立ちすくんでいる と、又その声は言った。<BR>老人:何か注文をしに来たのではないのかね?<BR>目を凝(こ)らすと、部屋の中央に大机があって、その向こうに座っている老人の姿が見えた。<BR>僕:すっ、すみません。僕は……<BR>人の家に勝手に上がり込んだと言うか、何か自分がいけないことをしてしまったかのような気がして、思わず頭を下げて謝った。何かを注文しに来たわけじゃない、ただ 気付いたら ここにいただけだ。<BR>僕:失礼しました。<BR>そう言って、早々に立ち去ろうとした僕の背中に、思わぬ言葉があびせかけられた。<BR>老人:死にたいのかね?<BR>動けなかった。図星をさされて、僕は蛇に睨まれた蛙のように 萎縮(いしゅく)して固まった。<BR>僕:なっ、なぜ?<BR>恐る恐る 振り向いた僕の視界に、老人の手招きが見えた。僕は誘われるように ふらふらと老人に近づき 進められるままに、大机の前のパーピースに腰を降ろした。すると 項(うな)垂(だ)れたまま ものも言わない僕の目の前に、紙と鉛筆が差し出された。紙に書かれた「注文書」と言う文字が目に映った。<BR>老人:さ、これ……<BR>目を上げると、そこに優しく微笑んだ老人の顔があった。<BR>僕:ここに?<BR>老人:そう、貴方の願いを書きなさい。<BR>僕:ぼ、僕の願い?<BR>老人:その通りです。<BR>僕:ここは何を売っているお店なんですか?<BR>老人:ここでは 幸せを売っております。<BR>僕の涙腺(るいせん)は一気にゆるみ、堰を切ったように涙が溢れ出した。僕は初めて自分の理解者に出会ったような気がして、感動すら覚えた。<BR>そうなんだ 僕の幸せとは死ぬこと。それが今の僕の願いなんだ。<BR>でも 一つだけ問題が残っていた。それは 僕が弱虫で意気地(いくじ) 無しだから、一人じゃ死ねないって言うことだった。もう一度目を上げると、老人は全てを分かっているかのような面持ちで 僕を優しく見つめていた。僕は震える手で「いっしょに死んでくれる人を紹介してください。」と書き、自分の住所と名前を添(そ)えた。<BR>老人:承知しました。<BR>老人は一層穏やかな声で言うと、注文書の控(ひか)えと白い封筒(ふうとう)を差し出した。封筒には「請求書」と書かれていた。<BR>僕:請求書?<BR>そうか、世の中何かに付けお金が必要だもんな。今回は人を紹介してもらうわけだし……<BR>そう思いながら、請求書の封を切ろうとすると、老人の手がそれを制した。<BR>老人:お代は後払いの成功報酬となっております。後程 ゆっくりと お確かめください。<BR>僕:はい。<BR>成功報酬と言う言葉に何だか奇妙な違和感覚えたが。僕は封を切ろうとした手を止め、それを注文書の控えと一緒に上着の内ポケットにしまいこんだ。よくよく考えれば 成功の暁(あかつき)には 僕はこの世から消えてなくなる。すると 代金を支払いなくなる訳だが……<BR>老人:さっ、どうぞ。<BR>ぼんやりと考えている僕促(うなが)すように 老人は出口の引き戸差し召した。<BR>僕:でも、まだ紹介が……<BR>老人:ご心配には及びません。その方はもう外で貴方をお待ちしております。</P>
<P>06-出会い <BR>ふしぎ工房を出ると、その人物は一目で分かった。目の前の電柱(でんちゅう)に背中から凭(もた)れかかって俯(うつむ)いている。見るからに、世の中から消えてしまいそうなタイプだ、僕と同じ匂いがする。手には注文書の控(ひか)えらしき紙を握っていた。<BR>あぁ、彼もまだ……<BR>僕はすぐさま親近感を覚えた。背格好(せかっこう)からして僕と同じくらいの年齢だ。すると、彼もこちらに気付き、軽くえしゃく を送ってよこした。<BR>少年:君だね?<BR>彼はそう言って、ゆっくりと近づいてきた。<BR>僕:ん。<BR>僕もそれに答えるように 彼に歩み寄った。近づいて見ると、前髪を長く伸ばして 僕よりは少し線の細い印象受ける顔立ちをしていた。その外は 普通の男性と変わらない。まだ会ったばかりと言うのに、もう 十分お互いのことが分かる気がする。言葉は要らない、交(か)わす必要もない。そう思える。初めて理解しあえる友達を見つけたような気分になった。僕たちはそのまま並んで歩き始めた。暫くして 彼がぼつりと言った。<BR>少年:場所を 決まっている?<BR>僕:ん。<BR>僕は例のビルに着いて事細(ことこま)かに説明した。彼は相槌を打ち ながら「それはいい所をみつけたね?」とはにかむ ように笑っていた後、確認するように尋ねてきた。<BR>少年:遺書は書いた?<BR>僕:ん、書いた。<BR>少年:そうだね。事故だと思われたら 捜査課とか余計な面倒を人にかけることになるものね。ピーシーとか人に見られたくないデーターは消した?<BR>僕:あっ、それはしてない。<BR>少年:そう、僕ね、死んだ後まで人に感傷(かんしょう)されたくないんだ。携帯メールや同録カードも全部消したし。 <BR>彼の言葉を聞いて、用意周到(よういしゅうとう)だなと思った。僕はそこまでは考えていなかった自分を恥じて 俯いた。その様子を見て 彼は少しだけ慌てた。<BR>少年:あっ、気にしないで、あくまで僕の場合だから。それよりも、最後に君と出会って本当に嬉しいんだ。僕にだって一人で死ぬ勇気なんてないから。でも、君が一緒だから ちっとも 恐くなんかないよ。本当にありがとう。<BR>僕:そんな……僕の方こそ感謝しているよ。君と一緒に死ねるなんて すごく幸せだよ。<BR>僕たちはお互いに顔を見合わせて、顔を綻(ほころ)ばせた。僕は嬉しくなって、ふと 思いついたことを口にした。<BR>僕:でも、僕たち 今日じゃなくて もっと前に出会ってったら 人生変わったのかな?<BR>一瞬、沈黙(ちんもく)した空気が流れ、僕は馬鹿なことを言ってしまったと後悔した。今更そんなことを言っても仕様がないのに。しかし、その沈黙からも 彼が救ってくれた。<BR>少年:前に出会うってことは絶対ないよ。今この瞬間に出会ったことは 運命なんだ。僕たちはやっとここに辿り着いてる、理解者を得ることができたんだ。人と付き合う時間とか 期間は問題じゃない、どんなに短くても……<BR>二人:僕たち友達になれたんもんね。<BR>僕は彼の言葉をそっくり受けていた。二人同時に発した言葉が奇麗に重なってハーモニー呼んだ。それがあまりに可笑しかったから、僕たちは声を立てて笑った。<BR>本当に幸せだ。<BR>しみじみそう思った。彼も同じ思いだと見えて、僕たちはお互いの顔を見つめて またフフと笑った。</P>
<P>07-星空 <BR>そうしているうちに、ビルの前に着いた。<BR>少年:ここだね?<BR>僕:ここだよ。<BR>僕たちに悲壮感はなかった。エレベーターに乗り 最上階でおりて 屋上の出口へと向かった。外へ出ると 空は満面の星に覆われていた。僕たちは暫くの間 腰を降ろして 星を見つめていた。<BR>僕:奇麗だね?<BR>少年:本当だ。<BR>自然と涙が頬を伝わった。彼も泣いていた。悲しかったからじゃない、最後にこんなに美しい星空(ほしぞら)をみることができたことに 感動(かんどう)していたから。ふっと 風が吹き 彼の前髪を押し上げた。彼は慌てて手で顔を負ったが、僕は見てしまった。そして見てしまったことを後悔(こうかい)した。彼は苦しそうに呟(つぶや)いた。<BR>少年:気味悪いだろう?<BR>彼の左目は義眼(ぎがん)だった。それを隠すために、前髪を延ばしていたのだ。彼が言うには、幼い頃に両親の不注意(ふちゅうい)で左目をつぶし、以来義眼なのだという。僕の目から、自然と涙が零れた。身体的に普通と違うということが、彼のこれまでの苦難と屈(くつ)を物語(ものがた)っていた。それが どれほど苛めの対象となったことか?どれほど 辛く悲しい目にあってきたことか?言わずとも十分伝わってくる。 <BR>少年:どうしたの?なぜ泣くの?僕に同情してるわけ?<BR>僕:ごめん、そういうわけじゃないんだ。 <BR>本当は彼に同情している自分を隠したくて、僕はむりに照れ笑いをかけた。<BR>僕:死ぬ前に少しでも君のことが分かって、嬉しかったんだ。 <BR>うそだった。でも罪な嘘じゃない、神様も許してくれるだろう?<BR>僕:君の両親も苦労されたんだよね?<BR>少年:そんなことないよ。<BR>話が両親に及ぶと、彼はがぜん表情を変えた。<BR>少年:あいつらのせいで、僕はこんな姿になったんだ。だから苦労したとしても当然の報(むく)いだ。僕が死にたいと思ったきっかけを作ったのは あいつらなんだから。<BR>彼は怒りにうちくれっているようすだった。僕はしまったと思ったが、また口を滑(すべ)らせた。<BR>僕:でも 君が死ぬと 両親はきっと悲しむよね?<BR>少年:悲しめばいいんだ。当然の報(むく)いだよ。<BR>それきり、僕たちは黙った。暫くして 彼がぽつりと言った。<BR>少年:君の両親は?<BR>僕:ん、健在(けんざい)だよ。<BR>少年:そう、どうして死ぬと思ったの?<BR>僕:もう 疲れちゃったから。<BR>彼は一呼吸をおくと立ち上がった。<BR>少年:行こうか?<BR>僕も導(みちび)かれるように立ち上がる。<BR>少年:もう 思い残すことはないよね?<BR>彼の言葉に僕もゆっくりと頷(うなず)き笑顔を作って見せた。</P>
<P>08-決行 <BR>僕たちは手を取り合い、幸せの待つ未知(みち)世界へと足を進めた。それに伴(ともな)い視界が徐々(じょじょ)に開いてくる。終には縁(ふち)に辿り着き、その視界は180度に広がった。目線を下に落とすと 下界はまるで奈落の底のようで、大きな口をぱっくりと開けているかのように見えた。不意に両親の顔が拝(おが)んだ。すると突然足が震え出した。がくがくとして 震えが止まらない。両親の僕を心配する顔が、涙に濡れている。僕はそれを打ち消すように 顔左右(さゆう)に振った。<BR>可笑しい。なぜ僕は震えている?<BR>何度かここに来てリハーサル をした。その時には下を覗いても震えたりはしなかった。それでも 一人で死ぬには勇気がいると 仲間をつもり、今は彼が側にいる。<BR>死ぬことなんてもう恐くはないはずだ。それとも 本当の僕は死ぬことを望んでいない?いや、そんなはずはない。あっ、でも どうしても 震えが止まらない。もう 一歩たりとも前に進めない。<BR>彼は僕の異変に気付いて 怪訝(けげん)そうな顔した。<BR>少年:どうしたの?さ、早く行こうよ。<BR>僕:まっ、待って!<BR>彼が僕の手を引いた瞬間 思わずその手を振り払った。と同時に、彼の体がふわっとちゅうにうかんで見えた。<BR>僕:あっ!<BR>そう声をあげた僕を、彼は悲しそうな目で見つめていた。口元(くちもと)が微(かす)かに動いて「なぜ」と言っていた。そして、彼の姿が視界から消えた。<BR>暫くして グシャっと言うトマトが潰れるような音が聞こえた。<BR>僕:あっ!あっ! <BR>恐々と下を覗く下界の底に不自然に体を曲(ま)げた彼の姿が見える。その体の下から 赤い液体(えきたい)が染(し)み出し、徐々に広がってワットなっていく。<BR>僕:あっ!あぁ------<BR>下界が俄(にわか)に騒然(そうぜん)となる。人が飛び出して来て、大声で何かを叫んでいる。遠くにサイレンの音が聞こえる。<BR>僕:あぁ------------</P>
<P>09-両親 <BR>ビルを飛び出し、無我夢中で走った。サイレンの音が追ってくる、現所とは思えない、確実に僕を追ってくる、殺人者であるこの僕を。気づいたら 家の前にいた。玄関に飛び込むと、父親が立っていた。そのまま 父親の胸に飛び込んだ。肩を超しに、泣き崩(くず)れている母親の姿が見える。厳格(げんかく)な父に当然殴り飛ばされるだろうと予想していたら、強い力で抱しめられた。<BR>父:よく戻った。<BR>父はそれだけ言って、いっそう力強い手で僕を抱きしめた。父の目から、涙が零れるのは見えた。母が僕の背に覆い被せるように抱き着き「いいのよ……いいのよ……」と言って、鳴咽(おえつ)をもらした。僕は号泣した。<BR>僕:父さん……母さん…… 僕…… 僕……<BR>父:分かっている、なにも言うな。<BR>優しい父の声だった。あんなに厳しく 僕を叱(しか)ってばかりの父から、初めて聞く優しい声だった。母が泣いている。声を上げて泣いている。僕の背中にしがみつく ようにして泣いている。僕はさらに号泣した。<BR>僕:僕は……僕は…取り返すのつかないこと……うん……<BR>父の暖かく力強い声が 頭超しに聞こえた。<BR>父:心配するな!おまえのこと 父さんたちが必ず守る!<BR>僕:父さん……母さん…… <BR>三人で号泣した。親子揃って初めて泣いた気がする。すると 急にあたりが暗くなって 父と母の姿が見えなくなった。僕はまた一人ぽっちになった。<BR>僕:父さん?母さん?どこに行ったの?僕を置いて行かないで!僕を一人にしないで!!! </P>
<P>10-死ぬな <BR>はっと我に帰ると、頭の上に星空が広がっていた。歩き出す彼の背が見えた。僕はとっさに叫んだ。<BR>僕:だめだ!<BR>彼は振り向きざまに怪訝そうな顔していた。<BR>少年:どうしたの?死ぬのは恐くなったの?<BR>僕:いいから、やめようよ。<BR>少年:恐くなったんだね?それでもいいよ。僕は一人で死ぬから。<BR>彼は駆け出した。僕はその背に向かって飛びついた。二人して転(ころ)がって、気づいたら 下界(げかい)が見渡(みわた)せるほどの位置(いち)にいた。僕はこっくりと生唾(なまつば)を飲み込んだ。前に見た光景ではあのそこに彼が不自然なかっこうで横たわっていた。僕は彼の腕を力一杯掴むと ずるずると 本いた位置のちかくにまでひっぱっていた。<BR>少年:放せ!なぜ邪魔をする?<BR>彼はもがきながら 叫んだ。僕は答えなかった。<BR>少年:どうせ君も僕を冷(ひ)やかす ために来たんだろう?死ぬ気もないくせに、僕を笑うためだけに、仲間を装(よそお)ってきたんだろう?止めるなんてよく言えたな!君もほかのやつらと同じ上からものを言うだけの偽善者だ。<BR>彼の言葉の終わり際(ぎわ)、その顔面(がんめん)に、思い切り拳(こぶし)を叩き込んだ。涙が溢れてきて止まらない。何って言っていいか分からない。「死ぬな……死ぬな……」と喚(わめ)きながら 何度も彼に拳を振るった。<BR>僕:みんなのために……君に生きてほしいと願う人のために……そして……僕のために生きてくれ!<BR>僕は殴(なぐ)るのを止め、彼に覆い被(かぶ)せるようにして号泣(ごうきゅう)した。彼も泣いていた。僕たちはそのまま陽があけるまで 泣き続けた。</P>
<P>11-現実? <BR>どのくらい時間が経ったのか?気付くと 彼の両親が警察の人たちとやってきた。両親は彼を強く抱きしめ、「よかった……よかった……」と言いながら泣いていた。彼も泣いていた。僕はその光景を見つめながら 父さんと母さんのことを考えていた。僕が両親に命をもらったのはこれで二度目だ。一度目はこの世に生まれた時、二度目は今回の自殺未遂。<BR>不思議な気分だった。一体何が夢で、何が現実なのか?誤って彼を突き落としてしまったことが夢なのか?両親に出会ったことが夢なのか?いや、実は両方とも夢だと言うことは分かっている。なぜなら、彼は現実に生きているし、僕の両親は二年前になくなっている。彼に健在だと言った言葉は嘘だった。<BR>父は友人の裏切りで取り立て屋に追い込まれ、自殺。母は後追うように病気で他界(たかい)した。父は遺書(いしょ)に ただ一ごと「許してくれ」と書き残した。母は病院のベッドの上で、僕の手を握り締め、許してと言ってこの世を去った。二人がなぜ[許して]と言ったのか この時の僕にはよく理解できていなかった。<BR>僕は我が身の不幸を呪った。ずっと苛めで苦しみ、唯一(ゆいつ)の理解者であるはずの両親まで失った。その原因をつきつめると、すべては 他人という加害者に、そして それを容認(ようにん)した社会に辿り着く。僕の家族を破滅(はめつ)さした世間(せけん)に、僕は絶望した。<BR>なぜ僕が?僕たちだけが こんな目に合わなければならないのかと……<BR>何とか社会に復讐(ふくしゅう)することはできないものかとも考えた。だが、あまりにも僕の頭は回転(かいてん)が鈍(にぶ)く、いいアイデアが思いつかないばかりが。行く先々で自分の非力(ひりき)さを思い知らされるのが関の山 だった。学費(がくひ)が払えずに大学を中退してからはフリーターでその日を暮らすことが精一杯だった。<BR>もう死ぬしかない。死んで両親のもとへ行こう。<BR>それが僕の最後に出した結論(けつろん)だった。その僕が両親に命を救われた。今なら分かる、あの「許して」の意味が。親としては 生きていくための力の弱い息子が不憫(ふびん)でならなかった。その息子を残して先に逝くことが、さぞかし 心残りでならなかったのだろう?息子を守り切れないで逝く我が身を さぞかし蔑(さげす)んだことだろう?そして、やっぱり その息子は肉親を失って 残されたものの悲しみと屈に耐えられず 自ら死を選ぼうとした。<BR>だけど……父さん!母さん!もう安心してください。僕はもう決して死のうとは思いません。父さんの言った「おまえのことは父さんたちが必ず守る。」という言葉、確かに受け取りました。僕を助けるためにやってきてくれたんだね?本当に有り難う。父さん母さんに救ってもらった命だから。<BR>そう、だからあの時 僕は彼の命を救いたいと心底思ったんです。彼と彼の両親が抱きやがって泣いている姿を見て、僕にも一の役に立つ力があるんだと思いました。僕と同じように苦しむ人たちに伝えるべきことがあると気づいたんです。<BR>だから、僕は頑張って生きていきます。 </P>
<P>12-epilogue&nbsp; <BR>ふと不思議工房のことを思い出した。もしかして「あの夢はあの店にいた老人が見せてくれたものなのか?」とも考えた。そう言えば 請求書を受け取っている。今なら開封してもかまわないだろう?一体どんな請求なのか?ドキドキしながら 封筒の中身を取り出した。まず 目についたのは 「請求書」の文字、次に金額だった。「金12万円なり」と書かれてある。<BR>12万円?人材紹介費用(ひよう)なら、こんなものなのか?いや、僕の場合は友達を紹介してもらったことになるのか?何だか 高いような安いような……それとも 僕の命の値段?だったら 安すぎる!<BR>などと思いながら、その支払方法の記載を見て 僕は思わずにやりとしてしまった。「月々百円の千二百回払い」単純計算すれば 百年かかる。僕はこの債務(さいむ)を完成するまでは死ねないことになる。おまけに 振り込み方法は郵便振り替えとしてしてある点に 心遣いが見えて ぷっと吹き出してしまった。銀行振り込みでは315円以上をかかるから 手数料のほうが高くついてしまうが、郵便振り替えなら70円で済む。振り込み先には 慈善(じぜん)事業の団体名があった。そして 請求書の最後には こう書き記されていた ……<BR>あなたは自分の得(え)た生きる勇気を人に伝えなさい。その証として 上記金額をご請求申し上げます。-- ふしぎ工房 <BR>あれから 数年の歳月が流れた。僕は毎月きちんと請求額以上の金額を支払っている。まっ、大した金額ではないが、ただ 振り替え手数料は払っていない。その必要はないからだ。なぜなら 僕はその慈善事業の団体職員として働いている。僕の仕事は精神的に悩み苦しむ人たちのカンセリング。もちろん 彼も共にここで働いている。僕たちは僕たちを必要としている場所を見つけた。<BR>その後 僕たちは何度か ふしぎ工房を探してみたが、残念ながら 二度とあの看板を見つけることはできなかった……</P>
<P><BR>--------------------------<BR>&nbsp; ともすれば=ともすると:常常,动不动,动辄。<BR>&nbsp; ~がち:倾向于,往往。<BR>&nbsp; 所詮(しょせん):つまるところ。つまり。けっきょく。どうせ。反正。<BR>&nbsp; 尖らせる:口をとがらせる。发牢骚。<BR>&nbsp; 揺(ゆ)るがす:震撼,摇动。<BR>&nbsp; 追い詰(つ)める:穷追,追到绝路。<BR>&nbsp; 増(ま)し:どちらかといえばそのほうがいいというようす。反而更好。<BR>&nbsp; 村八分:(被朋友等)疏远,排斥在外。 <BR>&nbsp; ぽつりと:副词,断断续续地。<BR>&nbsp; しんと:副词,寂静、静悄悄。<BR>&nbsp; 急(せ)き立(た)てる:催促。<BR>&nbsp; 懐(なつ)く:亲近,接近。<BR>&nbsp; 句子里有省略。人間もこのぐらい素直だったら <いい> なぁ。<BR>&nbsp; とてつもない:毫无道理。<BR>&nbsp; がらんどう:名词,形动。空旷,空空如也。<BR>&nbsp; 立ちすくむ:(因恐惧而)呆立不动。<BR>&nbsp; 恐る恐る:战战兢兢。<BR>&nbsp; 意気地(いくじ):志气、自尊心。<BR>&nbsp; 会釈(えしゃく):点头、打招呼。<BR>&nbsp; 相槌を打つ(あいづちをうつ):随声附和。<BR>&nbsp; はにかむ:腼腆、羞怯。<BR>&nbsp; リハーサル:英 rehearsal 演练、排练。<BR>&nbsp; しがみつく:搂住,抱住,紧紧抓住。<BR>&nbsp; 冷(ひ)やかす:嘲弄。<BR>&nbsp; 関の山:最大限度,充其量,最多。<BR>&nbsp; さぞかし:副词,「さぞ」的强调形式,一定、想必。<BR>&nbsp; 書き記す(かきしるす):记录、记载。</P>
回复

使用道具 举报

发表于 2006-1-26 11:25:02 | 显示全部楼层
这是狼藉日语版斑竹的贴一定要支持
=======================
有时间我再把这几篇整理一下
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2006-1-27 18:55:19 | 显示全部楼层
扛走了,Drama还灭有弄到,想想办法……
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2006-8-26 00:47:12 | 显示全部楼层
原文哦,太好了,搬走之
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2006-10-20 03:10:18 | 显示全部楼层
多谢lz分享~~满心欢喜地抱走了~
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2006-11-8 00:14:54 | 显示全部楼层
看不懂,郁闷了。- -
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2006-11-9 19:16:38 | 显示全部楼层
す。。。すごい~~~~
心怀感激的抱走鸟~~~
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2007-1-30 03:44:07 | 显示全部楼层
感謝します!!!
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2007-11-22 14:42:23 | 显示全部楼层
实在是太感谢了~找到了很多一直很想要得东西。真是
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2007-12-11 21:50:16 | 显示全部楼层
实在是喜欢这个系列,看着听写文还可以学日语......
真是感动~等我以后日语学好了一定也来做听写!
回复 支持 反对

使用道具 举报

发表于 2010-1-17 06:47:17 | 显示全部楼层
在第二段中 とてー理解できない   とてー应该是“到底”吧。

在第三段中,今日まで行き流れてきた, 行き流れてきた应该是“生き长らe ru.
回复 支持 反对

使用道具 举报

您需要登录后才可以回帖 登录 | 注~册

本版积分规则

小黑屋|手机版|咖啡日语

GMT+8, 2025-4-19 09:16

Powered by Discuz! X3.4

© 2001-2017 Comsenz Inc.

快速回复 返回顶部 返回列表