労働法
1994年7月5日公布
(主席令第28号)
1995年1月1日施行
第1章 総 則
第1条
労働者の合法的な権益を保護し、労働関係を調整し、社会主義市場経済に適応した労働制度を建設・保護し、経済の発展と社会の進歩を促進する為、憲法に基づき本法を制定する。
第2条
中華人民共和国国内の企業、個人経営者(以下「使用者」という)及びこれと労働関係を結ぶ労働者については本法を適用する。
国家機関、事業組織、社会団体及びこれらと労働契約関係を締結する労働者に対しては本法に従って処理する。
第3条
労働者は平等に就業する権利及び職業選択の権利、労働の報酬を受ける権利、休息及び休暇の権利、労働安全衛生の保護を受ける権利、職業技能訓練を受ける権利、社会保険と福利を享受する権利、労働争議処理を提起する権利並びに法律の定めるその他の労働上の権利を有する。
労働者は労働の任務を完遂し、職業技能を向上させ、労働安全衛生規定を実行し、労働規律及び職業道徳を遵守しなければならない。
第4条
使用者は法に従って規則と制度を制定整備し、労働者の労働の権利の享有と労働の義務の履行を保障しなければならない。
第5条
国家は各種の措置を採って、就業を促進し、職業教育を発展させ、労働基準を制定し、社会収入を調整し、社会保険を完備し、労働関係を調和させ、徐々に労働者の生活水準を向上させるものとする。
第6条
国家は、労働者が社会義務労働に参加し、また労働競技及び合理化に関する提案活動を展開するよう提唱し、労働者が科学研究、技術革新及び創意工夫を行うよう奨励・保護し、労働規範及び先進勤務者を表彰し、奨励する。
第7条
労働者は法により労働組合を組織し、それに加入する権利を有する。
労働組合は労働者の合法的な権益を代表・擁護し、法により自主独立の活動を展開する。
第8条
労働者は法律の規定に従い、職工大会、職工代表大会及びその他の形式により民主管理に参加し、或いは労働者の合法的な権益の保護に関し使用者と平等な立場で協議することができる。
第9条
国務院労働行政部門は全国の労働活動を主管する。
県レベル以上の地方人民政府の労働行政部門は当該行政区域の労働活動を主管する。
第2章 就業の促進
第10条
国家は経済の発展と社会発展の促進を通じて就業の条件を創造し、就業機会を拡大する。
国家は企業、事業組織、社会団体が法律・行政法規の規定する範囲内で経営活動を開始し、また産業を振興することにより就業を増加させるよう奨励する。
国家は労働者が自由意志により組織することにより就職したり、個人経営に就業することを支持する。
第11条
地方の各レベルの人民政府は、各種の職業紹介機関を発展させ、就業のためのサービスを提供するための措置を講じなければならない。
第12条
労働者の就業に当たっては、民族、種族、性別、宗教の信仰の違いにより差別されない。
第13条
女性は男性と平等の就業の権利を有する。労働者を採用する際に国家の規定により女性に適応しないと定められた職種又はポストを除いては性別を理由に女性の採用を拒絶し又は女性の採用基準を引き上げてはならない。
第14条
身体障害者、少数民族に属する者、退役軍人の就業につき法律、法規に特別の規定がある場合にはその規定に従うものとする。
第15条
使用者が満16歳未満の年少者を採用することを禁止する。
文芸、体育及び特種工芸機関が満16歳末満の年少者を採用するときには、国家の関係規定に従い、審査批准手続きに従い許可を得るとともに義務教育を受ける権利を保障しなければならない。
第3章 労働契約及び労働協約
第16条
労働契約とは、労働者と使用者との間に労働関係を確立し、双方の権利及び義務を明確にする協定を言う。
労働関係を結ぶに当たっては労働契約を締結しなければならない。
第17条
労働契約の締結及び変更に当たっては、平等・自由意志、協議一致の原則に従うべきであり、法律又は行政法規の規定に違反してはならない。
労働契約が法に基づき締結されれば直ちに法的拘束力を有することとなり、当事者は労働契約に規定した義務を履行しなければならない。
第18条
下記の労働契約は無効とする。
(1)法律、行政法規に違反した労働契約
(2)詐欺、脅迫等の手段により締結された労働契約
無効な労働契約は締結の時から法的拘束力を有しない。労働契約の一部が無効であると確認された場合、他の部分の効力に影響がなければ、その他の部分は依然有効とする。
労働契約の無効は、労働争議仲裁委員会又は人民裁判所が確認する。
第19条
労働契約は書面形式で締結し、且つ以下の条項をそなえなければならない。
(1)労働契約の期間
(2)業務の内容
(3)労働保護及び労働条件
(4)労働報酬
(5)労働規律
(6)労働契約終了の条件
(7)労働契約違反の責任
労働契約には前項に規定する必要的記載事項の外、当事者が協議により定めたその他の内容を記載することができる。
第20条
労働契約の期間は期間の定めのあるもの、期間の定めのないもの、一定業務完成期間のものに分けられるものとする。
労働者が同一の使用者のもとで勤続満10年以上に達し、且つ当事者双方が契約の延長に同意した場合に、労働者が期間の定めのない労働契約を締結することを提示した場合には、期間の定めのない労働契約を締結しなければならない。
第21条
労働契約には試用期間を取り定めることができる。試用期間は最長6ケ月を越えてはならない。
第22条
労働契約の当事者は労働契約の中に使用者の業務上の秘密の保護に関する事項を約定することができる。
第23条
労働契約は労働契約の期間が満了したとき又は当事者の定めた労働契約終了条件が成就したとき直ちに終了する。
第24条
労働契約の当事者が協議のうえ合意に達したときには労働契約を解除することができる。
第25条
労働者が下記のいずれかに該当する場合には、使用者は労働契約を解除することができる。
(1) 試用期間中に採用条件に適合しないことが証明された場合
(2) 労働規律又は使用者の規則制度に厳重な違反があった場合
(3) 職責を著しく怠慢し、又は私利を図ることにより、使用者の利益に重大な損害を与えた場合
(4) 法に基づき刑事責任を追及された場合
第26条
下記のいずれかに該当する場合は、使用者は労働契約を解除することができる。但し、30日以前に書面を持って労働者本人に通知しなければならない。
(1) 労働者が疾病又は業務外の負傷により治療期間満了後も元の業務に従事することができず、且つ使用者が別に配属した業務に従事することもできない場合
(2) 労働者が職場に不適格であり、訓練又は職務の変更にかかわらず職務に不適確な場合
(3) 労働契約締結の際締結の条件とされていた客観的事情に重大な変化が発生し、労働契約の履行が不可能となった場合に、当事者が協議によって労働契約の変更について合意が得られない場合
第27条
使用者が破産に瀕し、法定の整理を行う期間、又は生産経営状況に重大な困難が発生し人員削減が確定的に必要な場合、30日前に労働組合又は労働者全体に事情を説明し、労働組合又は労働者の意見を聴取しなければならず、労働行政部門に報告した後、人員を削減することができる。
使用者が本規定に基づき人員を削減した場合で、6ケ月以内に新たに人員を採用する場合には削減の対象となった者を優先的に採用しなければならない。
第28条
使用者は本法第24条、第26条、第27条の規定に従って労働契約を解除する場合には国家の関係規定に従い経済補償をしなければならない。
第29条
労働者が下記のいずれかに該当する場合、使用者は本法第26条、第27条の規定に基づき労働契約を解除してはならない。
(1) 職業性疾病又は業務上の負傷により労働能力の喪失又は一部喪失が確認された場合
(2) 疾病又は負傷により規定された医療期間中の場合
(3) 女性労働者が妊娠、出産、授乳期間中の場合
(4) 法律、行政法規に規定されたその他の事情がある場合
第30条
使用者が労働契約を解除し、労働組合はこれを不適当と認めた場合には意見を提出する権利を有する。使用者が法律、法規又は労働契約に違反した場合には労働組合は再審査を要求する権利を有する。労働者が仲裁を申立又は訴訟を提起した場合には労働組合はこれを支持し援助しなければならない。
第31条
労働者が労働契約を解除する場合、30日前に書面を持って使用者に通知しなければならない。
第32条
下記のいずれかに該当する場合、労働者は随時使用者に通知して労働契約を解除することができる。
(1) 試用期間中の場合
(2) 使用者が暴力、威嚇または身体の自由を不法に拘束する手段により労働を強制した場合
(3) 使用者が労働契約に従った俸給を支払わず又は労働条件を提供しない場合
第33条
企業の労働者側は企業と、労働報酬、労働時間、休息休暇、労働安全衛生、保険福利等の事項について労働協約を締結することができる。
労働協約案は労働者代表会議又は全労働者の討議を経て採択しなければならない。
労働協約は労働組合が労働者を代表し、企業と締結する。労働組合が設立されていない企業においては労働者の推薦した代表が企業と締結する。
第34条
労働協約を締結したときは労働行政部門に報告送付しなければならない。労働行政部門が労働協約書を受理した日から1 5日以内に異議を提出しなかったときは、労働協約は効力を生じる。
第35条
法律の定めるところに従い締結された労働協約は企業及び企業の全労働者に対して拘束力を有する。労働者個人と企業が締結する労働契約の労働条件及び労働報酬の基準は労働協約の規定を下回ってはならない。
第4章 労働時間及び休息・休暇
第36条
国家は労働者の一日の労働時間が8時間を越えず、週平均労働時間が44時間を越えない労働時間制度を実施する。
第37条
出来高払制で使用する労働者に対し、使用者は本法第36条の規定する労働時間制度に基づき合理的に労働割当量及び出来高あたりの報酬基準を確定しなければならない。
第38条
使用者は労働者に毎週少なくとも1日の休日を保障しなければならない。
第39条
企業が業務上の特殊な理由により本法第36条、第38条の規定に従うことができないときは労働行政部門の許可を得てその他の勤務方法及び休息方法を採用することができる。
第40条
使用者は下記の祭日の期間、法に基づき労働者に休暇を与えなければならない。
(1) 元旦
(2) 春節
(3) メーデー
(4) 国慶節
(5) 法律、法規の規定するその他の休暇・祭日
第41条
使用者は生産経営の必要により、労働組合及び労働者と協議した上で、労働時間を延長することができる。この場合、通常1日1時間を越えてはならない。特殊な理由により労働時間を延長する必要がある場合には労働者の健康を保障する条件の下で1日3時間を越えない範囲で延長することができる。但し1ケ月当たり36時間を越えてはならない。
第42条
下記のいずれかに該当する場合には、労働時間の延長は本法第41条の規定の制限を受けない。
(1) 自然災害の発生、事故又はその他の原因により労働者の生命、健康及び財産の安全が脅かされ、緊急に処理する必要がある場合
(2) 生産設備、交通咻斅肪 |