Author:直美
1リットルの涙第二話「15才、忍びよる病魔」
病院で薬ももらう母・潮香。彼女の脳裏に浮かぶ、水野先生の衝撃的な言葉。
水野を訪ねる潮香。
「どうしました?」
「申し訳ありません。MRIの画像や検査データをお借り出来ないでしょうか?昔から、医者の梯はした方がいいと言いますし・・・」
「セカンドオピニオンですか?」
「はい、出来れば他の先生の診断や意見も伺いたいと思いまして。」
「私もセカンドオピニオンには賛成です。もし、必要であれば紹介状もお書きしますが。」
「ありがとうございます。」
「ただ、こうしている間にも、病気は進行しています。お嬢さんが自由に動ける時間は限られてます。限られた時間を有意義に過ごすためにはまず、お母さんがお嬢さんの病気を認めることが必要です。」
「娘が治らない病気ですだなんて言われて、そんなに簡単に納得したり、認めたり出来ないんです。」
潮香の固い決意を知ってか、水野は紹介状を書く。
「必ず薬はお嬢さんに服用させてください。」
「はい。」
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その頃まだ、病気のことを知らない亜也はクラスで、楽しく昼食をとっていた。
仕事場に戻った潮香はたくさんの専門書を持っていた。そして、ネットで病気のことを調べる。
合唱コンクールの曲、決まったんだね。
クラスの中で、亜也はクラスメイトに声をかける。
「富田さん、伴奏、どうしてもダメかな?」
「えーっ、面倒くさいんだけど。」
「でも、やっぱり富田さんしか、いないんだよね。お願い。」
違う生徒が、
「頭、下げればいいってもんじゃないし。」
そこへ遥斗が、
「富田、ピアノうまいじゃん。」
「別にうまくないけどさ。」
遥斗と一緒にいる生徒が、
「そう言えば、中学の合唱コンクール、富田が伴奏してたよなあ。」
「やってよ。」遥斗が言う。
「まあ、遥斗が言うならしょうがないか。」
「サンキュ。」
「ありがとね。」うれしそうな顔をする亜也。
その頃、母・潮香は調べたものをプリントしていた。内容は厳しいものだった。
バスケ部の練習中・・・
北高との練習試合に選ばれる亜也。
生物室の中へやって来る先生。
「麻生、お前、麻生圭輔(佐藤祐基)の弟なんだってなあ。そう言えばお前の兄貴も良くそうやって、亀の世話してたよ。」
「麻生さんて、お兄さんがいるんですね。」
「死んだんだよ、去年。」
亀の世話を楽しそうにする遥斗。
有る病院・・・・
「この血液検査のデータを見る限り、貧血ではないですね。」
「でも、睡眠不足だったり、ホルモンのバランスが崩れているとか、そういうことだってありますよね。」
「いえ、それらを示す所見はこのデータには見当たりません。」
「今度、娘連れてきますので、診ていただけませんか?城南大で診てもらったんなら、間違いないと思いますが。」
「でも・・・・」
「池内さん、この病気を画像で診断するのはそれほど難しくないんですよ。」
医師の突き放すような言葉にぼう然とする潮香。
池内家の夕方・・・
亜也が帰ってくる。
「じゃん、あたしね、今度の練習試合に出れることになったの。」
「おーっ、でかした!!」
「すっげー!!」
「よーし、今夜はビールで乾杯だ。」
「俺も。」
「理加も。」
「お母さんも。」
「えー、お母さんも?珍しいね。」
「だって、うれしいじゃない。飲もう、飲もう。」
「お母さんも疲れてんじゃないの。今日は私がやる。」
「いいから、早く着替えてらっしゃい。」
「平気、平気・・・・」亜也は持ち上げたフライパンを落としてしまう。
「大丈夫?」潮香は亜也を気づかう。見てられない潮香だった・・・・。
遥斗の家・・・・
父・芳文(勝野洋)が遥斗に向かって言う。
「もうすぐ、実力テストがあるそうだな。」
「はい。」
「がんばらないとね。テストの結果次第で、二年生からの特進クラスに行けるかどうか、決まるんでしょう?」母・佐知子(兎本有紀)。
「ちゃんとやれば、医学部に合格出来る。期待してるからな。」
「ごちそうさま。」その場を去るように部屋を出て行く遥斗。
遥斗は自分の部屋で、思い出していた。それは川べりでキャンプをしている所だった。
「圭輔、水汲んできてくれ。」
「うん。」
「遥斗、行くぞ。」
「あ、ウサギだ。」まだ、小学生の遥斗が駆け出していく。
「止めろ。」遥斗を遮る。
「野生のウサギは単独行動が好きなんだよ。」
「ウサギは寂しいと、死んじゃんじゃないの?」
「逆だよ。仲間が一緒にいると、ストレスを感じるんだ。遥斗に似てるよな。」
「お兄ちゃん、動物のこといろいろ知ってて、好きなんだから、動物のお医者さんになれば良いのに。」
「動物も好きだけど・・・・」
回想が途切れる。その時、撮った写真が飾られている。
「・・・・人間の方がもっと好きだから。」圭輔の言葉だった。
亜也の家では・・・
母・潮香が亜也に薬を渡す。
「なんの薬?」
「ふらつきを抑えるんですって。」あくまで冷静に、明るく振る舞う潮香。辛いでしょね。ひとりで抱え込んでるんだもんね。
「検査結果出たの?」
「うん。」潮香はキッチンへと入っていく。
「おい、薬とか検査とか、なんなんだよ。」父・瑞生は心配がる。
「ほら、最近亜也が身体がふらつくことがあるでしょう。念のために検査してもらったの。」
「で、どうだったんだよ。」
「自律神経のバランスが崩れているんですって。」
「自律神経?」亜也が言う。
「思春期にはよくあるんですって。」
「じゃあ、心配はないんだな。」
「ほらね、何でもなかったでしょ。」
「ほんとね。病院に予約入れてあるから、傷の消毒、部活行く前に、ちゃんと言ってね。」
「わかってます。」
「理加も欲しい。」
「薬だぞ。飴じゃないんだぞ。」
「でも、美味しそう。」
「うーん、にがーーい。」
夜、誰もいない部屋で、専門書と格闘する潮香。ひとりで抱えちゃダメ。夫はなんのためにいるの。
そこへ亜湖が降りてくる。
「あれ、どうした?」
「それ、こっちのセリフ。」
「あー、何だか、寝そびれちゃってね。」
「ふーん。」何かを感じているのだろうか、釈然としない感じで、戻っていく亜湖。
翌日、言われた通りに病院へ行った亜也。
診察が終わり、ひとりの少女と出会う。二人でボール遊びを始めるが・・・
「痛い、お姉さん、へたくそだね。」
「お姉ちゃんも、病気なの?」
「えー、どうして?」
「お父さん、お姉ちゃんみたいにここ怪我してたよ。」とあごの辺りを示す。
「あ、そうなんだ。」
「水野先生。」そう言って、子供は先生の元へかけていく。
「お父さんの検査終わったよ。」
「お父さんの検査、終わったって。」離れている亜也に言う。
「良かったね。」
「お姉ちゃん、バイバイ。」
母親としてだけでなく、保健師としての仕事もこなさなくてはいけない潮香。
公園で、子犬を見つけて、可愛がる亜也。やがて、子犬はどこかへ行ってしまう。それを追いかけて見つけると、遥斗がいた。
子犬を見て、二人揃って、
「麻生君の犬?」
「池内の犬?」見事にはもりましたね。(笑
「それじゃあ、やっぱ迷子か。」
「捨てられたんだろ、首輪してないし。」
「そっか。 」
持っていたパンをちぎって子犬に上げる遥斗。
「遠慮しないで食えよ。俺達ずーとこうやって、生きてきたんだから。」
「どういう意味?」
「人間と犬って言うのは、五万年前から一緒に、生きてきたんだって。」
「そうなの?」
「人間が狩りをしていた頃、猛獣が近づくと、犬が鳴いて、危険を知らせてくれたんだよ。」
「へぇー。」
「だから、人間は安心して眠ることが出来た。そのかわり、人間は犬に食べ物を与えた。そうやって、持ちつ持たれつで生きてきたってわけ。」
「ふーん。そうなんだ。」
仕事場で、ひとり調べものをする潮香。
ひとりの専門医を見つける。
家に帰るなり、車を借りて慌てて出て行く潮香。
亜也の部屋
針の穴に糸を通そうとしているが入らない。
そこへ父がやってくる。
「入るぞ。亜也、薬。」
「あ、忘れてた。」
「お母さん、仕事でこんなに遅くなることなかったよね。」亜湖が言う。
「不倫でもしてんじゃないの?」
「不倫?バカ言ってんじゃない。親をからかうのもいい加減にしろ。」
「はーい。」
「亜也、お前、お母さん、電話したか?」
「ううん。」
「電話しとけよ。怪我のこと心配しているだろうから。」
「うん、わかった。」出て行く父。
「ねえ、亜湖。悪いんだけど、これ、糸通してくれない?」
「えっー。」
「また、痩せたの。」
「そうみたい。」
「どんなダイエットしてんのよ。」
「してないよ。」
「うそー。」
「ほんと。」
「何にもしてないのに、痩せるなんて、変な病気なんじゃないの?」
「えっ?」
その頃、家を出た潮香は大学病院へ着いていた。
でも、良くこんな時間に会ってくれるね。紹介状が会ったとしても。財前教授なら、絶対に会わないだろうね。(笑
「常南大学病院の水野先生には完治しないと言われました。でも、宮下先生なら、何か新しい治療法や完治したケースをご存知なんじゃないかと思いまして。手術とか、薬とか何か方法がありますよね。」
「私は神経内科の医者になっていらい、この病気の研究を続けてきました。気がついたら、四十年余りが過ぎていました。ですが、未だに、有効な治療法が見つからないことに忸怩たる思いを抱いております。」 |