ほのかに、新しい木の香が漂う。外が見通せる明るい階段の先に、二十と四年で世を去った明治の人の世界があった。
空气中隐约漾着新木清香。外面一眼可见那台阶的尽头,是年仅二十四岁便撒手人寰、明治作家的世界。
作家・樋口一葉(ひぐちいちよう)にちなむ資料を所蔵する東京の「台東区立一葉記念館」が今月、新装なって開館した。木の香りは懐かしさを誘うが、打ち立てのコンクリートの壁からは資料を劣化させかねないガスが出るという。紙の資料は複製が展示されている。
藏放作家樋口一叶相关资料的东京“台东区立一叶纪念馆”本月,在重新装修之后对外开放。木材的清香勾起了人们深深的思念情怀,然而据说新建的混凝土墙壁上所散发的味道,有可能损坏馆中资料。因而展出的是复制文本。
館内を巡って、短く、しかし強く生きた一葉の生涯をたどると、改めてその際立った心意気が思い出された。22歳の年の日記にこう記した。「人情かみの如くうすく……世はいかさまにならんとすらん……わがこゝろざしは国家の大本(おおもと)にあり」
漫步展馆,追溯她那短暂、而又顽强的一生,不禁让人再度回忆起一叶她那鲜明的气质。她在22岁的日记中这样写道“人情薄如纸……让世界不再有伪善与虚假……我的志向中有着国家的根本大计”。
一方に、あの「たけくらべ」の哀切な世界がある。「廻れば大門(おおもん)の見返り柳いと長けれど、お歯(は)ぐろ溝(どぶ)に燈火(ともしび)うつる三階(がい)の騒ぎも手に取る如く……」(岩波文庫)。吉原の遊郭という独特な場所の周辺に生きる人々の思いを、見事に描き出した。
おはぐろ【御歯黒】[0]
〔「歯黒め」の女房詞コトバ〕 江戸時代、既婚女性が歯を黒く染めたこと。かねつけ。
ゆうかく【遊郭】 [0]もと、遊女屋が集まっていた一区画。
而另一方面,在其小说《青梅竹马》中,却又为我们描绘出一个哀愁的世界。“回望大门前长长的柳枝,淌着染黑牙水的浊水沟映照着3楼的喧嚣,一切似在眼前……”(岩波文库)。小说为我们形象地描绘出吉野妓院,这特殊场所其周边生活着人们的内心世界。
森鴎外主宰の雑誌「めさまし草」の合評欄に「たけくらべ」に関する一節がある。「此人の筆の下には、灰を撒きて花を開かする手段あるを知り得たり……此人にまことの詩人といふ称をおくることを惜しまざるなり」
在森欧外主编的杂志《觉醒草》的集体评论专栏中,有这么一段关于《青梅竹马》的文字“从此人笔下,我们可见其施肥开花之法……不要吝色我们的称呼,她是当之无愧的诗人”。
館を巡り終えて、まことの詩人の肖像が印刷された札を、1枚取り出してみた。他の札と違って、5千円は札束にはなじまないようだ。使われる時も1枚だけのことが多い。一葉は、札になっても一葉か。それが、やや切なくもあり、あの心意気の高さにはふさわしいようでもあった。今日が、命日にあたる。
参观完馆内,笔者拿出一张印有该诗人肖像的纸币。与其他纸币不同,5000日元纸币似乎不会整沓一起使用。需要时只使用一张的情况也在多数。一叶,肖像印在纸币上也还是一叶(一张)呀。这多少令人有些难过,但也十分吻合其高贵的性情。今日,正是她的忌日。
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