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《龙马奔走》之《千叶道场(3)》

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发表于 2007-11-24 17:12:56 | 显示全部楼层 |阅读模式
千叶道场(3)

  从那以后,佐奈子便再也没跟龙马说过话。
  然而,她每天都会看到龙马。因为龙马身材高大,戴上了面具、护腕后就越发地魁梧,像个粗旷的战国武士。甚至在佐奈子的梦中也出现过他的身姿。
  龙马的声音,每天也听得到。那是练功时的呐喊声。龙马的呐喊声很有特点。与其说是发自嗓音,还不如说是从腹内深处迸发出来的低沉的声响,能让对方发怵。
  (哥哥为什么独独不让坂本少爷与我过招呢?)
  对佐奈子来说,要想与心上人有所交往,除了用竹剑切磋剑术外别无他法。因此,她甚至有些抱怨哥哥重太郎扼杀了她与龙马过招的机会。
  (我迟早要与坂本少爷过一下招的)
  佐奈子在等待机会。
  一个偶然的机会出现了。
  前代将军忌辰的那天,道场照例是要休息一天的。父亲贞吉在前一天便有事去本家神田玉池千叶家,所以不在家。哥哥重太郎也是一大早便去了松平上总介家,也不在家。佐奈子被留在家里看门。
  但是,自早晨重太郎出门后,本应该没人的道场,突然响起了“哗啦”一下的开门声。佐奈子一惊,赶到廊檐下一看,原来是龙马,他正要走进道场。
  “坂本少爷”
  佐奈子不觉高声地喊道:
  “您有事吗?”
  “有事?”
  龙马一脸的疑惑。
  “来练功啊”
  “您看您已经来了,可今天是将军的忌日,道场是休息的,父亲和哥哥也都出去了”
  “哦,怪不得没人呢”
  “哥哥没说吗?”
  “好象是听说过什么的”
  (这人怎么让人觉得靠不住)
  佐奈子想到此,边想稍稍作弄他一下。
  “是忘了吧”
  “那是昨天的事了,没什么印象了”
  “是啊。是昨天的事了,所以坂本少爷您就忘了,对吧?”
  “啊,想不起来了
  “那么前天的事呢?”
  问这么无聊的问题,佐奈子自己也差一点笑出来,可龙马却一本正经地说道:
  “那自然是忘了。不过俺已经来了,就让我进去练一会儿劈空吧”
  “既然如此,那就让我来陪您走上几招吧”
  佐奈子是下了很大的决心才说的。可龙马的回答漫不经心,就像是时令问候一般,说道:
  “哦,那你就戴上护具吧”
  佐奈子反到有些慌张。瞒着父兄与龙马过招,似乎事件偷偷摸摸的隐秘之事,心中不免有些打鼓。
  怎么会这样呢?
  佐奈子要换衣服,便拉上了移门。她站着解腰带,手指有些发抖。不一会儿,腰带解下了,可手指仍在不停地发抖。

  龙马持竹剑,摆了中段的架式。
  佐奈子将剑柄置于胸前,竹剑微微后倾,轻轻地靠向右肩,左脚迈前一步。
  这个架式叫做八相。
  八相不利于进攻,却极有利于试探对手的动静。或许因为是首次与对方过招,所以佐奈子才表现出了与一个女孩子相称的慎重吧。
  龙马暗想,
  (名不虚传啊)
  心中好生佩服。佐奈子个子虽小,可摆出的架式滴水不漏。
  佐奈子看着对方面具后面的那双闪亮的眼睛,似乎发现了一个与往日不同的龙马。
  (好凶的眼睛)
  就在她动念之际,龙马似乎是看出了佐奈子的破绽,突然挥剑猛击面门。佐奈子拆招后欲击对方的手腕,龙马稍一侧身便躲过去了。“啪、啪、啪”竹剑相击了几个回合后,双方跳开,再次相隔六尺对峙着。
  佐奈子气息丝毫不乱。
  (果真比乙女姐姐要厉害的多了)
  就连佐奈子的个子,也在几个回合后越看越大了。
  最后,佐奈子,
  “呀——”
  地脆声娇叱了一声,将龙马的剑尖轻巧地一封,突进二步,飞击龙马的面门。
  龙马往后急退,在对方击空之后,挥剑猛击对方的手腕。佐奈子想有剑的护手来接这一招,可龙马的剑下手太重,佐奈子的剑“哗”地一下脱手了。
  (槽糕)
  这么想的倒是龙马。他刚一松气,赤手空拳的佐奈子猛扑上来,抱住了他的腰。
  (这丫头怎么这样?)
  当然,这是竹剑被击落后的常用手段,可是,难道她真以为能将龙马制服吗?
  龙马从下面将佐奈子的身子抄起来,同时,他沉腰发力,将她摔在道场的地板上。
  “怎么样?”
  “没完”
  倒在地上的佐奈子说道。
  “把竹剑捡起来”
  “用不着”
  也许是觉得输的太冤了吧,佐奈子不依不饶地又扑上来抱腰。
  龙马使了个绊子,佐奈子再次跌倒。可她依然不服气地跳起身来。看来不揭掉她的面具是她是不会服输的了。
  当她第三次扑来时,龙马只得将她擒住,扭脖子似地将其面具揭下。
  “我不服”
  佐奈子满脸涨得通红,两眼放光瞪着龙马。
  “你输了”
  龙马宣告道。
  “再比一次”
  “不比了”
  “为什么?”
  “和女人比武,感觉怪怪的,受不了”
  龙马的双手还保留着擒拿佐奈子时那种奇怪的,软绵绵的触觉。这种触觉一想起来就要害羞得浑身发红。龙马性急慌忙地解下了护具。

  这一年,从五月(阴历)下旬起就持续着异常的高温,到了六月份还是不下一滴雨。
  “可别闹出什么事来啊”
  道场的少师傅千叶重太郎等人围住龙马,说道:
  “那时龙马还没来江户,当然不会晓得了,从正月起,天气就开始不正常了。从正月十六起,连下了三天大雪,那雪下得那个大哟,好象天存雪的仓库在清仓大处理。老人们都说,自权现(注:德川家康的尊称,因他死后被赐东照大权现。权现本指菩萨为救众生而显身时的暂时的形象,封德川家康为权现确将其神化的含义。)入主江户以来,从没下过这么大的雪。现在却又是这般火烤似的酷热。这样的年头里总要出什么事的”
  “是吗?”
  龙马有些迟钝,他对天气不感兴趣,也没有重太郎这种从天气异常去推想天下大事的爱好。
  “二月里还发生过地震呢。在江户这里虽然是太平桶○1里水泼撒出来而已,相州(注:相模的别称,今神奈川县的大部)那边可不得了啊。从小田原的城下町到大矶、大山边、箱根、热海、三岛、沼津那边震得可厉害了,房倒屋塌,大火蔓延,还死了人呢”
  正巧那天,佐奈子也在场。自从前些天私下与龙马比武之后,她显得非常热情。
  她从一旁插嘴道:
  “还不光是气候异常哩”
  “怎么说?”
  “市民们也有些儿古怪呢”
  “什么古怪?”
  “在拜祭什么鲤鱼、大乌贼呢”
  “呵”
  佐奈子说,在上总(注:旧国名,今千叶县中部)海岸捉到一头大乌贼,身长一丈七,重五十贯(注:1贯=3.75公斤)。在伊势町展出,观者如堵,到后来,有和尚出来说这乌贼有灵性,要大家施钱。而所谓的鲤鱼,是在浅草新堀捕到的三尺多长的大鱼,捕获并剖杀了这鱼的人,不旧就害伤寒死了。人们说这是遭了鲤鱼的报应,于是大家在天台宗的龙宝寺内给起了个鲤鱼坟,江户城内的许多愚夫愚妇都去参拜。
  真是乱世之兆啊。
  “怎么样,奇怪吧?”
  龙马差点笑出来。这个江户姑娘最好凑热闹,哪里的火灾警钟一响,屋里就没她人影儿了。在土佐老家来说,是个疯丫头。与她哥哥重太郎一样地好冲动,所以,说起这种事来,那口气简直是惟恐天下不乱。
  “哦,是有点怪啊”
  “怎么有气无力的”
  见龙马一点儿也不兴奋,佐奈子有点儿急了。
  (到底还是个乡巴佬)
  这天,过了午后末时(下午二点多),龙马边出了道场,准备回藩邸去。
  他由桶町经大工町、南锻冶町这么走着,觉得市面上乱哄哄的。他抓住了一个像是救火会员的人一问,说是:
  “好象相州海滩那儿,出了个怪家伙”
  “什么怪家伙?是大乌贼,还是大鲤鱼?”
  “少爷,我也闹不清啊”
  这个救火会员也不明就里。
  “没闹清就瞎嚷嚷了?”
  “嘿嘿”
  尽管龙马很不以为然,可这便是江户人的可爱之处:不管到底是什么,反正是不得了的事,于是就嚷嚷开了。
  再往前走,发现有的人家把家具都搬到马路上来了。龙马停下脚步问道:
 “到底要出什么事了?”
  “要打仗了”
  看不出来吗?乡巴佬。那人一脸的不耐烦,撩下了这句话便把头过去忙他的活了,再问就不搭理了。
  不一会儿,从南锻冶町的拐角处,来了一个拖穿环铁棒的男人。
  “喂,拖铁棒的”
  龙马觉得这个人应该知道了。因为这是个小公差。这些人都住在各町的值宿小屋里,听从町里上差的差谴,遇上诸如修路断水啦、将军要路过本町啦之类的公事,他们便“哗啦哗啦”地拖着铁棒满大街地溜达,并扯开嗓门高喊着通知大家。
  “喂,出什么事了”
  “哎,奉行所还没告示,不清楚怎么回事,只知道相州海面上出了大事了”
  “是地震吗?”
  “好象还不是这么回子事儿”
  问来问去也总是不得要领。
  穿过锻冶桥御门回到土佐藩邸一看,里面也是乱哄哄的。
  走进长屋,见武市半平太已从桃井道场回来了,身边排放着几口刀,正要打理。
  “武市,出什么事了?”
  “啊——”
  武市依然是四平八稳的。
  “到底是怎么回事?”
  “不知道怎么回事,你就嚷嚷了?”
  武市用可怜的眼神看了眼龙马。
  “黑船来了”
  说完他“唰”的抽出刀来,开始往刀身上扑粉。
  这一日,仍嘉永六年三日。美国东印度舰队司令M.C.佩里率旗舰“萨斯奎汉那”号及“密西西比”号、“萨布拉依”号、“卡普里斯”号四舰,突然出现在江户湾的相州浦贺洋面,并在浦贺至鸭居村洋面投锚停泊。通过浦贺奉行所的当差转达了要递交了美国总统菲尔莫尔亲笔信的来航目的。
  浦贺奉行所与力(注:当时的官职名,在町奉行所隶下经办庶务、执掌搜查、捕缚等事的官吏)中岛三郎助等人与佩里的副官康亭大尉见了面,并指出:
  “根据日本国法,外国事务都在长崎办理,赶紧去长崎吧”
  可对方回答道:
  “根据本国的命令,我们来到了靠近江户的浦贺,不去长崎”
  不仅顽冥不化不听指教,舰队竟然还做好了战斗的准备。(待续)
注:
○1太平桶:日常盛满水以备火灾时能紧急使用的大水桶。见下图。
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 楼主| 发表于 2007-11-24 17:13:48 | 显示全部楼层
原文:

千葉道場(3)

それっきりで、さな子は竜馬と口をきいたことがなかった。
ところが、毎日、竜馬の姿を見ないことはない。面、籠手をつけると、竜馬は体が大きいために戦国の荒武者のように魁偉だった。さな子はその姿を夢に見ることさえあった。
声も、毎日聞く。といっても気合である。竜馬の気合は特徴が合った。声というよりも、ひくく腹の底からしぼりだして相手を戦慄させるような響きだった。(兄上は、なぜ坂本様にかぎって私と立ち合わせとなさらぬのかしら)
さな子の場合、想う相手と交渉をもつのは、竹刀をとって剣技を争う以外に手がないのである。その立会いの機会さえ握り潰している兄の重太郎を恨めしく想った。
(いつか、坂本様と立ち会って見せる)
さな子は、機会を待った。
機会は偶然やってきた。
前将軍の祥月命日の日は、道場は休む慣習になっている。その日、父の貞吉は前日から本家の神田お玉ヶ池千葉家に所用があって留守であった。兄の重太郎も朝から松平上総介屋敷に出むいて、いない。
さな子は、留守居をした。
ところが、朝、重太郎が出た後、人の気のないはずの道場の戸が、ぐゎらりと開く音がしたのである。さな子が驚いて縁側へ出て見ると、竜馬であった。道場へ入ろうとしている。
「坂本様」
思わず、大声で呼んで、
「何か御用でございますか」
と言った。
「御用?」
竜馬は、怪訝な顔をした。
「稽古に来たんです」
「あの、せっかくでございますけど、きょうはお命日で、道場はお休みでございます。父も兄も、他行しております」
「なるほど」
「兄がそう申しませんでしたかしら」
「そういえば、なにか聞いたような覚えたありますな」
(なんと頼りない人)
と思ったが、さな子はちょっといじめてやろうと思い、
「お忘れになりましたのね」
「なにぶん昨日のことですからな。覚えているほうがどうかしている」
「まあ、昨日のことなら、もう坂本様はお忘れになりますの」
「ああ、忘れますとも」
「すると、おとといのことならば?」
われながらつまらぬ事を聞いていると思って危うく噴出しそうになったが、それでも竜馬は大真面目で、
「むろん、忘れます。しかしせっかく参ったのですから、道場を拝借して一刻ばかり素振りでもして帰りますが、よろしゅうでしょうな」
「あの、それならば、さな子はお相手申し上げてよろしゅうございましょうかしら」
思い切って、そう聞いてみた。ところが竜馬は時候の挨拶でもするような調子で、
「ああ、防具をつけなさい」
かえってどぎまぎしたのは、さな子のほうである。父や兄に隠れて竜馬と稽古試合をするだけのことに、なにか密ごとでもするようなときめきを覚えるのは、どうしてだろう。
さな子は着替えるために障子を閉めた。立ったまま、しごきを解いた。解く指が、震えている。やがて帯がとけた。ふるえは、とまらない。
竜馬は、竹刀を中段に取った。
さな子は、左コブシを鳩尾の前に浮かし、竹刀をわずかに後ろへ傾けて右肩に軽くひきつけ、左足を前に踏み出した。
この構えを八相という。
攻撃には有利ではないが、敵の動きを探望するには、至極いい。初めて立ち会う相手に、さな子は女らしく慎重な態度をとって見せたのだろう。
竜馬は、内心、
(やっぱり、出来るなあ)
と感心した。小柄なさな子の構えには、毛ほどのすきもない。
さな子のほうも、面鉄の奥で光っている相手の眼をみて、いつもとはまったく違う竜馬を発見した思いだった。
(怖い眼)
思った瞬間、さな子の隙を見たのか、猛然と竜馬の竹刀が面上に落下した。応じ返して籠手を打とうとしたが、竜馬はわずかに交わし、数合パンパンと打ち合って、再び双方さがって六尺の間合をとった。
さな子は、息を乱れない。
(なるほど、乙女姉さんよりはるかに強い)
小柄なさな子は、打ち合うほどにだんだん大きく見えてくるのである。
最後にさな子は、‘
「やあああ」
と透き通るような掛け声をかけ、竜馬の剣先をたくみに押さえつつ、二歩進んだ。とみるまに、飛び込んで面にきた。
とっさに竜馬は後ろにさがった。虚を撃たせるとともに振りかぶって激しく籠手に打ち下ろしたとき、さな子は鍔元で受けつもりだったが、よほど撃ちが激しかったのか、さな子の竹刀が、ガラリと手から落ちた。
(しまった)
と思ったのは、竜馬のほうであった。安堵したとたん、素手のさな子が飛び込んできて、腰に組み付かれてしまっていた。
(女だてらに、なんと言う娘だ)
竹刀を落とされた時の常法とは言え、竜馬を組み伏せられると思っているのだろうか。
竜馬はさな子の胴下を掴んで前に浮かせると同時に、深腰を入れて力任せに道場の板敷に叩きつけた。
「どうた」
「まだまだ」
さな子は、倒れたままいった。
「竹刀を拾いなさい」
「いやです」
よほど口惜しいのだろう。さらに、組み付いてきた。
竜馬は足払いをかけた。さな子は倒れたが、まだ屈せずに飛び起きた。面を脱がされるまでは負けではないというつもりらしい。
三度目に組み付いてきたとき、竜馬はやむなくさな子をねじ伏せ、首をねじ切るようにして、スポリと面を脱がした。
「くやしい」
顔を真っ赤に上気させながら、きらきら光る眼で竜馬をにらみすえている。
「あなたの負けだ」
竜馬が宣告した。
「もう一度、お願いします」
「いやだ」
「なぜです」
「女は、面妖(みよう)な感じだから困る」
さな子をねじ伏せたときの変に柔らかい感触が、両腕に残っている。それがよみがえって来ると身の内が赤くなるほど恥ずかしくなり、竜馬はそそくさと防具を脱ぎ始めた。

この年、五月(陰暦)下旬から異常高温がつづき、六月に入っても一滴の雨もふらなかった。
「なにか、事がおこらねばよいが」
道場の若先生千葉重太郎なども、竜馬をつかまえて、そんなことを言った。
「竜さんはまだ江戸に来ていなかったから知るまいが、正月からこっち、天道がくるいはじめたようだよ。正月の十六から三日間、天の雪の蔵ざらえかと思うほどの大雪がふってね。年寄りたちも、家康さま御入府いらいの大雪だろうといっていた。それにこの煎るような暑さだ。こういう年には、どえらいことが持ち上がるものだぜ」
「そうかな」
竜馬はすこし鈍感なのか、あまり気候のことには興味がないし、また重太郎のように気候の異常から天下の大事を予想するような趣味も持っていない。
「二月には地震もあったんだ。江戸は用水桶の水がこぼれる程度だったが、相州のほうでは大変だってそうだ。小田原の城下から大磯、大山辺、箱根、熱海、三島、沼津のほうまで家がひっくりかえったり、大火事が出たり、人死が出たりして大騒ぎだったらしい」
たまたま、さな子が同席していた。彼女は先日、竜馬と内緒の立会いをして以来、ひどく親しみをみせている。
横から口を入れて、
「天候だけではないのでござますよ」
「というと?」
「町家の者も、どこか変なのです」
「どのようにおかしいんです」
「鯉や、大烏賊をまつったり」
「ほう」
さな子のいうところでは、その、大烏賊は上総(かずさ)海岸で取れたもので、一丈七尺もあり、目方は五十貫という。それを伊勢町で見世物にしたところ大変な人気で、しまいにはそれを神体にして賽銭をむさぼる行者も出てきた。鯉というのは浅草新堀で取れた三尺あまりの大魚で、それを獲って殺した者が、にわかに傷寒で死んだ。鯉のたたりであるというので天台宗竜宝寺境内に鯉塚を作ったところ、どういうわけか、江戸の町々の痴呆の男女が集まってきて、しきりと参拝しているという。
乱世の兆しらしい。
「ねえ、変でしょう?」
竜馬は噴出しそうになった。この江戸娘は火事見物が大好きで、半鐘が鳴れば、もう屋敷には居ない。国元の言葉でいうハツタカ(お転婆娘)なのだ。兄の重太郎ともども血の気が多いらしく、まるで天下の大異変を待ち構えているような口ぶりなのである。
「まあ、変ですな」
「なんと、気のなさそうなご返事」
さな子は、竜馬が一向に昂奮して来ないのが、じれったいらしい。
(やはり、田舎者なのかしら)
その日、竜馬は日ざかりの八ツさがりに道場を出て、藩邸へ戻ろうとした。
桶町、大工町、南鍛冶町と歩いてゆくうちに、市中がなんとなくざわめいている。
鳶の者らしいのを捕まえて聞くと、
「なにやら、相州の浜のほうで、大変なものがあがったらしいんで」
「なんだ、その大変なものはとは。烏賊の口か、それとも鯉か」

「さあ、旦那。それが」
鳶の者は、知らないらしい。
「知らないで、騒いでいるのか」
「へい」
そこが江戸者の愛嬌なところだ、と竜馬はおかしかった。騒ぎのモトが分からなくても、大変だから大変だと騒いでいるのだろう。
どんどん行くと、家財道具を往来に運び出している家があった。竜馬は立ち止まって、
「いったい、なにが、始まるんだ」
「戦でさ」
知らないのか、田舎者め、といった顔でプイと横を向き、それっきり、あとは血相をかえて立ち働くばかりで、なにを聞いても答えてくれない。
そのうち、南鍛冶町一丁目の角で、向こうから金棒をひてやってくる男に出会った。
「おい、金棒引き」
この男なら知っているだろうと思ったのである。番所の番人のことだ。町々の番小屋に住み、町役人の指図をうけ、道普請で水切れになるとか、当町を将軍が通過されるといったようなことで、何事でも町内に触れ渡すべきことがあれば、男は音やかましく金棒をガラガラ引きながら一巡し、声を張り上げてそのことを知らせるのである。
「なにか、あったのか」
「へい、お奉行所からまだお達示がないのでよく分かりませぬが、相州の海のほうで大変があったらしゅうございます」
「地震か」
「なかなか、そんなものではねえらしい」
要領を得ない。
鍛冶橋御門を入って土佐藩邸まで戻ってみると、藩邸のなかも騒然としている。
お長屋に入ると、武市半平太もすでに桃井道場からもどっていて、身辺に幾口かの刀を並べて手入れをしょうとしている。
「武市さん、なにやら大変らしいなあ」
「ああ」
武市は相変わらず、落ち着いた男なのである。
「一体、どう大変なのだ」
「知らないで君は騒いでいるのか」
武市は竜馬を哀れむように見て、
「黒船が来たのだ」
スラリと刀を抜き、ほたほたと打粉を打ち始めた。
この日が、嘉永六年六月三日であった。米国の東印度艦隊司令長官M.C.ペリーが、旗艦サスクエハナ以下、ミシシッピー、サブライ、カプリスの四艦を率いてにわかに江戸湾口の相州浦賀沖に現れ、浦賀沖から鴨居村沖にかけて投錨し、浦賀奉行所役人を通じ、将軍に米大統領フィルモアの親書を呈するために来航した旨を伝えた。
浦賀奉行所与力中島三郎らがぺりーの副官コンテー大尉に会い、
「日本の国法として外国のことはすべて長崎で取り扱うことになっている。早々に長崎へまわられよ」
とさとすと、相手は、
「本国の命令で、江戸に近い浦賀に来た。長崎へはまわらない」
頑として聞かないばかりか、艦隊は、戦闘準備をさえ整えている。
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发表于 2007-11-25 16:33:31 | 显示全部楼层
8错8错~~~
楼主的功底很高啊~~
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