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「尊厳死」と「安楽死」は、我々が一般的に耳にする場合と、専門家が用いる場合とで若干異なっています。まず、前者の一般的な区分から見ていきましょう。
不治の病気や重度の障害など、患者本人にとって極めて苦痛で、回復の見込みも無いような場合、時として次のような措置が取られる場合があります(この場合倫理的な問題は別とします)。
1)延命治療を休止する。
2)患者の命を絶つ行為をしたり、自殺を幇助(ほうじょ)する。
一般的には、1)の方を「尊厳死」、2)の方を「安楽死」と呼ぶ傾向があるようです。
これに対し、専門的に用いられる時は、「安楽死」自体が1)と2)両方の意味を持っている場合がしばしば見受けられます。すなわち、「安楽死」を「消極的安楽死」と「積極的安楽死」の二つに分類するという考え方です。つまり、一般に「尊厳死」と呼ばれているものを「消極的安楽死」と呼び、「安楽死」と呼ばれているものを「積極的安楽死」と呼ぶということです。
また、「尊厳死」という語には、先の1)の意味以外に、もっと広い意味もあります。すなわち、死を迎える本人が誇りをもって、あるいは個人の理念に従う形で死ぬということです。これは延命するかしないかという問題ではなく、個人の納得する形であれば、あらゆる場合が「尊厳死」と呼び得るということになります。 |
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