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愛情
彼は自分の心が、常になく落ち着き、和(やわ)らぎ、澄(す)み渡(わた)り、そして幸福に浸っていることを感じた。そして今、込(こ)み合(あ)った電車の中でも、自身の動作が知らず知らず落ち着き、何かしら気高(けだか)くなっていたことに心づいた。
彼は嬉しかった。その人を美しく思ったと言うことが、それで止(と)まらず、自身の中に発展し自身の心や動作に実際それほど作用したと言うことは、これは全くそれが通(とお)り一遍(いっぺん)の気持ち出ない証拠(しょうこ)だと思わないではおられなかった。
——志賀直哉 「暗夜行路」
爱情
他感到自己的心情少有的平静、安详、清澄,感到自己沉浸在幸福之中。他注意到即使现在拥挤的电车里,自己也在不知不觉之中变得举止稳重、得体起来了。
他内心欢喜。他觉得那个人很美,这种感觉在胸中不可遏止地膨胀起来,竟然实实在在地在影响自己的心情和行为,以至他不得不相信这完全不是一闪即过的暂时的感觉。
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