鯛(たい)は「おめでたい」魚です。祝いの席にはかかせません。英語での表記で「日本」を冠せられるように日本を代表する魚です。栄養素も高タンパク低脂肪で申し分なく、まさに「百魚の王」と呼ばれるにふさわしい魚と言えるでしょう。
鯛(たい)の歴史・由来
●古(いにしえ)より日本人ゆかりの魚
日本人は古くから鯛を食用としていました。縄文人が真鯛を食べていたことは、貝塚から鯛の骨が出ることから明らかになっています。
神話にも「赤女(あかめ)」の名で登場しています。
平安時代には「平魚(たいらうお)」という記述が「延喜式(えんぎしき)」にあります。「平魚(たいらうお)」と呼ばれた由来は、体形が平らなところからつけられためで、「たい」という名は「たいらうお」が略されたためという説があります。
●鯛が一番になったのは江戸時代から
今でこそ鯛は魚の中で一等の座にいますが、鯛が一位とされたのは江戸時代からのことでした。
それ以前で最高とされた魚は「鯉(こい)」でした。これは都の京都が内陸にあったので、手に入れられる鮮魚では淡水魚である鯉が第一等であったためです。
兼好法師も「徒然草」の名で「鯉ばかりこそ、御前にても切らるるものであれば、やんごとなき魚なり。」と書き、鯉を魚類で一番としています。
ちなみに、明治時代以前は、鯛と言えば真鯛がほとんどでした。遠洋漁業の発達により沖合いのちだいやきだいも獲られるようになりました。
●名前の由来
「鯛」という字は、もともと中国では別の魚のことを指していたのですが、日本人が「たい」という魚のことを書くのに当てはめてしまったそうです。また「たい」という名前は、えびす様が釣る魚だから「めでたい」魚で、それを略して「たい」といったという説や、平らな魚、「たいらうお」が略して「たい」になったという説、一級品としての魚「大位(たいい)」から「たい」になったという説など、様々な説があります。
■鯛(たい)の豆知識
●なぜ縁起もの?
一般的には「めでたい」の「たい」に通じるためと言われていますが、単に語呂(ごろ)合せだけでなく、鮮やかな赤い体色や、勇壮な姿形、上品な味など、他の魚と比べて、どれをとっても優れていて、日本人の心根に通じるところがあったためと思われます。特に古くから「赤女(あかめ)」と呼ばれたその赤い色は、赤をおめでたい色とする日本人の風習に受け入れられたのでしょう。
●真鯛の雄と雌の見分け方
頭がこぶ状に張り出しているものは雄、頭全体が丸みを帯びているものは雌です。
●黒鯛の性転換
黒鯛(くろだい)や平鯛(へだい)は成魚になると性が変わることが知られています。幼魚は全て雄ですが、途中雌雄同体の時期があり、5年後にはほとんどが雌に性転換します。
●蝦(えび)で鯛を釣る
ことわざにもあるように、鯛はえびを好みます。鯛が赤いのは、えびの殻に含まれるアスタキサンチンという色素のためです。鯛はあごが良く発達し、丈夫な臼歯(きゅうし)で、固い甲羅もバリバリと噛み砕きます。甲殻類のほか、貝やヒトデ、イカ、ウニなどを食べる種類もあります。
●鯛は長命
魚は一般に短命のものが多いのですが、真鯛は長命で、通常30年くらい、長生きするもので40年も生きるそうです。
老年の真鯛は体がいくぶん細くなり、顔つきも少し尖ってくるそうです。 |