[川端康成] 「乙女の港」

乌龙茶

[川端康成] 「乙女の港」

略百合   不喜者慎入

川端 康成（かわばた やすなり、1899年〈明治32年〉6月14日 - 1972年〈昭和47年〉4月16日）は日本の小説家。

大阪府大阪市北区此花町（現在の天神橋付近）生れ。東京帝国大学文学部国文学科卒業。菊池寛に認められて文壇入り。横光利一らと共に『文藝時代』を創刊し、新感覚派の代表として活躍。『伊豆の踊子』『雪国』『千羽鶴』『古都』など日本の美を表現した作品を発表し、1968年に日本人初のノーベル文学賞を受賞した。1972年、ガス自殺した。

川端康成『乙女の港』（復刻版，国書刊行会。元版は実業之日本社）がアカデミイ書店から消えていたのだった。

復刻版で5,000円という値段に躊躇していたのだけど、売れてしまったとなると気になってしまう。図書館で新潮社の川端康成全集第20巻を借り出して読んでみた。

「乙女の港」は横浜の女学校での新入生と上級生との「エス関係」と呼ばれる交歓を描いた小説。「エス」はシスターの頭文字から。同性愛的な雰囲気をたたえた友愛の情、というくらいか。

物語の骨格を取り出せばたわいもないものなのだけれど、無邪気な女学校１年生の少女の言動が上級生ふたりを動かす、というのはなかなかに読ませる。

主人公の「お姉さま」である洋子が美しい。美しいながらも具体的な容貌等の描写がないのがいかにも川端キャラ、ということになるらしい。

普段は見せない普段着（着物）を憧れのお姉さま（洋子）に見せる前の主人公（三千子）の高揚など、嗚呼、川端先生、少女の気持ちの機微を流石にうまくお書きです。それがあるから、三千子と洋子が気持ちを通わせた後、洋子が「いつもの制服」で来ることを三千子に指示するシーンなども印象に残るわけで。川端先生、あなたも女の子なのね(((c)皆川ゆか「荒野の基督」))。

心理小説とはこういうものか。

で、読んだあと、やはり復刻版でも買っておくべきだったかな、と後悔した。

全集でも正字正仮名で書かれてはいるのだけれど、やはりこれは中原淳一の挿画がある大判のもので読んだほうが気分が出るというもの。また復刻版でないかなあ。

ところでこの小説や、吉屋信子の少女小説を読むと、「マリみて」がいかに少女小説の伝統に拠って書かれているかが分かる。理想世界？　イエス。少女趣味上等！

凉凉

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