[wma]http://www.piekee.com/paipai/zjpp082812263318866/audio/paipai_audio_204909114573059_88012.mp3[/wma]
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勉強時間が終わると、たいてい僕は十二畳ほどのリビングルームに通されて、彼女の家族と紅茶を飲みながら話をした。
仕事が暇な時は社長も一緒にパイプをくゆらせながら雑談に加わり、結構にぎやかになった。奥さんは、いつも僕の大学の
話を聞きたがった。その日の講義の事や最近の流行のことなどをとりとめなく話すと、結構喜んで聞いてくれているようだっ
た。リビングルーにはピアノが置いてあった、それは、明らかに僕の生徒である娘のためのものだった。一度だけ、彼女が
引くのを聞いたことがある。僕が何か弾いてほしいというと、奥さんも是非そうしてあげなさいと促し、彼女はあまり気乗りの
しない様子でうまくないからとか、練習中だからとかはにかんでいたが、結局ピアノの前に座ったのだった。彼女が弾いた
曲は、「亡き王女のための??」だった。僕も知っている美しい曲だ。____________________________________
当時、僕には決まった恋人もいなかったが、もちろん彼女とはあくまで家庭教師と生徒という関係で接していた。今か
ら思うと、彼女を学園祭に誘ってやるくらいのことはしても、別に罪はなかったのかもしれないが、僕は彼女の家以外で彼
女と会うことは一度もしなかった。彼女の家族は僕に好意的だったし、もしかすると、大人しすぎる彼女を一度くらいどこか
に連れ出してくれることを望んでいたのかもしれないけれど。 |