すっかり熱中してしまってね
人物:部長 部下(または接待側)
人物:部长 部下(或接待方)
場面:雑談、または接待の場で
部下:部長は俳句をお詠みになるのだそうですね。それも、大変な名手でいらっしゃると伺いましたが。
部長:いやいや、ほんの手慰み程度で、大したことはないんだよ。
部下:どういうきっかけでお初めになったのですか?
部長:もとはと言えば、家内がやっているのに付き合うつもりで始めたんだが、そのうちこちらのほうがうが、すっかり熱中してしまってね。
部下:ご夫婦で共通のご趣味とは、結構ですね。
部長:いや、それが、家内のほうは、熱しやすく冷めやすい性質なものだから、すぐに飽きてしまって、今では水墨画に凝ってるよ。
部下:ご自身では、どういった俳人がお好みですか?
部長:俳句を始める前から、個人的には蕪村が好きだったんだがね。近頃ちまたでも蕪村のファンは増えているらしいね。映像的な手法が好まれるのだそうだよ。
部下:やはり、同人会かなにかに所属しておられるのですか?
部長:うん、まあ。しかし、同人会というと聞こえはいいが、要するに、下手の横好きの集まりだよ。
部下:では、みなさんで雑誌の賞に応募なさったり?
部長:うーん、たしかに投稿マニアの人というのはいるが、僕はあまり好きになれなくてね。あれはあれで、励みにはなるのかもしれないが、どうも虫が好かないんだ。
部下:と言いますと?
部長:われわれ素人が句を詠むのは、所詮遊びにすぎないのだから、こだわりすぎは、鼻につくということさ。だから、アマチュアがプロ気取りで俳句論をぶつなんてのは、ぼくに言わせれば、不愉快の極みだね。
部下:なるほど。 |