ＷＴＯの概要

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　世界貿易機関（ＷＴＯ）は、国家間貿易についての世界的なルールを扱う唯一の国際機関です。ＷＴＯの主要な機能は、貿易が可能な限り円滑に、予測可能に、そして自由に流れることを確保することです。



　その結果、貿易は可能な限り円滑に、予測可能に、そして自由に流れることが確保されています。消費者も生産者も、彼らが用いる最終製品、部品、原材料及びサービスの確実な供給とより広範な選択肢を享受できることを知っています。生産者も輸出者も、外国市場が開放され続けることを知っています。



　また、その結果、より希望に満ちた、平和な、予測可能な経済世界が実現します。ＷＴＯでの決定は一般的に全加盟国のコンセンサスによりなされ、そしてそれらは各加盟国の国会で批准されます。貿易摩擦はＷＴＯの紛争解決手続に移され、そこでは協定と約束の解釈、そして当該国の貿易政策をそれらに整合的なものにすることを如何にして確保するかに焦点が当てられます。このようにして、貿易紛争が政治的、軍事的紛争に拡大する危険を減らしています。



　貿易障壁を削減することにより、ＷＴＯの体制は、人々と国々の間のその他の障壁も打破しているのです。



　この体制は、多角的貿易体制と呼ばれており、その中心がＷＴＯ協定です。この協定は世界の大多数の貿易国により交渉され、署名され、各国の国会で批准されたものです。この協定は国際的な商取引の法的な基本的ルールです。基本的に、これらは加盟国の重要な貿易上の利益を保障する契約です。この協定はまた、万人の利益のため、各国の貿易政策を協定の範囲内にとどめるよう政府を拘束します。



　ＷＴＯ協定は各国政府により交渉され署名されたものです。しかしその目的は、モノ及びサービスの生産者、輸出者、輸入者が営業活動を行うことを助けることにあります。



　ＷＴＯの目標は、加盟国の人々の福利厚生の向上にあるのです。

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１．多角的貿易体制の過去・現在・未来



　世界貿易機関は１９９５年に活動を開始しました。ＷＴＯは最も若い国際機関の一つですが、第二次世界大戦後に設立された「関税と貿易に関する一般協定」（ガット）の後身にあたります。



　したがって、ＷＴＯは若いのですが、ガットの下で立ち上げられた多角的貿易体制は約５０年の歴史を有しています。多角的貿易体制は１９９８年５月１９日にジュネーブにおいて、多くの国家首脳及び政府首脳の出席の下でその５０周年が祝賀されました。



　この５０年間は世界貿易が例外的といえる成長を収めた期間でした。商品の輸出は毎年平均６％増加しました。１９９７年の総貿易額は１９５０年の１４倍でした。ガットとＷＴＯは、空前の成長をもたらした強力で繁栄的な貿易体制の創出を助けました。



　多角的貿易体制は、ガットの下で累次開催されたラウンドと呼ばれる貿易交渉を経て発展しました。初期のラウンドは主に関税引き下げを対象としていましたが、その後、交渉にはアンチ・ダンピングや非関税措置などの他分野も含まれるようになりました。最近のラウンドである、１９８６年から９４年に行われたウルグァイ・ラウンドはＷＴＯの設立を導きました。



　交渉はこれで終わったわけではありません。幾つかの交渉はウルグァイ・ラウンドの終了後も継続しました。１９９７年２月には電気通信サービスに関する合意が成立し、６９の政府がウルグァイ・ラウンド合意を超える広範な自由化措置に合意しました。



　同年、４０の政府が情報技術製品の関税撤廃交渉を成功裡に終結させ、７０の加盟国が、銀行、健康保険、財産保険及び金融情報サービスの貿易の９５％以上をカバーする金融サービス合意をまとめました。



　１９９９年５月にジュネーブで開催された閣僚会議では、ＷＴＯ加盟国は地球規模の電子商取引に関連する貿易問題について検討を行うことに合意しました。



　２０００年には、農業、サービス、そして他の広範な分野に関する新たな交渉が開始される予定です。

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２．組織



　ＷＴＯの主要な目的は、貿易の流れを円滑に、自由に、そして予測可能にすることです。ＷＴＯはそのために次のことを行っています。

　　・貿易協定の哂肻

　　・貿易交渉の場の提供

　　・貿易紛争の取り扱い

　　・各国の貿易政策の監視

　　・技術支援と訓練プログラムを通じた開発途上国の貿易政策の支援

　　・他の国際機関との協力



構造



　ＷＴＯは世界貿易の９０％以上を占める１３０カ国以上の加盟国を有しています。現在３０カ国以上が加盟交渉中です。



　ＷＴＯの決定は加盟国全体によりなされます。これは一般的にコンセンサスによってなされます。多数決による決定も実施可能ですが、ＷＴＯでは一度も用いられてはいませんし、ＷＴＯの前身であるガットの下でも非常に稀でした。ＷＴＯの協定は全ての加盟国の国会で批准されています。



　ＷＴＯの最高レベルの意思決定機関は閣僚会議であり、少なくとも２年に１回開催されます。



　閣僚会議の下では一般理事会（通常はジュネーブの大使や首席代表が出席しますが、加盟国の首都よりの出張者が出席することもあります。）がジュネーブのＷＴＯ本部において年に数回開催されます。一般理事会は、貿易政策検討機関及び紛争解決機関としても会合を開きます。



　その次のレベルとしては、物品理事会、サービス理事会、及び貿易関連知的所有権理事会があり、一般理事会に報告を行います。



　更に、数多くの専門分野の委員会や作業部会、作業会合が、個別協定及び、環境、開発、加盟交渉及び地域貿易協定といった他の分野を取扱います。



　１９９６年にシンガポールで開催された第１回閣僚会議はこの組織に３つの新たな作業部会を加えました。これらは貿易と投資の関係、貿易と競争政策の相互作用、そして政府調達の透明性を扱います。



　１９９８年にジュネーブで開催された第２回閣僚会議では、閣僚たちは、ＷＴＯが既存の理事会や委員会を活用して電子商取引の分野に関する研究を行うことを決定しました。



事務局



　ＷＴＯの事務局はジュネーブにあり、事務局長以下約５００名の職員がいます。ジュネーブ以外には事務所はありません。ＷＴＯの決定は加盟国自身により行われ、事務局には他の国際機関の事務機構に与えられているような意思決定機能はありません。



　事務局の主要な職務は、様々な理事会及び委員会並びに閣僚会議のために技術的支援を提供すること、開発途上国に技術支援を提供すること、世界貿易を分析すること、及びマスコミや広く一般に向けてＷＴＯの活動を説明することですです。



　事務局はまた、紛争解決手続における一定の法的支援を行い、ＷＴＯ加盟を希望する国の政府に対して助言を行っています。ＷＴＯのこれまでの年間予算は約１億１７００万スイス・フランです。

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３．ＷＴＯ協定



　どのようにして貿易をできるだけ公正で、かつできるだけ自由であることが確保できるでしょうか？　それは、交渉によりルールを定めてそのルールと共存することにより確保できるのです。



　ＷＴＯのルール（協定）は加盟国間の交渉の成果です。現在の協定は、１９８６－９４年に行われたウルグァイ・ラウンド交渉の成果物であり、当初のガット（関税と貿易に関する一般協定）の大幅な改定を含むものです。



　ガットは現在、物品の貿易に関するＷＴＯの基本的なルールブックとなっています。ウルグァイ・ラウンドはまた、サービスの貿易、貿易に関連する知的所有権、紛争解決、貿易政策の検討などを扱う新しいルールを作り出しました。ＷＴＯ協定の全文は約３万ページにのぼり、６０の個別協定と、各加盟国が関税引き下げやサービス市場開放などの特定分野において行った個別の約束（約束表）からなっています。



　これらの協定を通じて、ＷＴＯ加盟国は権利義務が明確で差別のない貿易体制を邌婴筏皮い蓼埂８鞴�は自国からの輸出品が相手国の市場において一貫性をもって公正に取り扱われる保障を受けています。各国は自国の市場への輸入品についても同様に取り扱うことを約束しています。この貿易体制はまた、開発途上国に対し、約束を適用する上での若干の柔軟性を与えています。



モノ（物品）の貿易



　多角的貿易体制はモノの貿易から始まりました。１９４７年から１９９４年まで、ガットは関税引き下げやその他の貿易障壁の削減について交渉を行う場でした。ガットの条文は無差別原則などの重要な規律を定めています。



　１９９５年より、改定されたガットはＷＴＯのモノの貿易に関する協定の傘となりました。ガットの附属書には、農業、繊維といった特定の分野を取り扱うものや、国家貿易、製品の規格、補助金、ダンピングに対してとられる措置といった特定の問題を取り扱うものがあります。



サービスの貿易



　外国でビジネスを行おうとする銀行、保険会社、電気通信業者、旅行業者、ホテル、咚突嵘绀胜嗓犀F在、これまでモノの貿易のみに適用されてきた、より自由で公正な貿易という原則を同様に享受できます。



　これらの原則は、新しい、サービスの貿易に関する一般協定（ＧＡＴＳ）に規定されています。ＷＴＯ加盟国はまたＧＡＴＳの下で、自国のサービス分野のうちどの分野を外国との競争に開放していくか、また自国の市場がどのくらい開放されているかに関する個別の約束を行っています。



知的所有権



　ＷＴＯの知的所有権協定はアイデアと創造性に関する貿易と投資についてのルールを定めています。この規律は、知的所有権、すなわち、著作権、商標権、製品にかかる地理的表示、工業デザイン、集積回路の配置、その他貿易上の企業秘密などの非公開情報が、貿易に際して保護されるべきことを規定しています。



紛争解決



　ＷＴＯの紛争解決手続了解の下での貿易紛争の解決は、ルールを適用して貿易が円滑に流れることを確保する上で不可欠です。



　加盟国は自国の協定上の権利が侵害されていると考えるときに紛争をＷＴＯに持ち込みます。特別に任命された独立した専門家による判断は、協定の解釈及び当事国の約束に基づいて下されます。



　ＷＴＯの体制は加盟国が相互間の意見の相違を協議により解決することを奨励しています。協議が失敗に終わった場合、当事国は、専門家からなる小委員会による裁定の可能性や、法的論点に関する上訴の機会を含め、慎重に策定された段階毎の手続に従います。

　この体制に対する信頼はＷＴＯに持ち込まれた紛争案件数によっても裏打ちされています。ガット時代（１９４７－９４年）を通じて扱われた紛争案件が約３００件であったのに対し、１９９５年の設立以降、１９９９年３月現在で既に１６７件の紛争案件がＷＴＯに提起されています。



貿易政策検討



　貿易政策制度の目的は、透明性を高め、その国が採用している政策に対する理解を深め、その政策の影響について評価することです、多くの加盟国はこの制度を、自国の政策に対する建設的な意見聴取の機会であるとみています。



　すべてのＷＴＯ加盟国は定期的に検討の対象となります。検討には、当事国及びＷＴＯ事務局による報告書が含まれます。ＷＴＯ設立以降これまでに４５カ国以上に対する検討が行われました。

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４．開発途上国



　ＷＴＯ加盟国の４分の３以上は開発途上国あるいは後発開発途上国です。ＷＴＯの各協定にはこれらの加盟国に対する特別の規定が設けられています。特別の規定には次のような事項が含まれています。

　・協定や約束の実施に関する期限の延長

　・貿易の機会を増加させる手段

　・途上国の貿易上の関心を考慮するよう全ての加盟国に求める規定

　・ＷＴＯでの活動、紛争解決、及び技術的基準の適用のための基盤整備に対する支援



　１９９７年、後発開発途上国のための貿易拡大及び技術支援に関するハイレベル会合が開催され、途上国の関心事項が注目されるようになりました。この会合には６つの国際機関が携わり、後発開発途上国が貿易のための能力向上を支援するための「包括的枠組」及び、更なる特恵的市場アクセス合意がまとめられました。



　貿易と開発委員会と、これを補助する後発開発途上国に関する小委員会は、開発途上国の特別な関心事項を追求しています。同委員会の責務は、協定の適用、技術支援、及び、世界の貿易体制への開発途上国の参加の拡大です。



技術支援



　ＷＴＯは開発途上国に対して毎年約１００件の技術支援事業を行っています。ＷＴＯは毎年平均３回、ジュネーブで途上国政府関係者を対象に貿易政策講座を開催しています。また特にアフリカに重点を置きつつ世界の各地域を対象に地域セミナーを開催しています。中央計画経済から市場経済への移行中の国々の政府関係者に対してもジュネーブにおいて訓練講座を開催しています。



　１９９７年から９８年にかけてＷＴＯは、約４０の後発開発途上国政府の貿易担当部署に、レファレンス・センターを設立し、政府関係者がコンピューターを通じてインターネットにアクセスし、ＷＴＯの公文書及び関連資料の膨大なデータベースを通じてジュネーブのＷＴＯで何が行われているかを把握できるようにしました。