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本帖最后由 cike207 于 2010-10-4 09:38 编辑
池袋から私鉄で約1時間半、秩父(ちちぶ)へ入る手前に奥武蔵(おくむさし)と呼ば
れる地域がある。秩父山地に接する盆地を高麗川(こまがわ)、越辺川(おっべがわ)、
名栗川(なぐりがわ)などの清流が細かく蛇行しながら流れている。
電車が奥武蔵に差し掛かると、こんな深山幽谷が東京の近辺にあるのか、と驚くような
美しい山や川が車窓間近に現れる。
この景色は、十七、八年前には、ほとんど知られていなかった。しかし、池袋からの私
鉄が秩父まで開通してからは、手頃の日帰りの行楽地として注目されるようになっている。
殊に清流は、釣り人や川遊びの家族連れに人気があって、春夏秋の休日には川辺に人々
の姿の絶えたことがない。
川から帰った森田さんは、前日に炊いたご飯と残り物の味噌汁で朝食を取る。テレビに
目をやりながら、もそもそと口を動かす。
一人暮らしはもう10年になる。奥さんを亡くしてから、ずっとである。
息子が二人いるのだが、とうに独立して、東京で家庭を持っている。
「70過ぎての一人暮らしは心配だよ。そろそろ観念して、うちに来たらどうかね。」
電力会社に勤めている長男が、そう言ってくれている。子供のない長男夫婦にとって、マン
ションの一室を提供するのは、おやすい御用かもしれない。しかし、嫁と差し向かいで昼御
飯を食べる光景を頭に描いただけで、森田さんはうんざりしてしまう。
次男は高校教員で、こちらは子たくさんである。大学生の息子を頭に2男2女がいる。
かつては夏休みの度に親子揃って奥武蔵に長逗留したものだが、末っ子が中学生になっ
た近年では、その習慣も途絶えている。それぞれ受験で忙しくなったのだそうだ。
森田さんは、どちらの家族とも一緒に暮らすつもりはない。今更生活を変えるのは
つらいことだ。今のままの暮らしでいいと思っている。――――食事も、ご飯にわかめ
の味噌汁と青菜のお浸しがあれば十分である。
「ハンバーグだ、シチューだと油っこい料理ばっか食わされたんじゃ、かわわねえよ。」
時々、嫁たちの料理を思い浮かべながら、森田さんはつぶやく。殊に次男の家族が長逗
留していたころの、孫たちの賑やかな食事風景を思い出すと、なぜか憎まれ口になる。
「おまけに子供がうるさくて、食った気がしねえ。あんなのは、かなわねえよ。」
朝食の後、森田さんはしばらく食卓を前に、転寝をする。テレビが
つけっ放しなので、眠っている森田さんの額や禿げた頭に、青や赤の
薄い光がせわしなく躍っている。
問:アンダーラインの「なぜか憎まれ口になる」理由を40字程度で説明しなさい。
参考書に載っている答えは、『孫たちとの生活を望みながらも、それが素直に口に出せず、意地を張ってしまっているから。』ですが、僕は文章のどのセンテンスからも、筆者が孫たちとの生活を望んでいる風には読み取れません。
僕は、『寂しがらないように息子夫婦たちが気を遣ってくれているのに、文句ばかり言っているから』だと思われてなりません。
一体、どうなんでしょう。皆さん、ぜひ知恵をお貸しください。 |
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