中国・浙江省で起きた高速鉄道の事故から1年。今、中国では高速鉄道の開発が急速に進められています。しかし、現場を訪れると線路の陥没や廃墟のような駅があるなど、ずさんな開発の実態が明らかになりました。
去年7月、中国高速鉄道で停車中の列車に後続列車が追突した事故。中国当局は当初、事故車両を埋めようとしましたが、「証拠を隠滅するつもりか」と大きな批判が巻き起こりました。
あれから間もなく1年。事故車両は、現場に近い貨物列車駅の敷地内に今も放置されていました。シートからのぞくグニャリとひしゃげた車体。当時の惨劇を物語っています。そして事故現場は・・・
「事故当時、列車はちょうど高架のこの部分から下に落ちていました。そこには今、畑が出来ています。さらに、真横には、自動車教習所が出来ていました」(記者)
なんと、今年の春ごろに自動車教習所が出来ていました。そこには皮肉にも「安全第一」の文字が。市民の間では、高速鉄道の開発を急速に進める当局への不信感が今も広がっています。
今月1日に開業した湖北省の武漢と宜昌を結ぶ路線では、試運転が行われていた今年3月、地盤が沈下しました。
「開通前の今年3月、300メートルにわたって路面が陥没した現場です。線路脇には今も補強工事の際に出た土が残されています」(記者)
この路線では、以前から手抜き工事が指摘されていたといいます。
「補修前の工事は、私らも見ていたけど、基礎の柱がちゃんと出来ていなかった。資材をケチっていたんだよ」(近所の人)
不信感はこんなところからも生まれてきます。南京市郊外にある紫金山東駅。完成しているように見えますが、列車は通過していくばかりで1度も使われたことがありません。
「1年以上前に出来ていたよ。1年前には確実にあった」(男性)
そして、同じ市内のこちらの駅。2年前に開業しましたが、利用客が少ないため今では1日たった2本しか列車が停まりません。駅前のコンビニエンスストアも荒れ放題です。中国のメディアは、利用客の少ない駅は多額の赤字を出しているため、当局がこの新しい駅も開業せず放置しようとしているのではと伝えています。
「庶民の血と汗のお金は、このように消えていく」。それでもなお、中国では今年だけで3500キロが新たに開通するといいます。 |