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4 不吉なカーブを回る(3)
「木材工場はどうなったんですか?」
「人手が足りないからもっと便利な場所に移ったんだ。今でも小さな工場は幾つか町にあるけどたいしたもんじゃないよ。山で切られた木は町をすどおりして名寄せか旭川(あさひかわ)に行っちまうんだ。だから道路だけが立派になって、町がさびれていく。でかいスパイク?タイヤををつけた大型トラックなら大抵の雪道は苦にしないんだ」
僕は無意識に煙草を口にくわえたが、ガソリンの匂いが気になって箱の中に戻した。そしてかわりにポケットに残っていたレモン?ドロップをなめることにした。口の中でレモンの香りとガソリンの匂いがまじりあった。
「羊は喧嘩するの」と彼女が質問した。
「羊はよく喧嘩するよ」と管理人は言った。「群れで行動する動物はみんなそうだけれど、羊の社会にも一頭ずつ細かい順位があるんだ。ひとつの囲いに五十頭の羊がいると、ナンバー1からナンバー50までの羊がいる。それでみんなその自分の位置をちゃんと認識してるんだよ」
「すごいのね」と彼女。
「その方がこちらも管理しやすいんだ。一番偉い羊をひっぱっていけば、あとは黙っててもついてくるからさ」
「でも順位が決まっているのなら、どうしてわざわざ喧嘩なんてするのかしら?」
「ある羊が怪我をして力を落としたりすると順位が不安定になるんだ。すると下の方の羊が上にのしあがろうとして挑戦する。そうなると三日くらいはどたばたやってるね」
「かわいそうね」
「ま、まわりもちだよ。蹴落とされる羊だって若い頃は誰かを蹴落としてきたんだものな。それに一度殺されちまえばナンバー1もナンバー50もなくなっちまうんだ。みんな仲良くバーベキューさ」
「ふうん」と彼女は言った。
「しかしいちばんかわいそうなのは、なんといっても種牡だね。羊のハーレムのことは知ってるかい?」
知らない、と我々は言った。
「羊を伺う場合、いちばん大事なのは交尾の管理なんだ。だから牝は牝、牡は牡で隔離して、牝の囲いの中に一頭だけ牡を放り込む。まあだいたいいちばん強いナンバー1の牡だよな。つまり立派な種をしこむわけさ。そして一ヵ月ばかりその仕事が終ると種牡はもとの牡だけの囲いに戻される。でもそのあいだに囲いの中には新しい順位ができあがってる。種牡は交尾のおかげで体重は半分も減っているから喧嘩しても勝てっこないんだ。なのに他の羊ぜんぶと総あたりで喧嘩をやらされるんだ。気の毒なものさ」
「羊はどんな風に喧嘩するの?」
「頭と頭をぶっつけあうのさ。羊の額は鉄みたいに固くて、中が空洞になってるんだよ」
彼女は黙って何かを考えていた。たぶん羊が額をぶっつけて闘っている光景を想像していたのだろう。
“那木材工场会变成什么样了呢?”
“因为人手不够就转移到更方便的地方。现在在镇上虽然也还有几个小的工场,但已经没有什么起色了。在山上砍伐的木头从镇上过而不停,就直接运到名寄或旭川了。所以因为道路方便了,镇也就衰落了。在大型卡车上装上雪道防滑轮胎对一般的雪道也能克服。”
我无意识地在嘴里叼上香烟,但因注意到有汽油的味道,又把香烟放回盒子中。作为补偿就开始嚼起放在口袋中的柠檬水果糖。在口中混杂着柠檬的香味和汽油的味道。
“羊它们打架吗?”她问了一声。
“它们经常打架。”管理人说。“因是群居动物就经常打架,但在羊的社会中每一头羊的顺序位置都分得很精细。在一个围栏中有五十头羊的话,羊们的排序从编号1到编号50。而且大家对自己所处的序号位置的认识很认可。”
“这也太厉害了。”她说。
“那样的话对羊的管理也就很方便。最优秀的羊一旦当上领头羊,后面地就老老实实跟着走。”
“既然排列位置都已经确定了,那为什么还特意打架呢?”
“假如有一位羊受伤了,其力量变弱了,其所处位置就不稳定了。后面的羊就要向前排,提出挑战。那样的话在那三天时间里就会打闹折腾起来。”
“也太可爱了。”
“这就是轮流坐桩。被排挤的羊大概其在年轻的时候曾经排挤过谁。当然要是被杀掉的话也就没有1或者50这样的排号了,大家都被烧烤了。”
“原来如此。”她说。
“但最让人可怜的是那无可挑剔的种羊。羊的后宫你们知道吗?”
不知道。我们说。
“在养羊的时候最大的事是交配管理。但是母是母、公是公,把它们分别隔离开。在母栏当中也只放进一头公的。那当然是最强壮的第一号公羊。就是把优秀的品种放进去。也就在一个月内其工作完成之后就把种羊放回到原来的公羊栏内。在这期间围栏中新的顺序又产生了。种羊因为交配其体重可能减一半,若是要打闹的话肯定不能取胜了。这样就被其它所有的羊一起打。真是倒霉。”
“羊用什么方式来打呢?”
“头顶碰头吧。羊的额头像铁那样的坚固,其中间是空的。”
她没有说话,不知在想什么。大概是在想像羊头顶头头碰头那样战斗的光景。 |
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