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でも彼女は僕の仕事の内容についてもっと知りたがった。隠す必要もないので、僕は説明した。最近やった女優のインタビューの話と、函館の食べ物屋の取材の話をした。
「そういう仕事ってとても面白そうだわ」と彼女は言った。
「面白いと思ったことなんて一度もないよ。文章を書くこと自体は別に苦痛じゃない。文章を書くのは嫌いじゃないんだ。書いているとリラックスする。でも書いている内容はゼロなんだよ。何の意味もない」
「たとえばどういうところが?」
「たとえば一日に十五軒もレストランやら料理屋やらを回って、出てきた料理を一口ずつ食べて、あとは全部残すなんてことが。そういうのってどこかが決定的に間違ってると僕は思うんだ」
「でも全部食べるわけにもいかないんでしょう?」
「もちろんいかない。そんなことしたら三日で死んでしまう。みんな僕のことを馬鹿だと思う。そんなことして死んでも誰も同情してくれない」
「じゃあ、仕方ないでしょう?」と彼女は笑いながら言った。
「仕方ないよ」と僕は言った。「それはわかっているんだ。だから雪かきのようなものだよ。仕方ないからやってるんだ。面白くてやっているわけじゃない」
「雪かき」と彼女は言った。
「文化的雪かき」と僕は言った。
それから彼女は僕の離婚について知りたがった。
「僕が離婚しようと思って離婚したわけじゃない。彼女の方がある日突然出ていったんだ。男と一緒に」
「傷ついた?」
「そういう立場に立てば普通の人間なら誰でも多少傷つくんじゃないかな」
彼女はテーブルに頬杖をついて僕の目を見た。「ごめんなさい。変な訊きかたをして。でもあなたはどういうふうに傷つくのか、うまく想像できなかったの。あなたってどういう風に傷つくのかしら?傷つくとどうなるのかしら?」
「キース?へリングのバッジをコートにつけるようになる」
彼女は笑った。「それだけ?」
「僕が言いたいのは」と僕は言った。「そういうのって慢性化するってことなんだ。日常に飲み込まれて、どれが傷なのかわからなくなっちゃうんだ。でもそれはそこにある。傷というのはそういうものなんだ。これといって取り出して見せることのできるものじゃないし、見せることのできるものは、そんなの大した傷じゃない」
「あなたの言いたいことはすごくよくわかる」
「そう?」
「そうは見えないかもしれないけれど、私だっていろんなことで傷ついたのよ、ずいぶん」と彼女は小さな声で言った。「それでいろいろあって結局東京のホテルも辞めちゃったの。傷ついたの。辛かったし。私ってある種のことが上手く人並みに処理できないの」
「うん」と僕は言った。
「今でもまだ傷ついている。そのこと考えると今でも時々ふっと死んでしまいたくなる」
彼女はまた指輪を外して、またもとに戻した。それからブラディー?マリーを飲み、眼鏡をいじった。そしてにっこりと笑った。
她还想更进一步知道我工作的内容。也没有必要隐藏,我就说明了一下。讲了最近采访了女演员和去函馆有关饭馆的采访。
“做那样的事是很有趣的吧。”她说。
“要说有趣我一次也没有感受。写文章自身并不特别的痛苦。写文章并不讨厌。一写起来就很放松。可是写的内容是无价值的,一点意义都没有。”
“比如在什么地方?”
“比如在一天中去十五个地方都围着餐厅、厨房这个主题转,对做好的饭菜只吃一口,其余的全部剩下。我想那些事情在什么地方有决定性地错误。”
“那么不能全吃了吗?”
“当然不能了。若那样做的话三天内就会死掉。大家都认为我很愚蠢。做那样的事情若是死了谁都不会给同情。”
“那实在没有办法?”她笑着说。
“没有办法。”我说。“那个我明白。就像扫雪工那样。没有办法才做。并不是有趣地做。”
“雪耙子。”她说。
“对,文化性的雪耙子。”我说。
接着她想知道我的离婚。
“我想离婚却没有离婚的理由。有一天她却突然出走了。和男的一起。”
“受伤了?”
“从那个角度来考虑的话若是普通人谁都会多少有点受伤。
她在桌子上面托着腮看我。“对不起,问了不宜问的问题。你受伤到什么程度呢?是到了想像不到的?你受的伤是什么角度的伤?受伤之后变得什么样了?
“就像把キース?へリング徽章系到大衣上那样。”
她笑了起来。“只是那样?”
“我想说的是,”我说。“实际上那是慢性化伤痕。在日常中喝酒过头,是谁受伤了并不清楚。那个伤是有的。所谓的伤也就是那么一种东西。这并不是可以拿出来给人看的东西,能给人看的东西并不是那样的大伤。”
“你所表达的东西很容易理解。”
“是吗?”
“那也许会看不到,连我都因很多事而受伤,相当多。”她用小声说。“因为各种原因最后辞掉了东京宾馆的工作。因为受伤,也很辛苦。我对一些事情并不能很好地处理。”
“是吗?”我说。
“现在我还在伤痛之中。一想起那些事有时候就想一死了之。”
她又把戒指搞下来,然后又戴上。然后喝了白兰地,摆弄起眼镜。接着微笑起来。 |
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