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8(6)
電話が切れた。僕は風呂に入り、十一時半までソファで本を読んだ。それから服を着て廊下に出た。そして迷路のように入り組んだ長い廊下の端から端まで歩いてみた。フロアのいちばん端の奥まったところに従業員用のエレベーターがあった。従業員用エレベーターは一応一般客の目には触れにくいようになっていたが、隠してあるわけではなかった。非常階段という矢印の方に歩いていくと客室番号のないドアが幾つか並んでいて、その一角にエレベーターはあった。宿泊客が間違えて乗らないように「荷物専用」という札がかかっていた。僕はしばらく前で様子をうかがっていたが、エレベーターはずっと地階にとどまったままだった。この時刻にはもう利用者は殆どいないのだ。天井のスピーカーからBGMが小さく流れていた。ポール?モーリアの『恋は水色』だった。
僕はエレベーターのボタンを押してみた。ボタンを押すと、エレベーターはふと目覚めたようにその首をもたげ、上にあがってきた。
階数表示のデジタル数字が1、2、3、4、5、6、と上昇した。ゆっくりと、しかし確実にそれは近づいてきた。僕は『恋は水色』を聞きながらその数字を眺めていた。中に誰かがいたら客用のエレベーターと間違えたといえばいい。ホテルの宿泊客なんてどうせいつも間違いばかりやってるものなのだ。11、12、13、14、とそれは上昇した。僕は一歩うしろに下がり、ポケットに両手を突っ込んでドアが開くのを待った。
15、というところで数字の上昇は止まった。そして一瞬の間があった。何の音も聞こえない。そしてドアがすうっと開いた。中には誰もいなかった。
すごく静かなエレベーターだな、と僕は思った。あの喘息もちみたいな昔のいるかホテルのエレベーターとはずいぶん違う。僕は中に入って、16のボタンを押した。ドアが音もなく閉まり、微かな移動の感覚があり、またドアが開いた。十六階だった。でも十六階は彼女が言っていたような暗闇ではなかった。ちゃんと光がついて、天井からはやはり『恋は水色』が流れていた。何の臭いもしなかった。僕は試しに十六階を端から端まで歩いてみた。十六階は十五階とまったく同じ作りだった。廊下はくねくねと折れ曲がり、どこまでも客室がつづき、その間に自動販売機を集めたスペースがあり、何台か客用のエレベーターがあった。ドアの前にルーム?サービスの夕食の皿がいくつか出してあった。カーペットは深い赤で、柔らかく上質だった。足音も聞こえない。あたりはしんと静まり返っていた。BGMがパーシー?フェイス?オーケストラの『夏の日の恋』に変わった。僕は端まで歩くと回れ右をして途中まで引き返し、客用のエレベーターで十五階に下りた。そしてもう一度同じことを繰り返してみた。従業員用のエレベーターでまた十六階に上り、また光のついたごく当たり前のフロアを前にした。『夏の日の恋』が流れていた。
僕はあきらめてまた十五階に下り、ブランディーをふたくち飲んで眠った。
电话掛断。我洗澡然后在沙发上看书看到十一点半。然后穿上衣服去了楼道。就像迷路那样潜入到长长的楼道从这一端走到另一端。在楼层一端的顶头有一个工作人员用的电梯。工作人员用的电梯一般都设计在客人看不到的地方,也没有隐蔽之说。按照非常楼梯的指示标牌走过去,那里并排着几个没有客房门号的房间,在其一角有一个电梯。为了不让住宿客人错误乘用还配备写有“货物专用”一牌子。我站在前面观察了一下,电梯静停在地下室。在这个时间段还要使用者很少。从顶棚的喇叭中播放出BGM音乐,是ポール?モーリア的“恋之水色”。
我试着接下电梯按钮。按下按钮后电梯像突然醒来那样抬起头向上升起来。
表示楼层的数字从1、2、3、4、5、6……向上变着。虽然慢,但确实是在接近。我一边听着“恋之水色”一边看着那变化的数字。若是有谁在里边的话也可以说这不是客用电梯。宾馆的顾客为什么总这样错误使用呢?11、12、13、14,数字在上升着。我后退一步,把两口插在口袋里,等着门打开。
到15时数字停止了上升变化。也就在那一瞬间,什么声音也没有,接着门打开了。里面谁也没有。
是非常寂静的电梯。和那类似带有哮喘病的老海豚宾馆的电梯相比完全不一样。我走进去按下16层按钮。门无声地关上,有一点微小移动的感觉,接着门打开了。到了十六层。十六层并不像她说的那样那么黑暗。灯光闪亮,从顶棚上还播放着“恋之水色”。也没有什么臭味。我试着在十六层从这一端走到另一端。十六层和十五层完全相同。楼道有点弯曲,整个楼道客室相连,在其中间集中放有自动贩卖机的空间,还有几台客用的电梯。在门前放有几个房间服务餐盘。地毯深红、柔软,是上等的品质。也听不到脚步声。周围安静地出奇。BGM变成了パーシー?フェイス?オーケストラ的“夏日之恋”。我走到头向右转返回到中间,用客用电梯下到15层。然后又试着重复操作了一次。用工作人员用的电梯又上到十六层,还是灯光通明,是正常的楼层。“夏日之恋”仍旧播放着。
我清醒地又下到十五层,喝了两口白兰地睡下。 |
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