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12(3)
何かが僕を呼んでいた。
汽笛だろうか?
いや、そうじゃない、違う、と鴎たちが言う。
誰かが鉄球をバーナーで焼き切ろうとしているのだ。そういう音がする。
いや、違う、そうでもない、と鴎たちが声をあわせて言う。ギリシャ劇のコーラスみたいに。
電話だ、と僕は思う。
鴎たちはもういなくなっている。誰も答えてくれない。どうして鴎たちはいなくなっちゃったんだ?
僕は手を伸ばして枕元の電話を取った。「はい」と僕は言った。でもつーんという音が聞こえるだけだった。びいいいいいいいい、という音は別の空間で鳴っていた。ドア?ベルだ。誰かがドア?ベルを鳴らしているのだ。びいいいいいいい。
「ドア?ベル」と僕は声に出していってみた。
鴎たちはもう居なかったし、誰も「正解」とは褒めてはくれなかった。
びいいいいいいいいいい。
僕はバスローブをひっかけて入り口まで行って、何も聞かずにドアを開けた。フロントの女の子がさっと中に入ってきて、ドアを閉めた。
頭の後ろの灰色猿に叩かれたところが疼いた。こんなに強く叩かなくたってよかったのにと僕は思った。ひどい。頭がへこんでしまったような気がするくらいだ。
彼女は僕のバスローブを見て、それから僕の顔を見た。そして眉をしかめた。
「どうして午後の三時に寝てるの?」と彼女は訊いた。
「午後の三時」と僕は繰り返した。僕にもどうしてかはうまく思い出せなかった。「どうしてかな?」と僕は自分に向かって問いかけてみた。
「何時に寝たの、いったい?」
是什么在叫我呢?
是汽笛吧。
不,不是,不对。海鸥们说。
是谁在用燃烧器要切割铁球呢?是那种声音。
不,不对,也不是那种声音。海鸥们合着声音说。像是希腊剧的合唱队。
是电话。我想。
海鸥们已经不在了。它们谁也不给回答。海鸥们怎么就不存在了呢?
我伸开手拿了枕头边上的电话。“喂。”我说。还是只听到了嗡嗡声。啼呤……,那声音在另一个空间响着。是门铃声。是谁在按门铃呢?啼呤……。
“门铃。”我说出声试着。
海鸥们已经不在了,谁也不给予“正解”。
啼呤……
我穿着瞎衣走到门口,无声地把门打开。柜台的女服务员快速钻了进来,把门关上。
我脑后被灰色猿击打的地方仍在疼。虽然还不是这么强力地击打。厉害。让人觉得脑袋凹陷。
她看着我的睡衣,然后看着我的脸。而且还皱起了眉头。
“怎么回事,睡到下午三点钟?”她问。
“下午三点钟?”我重复说了一遍。我怎么也想不出来。“怎么回事呢?”我自己问自己。
“几点睡的?到底?” |
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