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彼女は毛皮のコートを脱いでハンガーにかけ、ガスストーブをつけた。そしてどこかからバージニアスリムの箱をもってきて一本口にくわえ、紙マッチをクールに擦って火をつけた。十三の女の子が煙草を吸うというのは良くないことだと僕は思う。健康にもよくないし、肌も荒れる。でも彼女の煙草を吸う姿は文句のつけようがないくらい魅力的だった。だから僕は何も言わなかった。ナイフで切り取ったような薄い鋭角的な唇にフィルターがそっとくわえられ、火をつけるときに長いまつげが合歓の木の葉のようにゆっくりと美しく伏せられた。額に落ちた細い前髪が彼女の小さな動作にあわせて柔らかく揺れた。完璧だった。十五だったら恋におちている、と僕はあらためて思った。それも春の雪崩のような宿命的な恋に。そしてどうしていいかわからなくて、おそろしく不幸になっていただろう。ユキは僕に昔知っていたある女の子を思いださせた。僕が十三か十四の頃に好きになったひとりの女の子のことを。その当時に味わった切ない気持ちがふとよみがえった。
「コーヒーか何か飲む?」とユキが尋ねた。
僕は首を振った。「遅いからもう帰る」と僕は言った。
ユキは煙草を灰皿に置いて立ち上がり、僕をドアのところまで送ってくれた。
「煙草の火とストーブに気をつけて」と僕は言った。
「お父さんみたい」と彼女は言った。正確な指摘だった。
她脱掉毛皮大衣并挂到衣架上,点着燃气灶。不知从哪里拿出细长烟盒取出一支叼上,用纸火柴熟练地点着火。我想,十三岁的少女吸烟是很不好的。不仅仅对健康不好,肌肉也会荒废了。可是她吸烟的动作真是无可指点,很有魅力。所以我什么也不说。她那就像用刀片切割的薄尖的嘴唇叼着烟,在点火的时候长睫毛像合欢树的叶子那样慢慢地美丽地一合一睁。在前额悬垂着的细细的刘海儿迎合着她的小动作轻轻摇动着。真是完美。若是十五岁的话一定会陷入恋爱。我肯定地想。那应是像春天雪崩那样的宿命的恋爱。具体怎么做为好却不明白,恐怕是不幸吧。雪让我想起了过去曾认识的女孩。就是我在十三四岁时所喜欢的女孩的事。在当时那种悲伤的心情突然复活了。
“喝点咖啡什么的?”雪问。
我摇摇头。“已经很晚了,要回去了。”我说。
雪把烟放到烟灰缸站起来,把我送到门口。
“请注意烟之火和燃气灶。”我说。
“就像父亲那样。”她说。所指出的是正确的。 |
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