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彼はぱちんと軽く指を鳴らした。「そう、それだよ。よくわからない感覚。まさにそのとおりだ。引力が変化しちゃったような感覚。苦痛ですらない」
ウェイターがやってきて、僕らはステーキとサラダを注文した。ふたりとも焼き具合はミディアム?レアだった。それから僕らは二杯目の水割りを注文した。
「そうだ」と彼は言った。「君は僕に何か用事があるんだったね。先にそれを聞いておこう。酔っぱらわないうちにね」
「ちょっと変な話なんだ」と僕は言った。
彼は気持ちの良い笑顔を僕に向けた。よく訓練されてはいるけれど、嫌味のない笑顔だった。
「変な話って好きだよ」と彼は言った。
「このあいだ君の出た映画を見た」と僕は言った。
「『片想い』」と彼は眉をしかめて、小さな声で言った。「ひどい映画。ひどい監督。ひどい脚本。いつもと同じだ。あの映画に関わった人間はみんなあのことは忘れたがっている」
「四回見た」と僕は言った。
彼は虚無をのぞきこむような目つきで僕を見た。「賭けてもいいけど、あの映画を四回見た人間なんてどこにもいないぜ。この銀河系宇宙のどこにも。何を賭けてもいい」
「知っている人間があの映画に出てたんだ」と僕は言った。それから「君以外に」とつけくわえた。
五反田君はひとさし指の先でこめかみを軽く押さえた。そして目を細めて僕を見た。
「誰?」
「名前は知らないんだ。日曜日の朝に君と寝ている役の女の子」
彼はウィスキーを一口飲み、それから何度か肯いた。「キキ」
「キキ」と僕は繰り返した。奇妙な名前だ。別の人物のように感じられる。
「それが彼女の名前だよ。少なくともだれもその名前しか知らない。我々の小さな奇妙な世界では彼女はキキという名前で通っていたし、それで十分だっ た。」
「彼女に連絡がつけられるだろうか?」
「駄目だね」と彼は言った。
「どうして?」
「最初から話そう。まずだいいちにキキは職業的な女優じゃない。だから話がややこしいんだ。俳優というものは有名であれ無名であれ、みんなきちんとどこかのプロダクションに属している。だからすぐに連絡がつけられる。大抵の連中はみんな電話の前に座って連絡を待ってる。でもキキはそうじゃない。どこにも属していない。彼女はたまたまあの映画に出ただけなんだ。完全なパートタイムなんだ」
他轻轻地弄响了手指。“原来是那样。一直无所谓的状态。应该就是那样。是引力变化的那种感觉。当然没有感觉。”
服务员走过来,我们点了烤肉和色拉。两人的烧烤都是ミディアム?レア。之后我们喝了第二杯的苏格兰威士忌。
“好了。”他说。“对我你有什么事呢?还是先听清楚为好。到醉了就说不清了。”
“比较麻烦的事。”我说。
他一幅心情良好的笑脸面向我。经过良好训练,并不是令人讨厌的笑脸。
“我就喜欢那些不正常的事。”他说。
“最近我看了你出演的电影。”我说。
“《单恋》?”他皱起眉头,用小声说。“糟糕的电影,糟糕的导演,糟糕的脚本。和那部电影有关的人大家都忘掉了那件事。”
“看了四回。”我说。
他用看着虚无的目光看着我。“可以打赌,那样的电影看四回的人在什么地方也没有。在这个银河宇宙的任何地方。赌什么都可以。”
“一位认识的人出演了那部电影。”我说。之后又补充说:“除你之外。”
五反田用食指尖轻轻地按了太阳穴。然后眯起眼睛看我。
“谁?”
“不知道她的名字,就是演星期日早上和你睡觉的那位女人。”
他喝了一口威士忌,几次点头之后说:“奇奇。”
“奇奇。”我反复说。很奇妙的名字。感觉像是其他另外的人物。
“那就是她的名字。当然大家也只知道那个名字。在我们微小的奇妙的世界中都知道奇奇这个名字,那就足够了。”
“能和她取得联系吗?”
“不可以。”他说。
“为什么?”
“从最开始就这样说的。首先第一奇奇不是职业性的女演员。所以这个事很麻烦。演员别管是有名还是无名,大家都属于一个制片公司。那样的话能很方便地联系。大部分都是坐在电话旁等待联络。而奇奇却不同了。她哪里也不属于。她偶尔只是到那部电影当中出演。只是个钟点工而已。” |
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