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25(6)
帰りの車の中ではユキは殆ど口をきかなかった。彼女は体の力を抜いてぐったりとした姿勢でシートにもたれ、何かを考えていた。ときどき眠っているようだったが、起きている時と眠っている時の違いはあまりなかった。もうテープも聴かなかった。僕はためしにジョンコルトレーンの『バラード』のテープをかけてみたが、彼女はとくに文句は言わなかった。何が鳴っているのか気づきもしないようだった。僕はトレーンのソロにあわせて小さな声でハミングしながら車を走らせた。
湘南から夜に東京に帰ってくる道は退屈な道だ。僕は前の車のテールライトにずっと神経を集中させていた。別に話すこともない。首都高速に入ると、彼女は身を起こしてずっとガムを噛んでいた。そして一本だけ煙草を吸った。三、四回吹かして窓の外に捨てた。二本吸ったら文句を言おうと思ったが、一本しか吸わなかった。勘がいいのだ。僕の考えていることがわかる。引き際というものを心得ている。
赤坂の彼女のアパートの前で僕は車を停めた。そして「着いたよ、お姫様」と言った。
彼女はガムを包装紙にくるんでダッシュボードの上に置いた。そしてけだるそうにドアを開けて車から降り、そのまま行ってしまった。さよならも言わず、ドアも閉めず、後ろも振り返らず。複雑な年頃なのだ。あるいはただ単に生理なのかもしれない。でもこういうのってまるで五反田君の出ていた映画の筋みたいだな、と僕は思った。傷つきやすく複雑な年頃の少女。いや、五反田君なら僕よりもっとずっと上手く手際よくやるだろう。彼が相手ならユキだってボオッとして恋をしてしまうかもしれない。そうしないと映画にならないから。そして……やれやれまた五反田君のことを考えている。僕は頭を振ってから、助手席に移って体を伸ばしてドアを閉めた。ばたん。そしてフレディーハバードの『レッドクレイ』をハミングしながら家に帰った。
在回去的车中雪再也没有说什么。她的体力已消耗完精疲力竭地样子靠在椅座上,或者还在想什么。一会儿是睡觉的样子,不睡和睡的样子也没有区别。而且还没有听磁带。我就试着听ジョンコルトレーン的バラード磁带,她也一句话不说。就像什么声音也没注意到的样子。我就合着汽车的节奏小声哼唱着,快速行驶。
从湘南出来晚上赶到东京,那道路太难受了。我就始终聚精会神看着前车的尾灯。也没有什么话可说。进入首都高速公路以后她起了一下身一直嚼着口香糖。接着吸了一支烟。吸了三、四口之后扔到了窗外。吸两支的话就可以说话了,所以就只吸了一支。太敏感了。我正在想的事她都明白。领会到了离别之事。
在赤坂她的公寓的前面停下车。我对她说:“小姐,到了。”
她把口香糖放到包装纸里,然后放到表盘上面。然后无精打彩地打开车门下了车,就那样往前走。不说再见,不关门,也不往回看。真是复杂的年纪。或者说那也只是单纯的生理问题。尽管如此,就像五反田演电影那样的味道。容易受刺去的复杂的少女。不,若是五反田比我会有更好的处理方法。若他来承担这个角色雪可能马上开始恋爱起来。不那样做就演不成电影。接着……怎么又想起反田的事来?我摇摇头,把身体移动到副驾驶位置上伸出身体把门天上。咔嗒一声。听着フレディーハバード的レッドクレイ回家。 |
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