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30(14)
翌朝僕はJALのオフィスに行って午後のフライトを予約した。そして部屋を引き払い、車でユキをマカハの母親のコテージまで送った。僕は朝アメに電話をかけて急な用事がでたので今日、日本に帰ることになったと言った。彼女はとくには驚かなかった。ユキを寝かせるくらいの場所はあるし、ここに連れてきてくれてかまわない、ということだった。その日は珍しく朝から曇っていた。いつまたスコールが降り出してもおかしくないような天気だった。僕はいつもの三菱ランサーで、いつものようにラジオを聴きながら、海岸沿いのハイウェイを一二○キロで走った。
「パックマンみたい」とユキが言った。
「何みたい?」僕は聞き返した。
「あなたの心臓の中にパックマンがいるみたい」とユキは言った。「パックマンがあなたの心臓を食べてるの。ビッピッピッッビピッッピ、て」
「比喩がよく理解できない」
「何かが蝕んでる」
僕はそれについて考えながらしばらく運転を続けた。「時々死の影のようなものを感じることがある」と僕は言った。「とても濃密な影なんだ。死がすぐ側にまで迫っているような気がする。腕がすっと伸びてきて、今にも僕の足首を掴みそうな気がするんだ。でも怖くはない。どうしてかというと、それはいつも僕の死じゃないからだ。その手がつかむのはいつも別の誰かの足首なんだ。でも誰かが死んでいくたびに僕の存在が少しずつずれていくような気がする。どうしてだろう?」
ユキは黙って肩をすぼめた。
「どうしてかはわからない。でもいつも死というものが僕の脇にいる。そしてチャンスがあると、それがどこかの隙間からふと姿を見せる」
「それがたぶんあなたの鍵なんじゃないかしら?あなたは死というものを通して世界と繋がっているのよ、きっと」
僕はまたそれについてしばらく考えてみた。
「君はすごく僕を落ち込ませる」と僕は言った。
第二天早上我去了日本航空公司的售票处,买了下午的航班。然后退了房,用车把雪送到在マカハ的妈妈的别墅。早上我给雨打了电话说,因为有急事,今天要回到日本。她也并没有那么吃惊。就说:这里有雪睡觉的地方,把她带到这里也无所谓。那天很少从早上开始阴天。像是什么时候有急风骤雨那样很反常。和往常那样还开三菱车,还照旧听广播,在沿海高速公路上开120公里的速度奔驰。
“像是包装盒人。”雪说。
“像什么?”我反问。
“你的心脏当中像是有包装盒的人。”雪说。“那个人在吃你的心脏。噼、噼、噼。”
“你的比喻不能理解。”
“在侵蚀着什么。”
我想了一会儿他说的事继续开车。“经常感受到死的影子。”我说。“非常浓密的影子。感到死马上要到临头。把胳膊稍伸开一点,现在就要抓住我的脚脖子。可是也并不可怕。不知怎么回事,因为那总不是我的死。那只手所抓到的总是别人的脚脖子。每当谁死去的时候,我的存在也要偏离一下。这是怎么回事呢?”
雪不说话耸耸肩。
“怎么回事却不明白。死总是在我的旁边。而且每当有机会时,它就通过一个缝隙突然冒出来。”
“那大概是不是你的关键要害?你通过死这件事与世界相关联。肯定是这样。”
我又对此想了一会儿。
“你极力在使我不痛快。”我说。 |
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