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五反田君がマセラティを海に沈めた三日後に僕はユキに電話をかけた。僕は正直なところ誰とも話をしたくなかった。でもユキとだけは話さないわけにはいかなかった。彼女は無力で、一人ぼっちなのだ。子供なのだ。彼女を庇うことのできる人間は僕しかいないのだ。そして何よりも、彼女は生きているのだ。僕には彼女を生かしつづける責務があった。少なくとも僕はそんな風に感じた。
箱根の家にユキはいなかった。アメが電話に出て、娘は一昨日に赤坂のアパートに行ってしまったと言った。アメは眠いところを起こされたようなひどくもったりとした喋りかたをした。彼女はあまり喋らなかったし、その方が僕にとっても好都合だった。僕は赤坂に電話をかけた。ユキは電話のそばにいたらしくすぐに受話器を取った。
「もう箱根にはいなくていいの?」と僕は訊いた。
「わからないわ。でもしばらく一人になりたかったの。何のかの言っても、ママは大人でしょう?私がいなくてもちゃんとやれるわよ。私は少し自分のことを考えたかったの。これからどうするかとか、そういうことを。そろそろそういうことを真剣に考えるべき時期だと思ったの」
「そうかもしれないな」と僕は同意した。
「新聞で読んだわ。あなたのお友達、死んだのね」
「そう、呪われたマセラテイだ。君の言う通りだった」
ユキは黙っていた。沈黙が水のように僕の耳を浸した。僕は受話器を右の耳から左の耳に移し変えた。
「御飯でも食べにいかないか?」と僕は言った。「どうせろくでもないものを食べてるんだろう?二人で少しはましなものを食べよう。僕も実はこの何日かあまりものを食べてないんだ。一人でいると食欲が湧いてこない」
「二時に人と会う約束があるんだけど、その前だったらいいわ」
僕は時計を見た。十一時過ぎだった。
「いいよ。今から支度をして迎えに行く。三十分でそちらに着く」と僕は言った。
五反田把奔驰车沉入到大海的三天之后,我给雪打了电话。我不想全部坦率地给谁说话。但必须只给雪说话。她萎靡,而且仅仅一个人。她还是孩子。能庇护他的人只有我。不管怎么说,她要生存下去。我有让她生存的义务。至少我有那种感觉。
雪并没有在箱根的家。雨接电话说:“女儿在前天去了赤坂的公寓。”雨是被叫醒的,用那样怒吼的方式说。她并不怎么说话,这对我倒是很好。我向赤坂打了电话。就像是在电话旁等着那样,雪马上抓起电话。
“你不在箱根,那里行吗?”
“不清楚。可是想一个人清静一下。不论怎么说,妈妈已经是大人了吧。即使我不在也应能正常生活。我想考虑一下自己的事情。今后自己怎么办呢?就是想那些事。我想现在是应该认真考虑办些事的时候了。”
“应该的。”我同意说。
“我看报纸了。你的朋友,死了。”
“是的。被咒骂的是奔驰车。正如你说的那样。”
雪沉默。沉默得就像水浸入到我的耳朵那样。我把电话简从右耳朵移到左耳朵。
“不想出去吃饭吗?”我说。“为什么还在吃那些无用的东西呢?两人还是吃点像样的东西吧。实际上我在这几天也没有吃什么东西。一个人呆着食欲就没了。”
“与人约好两点时要和人见面,在这之前就可以的。”
我看了一下手表。已经过了十一点。
“好的。现在开始准备去接你。约三十分钟左右到你那里。”我说。 |
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