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正冈子规6

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发表于 2011-4-23 10:23:45 | 显示全部楼层 |阅读模式
日清戦争が起つて文学界の勢力が下火になつたからタマラない、彼れは戦争と文学の調和を計らんと企てた、ソレには是非従軍がして見たいと言ひ出した、肺病のソンナ身体で従軍ナドは思ひもよらない死に行くようなものだからやめたらどうだと止めたがナカ/\承知しない、『ドウセ長持ちのない身体だ、見たいものを見て、したい事をして死ねば善いではないか』と喰つてかゝる『併しワザ/\死に行くに及ばんではないかと』と言ふと『夫れでは君イツまで僕の寿命が保てると思ふか』など駄々をコネル、到頭仕方がないから近衛師団に従ふて遼東に行く事になつた。
▲処がアノ身体で、アノ寒さの強よい遼東に行つたから堪まらない、病勢は急に進んで東京に帰へることも出来ず僅に須磨の療養院に其病躯を運んだ。
▲天は此偉人の気力を試験せんと欲したのか此の病人を垂死の中より救ふて軽快を与へた、ヤツと東京に帰へつて一二年は時々車で近所位は出かけた事があつたか後には寸歩も病床より動く事も出来なくなつた、爾来八年の間天は間断なく彼を苦めたのである、彼は如何にして之れと戦つたか、彼は此間に何をしたか而して吾人は彼に向て何を学んだか。
▲彼れの病床を訪ふたものは先づ彼れが活きて居るのかを疑ふであらう、八年間日光を受けた事のなき蒼白なる顔と瘠せに瘠せたる細き長き手とは先づ人をしてギヨツトせしむるのである。生きた木伊乃(ミイラ)なるものがありとせば彼は即はち夫れである、真の木伊乃は左程の感じもないが此の木伊乃の腰の辺は今や七箇所の大きな孔があいて腐りたる骨は膿と化して常に流れ出て居るのである、腰の骨盤は之れが為めに殆んど無くなつて居る、頭の毛は抜けて居る、三十六枚の歯は悉く黒くなつて欠けて居る、ドウして是れで生きて居られるのであろう、嗚呼天は何故にドコまで彼をイジメルのであるか。
小島一念「正岡子規君」
明治35年9月
正岡の宅で毎月運座を遣るから出て見いといふ事で、虚子に教えられた通り前田家の黒塀に附いてぐる/\廻つて、鶯横町に這入つて三軒目の門を始めてくゞつた。何日であつたか聢(しか)と覚えないが何でも目黒の粟飯会といふのがあつてから間もない頃であつた。例の八畳と六畳と打抜きの座敷に、ぐるりと十人ばかり並んでゐたが、予て脳裏に描いた子規子らしい顔が見えない。どれかと迷つてゐる内、真中に膝を捩ぢつて坐つてゐる人が挨拶をした。お噂は予ね/\聞いて居りましたがとかいはれたので、始めて子規子であつたかと気が付いて、改まつて初対面の挨拶をした。成程よく見ると顔色も青いし縞絹の綿入絆天を着て襟巻を涎掛(よだれかけ)の様にかけて居られる様子などはどうしても病人らしい。だが僕の理想の子規子とは雲泥の相違であつた。暗いと思つた眉根は明るかつた。狭いと思つた額は広かつた。分け刈と思つたのが五分刈であつた。頬のあたりも左程痩せてゐない。眼は思切つて離れてゐる。口は大きい方で締りがない。といふやうな訳で思の外に平凡な顔で、いはゞ余ツ程間抜けた顔であつた。其外挨拶振りといひ松山流の柔和な調子でこつちにお出でやなどいはれる工合がどう見ても八釜し屋の子規子と受取れぬ。大方これは虚子や碧梧桐が崇拝の余り勿体を附けて、僕を劫(おびや)かしたものに相違ないと肚を極めた。それから以後といふものは何のこれ式の人くみし易しといふ勢で以て矢鱈に押掛けたものだ。所が日を経るに従つて何か少しづゝ気味の悪い所が出て来る。世間咄しの時はさうでもないが、発句の批点でも請ふ場合になると、黙つて原稿に眼を注がれる。其眼付が非常に怖い。僕の顔を睨まれるのでもないのに怪しく恐ろしい。批評に至つては猶更の事だ。片言双語ひし/\と応へる。さう気が附いて見ると只の雑話も一分の透きがない。時には随分皮肉な言も聞える。僕などは丸で子供扱ひにされて居る。僕の肺腑はとつくに見抜かれて居る。独り僕の肺腑のみならず、此門に出入するもの悉く見抜かれて居る様に感じて来た。是に至て僕は全く子規子に牛耳を執られてしまつた。
坂本四方太「思ひ出づるまゝ」
明治35年12月
△今春訪ねた時、非常の苦悶中であつたが、暫らくして苦しき息のとぎれ/\にいふた。「どうも此んなに苦しくてはヒドイぢやないか、もう死んだと同じだ、死んだ方がよい、誰れか殺してくれんかしら、ウムさうだ、君に相談しやうと思つてるんだが、西洋では到底生命覚束なき瀕死の病人を其の苦痛の時間を減ずるために劇薬を以て早く死なしてしまふ事があるさうだ、これは実に尤もだと思ふ。僕はモウ苦しくて堪らんからさうしてもらひたいと思ふのだ。君は賛成して呉れませんか」余は答ふる所を知らぬ。「内藤さんの持論はこれである。併し此の手段を僕に用うる事は不賛成なさうだ。矛盾してるじやないか。陸君もほぼ賛成だけれども矢張内藤さんと同じらしい。誰か賛成者はあるまいか、あれば飄亭位のものだ。近日親戚朋友会議を開いて一つ此事を相談しやうと思ふ。其前に飄亭を一つ買収して置て政府委員にして置かうか」苦痛はいくらか減じたと見えて緩やかな笑ひも含まれて居る。「アアさうだ。飄亭に薬を造つてもらふのだね、それを飲めば死んでしまうのだとして、モウ苦しくて堪らんから死なうと思た時にそれを飲む事にきめて置くのだ。なか/\飲まんだらうと思ふ。本当に死ぬんだと思へば決して飲まれるものでない」暫らく話は途切れたが「劇薬の積りで、飄亭は何か笑ひ薬か踊り薬といふ様なものを入れて置いたら山が出来るね。愈々此の一服で死ぬるのだといふので、家族のものやら君等が枕元に並んで居るさ。水を打たる如くになつて居るさ。其処で僕が飲む。自分でモウ死んでしまつた積りになつて居るさ。さうすると薬が利き出して、急に笑ひ出す、踊り出す、ステヽコか何かで踊つたら滑稽だらうじやないか」翁の話は大抵此の様に悲しい話でも御しまひは滑稽に帰着してしまふのである。
佐藤紅緑「子規翁」
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