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1 十六歩歩くことについて(4)
「でもあなたとは別だったんでしょ?」
“那么,我和你的关系有所不同。”
彼女の声に何かしら特別な響きがあった。僕はサラダの皿から顔をあげ、枯れた鉢植えごしに彼女の顔を見た。
在她的声音里有特别的意义。我从色拉瓶从里抬起头,隔着干枯的花瓶看她的脸。
「そう思うの?」
“在样想吗?”
「なんとなくね」と彼女は小さな声で言った。「あなたって、そういうタイプなのよ」
“并没有想。”她用很小的声音说。“你是不是就是那种类型的人?”
「そういうタイプ?」
“那种类型的是指什么?”
「あなたには何か、そういったところがあるのよ。砂時計と同じね。砂がなくなってしまうと必ず誰かがやってきてひっくり返していくの」
“对你来说,总会有那种事。和沙漏计时一样,将沙子漏完之后肯定会有谁会来补充填好。”
「そんなものかな」
“大概是那样的。”
彼女の唇がほんの少しほころび、そしてもとに戻った。
她的嘴角露出一点微笑,然后又回到原状态上。
「残りの荷物を取りに来たのよ。冬もののコートとか帽子とか、そんなもの。段ボールの箱にまとめておいたから、手があいた時に運送屋さんまで運んでくれる?」
“我是来取剩下的东西来的。就是那些冬天的大衣、帽子等东西。已经捆好放到箱子里面了,有空的时候就让运输公司给我送来如何?”
「家まで運んであげるよ」
“送到你家去吗?”
彼女は静かに首を振った。「いいのよ。来てほしくないの。わかるでしょ?」
她静静地摇摇头。“是这样,是不想你来的地方,明白吗?”
たしかにそのとおりだった。僕は見当はずれなことをしゃべりすぎる。
的确就像她所说的那样。我所说的话题确实离题太远了。
「住所はわかるわね?」
“知道我所住的地方吗?”
「わかるよ」
“知道。”
「用事はそれだけ。長居してごめんなさい」
“事情也就这些。打搅时间太长了。”
「書類の方はあれでいいの」
“像文件那样什么的会更好的吧。”
「うん、みんな終わったわ」
“不,我们已彻底解决了。”
「ずいぶん簡単なものだね。もっと何やかやいろんなものがあるんだと思ってたよ」
“这样也太简单了。总在想有什么事还要做。”
「知らない人はみんなそう思うのよ。でも本当に簡単なの。終わってしまえばね」彼女はそう言って、もう一度猫の頭をかいた。「二度も離婚すればもうベテランみたいなものよ」
“不知道的人都这样想。当然也确实简单了。”她这样说着,再一次挠猫的头。“即便是二次离婚也会成专家的。”
猫は目を閉じて背中だけで伸びをし、彼女の腕に首をそっと載せた。僕はコーヒー?カップとサラダの皿を流しの中に放り込み、請求書をほうきがわりにしてクラッカーの粉を一ヵ所に集めた。太陽の光で、目の奥がちくちくと痛んだ。
猫闭着眼睛,也只伸伸后背,脑袋倒到她的手上。我把咖啡杯和色拉瓶放到洗碗池里。把账单弄好,把咸饼干的粉末收集到一个地方。是阳光的原因刺得眼睛痛。
「細かいことはあなたの机の上のメモに全部書いておいたわ。いろんな書類の場所とか、ごみの収集日とか、そんなことね。わからないことがあったら電話して」
“那些细小的事项全部写到了放在桌子上的记录本上。包括那些书的地方、收集垃圾的时间等。若有不清楚的事情就打电话给我。”
「ありがとう」
“那谢谢你了。”
「子供ほしかった?」
“你想要孩子吗?”
「いや」と僕は言った。「子供なんてほしくないよ」
“不。”我说。“对孩子确实不感兴趣。”
「私はずいぶん迷ったのよ。でもこうなるんなら、それでよかったのね。それとも子供がいたらこうならかなったと思う?」
“我却是着了迷。若是真有了孩子就好了。你想过没有,若有了孩子就不会这样分手的。”
「子供がいても離婚する夫婦はいっぱいいるよ」
“即便有了孩子,那样离婚的夫妇到处都是。”
「そうね」と彼女は言って僕のライターをしばらくいじっていた。「あなたのことは今でも好きよ。でも、きっとそういう問題でもないのね。それは自分でもよくわかっているのよ」
“是的。”她一边说着一边摆弄着我的打火机。“到现在我还喜欢你。可实际上并不是那样。这个我自己十分明白。”
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