「羊をめぐる冒険」の翻訳（76）

yamoli

２　奇妙な男の奇妙な話（２）(2)

「本当は三十二年前に死んでいてもなんの不思議のなかったんだ」と男はつづけた。「あるいは四十二年前にね。その血瘤を最初に発見したのはＡ級戦犯の健康調査を行っていたあるアメリカ軍の医師で、それは一九四六年の秋だった。東京裁判の少し前だよ。血瘤を発見した医師はそのレントゲン写真を目にして強いショックを受けた。何故なら、それほど巨大な血瘤を脳に抱えて生きている――しかも常人以上に活動的に生きている――人間が存在することが医学的常識を遥かに超えていたからだ。そこで彼は巣鴨（すがも）からその頃アーミー?ホスピタルとして接収されていた聖路加病院に移送され、詳しい診察を受けることになった。

診察は一年つづいたが、結局は何もわからなかった。いつ死んでもおかしくはないということと、生きていること自体が不思議だということのほかにはね。しかし彼はその後もなんの不都合もなく、精力的に生きつづけた。頭脳の働きも極めて正常だった。理由はわからない。デッド?エンドさ。理論的には死んでいるはずの人間が生きて歩きまわっているんだからね。

もっとも幾つかの細かい症例は明らかになった。四十日周期で三日間、強い頭痛が生じる。この頭痛が始まったのは本人の証言によれば一九三六年で、それが血瘤の発生時期であると推察された。頭痛はあまりにもひどく、その時期には鎮痛用（ちんつうよう）の薬剤が投与された。早い話が麻薬（まやく）さ。しかし麻薬は確かに苦痛を緩和しはしたが、そのかわりに奇妙な幻覚（げんかく）をもたらした。強度に凝縮（ぎょうしゅく）された幻覚だ。それがどんなものであるかは本人にしかわからないが、いずれにしてもあまり気持の良いものではなかったことはたしかなようだな。幻覚についての詳しい記録はアメリカ軍にそっくり残っている。医師は実に詳細にそれを記述していたんだ。私はそれを非合法的に入手して何度か読んだことがあるが、それは事務的な文章で表現されているにもかかわらず極めておぞましいものだった。あれを実際に幻覚として定期的に体験することに耐えられる人間は殆んどいないだろうね。





　　“本来是应该在三十二年前死的，这很正常的。”男的接着说。“或者是在四十二年前。最初发现那个血瘤的是对A级战犯进行健康体检的美国军医，那就是一九四六年的秋天。就在东京裁判即将开始之前。发现血瘤的军医看到那个X光片的时候受到巨大冲击。是什么原因在脑中已生有那么巨大的血瘤——而且还在超常人行动生活着——这种生存现象远远超越了医学常识。在那里他从巢鸭当时的陆军医院转移到了圣路加医院，要接受详细的诊疗。

　　诊疗持续了一年时间，也没有什么结果。什么时候死也并不奇怪，而且还正常生活，这两件事都在不可思议之外。可是他在之后也没什么不方便，精力充沛地生活着。头脑的活动也极其正常。但却不明白其原因。本应死掉结束了，理论上应该死掉了的人却还在那么能健康生存下去。

　　有几个细节的病例逐渐明朗起来。在四十天的周期里有三天时间发生了强烈的头痛。根据他本人的证言，头痛发生在一九三六年，根据推测那正是血瘤的发生期。头痛非常厉害，在那时已经使用了镇痛剂。以前那药叫麻药。那种麻药的确能缓解苦痛，但也能带来奇妙的幻觉。而且是被高度凝缩的幻觉。那到底是什么东西(原因)呢，也只有他本人自己知道。反正并不是什么心情愉悦的事情似的。有关那幻觉的详细记录在美国军队里原封未动地保存着。医师根据实际情况把那幻觉仔细地记述下来。我是通过非正当方式弄到手反复看了许多遍。那些记述都是事务性的文章，虽然被表达出来了但令人极其不痛快。把那些当做实际的幻觉而承受定期的体验，能忍耐的人极乎没有。

yamoli

男的的谈话总是无边，把主人公搞得晕头转向。

阅读小说的人，也晕头转向。

yamoli

日语原文由如下修改：

本当は三十二年前に死んでいてもなんの不思議のなかったんだ
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本当は三十二年前に死んでいてもなんの不思議もなかったんだ

その時期には鎮痛用（ちんつうよう）の薬剤が投与された
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その期間には鎮痛用（ちんつうよう）の薬剤が投与された

医師は実に詳細にそれを記述していたんだ
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医師が実に詳細にそれを記述していたんだ