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3 羊博士おおいに食べ、おおいに語る(4)
「お父さんに是非会ってみたいですね」と僕は言った。
「お会いになるのはかまいません。しかし父親は私を嫌っていますので、申しわけありませんが、あなた方だけで行って下さいますか?」と羊博士の息子は言った。
「嫌ってる?」
「私が指を二本失くした上に禿げかけているからです」
「なるほど」と僕は言った。「変った人のようですね」
「息子の私が言うのもなんですが、たしかに変っています。父親は羊と関りあってからすっかり人が変ってしまったんです。とても気むずかしく、時々残酷になります。しかし本当は、心の底では優しい人なんです。ブァイオリンの演奏を聴けば、それはわかります。羊が父親を傷つけたんです。そして羊は父親を通して、私を傷つけてもいるんです」
「お父親のことを好きなのね」と彼女が訊ねた。
「ええ、そうです。好きです」といるかホテルの支配人は言った。「でも父親は私のことを嫌っています。生まれてから一度も抱かれたことがないんです。暖かい言葉をかけてくれたこともありません。私が指を失くして頭が禿げてからは、そのことで私をしょっちゅういじめるんです」
「きっといじめるつもりはないのよ」と彼女がなぐさめた。
「僕もそう思いますよ」と僕は言った。
「ありがとうございます」と支配人は言った。
「我々が直接行って会ってもらえるでしょうか?」と僕は訊ねてみた。
「わかりません」と支配人は言った。「でもふたつのことに気をつければたぶんあってくれるんじゃないでしょうか。ひとつは羊に関して質問したいことがあるときちんと言うことです」
「もうひとつは?」
「私から聞いてきたと言わないことです」
「なるほど」と僕は言った。
我々は羊博士の息子に礼を言って階段を上った。階段の上は冷やりとして、空気は湿っていた。電灯はほの暗く、廊下の隅にはほこりがたまっていた。古い紙の匂いと体臭があたりに漂っている。我々は長い廊下を歩き、息子に言われたように、つきあたりの古いドアをノックした。ドアの上には「館長室」という古いプラスチックの札が貼ってあった。返事はない。僕はもう一度ノックしてみた。やはり返事はない。三度めにノックした時に中で人のうめく声が聞こえた。
「うるさい」と男が言った。「うるさい」
「羊のことでお話をうかがいにきました」
「糞でも食ってろ」と羊博士が中でどなった。七十三歳にしてはしっかりとした声だった。
「是非会っていただきたいんです」と僕はドアをお越しにどなった。
「羊について話すことなんか何もない。阿呆めが」と羊博士が言った。
「でも話すべきなんです」と僕は言った。「一九三六年にいなくなった羊のことです」
しばしの沈黙があり、それからドアがいきおいよく開いた。羊博士が我々の前に立っていた。
“一定要拜会你尊敬的父亲。”我说。
“你去拜会倒是没有什么问题。我父亲很讨厌我,这个不好意思。请你们自己去吧。”羊博士的儿子说。
“怎么会讨厌你?”
“我丢掉了两个手指头,现在又秃顶了。”
“原来如此?”我说。“是个不寻常的人。”
“这当儿子的也没什么可说的,的确是不寻常的人。父亲和羊有关系后其人完全变了。真是个不好对付的人,有时脾气很坏。但是真实地讲,心底是非常善良的人。只要你听听他的小提琴演奏,就会明白。羊伤害了父亲,然后羊通过父亲又伤害了我。”
“喜欢你的父亲吗?”她问道。
“是的,非常喜欢。”海豚宾馆的所有人说。“可是父亲非常讨厌我。出生以来一次也没有抱过我。也没有给我说过一句温暖的话。因为我丢了两个手指又秃了顶,总是刁难我。”
“这并不是真心地刁难你。”她安慰说。
“我也这样想。”我说。
“谢谢你们了。”宾馆的所有人说。
“我们这样直接去拜会可以吗?”我问。
“这个不清楚。”所有人说。“若是注意两个问题就应该能够见面的。第一个是,明确要提问有关羊的事,肯定可行。”
“还有一个呢?”
“不要说是从我这里得到的消息。”
“没有问题。”我说。
我们对羊博士的儿子表示感谢后上了楼梯。楼梯上面冷而且空气潮湿。电灯微暗,走廊的角落堆积灰尘。古纸的味道和身体的味道在那里漂散着。我们走过长长的走廊,按着其儿子的提醒,敲响了尽头那个陈旧的门。门上还贴有一个旧塑料,上面写有“馆长室”。没有回音。我又敲了一次,还是没有回音。当我第三次敲门的时候听到了里面人的呻吟声。
“吵什么?”男的说。“吵什么?”
“想咨询一下有关羊的事。”
“连糞都吃吗?”羊博士在房中大声喊叫。已经七十三岁了,声音很有力。
“非常想拜访问你。”我透过门大声喊。
“有关羊的事,什么也没有。真是个傻瓜。”羊博士说。
“必须要说的。”我说。“是想问在一九三六年丟失的羊的事。”
暂时沉默了一会儿,然后那门很有劲地打开了。羊博士站到了我们的前面。 |
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