全能なる神を裏切り、体を封印されて早くも千年。
躯体を取戻すために、ありとあらゆる世界を歩き渡り、そして、今、新たな歴史を迎えようとする修羅界に舞い降りた……
修羅宮の中
『とうとう、この日がきたな』一人の老人が眉間の皺を寄せて呟いた。
『なにかありました、お父上様』隣で一人の女子が心配そうに話しかける。
『いや、何にもないんだ、心配するな』娘を心配させないように父親は無理に笑顔を作って見せた。
『お上様、一刻も早く脱出の準備をお願いします』一人の大男が巨大な槍を片手に宮殿の中に飛んできた。
老人は頭を上げて彼を眺めて『伽羅、お主に頼みがある!』と口を開いた。『今から、お主が姫様を連れ、南の森へ赴く。そこに歴代の当主が万が一に備えて造った結界がある…』。『お上様…』伽羅と呼ばれた男は老人の顔を見つめてなんか言おうとしたが、『わしの命令を聞かないというのか!』と老人からの一語で『いいえ、決してそんなことは…』とまたすぐ頭を下げた。『それでよし、これを持っていけ!姫のこと、頼んだぞ!』。再び頭を上げた男の目の前に一本の剣が横たわった、細身で地味で至って平凡そうな剣でしたが、男にはその真価が分かっていた。跪き、両手でその剣を受取、男は誓った『たとえ火の中水のなかでも、この伽羅が姫様を守りぬける!』。『これでは、わしも心置きなく逝ける…』老人が再び振り返ることなく宮殿を後にした。そしてこの日から『斬鬼』という名前がこの世の者たちに知られるようになる… |