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酔っ払った悪友のAが俺達にカラオケまでつき合わせようとしていた、俺達がやつはもう駄目だと判断して、家まで送ってやると合意がした。奴はまた「いかせてくれ!私は冷静なんだ、酔ってるなんてない!」と呟いていたので、「はいはい、カラオケに出発するよ」と誤魔化した。
タクシーが早いので、たった十何分で奴の家に到着した。ドアを開けてくれたのは奴の妻、林さん。事情を説明しようとするところ、奴はいきなり倒れそうに身を前に傾け、林さんを抱きついた。「へぇ、なんと美しいお嬢さんでね!それに家内に似ているような気がする」、酒気帯びのタンナさんが軽薄な態度で口を利く様子をみて、林さんの表情がかわった。林さんがその場で爆発しなかったのは俺達がまだ門前に立っているのだろう。
林さんがAを支えてソファーに座らせた。
「主人のせいで、迷惑をかけてしまってごめんね」
「やあ、そんなのはもう慣れたんだよ、飲むのが下手なのに、一気一気と飲みまくる彼のこと、はじめて知るわけではない。じゃ、失礼」
「なんだ!始めたばかりじゃねえか?カラオケは!せっかくここまで来て、存分に遊ばず帰るばかものがこの世にいるのもか!」奴はまだ諦めてない。
「そこに立ってどうするつもり?座れよ!さあ、どんな歌をリクエストすればいいかな...あっ、ちょっとトイレに...」奴は重い足を引きずってお手洗いに向かいはじめ、暫くして門を閉めた音がした。
奴の背後を見て、どうすればいいかってみんな苦笑した。
その時電話がなりだした、林さんが電話の部屋に行った
俺達が「こんな時一体誰だ」と思って顔を見あわせた
その時何かを落して壊した音がした、林さんが怖い顔をして部屋から出てトイレの門を睨んでいた。
「お前達何を心配しているのがわかっている。安心せよ、さっき、家に電話一本した。今日残業で出先で泊るんだって、全ての邪魔が消えたってわけだ。今日思い切って飲んで楽しみましょう!」
奴はずるい笑顔をしながら、さっきと同じように重い足を運んできた。 |
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