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(1) 新学習指導要領
, d5 o9 U3 B$ t$ L/ W9 T① 1998年の教育課程審議会の答申で、学習指導要領の6回目の改訂がされ、ゆとり教育の方針にたって、2002年度から、公立の小中学校では、完全学校週五日制が実施され、授業時間数が大幅に削減された。主な改定内容は、授業時間を年間70時間削減、教育内容を約3割削減、習熟度別学級編成などで指導方法の弾力化を図る、小学校3年以上の全ての学年に、国際理解、情報、環境、福祉、健康などの課題を総合的に探求し、体験学習や地域の特色を取り入れた総合的な学習の時間を設けるなどであるが、その主旨は「子供が自ら考え主体的に判断し、行動できる資質や能力」「生きる力」の育成にあった。
4 P8 c' N3 i; [! O② 新学習指導要領が実施されてみると、公立校と私立校の間の学力格差の拡大や、全般的な学力低下の進行、授業や学校行事へのしわ寄せなど、問題点がつぎつぎと露呈しはじめたため、親からも学校からも批判が広がった。文部科学省はこうした懸念に対して、「学びのすすめ」を発表し、発展的な学習で個性に応じて子供の力を伸ばす、確かな学力向上のために特色ある学校づくりなどの課題を提起したが、これを受けた学校では、土曜補習の取組が広がるなど、ゆとり教育の方針にも矛盾が生じ始めた。" \% Y: T4 p% [. `! g$ k, C
③ 学力の評価も「知識・理解」から「関心・意欲・態度」に重点に移すことになった。それに伴って、従来の五段階相対評価法(相対評価)から、「観点別学習状況」の評価(絶対評価)への転換が進んでいる。しかし、相対評価によると、いくら学力がついても他人より上にならなければ成績はあがらず、競争心をあおるとともに、やる気をなくさせると言う問題点があったが、逆に、絶対評価は教師の主観に作用されるという欠陥もあり、私立高校では統一テストを行うなどの動きもある。
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6 s% u: V1 y1 Q: C(2) 教育基本法改正問題
- \( Q% P2 N- M% q① 「教育基本法」(1947)では、教育の目的(第一条)に「教育は、人格の完成を目指し、平和な国家及び社会の形成者として、真理と正義を愛し、個人の価値を尊び、勤労と責任を重んじ、自主的精神にみちた心身ともに健康な国民の育成を期して行われなければならない」とし、教育の機会均等、義務教育、男女共学をうたった。しかし、憲法改正論議の再燃と共にも湧き上がったのが、教育基本法の改正問題であり、1999年の国旗・国歌の法制化(=学校行事での国旗掲揚・国歌斉唱の義務化)に続き、小泉首相直属の私的諮問機関として2000年3月に発足した中央教育審議会は、2002年17日、「愛国心」を国民共通の規範とて、郷土を愛する心や伝統、文化の尊重などを基調とする新しい教育基本法の必要性を打ち出した。
+ i5 \9 i4 P) _! F/ f2 X② 教育に関する国際条約としては、国連「世界人権宣言」(1948,26条で児童の教育を受ける権利)、ユネスコ憲章(1951)、国連「児童の権利宣言」(1959))、ユネスコ「国際理解、国際協力及び国際平和のための教育ならびに人権および基本的自由についての教育に関する勧告」(1974)、ユネスコ「学習権宣言」(1985)などがある。その集大成ともいえるのが、1989年に国連で採択された子供の人権を包括的に規定した「子供の権利条約」で子供を保護する対象としてのみならず、権利を享受し行使する主体として積極的にとらえる子供観に立っている。日本では1994年3月に国会で批准された。ちなみに、この国連子供の権利委員会は、「高度に競争的な教育制度」が子供の心身に否定的な影響をあたえているとして、適切な改善の措置をとるよう日本政府に提案と勧告している。
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(3) いじめ
# \- J$ ]& ]$ z" {① いじめは「自分より弱いものに対して一方的に・身体的に・心理的攻撃を継続的に加え、相手が深刻な苦痛を感じているもの」(文部科学省)と定義されている。日本だけでなく、アメリカ、イギリス、ノルウェーなど先進国に蔓延する現象である。日本では90年代に入り、いじめによる自殺が増大し、報復の殺害事件も発生した。1998年の総務庁(総務省)の調査では、いじめを受けた経験を持つ小・中学生は33%、他の子供がいじめられているのを見たことがある小・中学生は56%に上っている。
# \8 s( Z2 [8 A/ p4 f8 s② 現在のいじめは、価値観や外見を理由に、自分たちと異質と感じた者を排除するために行われることが多い。集団内の場合は、内部の秩序維持や価値観の一体化のために、集団内の弱い者に対する迫害、物品の強要などが多いとされる。文部省調査研究協力者会議報告によると、いじめ問題の原因として以下の点が指摘されている。! z T/ d8 p5 E0 p& f9 j
A. 家庭的要因:乳幼児期から基本的な生活習慣や生活態度が十分に教育されていないこと。- ]9 v: O4 r2 K# u* D! t1 X/ t
B. 学校的要因:単一の尺度で児童生徒を評価する傾向が見られること。一人ひとりの個性、特性を伸ばす教育が十分行われていないこと。指導が柔軟性に欠け、児童生徒の多様な実態に十分に対応できていないこと。
- n, _5 w8 J4 x! ^3 lC. 地域社会の要因:都市部では住民の連帯意識が希薄化し、地域共同体が崩壊したため、地域社会全体で子供を育てると言う意識も低下していること。# Z8 X/ {& y: n" u( _; ]
③ 行政も臨床心理士をスクール・カウンセラーとして学校への派遣したり、いじめの情報提供・電話相談などを行う「いじめ問題対策情報センター」を設置するなどの取組を始めたが、いじめ問題の解決に最も大切なのは教育現場での対処であり、その際、以下のことが大切とされている。# T" q" E% @/ e2 n. c0 f9 S$ N
A. いじめられている子供の立場に立つ。! i' f1 D* [4 B8 t" C' o8 z/ M
B. 教師や親は危険信号(=サイン)に敏感になる。+ d2 l. y8 A/ \7 |2 p( _/ @
C. いじめを見たら、傍観しない。
7 P) B" j, b. ~/ i bD. 仲間を助けることや注意することを恐れない。
$ R. |7 D! J( a1 r4 p! C& }; rE. 子供自身が解決能力を持つ。% Y% X5 V3 A1 r, j) g8 B4 ?6 J$ E
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(4) 不登校
" T* O6 A0 g! b① 不登校は、「何らかの心理的、情緒的、身体的、或いは社会的要因・背景により、登校しない、あるいは登校したくてもできない状況にある者」(文部科学省)と定義されている。日本では、1999年度に不登校で30日以上学校を欠席した小学生は2万6044人、中学生は10万4064人で、合計13万人を超え、過去最多となった。8割以上の公立中学校に不登校製が存在している。なお、文部科学省は不登校の原因として、以下の点を指摘している。
! {, Q$ x# v. i* K* K- G& fA. 不安などの情緒的混乱:登校の意志をもちながら、心理的理由から身体的症状を含む登校忌避状態が生じ、登校できない。1 Z6 a$ Z3 ]3 K2 R
B. 無気力:持続力がない、怠ける、勉強に自信を失うなどして、登校しない。( u5 k8 r2 u1 s
C. 遊び・非行:遊びのためや非行グループに属していて登校しない。
: k x' K6 R V1 [& nD. 学校生活上の問題:いじめや、教師との関係が悪いなどの理由で登校しない。
0 Y3 Z. R( B e. PE. 意図的な拒否:自分の好きな方向を選んで登校しない。学校不要論。/ v5 b0 {0 _1 S g8 h8 h
F. ひきこもり:根底には社会とのかわりをもちたいという欲求があるものの、友達関係の構築に失敗するなどの経験から、傷つくことを恐れ、人間関係を拒絶して家にひきこもる。# E; s/ c7 C7 u7 s* L! Q- i, B
② 不登校問題の解決のために、学校では心の居場所づくりが重要視され、学校の保健室や学校外の受入れ施設が作られた、今では、スクールカウンセラー活用調査研究委託事業により、臨床心理士らカウンセリングの専門家を定期的に小・中・高校に派遣し、心の教室相談員の配置も措置されている。一方、民間でも、フリー・スクールとかフリー・スペースとか呼ばれる不登校や中退の子供を受け入れる施設が作られ、それぞれの状態に合った自立、学びの機会を提供する試みがされている。* E7 Z1 t; g3 I! p5 ?
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(5) 学級崩壊1 K( t8 w% y8 \" o" B! [
① 学級崩壊は、1997年ごろから見られるようになった。特定の困難な児童の問題というより、複数の児童の暴れや教室内外の立ち歩きなどで授業がしばしば中断される、私語などで授業が成立しない、学級経営が困難になるなどの状況が一定期間継続することを指しており、3割程度の公立小学校で発生していると見られる。韓国では「学級瓦解」と呼んでいる。学級崩壊の原因(文部科学省)としては、
+ S2 f: n2 a2 @5 N: MA. 柔軟性を欠いた教師の学級経営や、いじめなどに気づかないなどの指導の欠陥。1 U2 u% O( E( m
B. 少子化や受験競争などにより、友だちと遊ぶ機械も減り、人間関係を学ぶ機会が減少した。0 }2 W! b6 N" s
C. 親からの虐待や家庭内の不和などによって、子供の気持ちが荒れている。! I+ A3 a5 h r, o* g4 s9 r$ S
などが取り上げられている。解決策としては、固定観念にとらわれない子供の実態に即した学級経営、授業の改善や担任以外の支援態勢、保護者による学級の支援などの重要性が指摘されているが、学校だけでは解決できない多くの問題を含んでいる。 |
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