日本語レッスン20 「やりもらい(2) 動作のやりもらい」

zgydcailing

作者：市川保子  
* O5 L# K! Y7 r7 f! V（１）田中さんが仕事を手伝いました。  
   
この文は田中さんが何をしたかの事実だけを述べている文です。次の文はどうでしょうか。  
　（２）田中さんが私の仕事を手伝いました。  
   
, `3 x* @* Q- {5 |7 Q) _/ |5 u田中さんと話し手｢私｣との関係はわかりましたが、｢田中さんが手伝ったこと｣だけを事務的に述べている感じがします。（３）はどうでしょうか。  
   
3 b, Y  {9 v; c8 r　（３）田中さんが(私の)仕事を手伝ってくれました。  
) G1 v. D8 {4 r. d& \8 W   
ここで始めて日本語として自然な文になり、話し手｢私｣が（利益・恩恵を受けた）感謝の気持ちが表されています。  
" m/ \8 V+ a$ G, j次の（４）はどうでしょうか。（１）と並べてみます。  
' J. Z% Z6 C6 w; U   
　（１）田中さんが仕事を手伝いました。  
8 M& n4 \" ~  ?　（４）田中さんが仕事を手伝ってあげました。  
   
（１）と比べると（４）は田中さんが他の人を手伝ったということ、そして、｢田中さん｣が他の人に利益・恩恵を与えた（少なくとも話し手はそう思っている）ということがわかります。  
このように、（１）のような事実だけを述べる文に、「あげる」「くれる」そして、｢もらう｣などの｢やりもらい(授受)」の動詞を付けると、誰が誰のためにしたかという利益･恩恵の移動関係、そこから得れる感謝の気持ちなどをあら表すことができきます。  
1 @5 m0 U. p$ U5 H! D   
+ L" {1 {/ |, X) ^1 y●「てやる／あげる／さしあげる」  
6 Q+ {0 Q3 E" D0 O( S利益・恩恵を与えるときに使います。上の人に対しては「てさしあげる」、下に対しては「てやる」を使う。近頃は「てあげる」の使用範囲が広がり、下に対しても「てあげる」が使われることが多いようです。  
動作に使われる「てあげる／さしあげる」は押しつけがましく聞こえることがあるので注重が必要です。「てあげる／さしあげる」を用いずに、次のように別の表現を使うことも多いです。  
   
* x; P) T" R# `. S& x; i　（５）仕事を手伝ってあげます。→仕事をお手伝いします。  
9 V- G2 _- u. ~5 B　（６）駅まで送ってさしあげましょう。→駅までお送りしましょう。  
/ W, z. R/ [8 S* ^7 C$ J   
●「てもらう／いただく」  
3 @2 c5 \  ^; D4 {5 w利益･恩恵を受けるときに用います。上の人から受けるときは「いただく」、対等の人、および、下の人からは「もらう」を使います。  
7 O/ m9 P& U! J   
　（７）私はポンさんにタイ語を教えてもらった。  
% C# I4 f; s/ |$ O1 \: E- T! S2 Y　（８）私はタノム先生にタイ語を教えていただいた。  
- f2 Z# m; C% S1 `- O! W) r   
「てもらう／いただく」は利益･恩恵を受ける以外にも、次のような、いくつかの意味と機能を持ちます。  
8 F7 J; P0 S. ?1 B4 ~1 h   
[依頼]「てもらえる／いただける」の形で  
/ a4 [# `. K. ~: ^2 `" v  ^: m　(９)ちょっと教えてもらえます／もらえませんか。  
1 o4 d7 C9 ~0 o! j6 F　(10)ちょっと待っていただけます／いただけませんか。  
[指示]  
6 G+ M# C8 [) m　(11)まずここで着替えていただきます。診察はそのあとで行います。  
[要求、依頼]「てもらいたい／いただきたい」の形で  
6 R7 n; c8 L1 b! d' P* w1 @/ W　(12)あした休ませていただきたい／もらいたいんですが。  
   
●「てくれる／くださる」  
１）話し手以外の第３者（聞き手を含める）が、話し手（私）や話し手の家族などに利益・恩恵を与えるときに用います。主語が第３者で、利益・恩恵の受け手として「私に」「私達に」「私の家族に」が続き、動詞に「てくれる／くださる」が付く形をとります。  
' N, Y4 L; m' e& |   
7 g: e9 F# ~- m2 Z! y0 ?) w! S+ r  N2 f　(13)事務の人が私達に説明してくれた。  
　(14)先生が私にカタカナ語を教えてくださいました。  
   
* b# Q* L- N" V0 k# R5 }「てくれる／くださる」文では、「もののやりもらい」のときと同じく、利益・恩恵の受け手の「私に」や「私達に」が省略されることが多いです。  
   
　(13)’ 事務の人が説明してくれた。  
　(14)’  先生がカタカナ語を教えてくださいました。  
& |1 k; L2 U# [$ E8 t「てくれる／くださる」は「てもらう／いただく」と同じように依頼表現としても使用されます。  
   
　(15)ちょっと教えてくれます／くださいますか。  
　(16)ちょっと待ってくれません／くださいませんか。　  
0 u' ?8 `( [: g5 ]5 O& E7 n- K6 ~3 a　　　　  
●「やりもらい」表現と助詞  
$ s0 o3 d+ U$ y( G1 l$ O　「てやる／あげる／さしあげる」では、「～が／は～にＶてやる／あげる／さしあげる」という形をとることが多いですが、(17)～(19)のように、動詞がどのような補語（「名詞＋格助詞」）をとるかによって、「に」とは異なる助詞をとることもある。  
7 Q4 o& ?7 H: j5 K" D$ N2 M: l   
　(17)小林さんはリーさんに日本語を教えてあげる。  
　(18)小林さんはリーさんの仕事を手伝ってあげる。  
　(19)小林さんはリーさんを役所へ連れて行ってあげる。  
2 }9 {% E5 R, D$ z- a& f9 i/ j8 H　  
「てもらう／いただく」では、(20)(21)のように「～が／は～にＶてもらう／いただく」という形をとります。(22)は｢連れて行く｣という動詞なので「場所＋へ」をとっています。  
   
3 D. {3 x- K" {4 Y　(20)リーさんは小林さんに日本語を教えてもらった。  
　(21)小林さんはリーさんに仕事を手伝ってもらった。  
　(22)リーさんは小林さんに役所へ連れて行ってもらった。  
   
「てくれる／くださる」では、(23)のように「～が／は～にＶてくれる／くださる」という形をとることが多いが、(24)(25)のように、動詞がどのような補語（「名詞＋格助詞」）をとるかによって、「に」とは異なる助詞をとることもある。  
: ]% i$ t* e  |: E! z   
　(23)小林さんは（私の）息子に日本語を教えてくれた。  
　(24)小林さんは（私の）息子の仕事を手伝ってくれた。  
　(25)小林さんは（私の息子）を役所へ連れて行ってくれた。